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貴いお方が裸同然とはどういう了見だ  作者: 能村龍之介
殺し屋、なんか転移するの章
23/118

18 難攻不落の落とし方(前)

 ビスコーサの寝室。ゴミも汚れも散らかりも片付けられ、家具は横へ避けられている。床には、彼女の秘蔵のコレクションが並んでいた。


 ドリル。ジャッキ。グルーガン。ハンドパイルバンカー。釘撃ち機。


「どうっすか。この工具の数々」


 ビスコーサが誇らしげに胸を張る。彼女の私服は普通のチュニックで、意外にもボディラインや胸や尻の形が強調されない、“本当に普通の服”だった。


 なんというか、それだけでもう彼女への好感度がうなぎ登りだ。これだよ、これ。求めていたのは。


「これは……魔術で?」

「っす。っていっても、魔術単体で動いてるものはちょっとすけど。大体は電気か熱への変換があったり、魔術回路励起のために最初だけコッキングや摩擦熱が必要だったり」


 やはり電動か。魔術のために必要なエネルギーを電気に変換するというくらいだから、バッテリーは無いのだろう。


「少し使っても?」

「もちっす」


 差し出されたテスト木板を受け取り、いくつか試す。


 ドリル。電動の物と変わらない性能で、モーター音がする。


 ジャッキ。自動で持ち上がる。何かをこじ開けるならかなり便利そうだな。


 グルーガン。素早くノリを出せる。これを使えば暗殺道具を仕込みやすくなる。


 ハンドパイルバンカー。腕に固定して使うようだが――。


「あ。それはちょっと待って欲しいっす」

「どうした」


「なんていうか……それ無茶苦茶に強いんで、下手に使うと床どころか肩も危ないっす。本当は丸太とかに固定して撃ち込むもんなんで……」

「なるほど。そうなると、音も?」


「無茶苦茶デカイっす」

「分かった」


 バンカーを置き、釘撃ち機を取った。


 テスト板にくっ付けて撃つとスパンッという強烈な音がして、釘があっさりと板を抜いた。


「ふむ。離れて使えるか?」

「木材なら、メーカー標示有効距離は50センチ程度っすね。肉だったら……どれくらいっすかね……。一メートルくらいでも行けると思うっすけど……」


 近距離戦闘には有効に使えるだろうが、隠れて使うには音が大きすぎるし、狙撃にも適さない、か。


「……使えそうなの、あるっすかね……」

「色々と選択肢が増えそうだ。具体的には、情報と作戦を決めてからだな」

「っすね。自分の魔術も色々と使えるんで……」


 彼女が身体の前で握った拳を、そっと下ろさせた。


「気持ちだけ受け取っておく。依頼人には、直接殺しの手伝いをさせない主義だ」

「そ、そっすか……。すみません」


「だが、可能な限り情報を集めてもらったり、こうして道具を貸してもらったり、アリバイのために手伝ってもらうことはある。そこを頼らせてくれ」

「任せてください」


 彼女が少し緊張した顔で頷いたとき、玄関からノックの音が。


「客か。家族か、恋人か?」

「家族じゃないっす。恋人とかなおさら。でも、客なんて……」


「追い返してくれるか」

「も、もちっす……」


 少しがかなりに変わった緊張の歩き方で、玄関に向かった。その背を寝室の扉の隙間から見守る。


「ど、どなたっすか?」


 扉越しに声をかける。


「えっと、ここに……格好いいお兄さん的な人とか来てないですか?」


 扉越しに返事が戻ってくる。


 ……ボウイの声だ。


「な、なんすかそれ?」

「ほら……こう。格好いいってゆーか、キリッとしてて、でも優しい感じで、ちょっと……好きになっちゃう感じの……んへへ……」

「そ、そういう人は知ってることは知ってるっすけどぉ? 恋しちゃう感じっすよねぇ。ふひひ……」


 お前らコントでもやってんのか。気軽に恋をするな。


 寝室から出る。


「ビスコーサ。そいつは入れていい」

「え? は、はいっす……」


 扉が開いた。あの上着のボウイが立っている。何かを言おうとしたので、人差し指を唇の前に立てるジェスチャーをして、手で招いた。


 少し困惑気味のビスコーサと一緒に、寝室へ来た。


「あ、あのアランさん? この子は……」

「仲間だ。名はボウイ」


 ボウイがピースして笑った。


「おれ、先生の生徒。殺し屋なんだ」

「ほ、ホントっすか? でも、何歳っすか?」


 ビスコーサが少し屈んで目線を会わせた。


「子ども扱いすんな。おれ大人だし」

「……ふふひっ」


 嫌なタイプの笑い声が出た。


 かなり、嫌な予感がする。ビスコーサの目線が、ボウイの顔と生足に向いていた。


「か、可愛い……。扉越しだったら男の子かと思ってたんすけど」

「ぷっ。見た目に騙されちゃってんの」


 ボウイが上着の前をたくし上げる。


 小さすぎるショートパンツにもっこりとした股間を見せびらかす。


「男でした~」


 ビスコーサが、鼻血を吹き出す。


「へっ!?」

「だ、ダメじゃないっすかボウイくぅん、そんなに可愛い男の子がそんなエッチな格好しちゃあ……」

「ひぃっ!?」


 ボウイがトラウマをえぐられ、俺の背後に隠れた。


 ビスコーサは奴隷商に殺されるタイプの性癖だったのか。知りたくなかったそんなこと……。


「ボウイ。どうしてここに?」

「ボスに言われてきたんだ。先生に習えって……」


 あいつ、押し付けてきたか。確かにボウイとはその後も面倒を見るという約束をしたが、弟子を平然と譲ってくるとはな。


「分かった。これからは生徒兼助手として動いてもらう」

「ホントっ? よっしゃ……」


 噛み締めて言う少年を、ビスコーサ(ショタコン)がニヤニヤして見ている。


 お前……。


「簡単に話をおさらいする。ターゲットはMMMマイキーマイクマイケル、マジカルテックカンパニーの幹部で、自宅社内共にセキュリティ面で隙がない。また移動ルートに決まったものがない」

「……んーっと……だから、待ち伏せができなくて、尾行もムリ? 調査してもあんまり意味ない……よね?」


「そうだ。よく分かったな」

「んへへ……」


 誉められて、素直に照れた。そういう扱いやすいところは好きだ。


「ってことは、シュウゲキってやつ?」

「襲撃か。今回のターゲットに限っては今のところ、これが一番現実的な案だな」

「でしょ。先生ならターゲットとボディガードをさ、全員おりゃってやってイケるよね?」


 キラキラした瞳が俺に向いた。


「夢を壊すようだが、無理だ」

「え、先生でもムリなの? だって山賊を三人倒したって……」

「三人っ。スゴいっすね……」


 羨望の眼差しが増えた。いくら期待の目が増えようが無理なものは無理。


「それでもだ。ボディガードは守りのプロ。一人を不意打ちで始末できたとしても、ターゲットを首尾よく逃がすか、場合によっては正面からの戦闘になって負ける」

「えぇ……」


「残念ながら、殺し屋は殺すプロであって戦いのプロではない。相性というものがある」

「そうなんすねぇ……」


 二人とも露骨にがっかりした。


 ……お前ら……。


「ふむ。そもそもセキュリティを攻略できないか」


 ビスコーサを見る。しかし彼女は首を降った。


「それをするには、システムダウンさせてセンサを落とす必要があるんすけど、実はそれ対策で細かく独立(スタンドアローン)にさせてるんす」

「詳しいな」

「その……自分が考えたシステムなんで……」


 彼女はまだ少し後の残る自分の首を擦りながら「自分で自分の首締めてるっすね、また」と呟いた。


「通信は実物の線で?」

「っすね」


「なら、通信妨害(ジャミング)の選択肢も消えたな。侵入経路を考えるか。ターゲットの部屋はビルの最上階ということだが、例えば外部から侵入は可能か?」

「が、外部っすか?」


「あっ。屋上からガシャーンって?」


 ボウイがすかさず答えた。


 俺がいた世界の特殊部隊の突入方法を、今の会話から思い付いたのだろうか。かなり発想力があるな。


「それは音が鳴るという問題と、逃走経路の確保が難しいという問題がある。いいアイデアではあるんだがな」

「う~ん……。でも、その問題をどうにかできたらさ……」


「ここでアドバイスをしてやろう。思い付いたアイデアは使いたくなるものだが、捨てることも重要だ。問題を解決するのに問題を増やしては意味がない」

「そっかぁ……。じゃあ一回捨てる……」


 少し考える。ターゲットが呼び出しに応じないという前提は覆せないか。


「ターゲットに家族はいるか」

「知らないっすけど、いると思うっす。……まさか人質に?」


「それでなら、MMMを動かせる可能性はある」

「でも、その後は?」


「少しでも俺たちへの手がかりは無くす必要があるからな。人質ごと始末する」

「だ、ダメっす! 関係ない人は巻き込んじゃ!」


「分かった」


 依頼主によってはむしろ巻き込めと言う人もいるので一応聞いてみたが、やはりビスコーサはそういうタイプの人間ではないな。


「ターゲットにやましいことは?」

「あっても、完璧に隠してるっすよ。誰もなんにも言わないんすもん。懲罰リストってクソみたいなもの作ってるし……」


 忌々しげに言葉を吐いた。


「ビジネスパートナーを装うのは?」

「それだったら分からないっすけど……あいつが協会長になってCEOとか言い始めてから、滅茶苦茶にコネを広げたんで、今さら食いつくものがあるとは思えないんすけど……」

「そうか……」


 そうなると、確実な手段はかなり少なくなるな。少しばかり運に頼らざるをえなくなってきた。


「あくまでも作戦という前提で聞いて欲しいんだが、誘惑には応じると思うか」

「む、無理だと思うっす。マーブルって、そうやってアイツのお気に入りになろうとしたヤツがいるんすけど……最近、死んでるのが見つかったって……」


「殺されたのか」

「証拠とかはないんすけど、アイツが殺したに決まってるっすよ」


 自分の命を狙っていると勘違いしたのだろうか。つまり、それだけ恨まれているという自覚があるということだ。


 なら――。


「――使えるな。それは」


 二人の目が、点になった。




 マジカルテックカンパニー、ビル。その近くのバー。店内は暗いが、外はもっと暗く更けていた。


 当然MMMは来ず、今もどこかにいるのだろう。賑わったバーに、数名の社員が来ていた。大きすぎるひそひそ話で愚痴をぶちまけまくっている。


 彼らが一番奥のテーブルに固まっているのは、万が一にもそれを聞かれたらマズいという自覚があるのだろう。聞き耳を立てているが、MMMへの愚痴しか出てこない。


 俺はカウンターで、マスターを呼ぶ。


「あそこのテーブルは何を呑んでるんだ?」

「ウォルター・ワインの白です」

「一本買おう。あそこと気が合いそうだ」


 マスターは微笑んで、酒瓶の栓を抜いて渡してくれた。金を払ってテーブルへ。


「やぁ、どうも」


 面子は知らぬ顔がふたりと、受付嬢がひとりだった。


 顔を真っ赤にして酔っていた嬢が、瞬時に接待スマイルに変貌する。


「うおっ」

「こんばんは。ご用件を確認の上、番号札を……」


「いや客じゃないですよ? 見た顔なんでちょっと混ぜてもらおうかなって」

「……はれぇ? やらぁ……。癖ん……に、なっちゃってるれるしぃ……」


 受付嬢がへべれけ状態に戻り、机に突っ伏した。癖どころか紅潮した顔が一瞬白くなってたぞ。ビックリ人間かお前は。


 後のふたりは顔を合わせ、俺を入れるか迷っているようだった。


「大丈夫ですよ。愚痴、でしょ? あの……」


 顔を寄せ、声を潜めた。


「MMMの野郎の。お土産もあるんすよ」

「なら話がはやい!」


 ハゲに向かえられた。


「ようこそ君と酒! 特に酒! ガハハハっ」


 ヒゲにも向かえられた。


 テーブルの空気が一気に打ち解ける。席に座って早速みんなのグラスを満たした。


「いやぁすみませんね。盗み聞きする気はなかったんですけど、耳に入ったらいてもたってもいられなくなっちゃって」

「じゃああんたもあの野郎に恨みが?」


 ハゲが身を乗り出した。いきなり話に入れるらしい。ちょうどいい。様子見なしで一気にいくか。


「なにかされた訳じゃあないんですが、この間シャワー修理してもらった時に、ビスコーサさんって人に頼んだんです」

「あのエロおっぱいの?」


「そうそう! あれたまんないですよねぇ」

「いつも吸って欲しいって顔してるよな! 吸ってあげるよ授乳ちゃん。ギャハハッ」


 ヒゲが下衆に笑った。これが同僚とはビスコーサも気の毒に。


 話を合わせているが、間違ってもこんなところを見せられないな。


「で、修理に来る前に、ビスコーサさんの声が小さいって理由であの、なんですか? お仕置きカードみたいな」

「懲罰リスト?」


「それです。それを渡されたんです」

「うわぁ……。あのクソ野郎。だからビスコーサ今日来てなかったんだ」


 ハゲが額を押さえた。懲罰リストが欠勤の理由として成り立つほど恐れられているようだ。たしかにあんなものはロクでもない。


「あれ見た瞬間、俺マジでムカついてムカついて……」

「ん。あ、じゃあ使ってねえのか」


「はい。でも、うっかり見せちゃったら、壊れたみたいに泣き出しちゃって……」

「あいつばっかり狙われてたからな……。ホントMMMのゴミクソ野郎……」


 いい憎悪だ。俺の計画の一部になってもらうぞ。


「――本当に、このままでいいんでしょうか」

「……つっても、な」

「このままじゃダメだろって、分かってんだよオレたちだってよぉ」


 ヒゲが俺の腕にすがった。


「そう。分かってんだ。でもどうしようもないだろ。クビって言われるだけで終わりなんだから……」

「もし、解決できるって言ったら?」


 ふたりが、顔を合わせた。


「昨日、マクシミリアノって人が死んだじゃないですか。その人は俺の友だちの奥さんと不倫してたんですって。で、あの夜に密会の予定だったとかで」


「そうなのか。あ、じゃあ強盗じゃなくてフリだったってことかぁ? 謎の殺人とか言ってたのにドロドロじゃないか」

「ええ。で、前々から俺の友だちが、アイツを消すために掃除屋を雇ったって言ってて」


 ハゲが、声だけでなく身まで潜めた。


「殺し屋って、ことか?」

「そうです。金さえ払えば誰でもってことみたいなんで、俺の友だちをつてにすれば、雇えます」


「い、いや、でも……あんないっつもガードを引き連れてるのに、隙があるって思えないんだが……」

「大丈夫。殺し屋は一人じゃないんです。聞いた話によれば、暗殺者のグループらしいんですよ。あの見るからにガードが固そうなMMMでも、グループで狙われたらひとたまりもないはずです」


「聞いたことがあるぜ」


 ヒゲも身を屈めた。


「この町に殺し屋集団がいるってウワサだ。なんつったかな。“業者”みたいな呼ばれ方をしてるらしい」


 それを言うなら“組織”だが、噂になってしまっているのか。信用できる相手を選んでいないのか、あまりに膨大な数の依頼をこなしたのだろう。


「じゃあ、本当にできるのか」


 期待の目に頷きを返してやる。


「ただひとつ、問題があるんです。金ですよ」

「おいおいまさか、高いのか」


「金貨二十五枚らしいです」

「うわ……」


 この世界の金貨は一定の規格で作られているので、重さによるばらつきはほとんどない。それを加味して円に戻すと五百万弱といったところ。


 少なくとも、彼らが個人で払える額ではないはずだ。


「大丈夫です。俺の友だちは借金にして、ゆっくり払っているみたいなんで」

「結構融通きくな……」


「それに、大勢の人が彼を恨んでいるんでしょう? なら……数人を集めて払えばそれだけ安くすみます」

「なるほど……」


「待てよ」


 ヒゲが俺を睨んだ。


「もしかして……詐欺なんじゃないのぉ?」

「違います。だって、後払いでいいんですから」


「マジ? 融通の鬼だぁ……」

「その代わり、払えなかったら始末されるそうですが……」


「おひ~……。こえぇ」


 おちゃらけた言い方だが、顔は少し青くなっている。存在を信じた証拠だ。


「俺はグループに接触します。あなたたちには出資者を集めて欲しいんです」

「いいのか。なんでそんなに良くしてくれるんだ?」


「部外者だからって、あんな悪人がリーダーなのは許せません」

「……嘘だな」


 ハゲが俺に顔を寄せた。酒臭い息が顔にかかる。


「お前……ビスコーサ狙ってるだろ」

「な、なんのことだか……」


「うっへっへへ……やっぱりな。分かるよあんなエロおっぱいだし、顔も悪くない。でもヤるだけにしといた方がいいよぉ? 性格暗くってさぁほんと。根暗すぎ。声小さくてなに言ってんのかよく分からん」

「……そこがいいんです。彼女は確かにちょっと距離感がおかしかったりしますけど、おとなしくて優しい子ですよ」


 いかんな。なんだか腹が立ってきた。ここは一つ冷静になろう。深く深呼吸した。


 殺し屋は、情に流されないのだ。


「お、認めたな? おーじゃあセックスの時だけ呼んでくれよぉ。もう友だちだろ俺たち」

「オレもオレも! オレ尻がいい」

「じゃあおれ口~。おっぱいに近い方~」


 ぶっ殺すぞお前ら。ビスコーサをなんだと思ってる。


 ……な、流されるな、感情に。


 突っ伏し続けていた受付嬢が顔を上げる。


「んも~。サイれー……サイテーですふたりともぉ……。ビスちゃんかわいいんれすよぉ……?」

「わるいわるい……うっへっへ……」


「話聞いてたろぉ? お前はどうすんだ」

「……お金ぇ、出しますぅ……ぐすっ……」


 嬢は急に泣き出した。


「あいつ……あいつがぁ……マーちゃん殺したん……のにぃ。……生きてるとか……おかしいじゃないれすかぁ……ひっぐ……」


 マーちゃんとは、MMMに殺されたというマーブルのことだろう。社内の人間もMMMを犯人だと確信しているのだな。


 受付嬢の涙のお陰か、下衆ふたりもお互いを見て頷いた。


「だな。おれたちもアイツを許しちゃおけない。やってやろうぜ」

「っしゃあ。じゃあオレも。しばらく酒とはおさらばか……」

「ありがとうございます。もちろん俺も出すので安心してください」


 席を立つ。


「俺は早速、いつでもグループに会えるように取り計らいます。では、くれぐれもバレないようにお願いしますね」

「もちろん――」


 三人がグラスを持った。


「――おれたちのリベンジに」

「オレたちのリベンジに!」

「わたしたちのぉ……ぃべんじにぃ……!」


 でかい声出すなバカ。隠す気あるのか。


 俺も控えめに「ビスコーサさんのリベンジに」とグラスを持って酒をあおり、外へ出た。


 さて、ああは言ったものの、この話はバレる。


 強烈な罰というMMMの方針は言わば洗脳だ。もちろんその方法はかなり無茶で、ロクに成功はしていない。だが、例え少数でも洗脳される者は出てしまうのだ。特にMMMに近い者。つまり彼の強い警戒心から過剰に罰を受けている者だ。


 MMMの味方でありながら、第三者の目からはMMMの被害者であるという風にしか映らない。すると出資者はそいつへ、そうと知らずに必ず声をかける。そして密告される。


 それで、この計画はスタートだ。

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