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貴いお方が裸同然とはどういう了見だ  作者: 能村龍之介
殺し屋、なんか転移するの章
14/118

9  奴隷商

「はふぅ……。ふふふ。もうよいぞ。これくらいで勘弁してやろう……」 


 アリアンナが妖美に笑う。まるで俺を搾りつくしたような物言いだが、一時間ぶっ続けで乳揉みさせられただけだった。


 とはいえあの重量のある乳は持つだけで一仕事だ。それを持ち上げたままで指を動かすのは拷問のようだった。


 実際、もう上手く指が動かない。過労に寝不足に物を握れない指。今日は殺し屋できないかもしれん。


 彼女が挿入恐怖症なのが唯一の救いだった。


「上手いじゃないか。その指でソフィア嬢を悦ばせているのだろう?」

「いえ……まだ彼女とは」

「ほう。勿体ない。いや、むしろ幸運か。この指使いをもうじき味わえるのだからな」


 中年のようなことを言っている。これに中学生並みの性欲があるのは、凶悪と言わざるを得ない。


 彼女が挿入恐怖症を克服したら、本当に搾り尽くされるかもしれん。もう二度とアリアンナとベッドを共にしてたまるか。


「貴様も、気持ちよくなりたいだろう。この胸がそんなに好きなら、胸で……こう……なんだ。分からんが、尻のときのように気持ちよくなっていいんだぞ? ふふん。段階を刻まねばな。段階を」


 彼女の言う段階の刻み方が全く分からん。中年の言動に中学生の性欲に童貞の感性か。もはや悪魔的融合だな。


 これが俺の居た時代なら、アダルトビデオで予習するタイプだろお前。


「いえ。高貴な貴方を汚すわけには」

「構わんぞ。我は……汚れることを恐れていた訳ではない。だからその……だ、段階を踏めなかっただけだ」


「そもそも私にはソフィアがおります」

「む……そうか。ふふ、一途なやつめ」


 ほっとしたようだった。挿入というより、男根恐怖症なのではないだろうか……。


「では……入団の義のことだが」


 少し申し訳なさそうな顔をした。


「実は、準備があってな。日が沈むまでできんのだ」

「準備、ですか」


「うむ。冠を被って、騎士の剣と共に誓いの言葉を唱えるというものだのだが、冠を取りに行くのに時間がかかるのだ。ここの裏手に洞窟があって、その奥に安置せねばならん決まりがあってな」

「なるほど」


「しかも、日が沈んでからその洞窟を出なくてはならない」

「それも儀式で?」


「いや。足元の悪い洞窟だというのに、どいつもこいつも横着するものだから怪我人が続出してな。無理やりゆっくり行かせるようにした」


 儀式という機能性とはかけ離れた行事に、ずいぶんと機能的な決まりごとをするな。


 あるいは、世間一般の儀式に伝わる謎の決まりごともそうして作られたのかもしれない。


「すぐに入団したい気持ちも分かるが、日が沈む頃までどうか暇を潰していてほしいのだ」

「分かりました。……できればで構わないのですが、家まで送って頂けますか?」


 団長は得意な顔になり、両手を腰に当てた。


「無論! 迎えもしようではないか」

「寛大なお心遣いに感謝いたします」


「では……。まぁ、まずはしばらく待て」

「は……?」


 アリアンナが恥ずかしげに座ったまま両手を太ももで挟んだ。両腕に挟まれ、胸がむにゅりと潰れた。


「こ……こんな状態では出歩けぬであろう……」


 よく見れば胸入れ袋の先端が突出している。こんな状態と言いながらどうしてそこを真っ先に隠さないんだ。


 否。


 まずは……服を着ろ。


「そうですね。ところでアリアンナ様。どうしてそのようなお召し物を?」

「……恥ずかしい話だ。聞いてくれるか」

「是非とも」


 彼女は懐かしむ顔で、語り始めた。


「うむ。初めは全身を甲冑で包んでおったのだ。しかしあるとき、訓練中に胴に矢を受けてしまってな。修理に出すこととなった。修理が終わらん内に、山賊どもが大挙して村を襲っているという通報を受けてな。我の鎧は特別製であるから、他の鎧の胴とは合わん。そこで、この格好で出たのだ」


 部下たちの鎧を着れば良いのではとも思ったが、団長らしい格好でないと我慢できなかったのだろう。とはいえ、そこでほぼ裸を選ぶ理由は分からないが。


「そして勝利した。この格好が存外に動きやすくてな。敵の刃を全ていなし、矢は見てから避けた。傷ひとつ負わずこの戦いを凌いでみれば、我の名がこの国に轟くこととなったのだ。そう。この戦いが原因でな……」

「…………つまり、引くに引けなくなったということですか?」


 下着と手足アーマーだけで山賊の集団を壊滅させれば、確かにある意味伝説になるだろう。そして、騎士団の世間へのポーズを気にする体質が噛み合ってしまったということか。


「……うむ。つまり、そうなのだ。初めこそ部下からの羨望の眼差しに誇り高かったものだが、なんというかな……その。もしかしたら、そういう目ではなかったかもしれん」


 アリアンナは真っ直ぐ俺の目を見た。


「…………素直に答えてくれ。我の格好は、その……エロいか」


 エロいという単語が飛び出すとは思わなかったが、まぁ、頭童貞だしな、この騎士。


「ええ。ものすごくエロいです」

「や……やはりかぁ……」


 胸と股間を手で隠しながら、肩を縮こませて脚をぴったりと閉じた。なにを今さら。


 そうだ。ここで追い詰めて服を着せてやろう。アリアンナのためにもなる。


「正直に申し上げますと、外を出歩いていい格好ではございません」

「うっ……」


「初めてお会いしたときも、騎士団長としての威光より先に、その破廉恥なお身体を見てしまいました」

「うぅっ……」


「胴体の鎧を着るもよろしいです。しかし、動きやすさを重視するならば、せめて服を着た方がよろしいかと。今のあなたはまさに、下着姿です」

「……あ、アラン。我はその……」


「先にもう一点だけ。その、中身の形がハッキリと見てしまう下着はあまりにエロいです。もっとこう……生地の厚いものにした方が健全です」

「アラン……」


「はい」


 アリアンナは、顔を真っ赤に染めて……。


 ……なんで息が荒いんだ……?


「我はそんな格好で公の場を歩いていたのだな……。数えられないほどの大勢に、我のそういう格好を……」

「アリアンナ様?」


「道行く人々に、我の身体の隅々までをもじっくりと。股間の形まで観察されていたのか……!」

「アリアンナ様。落ち着いてください」


「我を見つめていた者たちも、夜な夜な我の身体を思い出して……。部下たちも皆……」

「まずはちょっと深呼吸いたしませんか?」


「く……屈辱だというのに……どうしてこんなにゾクゾクしてしまうのだ……!」


 一線を越えた男子中学生かお前は。どんな発想をしておるのだ。


 こうも裏目裏目に出られると、妙な笑いが出そうになってしまう。


「あ、アラン。頼む。このことは内密にしておいてくれ」

「どのことですか?」


「そんな破廉恥なことを言わされるとは……なんたる屈辱……!」


 言葉とは裏腹に、アリアンナの顔は笑っている。憎悪まみれの依頼人へ達成報告をしたときと同じ顔だった。曲がった方向に感情が高ぶるとこういう表情になるのだろうか。


「……我が……こんな……その、ど…………だということを……だ……っ」

「すみません、聞き取れませんでした」


「くぅっ……! だから……我がドヘンタイだということをだぁ……!」

「あ、はい。もちろん内密です」


 適当に返事していてもちゃんと答えてくれるあたり、一周回って楽かもしれん。


 しばらく待ち、やっと解放された。帰りの馬もアリアンナが直々に出してくれたので、馬に揺られて村まで戻ってきた。


 馬から降りると、ソフィアがまるで妻のように、ぱたぱたと出てきて出迎えた。


「おかえりなさーい」

「戻りました。ではアリアンナ様。日が沈む頃に」

「うむっ! ハイヨーッ!」


 痴女は馬を疾走させて去る。さて、次は報酬の頭金作りだ。色々と忙しい。


「帰ってきたばかりですけど、ベルちゃんを街に連れていってもいいでしょうか」

「お。保護者さん探しですね? お手伝いしますっ」


 ソフィアが得意な顔で微笑む。お願いしますと微笑み返すと、彼女はベルへ支度をするよう呼び掛けた。


 ベルが奥の部屋に行ったとき、彼女の手を掴んで引き寄せた。


「はぇ……?」


 驚いた顔が近くなる。


「ソフィアさん。少しお話をしてもいいですか」


 小さな声で囁きかけると、彼女もささやき声になった。


「い、いいですよ? えへへ。なんだか……こんなに近いとちょっとヘンな感じですけど」

「昨日、ベルちゃんから殺意を感じたと言ったじゃないですか。あれは、山賊たちと同じ雰囲気があったからなんです」


 途端に、彼女の顔が真剣になる。


「山賊たちと……。じゃあ、あの子は本当に誰かを……?」

「相当に憎んでいるようです。ただ、その相手が保護者なのか奴隷商人なのかはハッキリと分かりません」

「ほ、保護者さんに? じゃあ、探すのは危ないんじゃ……」


 ソフィアは不安そうに眉の内側を上げた。そんな彼女を抱き寄せた。説得するときにスキンシップで体温を感じさせるというのは、意外にも効果がある。むろん、それを嫌がらない相手であるという前提が必要だが。


「そこで、相談があるんです。二手に別れませんか。僕がベルちゃんを連れていればあの子を守れますし、ソフィアさんがあの子を連れていなければ知っていても襲われることはない」


 か、どうかは分からない。だが、納得さえさせればいい。


「なな、なるほど……そ、そうしましょうっ」


「ありがとうございます。僕は奴隷商を当たってみますので、ソフィアさんは保護者さんを探してみてください。……最後にひとつ。誰を殺したいかは聞かない方がいいかもしれません」


 ベルが部屋を出てきた。


「では行きましょう。僕が抱っこしておきますね。おいで、ベルちゃん」

「……ん」


 抱き上げ、ソフィアが出した馬に乗せてやり、その後ろへ乗った。ソフィア、ベル、俺の順で並んで揺られる。


「えっと。じゃあベルちゃん、色々と聞かせてほしいな!」


 ソフィアは馬を走らせながら言う。ベルが見上げてきたので、頷いてやった。


 十三分の質問時間ののち、駐馬場に馬を止めておいて、三人で門の前に立つ。


「ソフィアさん、最後にひとつ。……保護者さんを見つけたら“友人が見つけたかもしれないから、伝えておく”とだけ伝えておくといいと思います。まだ様子見をしましょう」

「ほうほう。分かりましたっ」


「では、終わったら昨日のカフェに集合でお願いします」

「はーい」


 ソフィアは足早に門を潜っていった。たぶん、競争のつもりなんだろう。


「さて。先に服屋へ行こう。顔を隠すんだ」

「……わかった」


 ベルと手を繋いで、昨日の服屋へ行く。店主が俺に気付いて、微笑んだ。


「いらっしゃい。今日はどんなお召し物を?」

「この子に似合う、フードつきの服はないか」

「ございますとも。少々お待ちを」


 店主は大人向けのコーナーから、一枚のケープを持ってきた。少女に跪き、紳士的に胸へ手を当てた。


「それではお嬢さま。少々、失礼してもよろしいですかな」

「……ん」


 店主はベルにケープを羽織らせてやり、フードを被せた。


「こちらのケープはこのように、端と端を首もとで結んで大きさを調節します。成長に合わせ、大人になっても使えます」


 両肩の下に垂れたケープの端とって結んでやると、ぴったりの大きさになった。フードが大きく顔を確認しづらいが、都合がいい。


「いいですね。買います」

「ありがとうございます。価格は――」


 店主に金を払った。金は今朝、ソフィアの財布に返したのだが、それでも多めに余りが出た。ケープくらいなら安いものだ。


 以前の世界なら、下手に強盗殺人で現金を増やそうものなら足が着いたというのに。この世界は楽でいい。


「それでは、どうも」

「また、いらしてください」


 店を出た。赤ずきんになったベルは、嬉しそうにケープの裾を弄っている。あまり、服を買ってもらったことがないのだろうか。


「ベル。“おねえちゃん”はどこにいる?」

「んと。………………あ。あれのところ。じゅーじか……」


 少女が指差したのは、屋根の隙間にかろうじて見える十字架だった。そこへ行ってみると、小さな教会があった。仰々しいものなら他にあるので、そこまで通えない者のためにあるのだろう。


 ベルのたどたどしい道案内に従って、二回くらい道を間違え、たどり着いた。石造りの家が並ぶうちの一つだった。


「ここだな」


 ベルはきょろきょろとして、玄関を出た風景が間違っていないか確認してから頷いた。


「分かった」


 戸を叩く。少し待たされ、囁き声が扉の隙間から漏れ出てきた。


「合言葉は?」

「知りません。代わりに、イザベル・ロドリゲスを連れてきました」


 扉が開く。出てきたのは、また服装に癖のある女だった。


 ぼろ布に身を包み、一見は厚着をしている。ただやはり胸の布がやはり薄く緩いようで、身体の外側に広がる乳の形がハッキリと分かるし、両胸の間の布地に大きなシワが出来ていた。


 乳を固定しろ、乳を。足元も太もも周りだけ肌を出し、妙に涼しそうだ。


 ただ、アリアンナを見たあとだとそこまでのインパクトはない。これくらいは普通な気がしてきた。


 彼女はニヤニヤとして、オレを半目で見ていた。他意を感じないので、これが彼女の普段の表情なのだろう。


 彼女はしゃがんで、ベルに目線を合わせた。


「わぁ、赤ずきんちゃんだね。とっても可愛い。それどうしたの?」

「……アランさんに。えっと、この人……」


「買ってもらったんだ」

「ん……」


 立ち上がり、俺の顔をまじまじと見た。何かを見定めているのだろうか。


「……賞金が出ている子をわざわざ、ウチに連れ戻して来てくれたんだねぇ?」

「そういうつもりではありませんよ」


 ベルを見た。少女は意を決したように、両手をぎゅっと握った。


「……おねえちゃん。お金……銅貨いちまい、貸してくださいっ」

「…………ふぅん?」


 彼女の目が一瞬鋭くなり、俺へ向いた。それからまたへなへなの笑顔になった。


「ま。まずは中へ入って入って」


 促されるまま入る。


「一応言っておきますが、僕は丸腰ですよ」


 振り返る。さっと何かを隠したように見えた。やはり、ナイフの一本でも持っていたのだろう。


「そう言われても、困るねぇ」

「一応ですよ。一応」


 部屋の奥にそれなりに大きなテーブルがある。その席についた。ベルと、奴隷商も続けて座った。


「さて。自己紹介をするところだけど、わたしは名前を明かさない主義でね。奴隷商とでも呼んでおけばいい」

「僕はアランです」


「ふんふん。ではアランくん。説明してもらえるかな?」

「最初は、ベルちゃんを買おうと思ったんです。でも、自分の代金を自分で払うと聞かなくってですね」


「それでそれで?」

「そこで僕が立て替えることにしたんです。そういうことでベルちゃんは、僕に借金をすることにしました。銅貨一枚は契約のための頭金です」


「…………妙ちくりんな話だねぇ」


 商人は困った顔をしていた。


「借金の総額は?」

「生活代なども込みで金貨五枚」


「ふむふむ……。口契約でいいように思えるけれど?」

「口契約は、嫌いなものでね。昔友人との契約で痛い目を見たことがあるんです」


「ま。そういう信条なら否定はしない。それで……来たということは買う代金を持ってきたのだろうね」

「いえ。今から作ります」


 彼女は黙った。頬杖をついて、頬を指で、トン、トン、トンと叩く。やがてため息を漏らした。


「正直、話を信用するか決めかねてるよ。たったの銅貨一枚でこんなに悩んだことはない」

「僕はただ、この子の一人立ちに協力したいだけで――」


 ダンッ。と、机にナイフが突き立てられた。


「……六本。このナイフがズタズタに引き裂いたペニスの本数さ。わたしが良いと言うまで、黙るんだ。いいね」

「…………」


「素直だ。キミみたいに素直な子は好きだよ。……さて、ベル」


 奴隷商は優しげな顔と声になった。


「正直に答えてごらん。この男に、手出しされそうにならなかったかい。裸にさせられたり、裸を見せられたりしなかったかい。気持ち悪く触られなかったかい」

「……アランさんは、“ロリコンやろー”じゃない。スゴくね、いい人なの」


 分かったよ。そう答えて奴隷商は座り直し、テーブルのナイフを引き抜いた。


「いや、悪かったね。話は無茶苦茶だが、信用はしてあげよう。もう喋っていいよ」

「……そうした客に売らない主義があるようですね」


 そう言うと、彼女は自嘲するように笑った。


「ロリコンやらショタコンというのは幼くて可愛い奴隷をご所望さ。妊娠しようが構わず犯すし、産んだ子どももゴミみたいに捨てる。そこまでやっても、育てばポイだ。そういう下衆野郎が反吐が出るほど嫌いでね。商売人失格だろうが、そこは譲れない」

「ペットのようなものですね」


 そう言うと、奴隷商の目が冷たく、鋭くなった。


「ペットでやる奴も嫌いだよ。で、話を戻すけど、一人立ちに協力しようというならわたしも大いに助けになろう」


 そう言って、銅貨を一枚取り出してベルへ手渡す。

 ベルはすかさず、俺へ差し出した。それを受け取り、微笑んでやる。


「契約成立だ」

「……ひとつだけ。忠告しておくよ」


 立ち上がると同時に、奴隷商が俺を見上げた。


「奴隷の取引先は多い。中には暗殺者組織もある」

「組織……。この辺りにそんなものが?」

「そうそう。わたしとの信頼は侮辱しない方が身のためだよ、アランくん」


 しつこいほどに脅してくるな。臆病とも取れるが、奴隷商のような職ならばそれぐらいが丁度いいのかもしれない。脅しが必要な客ばかりだったのだろう。


「分かりました。ひとつ聞きたいのですが、この辺りに暗殺者組織はいくつもあるのですか?」

「そうポンポンあるわけでもない。ま。たったひとつだけだとしても、あそこは相当に手強いがね」


「そうですか。では、ボウイ君によろしく言っておいてください。行こう、ベルちゃん」


 完全に面食らい、口をぽっかり開けていた顔を尻目に家を出た。


「さっきも言ったが、契約は成立だ。確実に仕事は終わらせるから、安心して待っているんだ」

「ん……。アランさん」


「どうした」

「ロリコンやろーじゃ、ないよね……?」


 立ち止まる。跪いて、ベルの両肩を持った。


「俺は、ロリコンではない。ショタコンでもない。そもそも、犯したい者などいない」


 そう言いながら、ボウイを思い出していた。


 あいつが俺に発情していると、俺が男児性愛者ショタコンであるという勘違いをされ、存在しない既成事実が作られてしまうかもしれない。


 ベル。お前が発情しなくて本当に助かっているよ。


「……ん」

「カフェに行こう。もうソフィアが待っているかもしれないな」


 手を引いて、路地を戻る。ベルの足取りは軽かった。

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