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遅くなってすみません。

逆に笑えない人なんているのか?

少なくとも私は笑える人だ。


「何を言ってるんですか?笑えますよ。ほら」


そう言って藤堂にニカッと笑って見せた。

面白いことは無いから作り笑いだしはっきり言って疲れた。

今の私にとっては赤の他人であるこの人に笑って見せるのもちょっと抵抗があった。

だが、藤堂は苦虫を潰したような顔をしたまんまだった。


「そういうことを訊いている訳ではない。心の底から笑えるのかどうかだ。………仲間に裏切られたとき大抵の奴は笑えなくなるんだ」


最後はとても重い声音だった。


「心の底………?」

「そうだ。そこで笑うと清々しくなる。どうだ?」


藤堂は四角い板をポケットから取り出した。

………板なんかで手品でもするのかな?

藤堂が表面を撫でると、その板が光だした。

突然の事だったから少し引いてしまった。

藤堂は魔法使いだった。

そう結論づけ、新たな発見とした。


板の中ではちょび髭が何かを必死にわめいている。

何が面白いのか全く分からない。

チラッと藤堂の方を見ると藤堂も私を凝視していた。


「な、何か?」

「いや、何でもない」

「すみません。先生をお連れしました」


その時、女性が戻ってきた。

一緒に入ってきたのは初老の柔和そうなおじいちゃんだった。

女性が部屋のすみから椅子を持ってきて、おじいちゃんがそこに座った。


「やあどうも。私は加藤だ。よろしく。君は誰だね?正直に答えてくれ」

「高橋右というそうです」


とてつもないマシンガントークだった。

そして私は始めから嘘をついた。

この私は高橋右ではない、はず。

だから名前が無いと言ってもよかった。

でもそうしなかった。


「ふむ。自分の名前が分からないか。じゃあこれを使ってみてくれ」


おじいちゃんが取り出したのは、木とも鉄ともとれないような素材でできた棒だった。

それを受け取った。

そこで気がついたけど私の左手が変な形をしている。

指の先が尖っていて肉くらいなら突き刺せそう。

まあ、問題なく動くし大丈夫か。

受け取った物は鉛筆みたいな形をしている。

が、芯がないから書けない。

少し考えて閃いた。

これはダーツの矢だ。

ダーツは昔やっていて得意だったはず。

そう考えた時にはもう体が勝手に構えて、投げていた。

山なりに飛んだ矢は真っ直ぐに壁に刺さった。


「「「………………」」」

「これで合ってますか?」

「……ペンが壁に刺さった……」


違ったらしい。

これ以外には特に何か使い道は無さそうだけど。


「わ、分かった。これで質問は終わりだ。藤堂さん、ちょっとこちらに」


藤堂は連れていかれた。



*****


「藤堂さん。あの子は重度の記憶障害を起こしています。記憶を戻させるか補助を付けるかしなければこの世で生きていくことは難しいでしょう」

「そんなにですか。分かりました」

「それと、感情にも少し欠けている部分があると思われます。これは私共で少しは改善できると思われますが」

「お願いします。あの年でそれは酷いと思いますから」

「分かりました」

感情が無いのは始めの方だけで、途中から少し戻します。そこから本格的に狂うと思います。

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