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早速のダンジョン回ですが、そんなに戦闘シーンはないです。
私は高橋右だ。
どこにでもいそうな気がするだけの女子高校生。
異様な所を挙げるならば左手が小さい頃の不慮の事故で火傷を負って、焼けただれて、怪物の手みたいになっていることくらいかな。
それだけのことなんだけど、やっぱりね、女の子だから気にしちゃうんだよ。
毎日、手袋をして過ごしてます。
人前で外すことは絶対にない。
それより、おかしいのはこの世界だそうだ。
何でも、数十年前から急にダンジョンなるものが世界中に出現したんだ。
そこから、ゴブリンとかコボルト等々おとぎ話で出てきたモンスターが沢山出てきたんだって。
それは自衛隊が殲滅したそうなんだけど。
それから私達人間にも変化があって、それぞれの『職業』に適したスキルが手に入るようになったんだって。
まあ、『職業』は人によって変わるし、スキルも手に入れられる人も極少数なんだとか。
その中で特にダンジョン攻略に向いた職業やスキルを持つ子供が小中高一貫校で鍛えられて、ダンジョン攻略に動員されるんだと。
それが私が通っている日本第一ダンジョン攻略訓練校の入学式で言われたこと。
ちなみに学校名はクッソ長いから皆、第一功って呼んでいる。
生まれてすぐに検査を受けさせられたみたいで、小学生になる前に黒服が来て私を入学させたんだ。
私の『職業』は空白だった。
いや、空白って言う職業じゃないよ。空欄だっただけ。
それに比べてスキルは『狂』と『無』でこれまたよくわからない。
一文字のスキルって何。
けど、職業は無くて、スキルを持つというのは異例なんだって。
それは置いておいて。
今日は校内にある、ダンジョンに初めて入る、実習だ。
私のチームはそんなに知らない無口な男子が二人に女子が私も含めて二人。
うん。連携ができなさそう。
一チームずつ十分おきに入っていく。
私達の番だ。
男女交互に四角形を作り警戒しながら進む。
今回は3階層まで行けたらクリアだったっけ。
ぱっぱと進み、あっという間に2階層に降りる階段が見えた。
それまで、少しスライムが出てきたけども全員が難なく撃退。
少し気の緩みも見え始めていた。
階段にはモンスターは出ないのでさっさと降りる。
待ち伏せを受ける可能性があるからしっかり見回す。
クリア、誰もいない。
よし、進もう。
そう思った時、奥から悲鳴とモンスターの唸り声が聞こえた。
そして、近づいてくるドスドスという足音。
全員が奥に注意を向け、武器を構え、警戒する。
先に現れたのは先に進んでいたチームだった。
逃げている。
次に現れたのは、鬼人だった。
教科書でしか見たことがないおぞましい外見に体がすくむ。
おかしい。鬼人はこんな浅い階層に、いや、このダンジョンに出ない。
そう聞いていた。
だが、目の前にいる。先のチームに突進し、一人ずつ丁寧に蹴り、殴り、踏み潰し、捻り切った。
駄々を捏ねている幼児みたいだった。
血が飛び散り、肉片が落ちる。
飽きたのかこちらに振り向き、こちらを見つけ、歩き始めた。
100mをきった時、鬼人は走り始め、四角形は崩れた。
前方の男子が階段の方を向くと、
「あああああぁぁ!!」
と、叫びながら女の子の肩を掴み、前に行こうと引き倒す。
もう片方の男子は錯乱し、奇声をあげながら鬼人に向かっていき、蹴り殺される。
私はお人好しだったので引き倒された女の子に近づき、手を差し出して起き上がらせる。
が、女の子は差し出した手を掴み、強く引いた。
バランスを崩し前に倒れる。
その反動で女の子は立ち上がり、私を見ながら階段に向けて走り出した。
その顔は醜く、ひきつり、笑っていた。
私は分かった。
ああ、そうなんだ、と。
何で笑っていたのだろう、と考える。
簡単だった。直ぐに分かった。
彼女は嬉しかったのだ。
私を引き倒すことで私が逃げ遅れ、彼女は助かることが。
私はあの顔を知っている。
ずっと前に見たことがあった。
前世に何があったか全て思い出した。
だから、私は消えたい。
全てを前世の私の人格に託して。
起き上がろうとして、止めた。
重力に身を任せ、床に仰向けに寝転がった。
最後に目を瞑った。
起きた。
前回の装置ですが、一つ目は誰でも知ってる電気椅子。二つ目はニュルンベルグの鉄の処女を。三つ目はファラリスの雄牛をモデルにしているつもりです。