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始まりました、新シリーズ。頑張って面白く書きますので応援よろしくお願いします。


不定期投稿


by ビーダマチクワ

ある少女がいた。名前はあるはずがない。いや、あったかもしれない。けれどもうない。

なぜなら彼女は奴隷だったから。

可哀想に。泣き叫びながら親に助けを求めた彼女は金を貰った親に嘲笑を浴びせられた。


奴隷商は彼女に首輪をはめ、鎖で拘束し檻へ入れた。

檻の中には彼女以外にも数名の子供がいた。

全員少女よりは年上で体も大きい。

それでもこの檻の中にいる全員は、少女も含めて、数時間後には同じ顔をしているだろう。

自分が商品として売られる絶望に染まった顔に。


さて、その数時間後だ。

彼女らは親に売られる時よりも立派な衣装を着ていた。

そして顔は予想通りだ。

ステージの上に立たされて、ぶくぶくと太った貴族に、少し痩せこけた老紳士に、ニヤニヤと薄気味悪い笑みを向けられて、違う檻に入った名も顔も知らない子供が次々と競り落とされて買われていくのだ。

年頃の子供になると、親に売られ、商品となり、知らない誰かに買われ、人権を失うことに気が付いた子もいた。

そしてさらに深い絶望へと沈んでいく。


そんな中、まだ親に反抗したことのない、思春期という言葉も知らないような、5歳の少女は落ち込んでいた。

親と離ればなれになってしまったことに。

一人だけ考えることが違っていた。

彼女だけはまだ絶望に染まっていなかった。

少女はまだ、狂わない。


少女は買われた。

同じ檻にいた奴隷たちと同じ人に。

なぜかわからないが彼は優しかった。

親に売られた自分達に同情し優しく頭を撫でてくれた。

しかし、そんな彼の顔は苦痛に歪んでいた。

少女は訊いた。

「なんで苦しそうなの?」

と。

彼は答えた。

「君達を見ていると心が痛いからだよ」

少女は意味がわからなかったが周りの子供が安堵したのを感じ、安心した。

彼は自分の屋敷に少女らを連れていくと食事を与えてくれた。

空腹によくしみた。

親は朝ごはんをくれなかったのだ。当たり前だが。

さらに、二人で一部屋の部屋を貸してくれた。

少女は驚いた。

その部屋は親と住んでいた家と同じくらいだったのだ。

少女は感謝した。失った物をくれた彼に。


相部屋の相棒は自分より少し大きい位の少女だった。

5歳の彼女は訊いた。

「貴方のお名前は?」

「親に売られたときに捨てた。もうない」

少女はぶっきらぼうに答えた。

「そう。私は***っていうの」

彼女は教えてあげた。

少女はふっと笑った。


そこから数年が経った。

少女はすくすくと育ち、勉強も読み書きくらいなら出来るようになった。


そしてある時、失った物をくれた彼は全員を呼んだ。

全員が数年住んで存在を知らなかった地下に。

彼は面白いことをするからと、全員を檻に入れた。

全員が彼を信用していた。

だから迷わず何が起こるのだろうとワクワクしながら。

少女は入り口に近い檻を選び、入った。

同室の相棒も一緒に。


彼は奥に行き、一番近い檻に入った子達に、出てきてここに座って、と言った。

その椅子は、電気が流れる椅子だった。

知っていればどうにかなったかもしれなかった。

けれども少女達全員がその類いの知識を持ち合わせていなかった。

その子達は迷わず、椅子取りゲームをするかのように、競いあって、勢いよく座った。

彼はその子達を椅子に固定した。

彼はその中の一つのスイッチを入れた。

その子はちょっとバチッとしてるなと思った。

次の瞬間、とてつもない衝撃がその子の中をつき抜け、中身を焼いていった。

その子は悲鳴をちょっとだけ、

「ギャアッ!……」

発した。

そして、動かなくなった。

もう片方の子が話しかけても返して来なかった。

もう、死んでいたから。

彼はもう片方の椅子のスイッチも入れた。

同じように悲鳴をあげ死んだ。

彼は言った。

「あれれ?眠くなっちゃった?夜更かしはダメだよって言ったのに」

彼は次の子達を呼んだ。

その子達もまた嬉々として行った。

今度は立ててある鉄の棺桶のようで女性の顔がついているものだった。

彼が扉を開けると中は鋭いトゲだらけだった。

流石にその子達も危険を察知したのか一歩後図去る。

「いい子なら大丈夫だよ」

と、彼は言い、一人を中に入れた。

ゆっくりと扉を閉じる。

しかし彼が言ったようにはけしてなることはない。

「い、痛いよ。止めて!待って!閉めないで!待っ……」

完全に閉じられた。

下の隙間から赤い液体が流れ出てきた。

全員が分かった。

あれは怪我をしたときに出るあれだ、と。

全員が悟った。

あの子は死んだと。

彼は扉を開けるとその子を引っ張り出した。

その子は見る影もなく全身に穴が開き、血を垂らしていた。

彼はそれを興味がなくなったのかのようにポイっと捨てた。

次の子を押し込め、扉を閉じる。

「待って!止めて!助け……」

同じように声が途切れ、血が滴る。

「みんな悪い子だったんだね」

と、彼は言った。

全員、子供の思考で多種多様に彼のことをこう思った。

あれは誰?

その後もどんどんと処刑ショーは進み、刻々と少女の精神は蝕まれ、最後に少女と相棒の番となった。


器具は、腹の下に赤々と火を出す炭を置いた、鉄の牛だった。

相棒が先だった。

しかし、

「何であたしが先なの!?この子にしてよ!」

相棒は自らの死を先延ばしにすることを願った。

そして少女の心は、音を発てずに壊れて消えた。

それが受理されると相棒は醜く笑った。

追い討ちをかけられた少女の心は、もう。


どこにもなかった。


牛の腹に入れられて焼かれる間、少女は何も考えていなかった。

暗闇に消えていった。


少しのように思えた。

永遠のように感じた。

一瞬だと悟った。


目を


覚ます。

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