アスファルト
綺麗に舗装された、アスファルト。
小石がひとつ、大きなトラックから転がり落ちた。
小石はアスファルトの上から動かない。
小石を誰も、気にとめない。
小石は車に踏まれた。
小石はアスファルトの上から動かない。
小石を誰も、気にとめない。
小石はトラックに踏まれた。
小石はアスファルトの上から動かない。
小石は大きなトラックに踏まれた。
小石が二つに割れた。
小石は大きなトラックに踏まれた。
小石は細かく割れていく。
小石はいつしか細かな粒になった。
車が何台も通り過ぎていく。
トラックが何台も通り過ぎていく。
アスファルトに凹みができた。
アスファルトに小石が溜まるようになった。
アスファルトに穴が開いた。
アスファルトの穴がどんどん広がっていく。
アスファルトの穴がどんどん広がっていく。
アスファルトの穴がどんどん広がっていく。
はじめはただの小石だったはずなのに。
小さな傷がどんどんえぐれて大きな穴になっていく。
やがて穴は誰かの歩みを阻み始める。
穴を塞ごうと砂をつめても広がっていく穴。
穴を塞ぐ手立てがないまま広がっていく穴。
穴はやがて部分的にアスファルトを盛られた。
不恰好なアスファルト。
不恰好なその上を何度も車が通り過ぎていく。
不恰好なその上を何度もトラックが通り過ぎていく。
不恰好なその上を何度も大きなトラックが通り過ぎていく。
盛られたアスファルトの端から崩れていく。
崩れたアスファルトのかけらが凹みを作る。
アスファルトにアスファルトのかけらが溜まるようになった。
アスファルトに穴が開いた。
アスファルトの穴がどんどん広がっていく。
アスファルトの穴がどんどん広がっていく。
アスファルトの穴がどんどん広がっていく。
はじめはただのアスファルトのかけらだったはずなのに。
小さな傷がどんどんえぐれて大きな穴になっていく。
どんどんアスファルトは穴だらけになっていき。
ぼこぼこのみすぼらしい道と成り果てた。
みすぼらしい道の穴だらけのアスファルトがはがされた。
茶色い土が、さらされる。
ここに土はあったのだと思い知らされる。
土のない道を行く私に、土の存在を知らしめたこの道。
土を見たその日に、綺麗なアスファルトが広がった。
土のない道は当たり前に私の前に広がっている。
土のない道を、私は歩く。
綺麗に舗装された、アスファルト。
小石はいつ、転がり落ちるのだろうか。
小石はいつ、アスファルトに穴を開けるのだろうか。
次に穴が開く頃には、いったい何が変わっているだろうか。
次に穴が開く頃には、いったい何を目指しているだろうか。
次に穴が開く頃には、いったい何を成しているだろうか。
私は、前に穴が開いたときに、何をしていたのか思い出せないことに、唖然と、した。