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序章

初めてのゾンビものです。続けて行きたいと思います。

5月12日(木)

S県八条市

 大日本製薬会社

地下2階研究室



「ふわぁぁ〜」

無精髭を生やした中年の男性が周りを気にせず大きめの欠伸をした。

それを見ていた眼鏡を掛けコンピューターに向き合っていた若い男性が苦笑した。

「大きな欠伸ですね」

作業を中断し椅子にもたれたまま天井を見ている先程の男性に話しかけた。

「3日だぜ。解るか?こんなモグラ生活を続けて。

外では新作映画やらピクニックで浮かれたカップルや幸せいっぱいのファミリーーがいるってのに」

この研究所は地下にある分だけ危険な細菌や病原体が存在する。

そのため、ここでは一般企業と違い特殊な実験や研究を行っている。

だからここに勤める研究員とスタッフは常に缶詰状態である。

一応外に出ることは許可されているが、厳しい身体検査と持ち物検査、そして新しいIDの発行と面倒臭いため、滅多な事が無い限りここの住人は外には出ない。

その事で不満を言う社員がいても変えようとはしない。ここに勤めている者ならば誰もが認識しているからである。

ここのLevel4のウィルスの危険性を…

「確かに息が詰まるかも知れませんが、まだマシな方ですよ。

好きなことを生業にして、その上、お金が貰える。

文句なんかつけられませんよ」

無精髭の男性は頭をかき、眼鏡を掛けた男性を見る。

「そんなこと言えんのは若い間だけさ。

家庭を持ってみろ…見ず知らずの男が家に上がりこんで、ソファーでくつろぐんだぞ。

怒声を上げて机を叩いたら娘が飛んで来て『〇〇君に何するのよ〜』って叫ぶんだぜ。

俺の知らぬ間にカレシを作りやがった!

信じられるか!」

話しを聞いていた男性はどうコメントしていいか解らず、苦笑しながらコンピューターに視線を戻す。

左側のコンピューターの異変に気が付いた。

赤いランプが点滅している。

「…でよ、そいつがまた気に食わないヤローでさ、娘のことを『怜美』って呼び捨てで…」

「大変だ…」

眼鏡を掛けた男性の顔が見る見る青くなっていく。

「っん、どうした?」

「事故だ」

「…はぁ?」

「Level4のドラフト(薬物処理機)が事故を起こしてる…」

「なっなに!」

「100%換気されていない…一部がダストを通って外部に…」

「っな、まずいぞ。急いで上に連絡を…」

無精髭の男性は慌ただしく電話を掛ける。

「待ってください。

僕達が今気付いたということはきっと上はもう知っているはずです」

男性の話しを聞かずに電話を掛ける呼び鈴だけで通じない。

「ここにいる人間には抗体がありますが、上の一般社員達は…」       「クソ、通じない」

痺れを切らし受話器をたたき付ける。

「ここは地下で安全です。しかし、地上は…」

「冗談はよしてくれ、地上うえには娘がいるんだぞ。

起き上がりのゾンビウィルスが地上で充満してるってか」

「それはありません。

“アレ”は気化が早いはず…ですので、おそらくは上の会社だけ…」沈黙が続く。

気が付けば周りが騒がしい怒声やら感嘆の声が響く。

「緊急事態発生、緊急事態発生、Level4ウィルスが地上に流出。職員及び研究員は速やかに持ち場に戻り班長の命令に従うこと。なお、気分が優れない方、抗体を打っていない方は至急医務室もしくはLevel4研究室にまで来てください。地上に通じるエレベーターは隔離のため使用停止、階段の使用は禁止します。繰り返します…」

地上の建物と比べ地下の研究所ではおびただしい数のアラームとセンサーが一斉に鳴っている。

例え地上が死のデッドマンアイランドに成り果てようともここならば安全だ。

現時点、ここは旧聖書の“ノアの箱舟”と化したのだ。

無力な父親は黙って見るほかなかった。

娘が助けを必要としているのに…

苛立ちを覚えガラス製品のテーブルを拳で叩き割った。




こうして悪夢は始まった。















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