全てに嫉妬するもの
side:レイツ
「まだ・・・耐えるんだ・・・」
「はあ、頑張っても無駄だよ、いずれは完全に乗っ取られるんだから」
まだこの体を乗っ取って日が浅いので、完全には意識を乗っ取ることはできていない、時折元の体の意識が出てくる
「それ、でも・・・」
「それにしてもすごいね、普通なら一瞬で乗っ取れるのに」
並大抵の精神力がなければ、一瞬にして意識を乗っ取って勇者を決定できるのだが、時折この体のような精神がやたらと強い者なら、無理やり勇者を決めることもできる
「かあ、さんを、守るために・・・」
「ふうん」
本来なら、この体の母親が勇者になるはずだったのだが、今の勇者と元の意思が協力して母親ではなく今の勇者の方になった
「どうやったの? 勇者の指定なんて、僕でもやり方なんて知らないよ?」
今迄何度も体を変えてきたけど、勇者を自分で変えるなんてしたのはこの子が初めてだ
「あれかな、半妖っていうのもあるのかもね」
半妖なんて乗っ取ったことなどないので、もしかしたらそれが理由かもしれない
「・・・・」
「あれ? あー、限界だったか」
意識を維持するのも限界になったのか、元の意識がなくなり、今は完全に自分の意識だけになり、自由に動けるようになる
「よっと」
自由に動けるようになったので、さっそくやるべきことをしにいく
「おはようございます、シン殿下」
やること、それは治めている国の王としての仕事である
「おはよう、今日の予定は?」
「本日のご予定は・・・」
いつも通りの、面倒くさい予定を聞いていく
そして、いつも通りその予定をこなしていき
「ふう、一通り終わったね」
自分がするべきことを終わらせ、窓の外を見てみると、日もくれ始めていた
「少し、散歩してくるよ」
ずっと座っていて、体中固まってしまっているので、息抜きがてら城下町を歩くことにする
「シン様! どうなされたのですか?」
歩いていると、店先で道の掃除をしている女性がこちらに気付き声をかけてくる
「ん? 散歩だよ、君は何してるの?」
「は、はい、えっと、すこし店の前でけんかがあって、それの後始末です」
周りを見てみると、割れた瓶や壊れたいすなどが散乱しており、けんかか何かが起こったのは明らかだ
「あらら、大変だね」
「はい、結構大きな喧嘩だったので」
「酔っ払い同士のけんかかな?」
「そのようですね」
「大変そうだから、僕がやっておくよ【闇への大穴】」
ゴミが散らばっている範囲のものをすべて異空間に放り込み、すべて処理する
「あ、ありがとうございます!」
「いいよ、それじゃ、仕事頑張ってね」
「はい、お気をつけて!」
女性に別れを告げて、再び歩き出す
「そうだ、あそこにでも行こうかな」
いつも暇なときに行ってる、ある場所に足を運ぶ
「うん! いい眺めだね!」
そこは城壁の上で、そこからは城下町が一望できる
「いいねえ、だんだんと育ってきてる」
自分がこの国をまとめてる理由はただ一つ、いい環境で育てば、それなりにいい能力を得られる
そんな人たちから、能力をもらうために国をまとめているに過ぎない
「いい能力なんか持ってたら、羨ましくなっちゃうよ」
自分よりもいいものを持っている人を見ると、それを自分も欲しがるのは当たり前
「だから、それをもらっても、かまわないよね」
そのために、わざわざ面倒くさい国の長をやっているのだから
全てのものを、自分のものにするために




