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麗しき世界に始まりを告げよう  作者: 森のスダチ
第3章  異世界人   
86/128

これからのこと

・83・

side:神薙 カホ


 セニアさんが目が覚めたようなので、神代君の部屋に向かう


 「やあ、来たね」


 「セニアさん、何があったんですか?」


 まず、セニアさんがこんなに傷を負った理由を聞く


 「丁度、僕が向こうについた時、魔王たちがいてね」


 「え!」


 「どうやらもう、強欲の勇者のことは気づいていたよ」


 「それって! あさひはどうなったんですか!?」

 

 「連れ去られたよ」


 「そんな・・・」


 「ただ、大丈夫、絶対に殺さないって言っていたから、命は大丈夫」


 「え、どうゆうことですか?」


 強欲の魔王は強欲の勇者がいれば何もできないようなので、生かしておく意味は分からないが


 「勇者はね、魔王を愛し、愛されたものがなる称号なんだ」


 「魔王を愛し、愛され?」


 その言葉を聞くとなると、あさひが魔王を愛しているということになるが


 「あさひはこの世界の人じゃないんですよ?」


 私と同じ時期に来たのに、魔王を愛しているというのが理解できない

 

 「それはわからない、でも称号に選ばれたから庭それは確実だ、もしかしたら、その子は一度この世界に来たことがあるのかもしれない」


 確かに、一度こちらの世界にきて、その中で大切な人ができて、その人が魔王になったという可能性もある


 「いや、でもそれはないか」


 「ないんですか?」


 セニアさんが自らの言葉を否定し、その理由も教えてくれる


 「だって、強欲の魔王は最初から変わってない、えっと何年前になるのかな・・・ん? だめだ、思い出せない」


 何かを思い出そうとしているが、いくら時間をかけても思い出せないらしい


 「それよりも、今は他のことを考えなくちゃ」


 「ほかのこと?」


 「魔王の目的を阻止しなければいけないんだけど、魔王たちが動き出す時が近づいている」


 魔王の目的は何か、動き出す時が近づいているとはどういうことかを聞いていく


 魔王の目的は一つ、現存している人類を皆殺しにすること


 その時が近づいているとは、いくつかやることがあるようで、その中の一つは強欲の勇者であるアサヒの確保であるらしい


 「まだまだ、いくつかやることは残っているらしいから、そこまで焦らなくてもいい、多分二から三年ってところらしいよ」


 「どうしてそんなこと知ってるんですか?」


 そもそもの疑問、まずセニアさんはなぜそのことを詳しく知っているのかが疑問になる


 「直接教えてもらったからさ、そうだね、まずは僕と魔王たちの関係から話していこうか」


 そこからセニアさんがある話をしてくれる


 魔王が生まれたのは、はるか昔、一人の女性が、身寄りのない子供たちを保護して、周りに人も住んでいないようなところで暮らし、その中の一人がセニアさんがいて、ある事件をきっかけにその暮らしていた子供たちは大半が魔王になってしまったという


 「ある事件?」


 「ごめんね、その事件に関しては言いたくないんだ」


 どうしても、そのある事件というのを少しでも思い出したくないようで、そこに関しては何も教えてくれなかった


 「わかりました、えっと、つまり、セニアさんは魔王のことをよく知ってるってことですよね?」


 「うん、みんな家族みたいな人だよ」

 

 そういうセニアさんの顔は何か悲しげに見えた


 「リデア、シャル、レイツ、ゼノ、セシル、ライノート、カスミ、今はほとんどが名前も姿も違うけど、みんな大切な人たちなんだ」


 おそらく今名前を言った人たちが、魔王になるのだろう


 「リデア・・? シャル・・・?」


 その中になんだか聞き覚えがある名前があったが、どこで聞いたのか思い出せない


 「そんなみんなが、人類を皆殺しにするなんて、嫌なんだよ、止めたいんだ」


 「それを止めるには、どうすればいいんですか?」


 大切な人たちが、人類を皆殺しにするなど、そんなことを思っているのなら、止めようとするのはあたりまえだろう


 「・・・・勇者が、魔王を倒すしかない」


 「倒すって・・・・殺すってことですよね?」


 セニアさんは言葉を濁していっているが、人類を皆殺しにしようと思っている人たちを止めるには、多分、殺すしかないのだろう


 「・・・・・そう、なるね」


 「そんな、それ以外には方法はないんですか?」

 

 セニアさんが、魔王たちを大切にしているのは、さっきの話をしているときの顔を見ればわかる、そんな大切な人たちを殺さないといけない、それがどんな気持ちなのかわからない


 「ないよ、ただ・・・」


 「ただ?」


 「一つだけ、方法はあるだろうね」


 「あるんですか?」


 「みんなから、力を取り除ければ、人類を皆殺しにすることなんて、できなくなる」


 確かに、人類を皆殺しにするには、それ相応の力が必要になる、その力をなくすことができれば止めることはできる


 「でも、どうやって?」


 「方法自体はいくつかある、一番可能性が高いのは、技能の【強奪】と【限界突破】を二つとも持っている人、その人がいれば、強欲の力を奪える」


 【強奪】は、対象の任意の能力一つを奪える力、ただ、これだけでは魔王の力を強奪することはできない、魔王の力はあまりにも強大すぎるのだ

 そして、それを解決するのが【限界突破】の技能、この二つを組み合わせ、【強奪】の奪う力を強力にすることで、魔王の力を奪うことは理論的には可能になる


 「・・・? 意外といそうですけど?」

 

 「いや、いないよ、魔王たちもこのことはわかっている、だから絶対にこの二つの技能を一緒に持つことはない」


 「それは、強欲の魔王の力でですか?」


 「そう、ただ、強欲の魔王の力が及ぶ範囲に、君たちほかの世界の人たちは入っていない」


 「っていうことは、運が良ければ、私たちのだれかが、その二つを使えると?」


 神代君も私も、自分のレベルが上がると能力が増えることがあり、運次第では、二つ能力を手に入れることができる


 「だから、君たちのことができる限り鍛える、もしそれで二つの能力を手に入れればいい、ほかの君たちの世界の人たちは、ケニスが鍛えてくれる」


 「そして、誰かが強欲の力を奪えれば、君たちも元の世界に帰れる」


 「それが、一番いい結果ですね」


 その流れなら、セニアさんは、大切なものを失わなくて済むし、私たちも確実に帰ることができる


 「別に、断ってもいい、断っても、絶対に君たちを元の世界に帰すことはするつもりだ」


 「何か方法が?」


 「最後に頼み込めば、多分みんなを返すことぐらい、してくれるよ」


 「でも、それじゃあ」


 その場合、セニアさんは、大切な人たちと、戦わないといけなくなってしまう


 「さっきの話をきいて、放っておけないです」


 少しでも、誰かを救えるのなら、それに越したことはない


 「私を鍛えてください」


 能力を得るためには、レベルを上げる、そのためには誰かに教えを乞うのが一番効率がいいだろう


 「俺も、お願いします」


 今迄静かに話を聞いていた神代君も、どうやら私と同じ気持ちだったようで、一緒にセニアさんに教えを乞うようだ


 「ありがとう、本当に」


 少しでも大切な人たちを倒さないで済む可能性が上がることに、嬉しそうにし、感謝を伝えてくる


 「なるべく急いで鍛えていくよ、最低一年は鍛えていく、そのあとは、なるべく他の勇者たちを集めてながら続けていくよ」


 「やっぱり、ほかの勇者は集めるんですね」


 「結局は魔王とは戦いにはなるからね、少しでも戦力は多いほうがいい」

 

 力のみを奪うのは、多分、普通に戦うよりも難しいだろう、なので、戦力は多いに越したことはない


 「ほかの勇者って、どんな人なんですか?」


 魔王の話は聞いたので、勇者についても聞いておく


 「うーん、教えてあげたいんだけど、ほとんど知らないんだよ」


 「あ、そうなんですか」

 

 勇者に関しては、基本的に魔王をもとに決められるので、セニアさんはほとんどだれが勇者であるのかは知らないようだ


 「暴食の勇者については知ってるよ」


 「どんな人なんですか?」


 「僕と同じ、一緒に暮らしていた子だよ」

 

 「ってことは、その人からしても魔王たちは大切な人ってことですか?」


 「そうだね」


 「じゃあ、まずはその人を探しますか?」


 「いや、あの子は自分で動くと思うから、ほかの勇者を探そう」


 暴食の勇者に関しては、探すというよりも、いずれ合流するといった形になるようだ


 「今はとりあえず、君たちの修行だ」


 「わかりました」


 「その間に、僕がいろいろ調べておくから、そっちは気にしないでいい」


 「さっそく明日から、やっていきたいけど、大丈夫?」

 

 「はい、よろしくお願いします」


 これから、大体一年近く、二つの能力を手に入れれることを願いながら、修行していくことになる

三章・終

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