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麗しき世界に始まりを告げよう  作者: 森のスダチ
第3章  異世界人   
75/128

決意を抱いて

・72・



side:神薙 カホ


 「【ファイアーボール】!」


 「ギャリャーー!!」


 何度目かの魔法が命中し、ようやく魔物を倒しきる


 「感想は?」


 初めての戦闘で、初めて生き物の命を奪う


 「いい気分では・・・・ないです」


 先ほどまで普通に動いていた生き物が、自分の手で命を失う


 そんな経験、地球にいたころにはしたことがない


 ただ、幸いにも自分が殺した生き物はゴブリンと言い、一般人にとっては害にしかならない生き物らしいので、罪悪感はなかった


 「カミシロ君の方はどう?」


 アイラさんは神代君にも話しかけていた


 私は魔法で間接的に倒したので、感触などはなかったが、神代君は剣を使って直接生き物の息の根を止めている、なので手に感触が残っているだろうし、私よりも気分はよくないだろうと思う


 「別に、意外と何も感じないですね」


 「あら、そうなの?」


 「まあ、多分・・・・」


 神代君の話を聞いていると、急激な倦怠感に襲われて、倒れてしまう


 「あっ、カホちゃん?」


 「神薙はどうしたんですか?」


 完全に意識は失っていないが、ぼうっとしている


 「あ~、魔力切れね、おーい、意識はある~?」


 アイラさんが、何かを言いながら目の前で手を振ってくれている


 「あう~」


 「だめそうね」


 立ち上がろうとしても、思った通りに体が動かない


 「よいしょっと」


 そんな私の体をアイラさんがおぶってくれる


 「カホがこんな状況だし、もう出発しようか」


 そのままアイラさんが馬車にゆっくりと寝かしてくれ、出発する


 それから数十分ほどが経過して、ようやく


 「うーん・・・」


 手足に力が入るようになって頑張って起き上がる


 「おっ、ようやく起きたか」


 「すいません、急にしんどくなって・・・」


 「仕方がないよ、はじめのうちは魔力管理は難しいから」


 どうやら、体内にある魔力がなくなって、このような状態になったようだ


 「そこのところも、ちゃんと説明しておかないとね」


 それから、アイラさんが馬車を運転しながら、魔法や魔力について説明してくれる


 一般的に、通常の魔法を発動させるのには二通り方法があるらしい


 まず一つは、空気中に存在している魔素を取り込んで発動する方法


 もう一つは、体内に存在する魔臓器官から魔力を取り出して発動する方法


 「で、基本的には、みんな前者の方法で魔法を使うわ、後者を使う人は基本的にはいないわね」


 「え、でも私はその後者ですよ?」


 「そりゃあ、君たちはこ・っ・ち・の・世・界・の・人・じゃないでしょ?」


 「!? 何でそれを!?」


 アイラさんには、一切そういう関係のことは話をしていない、なのに、どうして私たちがこの世界の人たちではないということを知っているのか疑問に思う


 「ん~、秘密」


 アイラさんは、口の前に指を立てて、言わないというジェスチャーをする


 まあ、別に知られて困ることはないので、あまり気にしないのだが、どうして知っているのかだけが気になる


 「まあ、また今度教えてあげるよ」


 「はあ、わかりました」


 「それよりも、ここからは休憩は入れずに進むことになるよ?」


 「え、どうしてですか?」


 「少し、私でも倒せるかわからない魔物が出るからね、なるべく立ち止まりたくないの」


 アイラさんと旅を続けているうちに、戦っているところはちょくちょく見ていたが、私たちとは明らかに動きが違う、そんなアイラさんが敵わないのなら、私たちはすぐにやられちゃうのではと思い、少し怖くなってくる


 「怖がらなくて大丈夫、そいつは動きがそこまで早くないから馬車には追い付けない、だから休憩するために立ち止まらない限り戦うってことはないわ」


 「それは、安心ですね、でも、休憩せずに進めるんですか?」


 馬車を引いている馬にも限界があるので、ずっと走ることなんてできないと思うので、そこをどうするのか確認する


 「ここからは、戦闘のことは一切考えないで、馬に対してだけ魔法を使うからそれに関しては大丈夫、だから、もし魔物と戦闘になったら、二人を頼りにさせてもらうからよろしくね」


 神代君は後ろの荷台で寝ているが、大丈夫だろう


 私に関しては、先ほどの初めての感触に影響されずに戦えるかが問題になる


 そこに関しては、おそらく大丈夫であろうが、実際にもう一度戦ってみないと分からない


 「それじゃ、もし何かあったときのために、今は寝ておいて?」


 「わかりました」


 いざ戦闘になって、疲れているので思った通りに動けませんでは、二人の足を引っ張ることになるので、今はアイラさんの言葉に従って、しっかりと休むことにする


 そこからの道のりは、アイラさんの言葉通り、一切立ち止まることなく、王都へ向けて、馬車を進めていき、ある街に到着する


 「いったん、この街で休憩にしましょう」


 ここからはもうアイラさんの敵わない魔物がいないそうなので、この村で休憩にするようだ


 「じゃあ、ちょっと泊れるところ探してくるから、自由にしといて」


 アイラさんが、宿を探してくれるようで、私たちは各々やりたいことをして待っていることにする


 神代君はずっと馬車に揺られて疲れたのか、馬車に乗り込んでゆっくるとしていた


 「どうしよう・・」


 私は別に眠たくないし、特にやりたいこともない、なのでどうしようか迷うが


 「まあ、適当にぶらぶらするかな」


 歩き回っていると、一つ、大きな建物を発見し、それを見ていると


 「あら、どうしたの? ここを見上げて」


 中から数人組のお姉さんたちが出てきて、話しかけてくる


 「あ、すいません、ここが何の建物か気になって・・・」


 明らかに周りとは雰囲気が違うので、何の店か気になっていた


 「旅の人かな? ここは冒険者ギルドっていうところよ」


 「冒険者ギルド・・・」


 「もしかして聞いたことない?」


 「ああ、いえ、名前は知ってるんですけど、何をする場所かがよくわかってなくて」


 「なるほどね、まあ、私たちも説明できるほど知ってるってもんじゃないけど、詳しく知りたいなら、中で話を聞くといいわよ?」


 改めて聞かれると、使っている人でもうまく説明できないのだろう、なので、言葉通りに中にはいって説明を聞くことにする


 「わあ、広いなあ・・・」


 中は円形の机がいくつも置いてあり、壁には紙がたくさん貼っているボード、奥には受付があり、見た目よりも結構広めに感じる作りをしている


 「次の人どうぞ~」


 受付の列に並びながら待っていると、自分の番となり、呼ばれたところに向かう


 「依頼ですか?」


 「いえ、あの、話を聞きたくて」


 「どうぞ、なんでも聞いてください! この辺りでとれるもの、出る魔物など、さまざまなものに答えれますよ!」


 受付をしてくれた人は、とても明るく話しやすいので、気軽に質問をすることができた


 冒険者ギルドとは、簡単に言うとだれでもどんな依頼を出せて、それ相応の報酬でギルドが保証している冒険者によって解決したり、魔物の素材、薬草、様々なものを買い取り、販売などを行っている機関であるらしい


 「それって、私でも冒険者として登録ってできるんですか?」


 話しを聞くに、冒険者として登録しておいて損はなさそうなので、できるなら自分も登録しておきたい


 「基本的に、犯罪歴がなければ、大丈夫ですよ」


 まだこっちの世界に来てから日はみじかいので、もちろん犯罪歴などないし、地球でも犯罪などしたことはない


 「それじゃあ、お願いしていいですか?」


 「はい! ではこちらに記入をお願いできますか? こちらで代筆もできますので、文字がわからなければ気軽に言ってください!」


 「あ、それじゃあ、お願いしてもいいですか?」


 こっちに来てから、文字という文字を見ていないので、どんな字かもわからないので、それを確かめるついでに、代筆してもらう


 それから、受付のお姉さんに、名前や年齢など、軽く情報を伝え、紙に書いていってもらう


 (やっぱり、読めない)


 書いてもらっている文字を見ても、見たこともない字なので、読むことはできないし、書くことも難しそうである


 「それじゃあ、こちらに手を置いてください」


 「これは?」


 何か水晶玉のようなものを持ちだしてきて、こちらに差し出してくる


 「先ほども言った通り、犯罪歴があると、登録するわけにもいかないので、それの確認です、これが赤く光れば、犯罪歴蟻、青く光れば問題なしとなります」


 説明を受けて、出された水晶玉に手を置く


 「はい、問題なしです、それではこれから冒険者カードを作製します、一時間後には完成しているのでそれ以降に取りに来てください」


 問題なく冒険者登録を終えたので、それの完了を待つ間に街をもっと見ておくことにする


 「あ、アイラさ~ん」


街を散策していると、アイラさんに合流する


 「お、カホ、こんなところで何してるの?」


 「さっきまで、冒険者ギルドに行ってて、ついでに冒険者登録もしてきました」


 「あ、そうなんだ、あとで行こうと思ってたんだけど、先に行ったのね」


 「もしかして、まずかったですか?」


 「ううん、全然そんなことはないんだけど、場所によっては面倒なんだけど、どうだった?」


 「うーん、特に面倒はなかったと思いますよ?」


 特に自分ですることもなかったし、しいて言えば、少し伝える情報が多かったくらいだろうが、別に変なことは聞かれてないし、疑問はなかった


 「まあ、あとでカミシロ君を連れてもう一回行きましょう」


 「そうね」


 「それよりも、宿は取れましたか?」


 「取れたわ、今からでも行けるけど、もう行く?」


 「そうですね、特にやることもないですし、言ってもいいかもしれないです」


 それから、馬車のところまで行って、眠っている神代君を連れて、宿のところまで向かっていく


 「とりあえず、部屋に荷物を置いたら下に集合で」


 アイラさんは三部屋とってくれたようで、一人ひとり部屋があり、ゆっくりできるようになっている


 「よっと」


 自分の持っていた荷物を置いて、少しベッドに腰かける


 「改めて考えると、ここはちゃんと夢じゃないんだね・・・・」


 ゆっくりする時間ができて、改めて考えてしまう


 もしかしたら、これは夢なのかもしれない、長い長い夢、集団睡眠でみんな同じ夢を見ているのだと思っていた


 しかし、生き物を殺す感触、みたことのない食べ物の味、それらを感じるたびにこれは夢ではないとだんだん感じていく


 「ここで、けがを負ったり、死んじゃったりしたら、どうなるんだろう・・・」


 あの王様は、死んでしまったらちゃんとむこうに送り返されると言っていたが、根拠は何もないので、一切信用することはない


 それに死なないにしてもこの世界は魔物と争う世界だ、大きなけがをすることもあると思う


 「だからこそ、私たちが少しでも早く・・・」


 私と神代君以外は、あの王にどういった内容かどうかはわからないが洗脳されている


 自由に行動ができる私たちがみんなが危険なことをさせられる前に、あの王の満足する結果を出して、みんなを返してもらうことが、一番いいと思う


 「うん、大丈夫」


 夢ではない、これは現実なのだと、みんなをきちんとむこうに返すなど、傲慢な考えはしない、私にとって大切な人だけでも無事なら、いいのかもしれないと思い、改めて整理する


 「少しでも早く、勇者を集めて、魔王を倒す、そのためにも、強くならなくちゃ」


 強くなる、そう決意し、この世界での第一歩を踏み出す

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