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麗しき世界に始まりを告げよう  作者: 森のスダチ
第3章  異世界人   
70/128

東雲アサヒ

・67・

side:神薙 カホ




 「アサヒ? どこ?」


あの部屋からこの部屋までは一本の廊下であり、途中に他の部屋はなかった


となれば、さらに奥の部屋にいるのかと思ったが


 「この部屋に来たのはあなたが初めてですよ?」


部屋にいた人に聞いたが、明らかに嘘をついている様子はなかった


 「奥も見ますか?」


奥の部屋も見せてもらえたが、通じていたのは広間でありそこにいる人に聞いてもここを通ったものは誰一人いなかったという


 「どういうこと?」


とにかく、もう一度あの部屋に戻り、隠し通路などがないかを探すことにする


 「私も手伝いいたします」


もともと部屋にいた人も手伝ってくれるようで、二人でくまなく探すが、それらしきものは一切見当たらない


 「何してるの??」


探している間に、ほかの人も説明が終わったようでこの部屋にやってくる


 「ナナ、アサヒがいないの、探すの手伝って!」


来てくれたのがちょうど知り合いでよかった


彼女は天石ナナ、よくモエと一緒にいる金髪のギャル


と言ってもギャルっぽいのは見た目だけで、性格は真面目でやさしいので友好関係は結構広い


私もよく話すし、仲がいいので頼みやすく、アサヒを探すのを手伝ってもらう


 「う、うん、いいけど・・」


ただ、なんだか少し歯切れが悪そうに返事をしてくれるが、しっかりと探してくれる


 「ね、ねえ、カホ」


 「なに?」


 「その探してる、アサヒって誰なの?」


ナナが不思議そうにそう尋ねてくる


 「え? 何言ってるの? アサヒだよ? 東雲アサヒ」


 「ん? ごめん、だれかわかんないけど、私の知り合いなの?」


 「え、どういうこと?」


ナナはアサヒのことを知らないということは絶対にない、よくしゃべっているところは見るし、仲がいいとは思う


なのに、そんなアサヒのことを知らないとはどういうわけか


 「まあ、一応探すけど、どんな人かもわからないから、探せるかわからないけど」


 (アサヒを知らない?)


少し気になることがあり、この部屋に来た人に声をかけていく


そして、数人声をかけてわかったことがある


 「全員、アサヒのことを忘れている・・・」


最近アサヒと一緒に学校での仕事をしていたはずの人でさえ、アサヒのことは知らないと言っていた


よく思い出してもらっても、一緒にいたはずの人がだれかわからないといったふうに、アサヒのことだけをぽっかりと穴が開いたように忘れていた


ただ、自分は、アサヒのことは覚えている


 「私だけが覚えている?」


なぜアサヒのことを自分だけが覚えているのかわからない


 「だめ、考えても何もわからない」


 「カホ~」


どうしてか考えていると、いきなり後ろから誰かに飛びつかれる


誰かは声と行動で察しはつくが


 「モエ、大丈夫だった?」


 「うん、大丈夫だったよ?」


モエは怖がった様子もないし、変なことはされた様子はなかった


 「なんか、カホが言ってくれたらしいね、ありがと」


どうやらあの人はきちんとモエに対して伝えたことをしてくれたようで、すこし信頼することができると思い始める


 (いや、完全に信じるのは危ないかな)


もしかしたら信じさせるのも相手側の思惑かもしれないので、完全には信頼することはない


 「はいはい、どいてね」


カホと話していると、次の人がこの部屋に入ってくる


入ってきた人は、数少ない男子の友達である神代アキト


 「ねえ、神代くん、アサヒのこと、覚えてる?


一応、神代くんにもアサヒのことを聞いてみる


 「アサヒ? 東雲のことか?」

 

 「! そう! 覚えてるのね!」


 「ん? そりゃ、去年も同じクラスだし」


目の前の神代くんはアサヒのことを覚えているらしい


そこで、今この部屋にいる人たちがみんなアサヒのことを忘れていることを伝える


 「マジか? いや、もしかしたら・・・」


 「何か知ってるの!?」


神代くんは、何か知っているのか、少し考えてから話し始める


 「さっきの部屋で、鑑定盤っていうやつを使っただろ?」


 「うん」


たしかに相手から鑑定盤と言われるものを使えと言われたが、もしかしたらそれに何か仕掛けられていたのだろうかと思ったが、別に自分には何も起こってはいない


 「そこに出た内容をばれないように一応写したんだけど、ほら」


一枚の紙を渡されて、目を通してみる


 「ほら、状態のところ見てみ?」


促されて、舌の方に書かれている内容を見てみると


 「洗脳?」


 「そう、洗脳、これ俺だけってわけじゃないと思うんだけど、もしかしてこれが関係してるんじゃないのか?」


 「そうかもしれない、ただ、それを確かめる方法もないし、どうしようもない・・・」


 「まあ、それもそうだな」


 「とりあえず、ほかにアサヒのことを覚えている人を探してみる」


 「ああ、こっちでも探してみる」


二手に分かれて、あっちには男子を任せてとりあえず聞いていく


ただ、アサヒを覚えている子は誰一人といなかった


 「それでは、全員が終わりましたので、皆さんのお部屋にご案内いたします」


先ほどの男の人がみんなに向かってそういい、寝泊まりする部屋へと案内する


最後の部屋が私となり、一対一となったので、この人と話をしようと口を開くが


男の人が口の前に指を立てながら、紙を出してくる


 ここでの話は聞かれています、後ほど部屋に伺いますので、その時に


どうやらどこからか盗聴されているのかここでは話をしないよう指示される


 コクッ


返事だけをして、部屋に入る


あとで話ができるなら、今は質問することを整理しておくことにする


 「んん、はっ! 寝てた!」


どうやら考え事をしているうちに寝ていたようだ


こっちに来てから、いろいろと考えることも多くて、疲れてしまっていたようだ


 「いま、何時なんだろう?」


そういえばこっちに来てから時計を見ていないので、今が夜かどうかも分からない


 「ここ、窓もないから、外も分からないし」


この部屋でもし逃げるとなれば扉のみ、なんだか軟禁されているみたいだと思う


 コンコン


すると、扉がノックされる


 「はい」


扉を開けると、あの人がいて、すぐに部屋に入ってくる


 「【静寂の檻】」


そして、何かつぶやきだす


 「はあ、しゃべっていいですよ」


この部屋に何かしたのか、男の人がしゃべりだす


 「何したんですか?」


 「魔法でこの部屋を隔離しました、外からは何も音が聞こえないので、何を話してもかまいません」


 「魔法、ですか?」


妹の話にも魔法という言葉は出ていたが、あんまり覚えていないので、魔法について質問する


 「ああ、そういうわからないことに関しては、こちらの方に大体は書かれていると思います」


質問の答えが返ってくると思えば、一冊の本を差し出される


 「今はそれよりも話をしましょう」


 「そうですね」


今はあまり無駄話をしている暇はないらしいので、聞きたいことを聞くことにする


 「まず、貴方は?」


まずは目の前にいるこの人について聞く


 「私は、ケニス・クウェイトと言います、ケニスとでも呼んでください」


 「わかりました、ケニスさん、あなたは私たちの味方でいいんですか?」


ケニスさんがこちら側なのかを先に確認する


 「ええ、貴方たちの味方です、信じてと言っても無理だとは思いますが、嘘ではありません」


 「まあ、それは大丈夫だとは思いますけど・・・」


改めて考えてみても、はっきり言ってここでうそをついていても別にこちらには何も損はない


むこうの情報を知れるのだから、むしろ得になるだろう


 「理由が気になりますか?」


 「・・・まあ、気にはなります」


なぜ、ケニスさんがこちらの味方をするのか答えてくれる


 「私には、妻がいました」


 「いました?」


ケニスさんは過去形で答える、つまり、もういないということだろうか


 「ああ、別に死んだとかではないですよ?」


どうやら悲しい話にならなくて済みそうだ


 「私の妻も、そちらの世界の人、地球人でした」


衝撃の事実を告げられる、地球人、ということは以前にもこのようなことがあったというものだろう


 「! 本当ですか!?」


 「ええ、だから安心してください、私は貴方たち側の人間です」


ケニスさんの妻が私たちに味方してくれる理由がわかり、納得する


 「その人は、今どこに?」


 「元の世界に、帰りました」


 「え! 本当に帰れるんですか!?」


 「はい、帰れます、証拠も見せます」


ケニスさんは一枚の手紙を差し出してくる


 「これは向こうからこっちに送られてきた手紙です」


手紙の内容を確認すると、確かに日本語で書かれているし、きちんと帰れていることが書かれている


 「ただ、あの王には、皆さんを返す力はありません」


 「それじゃあ、どうやって帰るんですか?」


王様っぽい人は、本当に王様であったようで、あの人の発動している召喚魔法では帰ることがほとんどの確率で、できないようだ


もし帰れたとしても、何かしら影響があるらしい


 「私の妻は、貴方と同じで召喚魔法を疑って、魔王を倒すための訓練の合間、自分で魔法の研究をしました」


 「それで、自力で帰ったと?」


 「はい、その魔法もその本に書いています」


 「! それじゃあ・・」


この本に書いているのならば、すぐに帰れるということになる、であるならば、希望者だけでもすぐに帰らせようかと思ったが


 「ただ・・・」


 「ただ?」


何か嫌な予感がする、もしかしたら、私たちにはこの魔法は使えないとか言われるのかと予想する

 

 「おそらく、貴方たちがこの魔法を使うには、とてつもない時間がかかると思われます」


 「時間がかかる・・・・どれくらい、かかりますか?」


 「最低でも、10~15年はかかるかと」


 「・・・・そうですか」


予想した通り、私たちには使えないという


 「この魔法には、とてつもない量の魔力が必要です、なので、ステータスを伸ばして、使えるようになるまではそのくらいかかります」


ケニスさんが、なぜ私たちには使えないのかを説明してくれる


 「それじゃあ、それまで帰れないってことですか?」


 「いえ、この魔法を使える人、あの王に使わせれば帰ることができます」


どうやら、あの王は魔力量だけは多いらしく、帰還用の魔法も使えるようだ


 「そのためには、あの王の願いである魔王を倒すしかありません」


 「じゃあ、そのために訓練しろと?」


 「まあ、訓練はしていただいてもいいですが・・・」


 「?」


魔王を倒すには、訓練して強くならなくてはできないだろうと思い、そういったのだが、もしかしたら強くはないのだろうか


 「訓練してもいいです、ただ、絶対に魔王を殺してはいけません」


 「??? どういうことですか?」


魔王を倒さなければ帰ることはできないが、倒してはいけないと言われて、混乱する


 「魔王は、勇者以外のものが殺してしまうと、その殺したものが次の魔王になってしまうのです」


 「? その勇者っていうのが、私たちじゃあないの?」


異世界に召喚された地球人は、決まって勇者と呼ばれる存在であるらしいので、てっきり自分たちは勇者であると思っていたが


 「違います、勇者はすでにこの世界に存在しています」


 「なるほど、だから私たちは勇者じゃないので、魔王を殺してはいけないと」


どうやら、自分たちは勇者ではないらしく、そんな私たちに魔王を倒させて私たちのだれかを魔王にしたのちに、元の世界に帰すのが、あの王がしたいことらしい


 「それって・・」


あまりにも無責任すぎる、地球がどうなろうが知ったこっちゃないということだろう


 「私の妻が来た時もそうでした、妻がそのことを調べたおかげで、貴方にこの話ができています」


どうやらこのことは、ケニスさんもはじめは知らなかったようで、ケニスさんの妻が調べて初めて知ったようだ


 「じゃあ、私たちは何をすれば?」


魔王を倒してはいけないのならばこっちは何もすることはない、なのでどうすればいいのかを聞いてみる


 「勇者をなるべく集めていただきたいのです」


 「集める?」


 「はい、この世界に、勇者が複数います。今のところは確認できているので、4人」


 「ということは、最低でも4人は魔王がいるってことですか?」


 「はい、ただ王は一人でも魔王を倒せば返すつもりのようです」


 何人いるかどうかはわからないが、全滅は無理でも数を減らせということだろう


 「それじゃあ、勇者を一人でも見つけて、その人が倒してくれれば、私たちは帰れると?」


 「まあ、極論で言えばそうなりますが、おそらく無理でしょう」


 「無理? どうしてですか?」


 「魔王は基本的に、一緒に行動しています、なので誰か一人を狙っても、ほかの魔王に邪魔されることになると思います」


 「はあ、だから、なるべく集めろと?」

 

 「その方が確実ですね」


 「わかりました、できるかわかりませんが、やってみます」


そもそもこの世界についてほとんど知らないので、どこにいると言われても、わからないし


 「ありがとうございます、数人はこちらでも居場所は把握していますので、お伝えします」


場所の名前を言われても分からないが、まあ、誰かに聞けば行けるだろう


 「あと、一つ、伝えなくてはいけないことが」


 「あ、私からも聞きたいことが」


 「先にどうぞ」


他の話に移りそうだったので、一番最初に聞こうと思っていたことを先に聞く


 「東雲アサヒについてなんですが・・」

 

 「その話ですか」


 「何か知っているんですね!」


あの王が何かやったとは思っていたが、やはりそうだったらしい


 「私が話す内容も、東雲アサヒについてです」


 「教えてください、アサヒはどこにいるんですか? 無事なんですか?」


アサヒがどこにいるのか、なにもされていないのかを聞く


 「東雲アサヒさんについては、今は皆さまとは違う部屋に監禁されています」


 「え! どういうことですか!?」


監禁されているということは、私たちとは違い、自由に動くことがほとんどできないということ


 「その理由については・・」


ケニスさんがゆっくりと口を開く


 「東雲アサヒさんのステータスを見ると、あることが書いていました」


 「あること?」


 「強欲の、勇者と」



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