彼女とは
・58・
side:アルカ・ロワール
「ふ~、一旦休憩」
アルカとの手合わせにつかれて、レリアが汗を拭きながら、ベンチに腰掛ける
「それじゃあアルカ、次は私としましょ」
手が空いたので、次はエレナとも手合わせをする
最近は、授業が終わると、すぐにレリアがエレナとアルカを連れて、訓練場へと向かっていく
新しく選んだ木剣を、完璧に扱えるようにしたいらしく、接近戦を主体に行っている
アルカ自身も、いつも使っていた木剣が壊れて、新しいものにしたので、それに慣れるためにも、一緒にやっている
「休憩終わり、じゃあ次はエレナお願い」
さすがに連続でアルカにお願いするということはなく、レリアはエレナに手合わせをお願いする
「ちょっと、飲み物買ってくるけど、何がいい?」
結構長い時間訓練場にいるので、みんな飲み物がなくなっている
どうせ、まだまだ続くと思うので、この休憩の間に買いに行くことにする
「いいの? それじゃあ水で」
「私は・・・オレン水で」
エレナは水を、レリアは、少し迷った後、オレンという、甘い果実の汁と塩を混ぜた飲み物をお願いしてくる
こういった、汗を流した時には、大体は皆、オレン水を飲むのだが、独特な味がし、エレナもアルカもあまり得意ではなかった
そうして、訓練場から少し離れたところにある購買部まで行き、水を二本と、オレン水を購入する
「あ、イオリさん」
買うものを買って、訓練場に戻る途中、見知った顔を見かけたので、声をかける
「アルカ君、やっほ~」
今日は前のように大人数でいるわけではなく、イオリさんと、前にいた人たしかナナさんが一人と、見たことがない人が一人の三人だった
「買い物ですか?」
「うん、少しの間、こっちにいるからね、いろいろ足りないものを買ったの」
三人の手には、結構な荷物を持っていたので、気になって聞いたのだが、主に消耗品を買っていたようだった
「あ、そうだアルカ君、また一緒に手合わせしてくれないかな?」
「ええ、大丈夫ですよ」
どうやら、イオリさんはこちらに来てからはあまり手合わせをしていないらしい、というかちゃんと相手になる人がいないらしく、それのせいでできていないらしい
「やった! ありがとう! 前と一緒のところだよね!」
イオリさんは嬉しそうにそういい、さっそく訓練場へと向かっていった
「ねえ、アルカ君」
それを見送っていると、後ろから服を引っ張られる
「はい?」
そちらを見ると、服を引っ張っていたのは、前にはいなかった方の女性であった
「はじめまして、私はサイカ・ミホと申します」
「初めまして、アルカ・ロワールです」
むこうが自己紹介をしてきたので、こちらもする
「知ってます! モエから聞いていたので!」
そういいながら、勢いよく顔を近づけてくる、モエというのは、確かイオリさんのことだったと思い出す
「あの! アルカ君!」
「な、なんですか?」
サイカさんの勢いに少したじろぎながらも、聞き返す
「アルカ君って、彼女とかいますか?」
「かのじょ?って何ですか?」
いきなり質問をされたが、そのかのじょという単語に聞き覚えがなかったので、質問に質問で返す
「え?」
サイカさんが驚いたような顔をしてくる
「ねえ、ナナ、こっちって恋人とかの言葉ってちゃんとあるよね?」
「うん、あると思うよ?」
二人がこそこそと話しながら、何か確認している
「えーっと、彼女っていうのはね」
それから、サイカさんが、事細かに、かのじょというものについて教えてくれる
どうやら、かのじょは、簡単に言うと異性のなかで、一緒にいることが当たり前で、その人がほかの異性と一緒にいるのがいやな気持ちになるといった人のことであるようだ
「そんな人、いないの?」
サイカさんにそれに該当する人がいないかどうか確認される
「いますね」
一緒にいるのが当たり前で、もし、ほかの男と一緒にいるのをみると、少しいやな気分になるというのに当てはまるのはエレナである
「そんなあぁ」
サイカさんが、アルカの言葉を聞いた瞬間に、がっくりし、崩れ落ちる
「そりゃそうでしょ」
ナナさんが、崩れ落ちたサイカさんを立ち上がらせる
「この子は放っておいて、行きましょ」
「はい、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ」
ナナさんが肩をかして、ミホさんを歩かせて、エレナたちが待っている訓練場へと戻っていく
「モエちゃん、早く行きすぎ」
訓練場へと到着すると、すでにイオリさんがエレナたちと話しながら準備運動をして待っていた
「アルカ、おかえり」
迎えてくれたエレナとレリアに勝ってきた飲み物を渡す
「ただいま、イオリさんたち、大丈夫?」
「? 大丈夫だけど?」
どうやら、勝手にイオリさんたちを呼んだことは問題がなかったようだった
「後ろの人、大丈夫?」
エレナが、アルカの後ろの方で、ナナさんに肩を貸されながら歩いていたミホさんを心配していた
「気にしないで」
それに、よくわかっていないアルカの代わりにナナさんが答えてくれた
「ミホちゃん、ちゃんとして」
「そりゃイケメンは、彼女いるよね」
何かぶつぶつと言っているミホさんのほっぺをつついてしっかりと立たせる
「私の予想では、その子がアルカ君の彼女だと思うわ」
ナナさんがエレナのことを指さしながらそういう
「はい、そうですよ、どうしてわかったんですか?」
何も言っていないのに、当てられたことに驚きながら、どうしてわかったのかを聞いてみる
「勘ですよ」
それ以上は、教えてくれなかった
「ミホちゃん、よく見てよ」
「負けたわ、かわいすぎよ」
立ち直ったミホさんが、エレナに近づいていき、顔をよく見ている
「な、なんですか?」
「しかも、肌がすごくきれい、ナナも見てみて」
ミホさんがナナさんを手招きし、エレナの元に呼び寄せる
「本当だ、化粧も何もしていないのに、すごくきれい」
二人が驚いたようにつぶやいている
「あ、ごめんなさい、ついあなたがきれいだったので」
少しいやそうな顔をしたエレナに、謝罪をしながら、自己紹介を始める
「私は、サイカ・ミホです、いきなりでごめんなさい」
「私はモチズキ・ナナっていいます」
「エレナ・ルーシュです」
二人に続いて、エレナも自己紹介をする
「ねえ、アルカ君、早くしよ」
三人の会話を聞いていると、イオリさんが準備運動が終わり、アルカとの手合わせを願ってくる
「あ、わかりました」
アルカが木剣を手に取り、準備をする
そこから、何回か、手合わせを行い、少し休憩がてら、話し合いをする
「ねえアルカ君、私の能力ってわかってる?」
「ええ、まあ、ある程度は」
「やっぱりか」
イオリさんも、どうやらこっちがイオリさんの能力をある程度分かっていることを予想していたようだ
「どうやって対策したの?」
「どうやってと言われても、早く動くだけですよ」
特にこれといった対策はしていないが、あえて言うならば、相手が動きをよんでも、それに対応できないくらいの速さで動けばいいだけだ
「なるほどね、今までそんな人いなかったから、そういう対応もあるんだ」
「アルカ、次は私と」
話していると、レリアが武器を持ちながら、話しかけてくる
「それじゃあ、私は見とくね」
イオリさんが、邪魔にならないように端の方に座って、見学するようだった
「アルカ君、槍とか使えない?」
「槍? どうしてですか?」
「いろいろな武器の対応を練習したくて」
「なるほど、まあ、多少は使えるけど、多分エレナの方がいいよ」
剣に関しては、エレナよりも実力は格段に上である、その分、ほかの武器はあまり使えないのだが、エレナは違い、多種多様な武器を使うので槍やほかの武器に関しては、エレナに頼んだ方がいいだろう
「え、そうなの? てっきりエレナは剣メインだと思ってた」
エレナは最近、なぜかずっと剣を使っているので、そう思われても仕方がないだろう
「おーい、エレナ」
「ん? どうしたの?」
遠くの方でナナさん、サイカさんと話していたエレナを呼んで、レリアが槍の対応を練習したいと言っていることを伝える
「エレナ、お願いしていい?」
レリアがエレナに相手をしてと頼み込む
「うん、いいよ、ちょっと待っててね、槍だけでいいの?」
「今は槍だけで大丈夫だけど、ほかのものも使えるの?」
「うん、この訓練場にある武器なら全部使えるよ」
訓練場には、大体の木製の武器を置いており、エレナはその武器すべてをある程度は使えるらしい
「すごいね、まあ、今は槍だけで大丈夫」
「わかった、とってくるね」
エレナが訓練場の入り口のところへ走っていき、武器を手に取って戻ってくる
「ありがと、それじゃあ、やりましょ」
エレナがレリアの相手をするので、アルカの出番はなくなる
特にやることもないので、ナナさんたちのところに行き、話しかける
「二人はやらないんですか?」
ふたりは、訓練場に来てから一回も武器を握っていないので、手合わせをしないのかと質問をする
「うん、私は大丈夫かな」
「私も、特にする必要もないし」
「そうですか」
特にイオリさんとは違いどうやら手合わせの相手に困っているわけではないようで、今は見学だけするようだ
「あ、そうだアルカ君」
「はい、なんですか」
「今日ちょっとエレナちゃん借りていくけど、いいかな?」
「? どうぞ?」
なぜ、エレナを連れていくのに、アルカに許可を求めるのかわからないが、許可を出す
それから、エレナとレリアの手合わせを見ながら、たまには魔法の練習をしようと、いろいろな魔法を練習していく
「[ファイア]「ウォータ」」
一度、試してみたいことがあり、火魔法と、水魔法の簡単なものを片手ずつに作り出す
(これ、合わせるとどうなるんだろう)
火魔法と、土魔法などの組み合わせは、あるのだが相反する属性の魔法を、組み合わせるのは特に聞いたことがない、なので、どのようなことになるのか気になり、試してみる
(その前に、何が起こるかわからないし一応)
「[魔楼蓋]」
異能を使って、周りに何が起こっても被害が出ないように結界をはる
「これで良し、それじゃあ」
準備も終わり、さっそく魔法を組み合わせる
すると
「わっ」
魔法を組み合わせた瞬間、爆発が起こり、目の前が真っ赤に染まる
「あつつ」
あまり大きな魔法ではなかったので、爆発自体は大きくはなく、威力もなかったが、髪の毛や服が少し焦げてしまう
「[回帰]」
そのままは嫌なので、異能を使って、元の状態に戻す
「何がおこったんだろう?」
結果は不思議なことになり、考えていると
「おーい」
隣から声が聞こえ、そっちを見てみると、イオリさんが魔楼蓋の外からこっちを見ていた
「解除、どうしたんですか?」
魔楼蓋を解除して、イオリさんの声に反応する
「さっきの爆発、どうしたの?」
どうやら、先ほどの爆発が気になり、様子をうかがいに来たようだ
イオリさんに、先ほど行ったことを伝え、なぜそのようなことが起こったのかわからないと伝えると
「水蒸気爆発じゃないかな?」
「水蒸気爆発?」
「えっと、詳しくはわからないけど、確か水に高温のものを入れると起こるんだったっけ」
イオリさんが先ほど起こったことについて教えてくれる
「なるほど」
魔法の失敗ではないことに、少しホッとする
「おーい、終わったよー」
エレナとレリアが、手合わせを終えて、こちらに戻ってくる
「それじゃあ、そろそろ帰ろうか」
空も暗くなり始めたので、帰る用意をして、訓練場を後にする
「それじゃあ、また明日」
エレナもレリアも、三人と一緒にどこかに行くらしく、訓練場を出たとこで別れる
「あ、アルカ」
「ん?」
「明後日、アルカの誕生日だから、私の家に来てね」
「うん、わかったよ」
明後日は、アルカの誕生日であるので、以前に言っていた、エレナの手料理を作ってくれるのだろう
少し楽しみにしながら、帰宅する




