イオリ・モエ
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side:アルカ・ロワール
なんだかいきなり手合わせをお願いされ、半ば無理やり訓練場の真ん中に連れていかれる
「なんですか? いきなり」
まだ受けるかどうかも行っていないのに、連れていかれたことに少し困惑する
「いきなりすいません! さっきのそっちでやっていたのがすごくて!」
ものすごく興奮した様子で言ってくるが、何を言っているかよくわからない
「お、落ち着いてください」
なんとか相手を落ち着かせて、しっかり説明してもらう
「ふう、すいませんでした」
「それで、どうしたんですか?」
「先ほどのそちらの組手を見ていたんですけど、それでですね、ぜひ私も手合わせをしていただきたくて」
またしても興奮した様子で近づいてくる
「どうですか!?」
顔を近づけてきて、アルカの反応をうかがってくる
「ま、まあ、別にいいですけど、少しだけですよ?」
そろそろ帰ろうとしていたし、夕食の時間も迫っているので、そこまで時間はないが、一応願いを受けることにする
「ありがとうございます! 友達では物足りないと思っていたところなので、助かります!」
後ろには、同じ制服を着た生徒が何人かいたのだが、どうやらその中では一番強いらしく、相手をできる人がいなかったようで、そんな中に自分を見つけて、いてもたってもいられなくなったらしい
「あ、申し遅れました、私、イオリ・モエっていいます」
「僕はアルカ・ロワールって言います」
手合わせを行う前に、お互いに自己紹介を行い、それぞれの位置につく
そして、位置についた時に、ふとあることを思い出す
「そういえば、木剣壊れてるんだった」
先ほどのレリアとの組手で自分の木剣を壊しており、今ほかのものはもっていないので、戦うことができない
「すいません」
「? どうしたの?アルカ君?」
「実は、いま組手用の木剣を持ってなくて・・・」
「えーーー、それじゃあできないってこと!?」
イオリがすごく驚くようにそういいながら近づいてくる
「まあ、そうなりますね」
「そんなあ・・」
組手ができないと分かると、すごく落ち込み、肩を落とす
「そうだ! 真剣でもいいので!」
イオリが良からぬことを提案してくるが、お互い、けがをさせるわけにはいかないので、その提案には乗ることはできない
「けがの心配なら! 大丈夫なんで!」
そういい、イオリは後ろから同じ制服の女性をこちらに呼ぶ
「モエちゃん、どうしたの?」
「ナナの回復魔法って、どれくらいの傷治せる?」
「うーんと、手とかはとれても、くっつけることならできるよ」
「だって、どう?」
「どうと言われても・・」
「お願い!」
イオリが手を合わせながらお願いしてくる
「少しでも当たれば終わりでよければいいですよ」
条件を決めておかねば、大けがをするまでやりそうな雰囲気なので、そう条件を付ける
「はい! 大丈夫です!」
一発でも当たれば終わりではあるが、組手ができると分かるとすごくうれしそうな顔になる
「それじゃあ始めましょう」
虚数空間からいつも使っている剣を取り出し、構える
さすがにルークさんからもらったカタナはまだ使い慣れてはいないので、そっちを使うのはやめておく
「行きますよ!」
いつもは、相手の動きを見てから動くので、自分から距離を詰めるというのはほとんどないのだが、どうやら相手も待ちの型のようなので、そうなった
「うおっと!」
一応結構な速さで詰めていき、剣を一振りするが、ぎりぎりのところでよけられてしまう
「おお、はやい!」
「今のよけれるんですね!」
おそらく反応もできないであろうと思ったのだが、反応してきたことに少し驚く
「ふふ、勘がいいだけだよ」
どうやらべつに見えていたわけではなく、第六感のようなもので、なんとかよけれたようだ
「なるほど」
勘であるなら、そう何度もよけられないだろうと思い、すぐさま攻撃に移る
一直線にしての方に向かっていき、剣を振るうと見せかけて、そのまま通り過ぎる
(勘? 多分違うな)
今のは、本当に最初の攻撃が勘で防げたのかどうか見極めるため、攻撃するつもりで向かい、少しでも何か反応をした瞬間に攻撃をやめ、通り過ぎることに切り替えようと考えていた
その結果、イオリがアルカの攻撃を防ごうとした瞬間に、攻撃することをやめ、後ろに回ることにした瞬間に、イオリの手は止まり防ごうとすることをやめたのだった
(読心、もしくは未来予知か?)
勘で動けているのであれば、今のような行動はできないだろう、なので、ほかの選択肢をかんがえる
もし未来予知の類の能力を持っているなら、結構厄介である
何をするのかがわかっているので、フェイントも聞かないので、どうすることもできない
「はっ!」
イオリは、アルカが後ろにいるのを確認すると同時に、剣を握りなおして、突きを連続で繰り出してくる
突きは早ければよけるのが難しいが、イオリの突きは何とかよけられるくらいの速さであったので、一発も当たらずにすんだ
「すごいね! 今のをよけるなんて、私のクラスのみんなはよけれないのに!」
イオリの突きは普通に早く、おそらく生半可な訓練している人ではよけることはできないだろう
「まあ、さっきの突きよりも早い攻撃なんて、たくさん見てきたしね!」
しゃべっている間も、イオリの攻撃はやまなく、何度か危ない攻撃をしてきた
(何度かよけた先に攻撃が来る、よけるのに思考はしていないから、未来予知の類だね)
災群生の森での大概の魔物は、一撃でも食らうと身動きができなくなったり、攻撃を食らった個所が使用できなくなったりと、攻撃を食らうことができない場所でアルカは戦ってきている
であるので、アルカは攻撃をよけることに関しては頭で考えずにほとんど脳の反射で行うことができる
つまり読心では、アルカが避ける先をよんで攻撃などできない
(でも、精度は良くないみたいだ)
もし完璧に未来を見ることができるなら、攻撃をよけることなどできないだろう
(身体能力的にもそれほど高くない、それなら)
未来予知に頼っているようなら、未来をよんでもよけられないような攻撃をすればいい
全身の力を抜き、攻撃よりも早く動くことに意識を向ける
「うそお!」
どうやらイオリは未来を読んで、その結果に驚いたようだ
そして、イオリが驚いた瞬間に、アルカは動き出して、一瞬にしてイオリの右側すれすれに移動し、剣を振りぬく
「きゃあ!」
イオリは何とか防いだようだが、大きく体勢を崩して、後ろに倒れそうになる
そこにアルカは追撃をするために再び素早く移動し、イオリの倒れ先に移動し、
「もう終わりでいい?」
イオリを受け止めながら、首元に剣を当てる
「うん、降参します」
イオリが負けを認め、剣を下ろしてパッパッと服についた汚れを落とす
「ふう、久々にいい汗をかいたよ」
イオリが額の汗を拭きながら満足げにつぶやく
「そうだアルカ君、もしかして私の能力気づいたの?」
「まあ、なんとなくはね」
深くは追及しない、あまり他人の能力を聞くことはいいことでもないし、教えてくれるとも思わないからである
「それじゃあ、もう帰るから、帰るときは戸締りとかする必要ないから、型付けだけして帰るといいよ」
「わかった! ありがとうね!」
もう用もないので、観戦していたエレナたちのところに戻る
「お疲れさま、あの子、強かった?」
レリアが、すぐさまイオリのことを聞いてくる
「うん、厄介な能力だったよ、多分あの子、イオリは礼王祭にも出るだろうね、もしかしたらエレナたちも戦うことになるかも」
「へえ、そうなんだ」
なんだか少し、エレナが不機嫌そうな気がしたが、気のせいだろうと思い荷物をもって訓練場を出る
「それじゃあ、私たちはこれから用事があるから、またね」
エレナの機嫌は元に戻っており、いつものエレナに戻っていた
エレナとレリア、二人はこれから用があるようで、学園の門ですぐにお別れになる
「何でエレナは機嫌悪かったんだろう」
特に何かした覚えはないのだが、もしかしたら知らないうちに何かしてしまったのだろうか
エレナが不機嫌になった理由を考えながら、アルカは帰宅する




