礼王祭の準備
・55・
side:アルカ・ロワール
礼王祭についての説明会が行われ、教室に出場者全員があつめられる
「それじゃあ、そろそろ始めましょうか」
教壇には学園長であるシーラ先生が立っており、学園長自ら説明を行う
「手元の一番上の紙を見て頂戴」
各自の机の上に、何枚か紙がおかれており、そのうちの一枚を手に取り、それに目を通す
「見ての通り、今回の礼王祭はトーナメント制になってるわ」
毎年、礼王祭は違う形式になっており、今回はこういう形式になったようだった
「トーナメント制か~」
すこしこの形式になって残念に思う
もし仮に負けてしまったら、それ以上戦うことができないからだ
「去年なら総当たり戦だったのに、残念だね」
隣に座っていたエレナに、アルカの心を読んだようにそう言ってくる
「ん? 残念? 何が?」
エレナの逆の隣に座っていた、もう一人の礼王戦に出場するクラスメイトのレリアが口を開く
「うん、なんかアルカはできるだけいっぱい戦いたいみたいだから、このやり方だったら少なくなるなって思って」
「そうなんだ、変わってるね」
レリアにはっきりとそういわれるが、普通の感覚から言えば、レリアのような感想になるだろう
大半の礼王祭出場者の目的は、優勝賞品である、王がかなえれるものなら何でもかなえてくれるというものであるので、なるべく戦いたくないと思っているだろう
戦いが多い分、負ける可能性も高くなる、だから極力試合回数は少ないことを願うのが一般であった
「だって、いろいろな学園から強い人たちが集まるんでしょ? 今自分がどの程度なのか、気にならない?」
おそらくどの学園もその学園内で実力が高い人を礼王祭に出場させてくるはずなので、そこで自分がどのくらい戦えるのか気になる
「まあ、それは気になるね」
話しててわかったことがあり、レリアも以外に戦いが好きなようで、ちょくちょくエレナと学園内の訓練場で組手を行っている
「それで、トーナメントの組み合わせなんだけど、さすがに当日に決めていると時間がかかるから、各学園である程度決めることになったから」
そういいながら、大きな紙を前の黒板に張り出す
「この空いているところがあなたたちの入るところよ」
結構な大きさのトーナメント表であり、そのところどころに空白がある
「それじゃあ、ほかに説明しないといけないことがいっぱいあるから、ちゃっちゃと決めていくわよ」
相手も何もわからないので、ここで時間を使う必要もない、なのですぐに決めていくことになる
「ここから一人一枚ずつ引いていってね」
学園長が箱を取り出し、順番に中身を引かせていく
「引いたら書かれている番号のところに自分の名前を書いていってちょうだい」
さっそく三人もくじを引くために箱のところに行き、引いていく
「僕は3番だったよ」
「私は12」
「6番」
アルカは3、エレナが12、レリアが6番となり、トーナメント表を見ると見事に全員違う組のところになっていた
トーナメント表は4つの組に分かれており、その中から優勝を決めるらしいので、優勝者は4人出てくるということになる
「はい、それじゃあ全員かけたわね」
全部の空白が埋まり、ラーサル学園のトーナメント表は完成する
「それじゃあ、次は試合についての説明に入っていくわよ」
やっと礼王祭の試合についての説明にはいる
説明を聞き、要約すると武器はすべて木製のもの、魔法、技能は基本何でもあり、ただし命を奪うようなものは禁止、ポーション類の回復薬は礼王祭中は禁止、つまり勝ち進んでも魔力などを回復することはできないということである
「なるほどね、それじゃあ優勝を目指すならはじめはなるべく温存しなくちゃね」
「そうだね」
初めから全力で行ってしまうと最後の方では体力、魔力の限界となってしまい、戦えるような状態ではなくなってしまうので、うまく調整して戦っていく必要がある
「それじゃあ、何か質問がある人は?」
説明がひと段落し、休憩がてらしつもんの時間となり
「はい」
「はい、レリアさん」
「武器は、何個でも持っていいの?」
レリアは選抜戦の時は弓を使っていたが、実は戦闘中、近距離は剣で、剣が届かない距離では弓を使い分けるスタイルであるので、それをしてもいいのかを確認していた
「ええ、問題ないわよ、いくつでも持ち込んでもいいわよ」
「わかった、ありがとうございます」
「それじゃあ、ほかに質問は?」
武器の複数所持を認められたので、もう聞くことはないとレリアは着席する
(そうだ、異能は使っていいのかな?)
異能は魔法ではないので、一応禁止されていないのだが使っていいのかどうかわからない
(でも、これは学園長に聞いてわかるのかな?)
学園長が異能のことを知っているとは思わない、多分ルークさんも学園長には話していないのではないだろうか
(そうだ)
ひとつ、思いついたことを質問しようと手を上げる
「はい、どうぞ」
「試合中、魔法や技能以外、そうですね、固有技能なんかは使っても大丈夫なんですか?」
この聞き方なら、不自然ではないので、気にせずに質問ができる
「そうね、一応は使っても大丈夫だけど、使うなら事前申請が必要になるわ」
おそらく公平性の問題でそのような形になったのだろう
固有技能なんかは、唯一無二の力であるので、持っている人は少ないが、非常に強力なものが多いので、もし持っている人が出場する場合、確実に相手が不利になる
なので、事前に申請し、対戦相手にはどのような力なのかを説明することになっているそうだ
「ほかに聞きたいことは?」
「大丈夫です、ありがとうございます」
聞いてみたものの、申請する場合、どのように申請するのかわからない、自分でも異能がどのようなものかわかっていないからである
(まあ、ルークさんに聞くのが一番早いか)
ルークに聞くのがいいと思い、今はとりあえずこのことは後に回す
「それじゃあ、説明を再開するわね」
休憩も終わり、再び学園長が話を始める
説明は主に礼王祭に出場する学園の説明、大体どのあたりに宿泊しているのか、くれぐれも問題は起こすな、といったような話であった
「それじゃあ、これで終わりよ、お疲れ様」
説明がすべて終わり、みんなが教室を出ていく
「これからどうしようか」
「うーん」
今日は特に授業もないので、これからの予定はない、なのでどうしようか迷っていると
「ねえ、二人とも」
「ん?」
「どうしたの?」
二人の後ろから声がかかり、振り返るとレリアが武器を持って立っていた
「手伝って」
「何を?」
レリアは基本、戦闘中以外はあまりしゃべらない、だから時々わからないことを言われるのだが、今回も分からないことを言ってくる
「武器選び」
「武器選びって、いっつも使ってるやつは?」
組手の際は、いっつも木刀と矢じりのついてない矢を使っていたのだが、それでいいんじゃないのかと思い、言ってみる
「うーん、なんか使いにくいから、いや」
「そうなの、別に私はいいよ?」
「僕も大丈夫だけど、弓なんかわからないよ?」
「大丈夫、組手の相手をしてもらうだけだから」
「なるほど」
弓については一切わからないが、組手については手伝えるので、レリアのお願いを聞くことにする
「ありがとう、それじゃあ行こ」
レリアが二人の手を引いて、訓練場の方に向かっていく
訓練場に到着し、入り口のところで何本か剣と矢をもって中に入っていく、訓練場の木刀は基本的に勝手に持って帰ってもいいものであるので、その中から選ぶことにするようだ
「弓の方は?」
「いくつか持ってきた」
弓の方は訓練場に置いているものは数も少ないし、持ちだし現金であるので、自前のものを持ってきている
「弓の方は、この矢が一番使いやすいものを選ぶ」
持ってきていた弓は、短弓ち長弓を数種類取り出して、並べていく
「それじゃあ、まずは弓から決めていこうか」
「じゃあ、弓は私がやるよ」
弓の方の組手は、同じく弓を使えるエレナが担当し、剣の方はアルカが担当することになった
弓の方が終わるまで、特にすることもないので、自分の木刀を取り出し、手入れをする
手入れと言っても、柄をやすりで削って持ちやすくしたりといったものである
それもすぐに終わったので、次は黄昏の森などで使っている剣の方の手入れを始める
「ルークさんに打ってもらったこの剣、確かカタナ、だったっけ、切れ味はいいんだけど、少し使いづらいんだよな」
ルークさんに剣の手入れを教えてもらうときに、ついでにルークさんは自分に向けて一振りの剣を打ってくれた、この剣は異能の力を最大限に使えるように作られているらしいが、普通の剣と何が違うのかはぱっと見ではわからない
何度か使ってみたが、切れ味はよく、異能の力を通しやすいのだが、少しでも刃を入れる角度を見誤るとはじかれてしまう、なので、すこし使いにくいと感じる
まず初めに柔らかい紙で刃全体をふいていき、血や油をふいていくふいていく
そのあとに打ち粉を付けていき、それを全体に広げていくようにぬぐっていく
それを何度か繰り返し、汚れもなくなり刃紋がはっきりと出てきたところでこの工程を終えて、次の工程に移ろうとすると
「すいませ~ん」
入り口の方から声が聞こえて、そっちの方に目を向ける
「誰だ?」
入り口のところにいたのは、制服だろうか、全員が同じ服を着ている人たちであった
「何? どうしたのかな?」
組手をしていた二人もアルカの元に戻ってきて、何事かとうかがってくる
「さあ? とりあえず話聞いてくるよ」
こちらを呼んできたということは、何かあるということだろうと思い、そちらの方に向かっていく
「どうかしましたか?」
「あ、すみません、私たちレクセア学園の生徒なんですが、この学園の施設を使ってもいいって言われてるんです、でも使い方がわからなくて」
レクセア学園はたしか、アイオス国にある学園だったはずだ
「そうなんですか、訓練場を使うときは、空いてるときはそのまま使っていいですけど、誰かが使ってるときは、そこに名前を書いて予約するんです」
「へえ、そうなんだ、ありがとう! じゃあさっそく書こっと」
さっそくアルカの言葉に従って、予約しに行こうとするが
「よければ、一緒に使いますか?」
もともと訓練場は授業で使うところであるので、大きく作られている、なのでいま、三人で訓練場を使っているので、スペースが有り余っている
ということで、半分ほどを貸し出してもいいくらいである
「いいの!?」
「一応、ほかの二人に聞くけど、多分大丈夫だと思います」
「ありがとう!それじゃあお言葉に甘えてもいいかな?」
礼を言いながら、離していた女性の後ろにいた人たちが訓練場に入っていく
「それじゃあ、わからないことがあれば聞いてください」
そういい、二人の元に戻っていく
「なんだったの?」
戻って、何があったのかを伝え、訓練場の半分を貸したことを伝える
「大丈夫だった?」
無断で貸したので、少し申し訳なく思いながら貸してもよかったのかを聞く
「全然大丈夫、こんなに使わないし」
半分でも十分動き回れるくらい広いので、貸しても問題がなかったようだった
「それじゃあ、弓の方はだいたい決まったから、次は剣をお願い」
話をしている間に、弓を選ぶのはある程度終わったらしく、次は木剣を選ぶのに入る
「どんなの使うの?」
「とりあえず、これくらいかな」
レリアが初めに手に取ったのはショートソードと同じくらいの大きさの剣であった
女性からしたらあまり長いものを使うとその分重量が増すので、遠心力によって振り回されることがある
「それじゃあ、とりあえず軽めにしようか」
最初から本気でやってしまうと、後に響くので、軽い手合わせ程度に納める
「うーん、微妙だなあ」
どうやら、あまり満足していないようなので、次の剣を手に取る
今回は先ほどと違い、ロングソードを手に取っていた
「長剣で大丈夫なのか?」
「多分、問題ない」
その場で軽く素振りをして、問題がないことを確認する
「始めよ」
こちらも軽く打ち合っていき、いいところで手を止める
「どうだった?」
「うん、さっきよりいい」
どうやらショートソードより、ロングソードの方が相性がいいらしく、その中から一番いいものを選ぶことになった
それから何回か同じようなことをしていき、やっといい感じの剣が決定する
「それじゃあ、これで本気でやろ」
剣に慣れるために、本気でやろうと提案してくる
「わかった」
こっちも、体を動かしたくなってきたので、その提案を受ける
「それじゃあ、いく」
定位置につき、合図を出した瞬間に、レリアが動き出す
まず初めじゃレリアの大振り、しかし、それほど検束ははやくなかったので、受け止めるのではなく、よけることにした
そして、その大振りで隙だらけのところに剣を振るうが、その場に伏せて、剣をよける
その伏せた状態から足払いを仕掛けてくる、ただ、その動きはある程度想定内であったので、軽くジャンプしながら、レリアに攻撃をしていく
「いた!」
レリアはよけようとしたが、間に合わなく、アルカの剣が当たり、転がっていく
どうやら転がることによってある程度衝撃は緩和したようで、すぐに立ち上がる
「やっぱり強いね」
レリアが軽く感想を言ってきて、再び距離を詰めてくる
今回は細かな攻撃をフェイントを織り交ぜながら繰り出していく
かろうじて、すべての攻撃が反応できるくらいの速さであるので、当たることはないが、時々絶対によけられないような攻撃が来るので、それは剣で受け止めていく
アルカの方は、ショートソードくらいの大きさであるので、レリアの木剣と打ち合いすぎると、こっちが先に剣が折れてしまう
なので、なるべく受け止めたくはないのだが
パキ
何度か受け止めていると、剣の方から嫌な音がして、見てみると、少し割れ目が入っていた
あと何度受けれるかわからないので、すきを見て一気に終わらせようとするが
「意外と鋭い攻撃だ!」
何度か攻撃をはじこうとするが、はじく瞬間にいい感じに受け流されてうまくはじくことができない
それならと、もうはじくことはあきらめて、向こうの攻撃を防ごうと、剣と剣が触れた瞬間に、威力をそのままに滑らせて、相手の体勢を崩す
「はい、終わり」
レリアが姿勢を崩した瞬間に、剣を持っている右手を後ろに組み伏せる
「んー、強い」
「結構危なかったよ」
最後の剣を滑らせるのも、少しでも間違えると、そのまま直撃してしまうので、ある程度かけであった
「そう、ならいい」
レリアが満足したのか、立ち上がり、タオルを取り出してベンチに座る
そして、おそらくもう今日は終わりだと思って、アルカも剣を直していく
「ひび割れたか、もう使えないな」
少し剣に割れ目が入り、次に使ったら割れるだろうと思い、訓練場のごみ置き場にそれを捨てることにした
「それじゃあ、そろそろ帰ろうか」
もうすることはなくなったので、荷物をまとめて、帰ろうとすると
「あの! すいません!」
後ろから声がかかり、その声の方を見ると
「なんですか?」
「あの! ぜひ、手合わせをお願いしたいのですが!」
先ほどのレクセア学園の生徒が話しかけてき、興奮した様子でそういってきた




