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麗しき世界に始まりを告げよう  作者: 森のスダチ
第2章  学園編
55/128

手を引かれ

・53・

side:ルーク・ヴァレンティ



 「魔王因子?」


アイシャが聞いたことのない言葉に反応し、聞き返してくる


 「ミーシャにだけ伝えたけど」


このことは、発覚してからすぐにミーシャにのみ言っている


 「僕はね、ずっと昔、ある男を殺しているんだよ」


魔王因子について関係のある話をしていく


 「その話は、私からするにゃ」


今まで黙っていたミーシャが口を開く


 「? どうして?」


ルークの話であるのに、ミーシャが話すことについて疑問に思い、アイシャが口に出す


 「まあ、ミーシャにも関係ある話であるからね」


 「そうなんですか」


軽く説明し、ミーシャが話すことについて納得する


 「・・・・あれは、私が冒険者として生活していたときにゃ」


記憶が戻ったことにより、少し戸惑いながらも、話し始める


ミーシャは一度、ヴァレンティ家をでて、数年間冒険者として生活していた時があり、その時の話である




side:ミーシャ・ヴァレンティ


 「指名依頼にゃ?」


適当に到着した国で、何かいい感じの依頼がないか探すために冒険者ギルドに立ち寄ったところ、いきなりそんなことを言われた


 「はい、ぜひSランク冒険者であるミーシャ様に受けていただきたい依頼が!」


興奮気味にそういいながら、一枚の紙を出してくる


 「よく私がミーシャだってわかったにゃね」


 「それはもちろん! Sランク冒険者なんて、だれでも知ってますよ!」


 「フーン、そうかにゃ」


基本的に、装備として、帽子やマスクなどを付けていることが多く、あまり人前で素顔を出していることは少なかった、であるのにこの受付の女性は装備をほとんどつけず、楽な格好でいた姿を一目見てミーシャであると見破った


 「それで、依頼の内容は何にゃ?」


 「はい、こちらになります」


依頼の内容はこのようになっていた


 リニア王国近郊に正体不明の生命体を発見、その対象の調査


 「フーン、まあ、いいにゃ」


疑問はたくさんあるが、大して依頼に影響はないので、気にしないことにし、依頼を受けることにする


 「それでは、今から向かいますか?」


受付の女性がそう聞いてくる


 「いいや、準備してから行くから、明日になると思うにゃ」


きちんと準備をしてから向かうと説明した後、ギルドを後にして、すぐに依頼の場所に向かうことにする


なぜ、明日行くと言いながら、すぐに向かっているのかというと


 (そこかしこから、視線を感じる、この感じは、監視?)


視線を感じて、すぐにそちらの方向を向くが、目を合わせた瞬間に視線をそらされる


Sランク冒険者が珍しく、見ているのだとしたら、すぐに目をそらす必要もない


それに、目を合わした瞬間に目をそらす、普通の人なら見られていたことに気付かないくらいの反応で、である


それは外だけでなく、ギルドの中でもそうであった


 「[インビジブル]」


監視されているのかはわからないが、何か嫌な気がするので、魔法で完璧に姿を消して移動することにする


そして、誰にも気づかれないまま、国を出て、依頼の場所に到着する


 「このあたりのはずにゃ」


依頼書に書かれた場所に到着するのだが、あたりには特に何かいる雰囲気もない


 「[フライ]」


風属性の魔法を使って、空から探すことにして、木よりも高い位置まで上がっていく


 「んー?何もいないにゃ」


辺りには依頼の生命体どころか、魔物がほとんどいない


 「まあ、一回降りるにゃ」


フライの魔法は、結構魔力を使うので、一旦魔法を解くことにして、地面に降りる


 「! しっ!」


地面に降りた瞬間に、真後ろに何かの気配を察知して、とっさにナイフを振りぬく


 ガキッ


しかし、その振りぬいたナイフは止められてしまう


 「!?」


振り向いて、何かがいた方向を見ると、冒険者ギルドで出会った受付嬢であった


 「・・・」


ただその受付嬢はニコニコとしながらこちらを見つめながらじっとしていた


 「やっぱり、何かおかしいと思ったにゃ」


一目見た時から、この受付嬢は怪しいと思っていた、自分のことを一目見て気づいたこと、表情が全く変わらないこと、そもそも目に光が入っていなかった


そして、今鑑定して気づいたことがある


 「死体、にゃね」


鑑定結果は、ただ死体とだけ出ていた


 「ゾンビ? それにしては状態が良すぎる」


見た目はゾンビには見えないが、死体が動いている以上、ゾンビであるのは確定である


 「ゾンビなら、もう手遅れにゃ」


死体状態なら、蘇生魔法が成功する可能性はあるが、ゾンビになった時点で、もう蘇生魔法は意味をなさなくなる


なので、ゾンビになった事態で魔物認定となり、討伐対象になる


 「戦闘力は大したことはないにゃね」


動きも遅く、ただ反射神経がよく力の強いだけなので、対処は簡単であった、首を飛ばし、そのあとに一応頭をつぶしておく


 「はあ、なんか面倒ごとに巻き込まれそうな予感にゃ」


なぜ受付嬢がゾンビであったか理由を考える


 「! 人間、いやゾンビの反応かにゃ?」


周りにいきなり多数の反応が現れ、こちらに向かってくる


 ガクッ


 「? 何にゃ?」


いきなり足に力が入らなくなり、立っていられなくなる


 「意識ははっきりしているにゃ、ただ力がほとんど入らないにゃ」


原因不明の状態に、少し戸惑うが


 「すんすん、匂いは問題なし、味も大丈夫、それじゃあ神経毒かにゃ」


触覚以外の五感に問題はなし、であるならば選択肢は絞られてくる


 「これかにゃ?」


先ほど仕留めたゾンビを調べると、かすかであるが変なにおいがする


 「[鑑定]」


ラルフの毒薬:調合によってさまざまな毒に変換可能な花の蜜、ラルフの花の蜜を調合したもの

    効果:神経にのみ作用し、対象の体の自由を徐々に奪う


 「えーっと、解毒薬は・・・ないにゃね」


今手元にあるのは、軽い毒に聞く解毒薬しかないので、対応ができない


 「それなら、はー、はーー、はー」


特殊な呼吸法によって、独の周りを少しでも遅くして、完全に動けなくなるまでの時間を少しでも伸ばす


ただ、この呼吸をしている間は、しゃべることはできないし、呼吸を乱すような行動はできない


 (ゾンビ程度なら、なんとかなるけど、強い反応がいくつかあるにゃね)


もう見える程度まで反応が近づいてくる、その中に強い反応や、変な反応が数個あった


 「セリンさま、発見いたしました」

 

 「うむ、ご苦労」


最初に姿を現したのは、執事のような恰好をした老人であり、その後ろからいかにも偉そうなひとが出てくる


 「・・・」


呼吸を乱さないために、しゃべることはできない、なので紙とペンを取り出して、そこに文字を書き、放る


 「何者か?、と、このお方はリニア王国の国王、セリン・フォン・ウル・リニアと申す」


隣の執事が紙を受け取って、その返事を口にする


 「・・・・」


どうして、ここにいるのか、と紙に書いて、放る


 「それは、私から伝えるとしよう」


 「かしこまりました」


執事を後ろに下がらせて、王自ら前に出る


 「堅苦しいしゃべり方はもう終わりにするよ、面倒くさいし」


いきなり口調も変わり、雰囲気も変わる


 「毒も解いてあげるね、[中和]」


王が魔法を唱えて、体に力が入るようになる


体がちゃんと動くかを確認し、相手に質問する


 「それで、目的は何にゃ?」


 「ああ、目的ね、君が欲しい」


軽い感じでそう言ってくる


 「それは、嫁になれてきな事にゃ?」


いきなり告白をされて、びっくりするが


 「いいや?言葉の意味だよ、君が欲しいんだ」


 「言ってる意味が分からないにゃ」


どう聞いても告白であるが、そうではないらしい


 「この体はもう限界だ、それにもう飽きたし、次の体が欲しくなってね、丁度いいところに君が来たから、もらおうと思って」


 「?」


どうも言っている意味が分からないが、何か気味が悪く感じ、逃げる体制をとる


 「逃げちゃだめだよ?逃げたら、リニア王国の人間全員殺しちゃうよ?」


 「知ったこっちゃないにゃ、私には関係ないにゃ」


別に、思い入れのある国でもないので、そこにいる人間が死のうが別に気にしない


 「うん、そういうと思ったよ、それじゃあ、ガルシア王都の人間も殺すことにするよ」


 「それは聞き捨てならないにゃ」


ガルシア王都は今ミーシャが住んでいるところであるし、大切な家族のいる王都である


 「ほう、ならどうする?」


 「殺すことにするにゃ」


家族に危険があるかもしれない以上、放っておくことはできない


 「いいねえ、どれくらい強いのかも、確かめたいしね、[堕落][失楽][暴虐]」


相手が何かを唱えると、体がいうことをきかなくなり、力が抜けていく


 「なんだ、この程度か、それなら、いらないね」


王がそういいながら、後ろに振り返り、歩いていこうとする


 「ま、つ、にゃ」


体はもうほとんど動かないが、なんとか力を振り絞り、声を出す


 「お、まだ生きてるんだ、しぶといね」


相手が振り返り、一度こちらを見たが、そう一言だけ口にして、再び歩き出した


もう、意識を保つことも難しくなっていき、目を閉じる


 「ごめんにゃ、ルーク」


ミーシャの、心臓は鼓動を止める


 パリン


そうして、心臓が止まると同時に、懐の何かがはじける


 「約束、守ってもらうね」


 「ん?誰だい?」


 「[無へと帰せ]」


 「う、ううん、あ、ルーク」


一度、死んで、目が覚めると、そこには、恋人であり、命の恩人のルークがいた


 「白輝石がはじけた、ということは君は一度死んだことになる、死んだら家に帰るって約束だったよね」


 「はいにゃ」


怒りながら、ルークはそういう、恋人が一度死ぬほど危険なことをしているのだから、怒るのは当然である


 「で?どうして死んだの?」


 「・・・・」


珍しく怒っているルークに、少し怖くなり、うまく言葉が出ない


 「まあまあ、そう怒らないで上げてよ」


そうして、黙っていると、戻ってきた国王が話しかけてくる


 「この子を殺したのは僕だよ、ただ死んだと思ったらよみがえった、どういうことかな?」


 「そうか、君か」


ルークがそういって、立ち上がり、次の瞬間には、国王の頭が胴体と別れてルークの手元にあった

 

 「お?」


それに国王は何が起こったのかわからないと言って反応をする


 「誰かは知らないけど、楽に死ねると思わないで」


よく見てみると、首と、胴体の方からは血が1滴持たれていなかった


 「[ナイトメア]」

 

ルークが能力を発動する、すると、ルークが手にもつ国王の顔が徐々に白髪に代わり、しわくちゃになっていく


 「まずは精神を殺す」


 「はは、はは」


国王が、かすかに笑いながら、ルークをじっと見ている


 「もういいか、さようなら、名前も知らないごみが」


ルークが手に持つ国王の頭を上に投げ飛ばし、魔法を使って、跡形なく燃やし尽くす


 「さあ、ミーシャ、帰るよ」


いつものルークに戻っているようで、やさしそうな声でそう言ってくる


 「うん」


ルークとの約束で一度危険な目に合うまでは自由にしてもいいが、何かあったら連れて帰ると言われていたので、おとなしく帰ることにする


 「それじゃあ、つかま・・」


そこまで行ったところで、ルークさんの動きが止まる


 「ミーシャ、離れて」


 「え、わ、わかったにゃ」


その言葉にしたがって、ルークから距離をとる


そして、ルークをじっと見ていると


 「[ーーー]」


何かを唱えだして、そしてこちらに近づいてくる


 「わっぷ」


いきなり抱き着かれて、耳元でつぶやかれる


 「よかった、ミーシャがあいつを殺さなくて」


 「? どういうことにゃ?」

 

 「あいつの正体は、[憤怒の魔王]だった」


 「憤怒の、魔王?」


その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になる


ミーシャは魔王のことを知っており、あることを思い出す


魔王とは勇者にしか完全には殺せない存在、もし勇者以外のものが殺したとき、その意思は殺したものに引き継がれる、と


 「魔王、魔王・・・」


信じられないと、魔王という言葉を繰り返す


 「落ち着いて、聞いて」


ルークさんがミーシャを抱き寄せて、安心させる


 「今の僕はまだルークだ」


 「本当?」


 「ああ、力である程度抑えれる」


その言葉を聞いた瞬間に、なんとか冷静さを取り戻す


 「ほとんどの力を魔王の意思を抑えるのに使ってるから、何も起こらなければ特に問題はない、いつまでも抑えることはできる」


 「・・・」


冷静になって、改めてほかのことを考える余裕ができて、こう思う

 

 「私のせいで、ルークに」


もし、ミーシャが出会わなければ、ルークさんが魔王を殺すことはなかった

 

 「君のせいじゃないさ、ろくに相手を調べなかった俺が悪い」


ルークが、ミーシャに気にしないように言うが、それは無理であろう


 「さあ、帰ろう」


 「・・・」


 「このことは、二人だけの秘密だ、決して誰にも言わないで」


ルークに手を引かれ、家へと帰っていく





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