VS 嫉妬の魔王
・51・
side:アルカ・ロワール
「息子・・ってことは!」
以前に聞いた話を思い出し、アイシャ先生の子供の話を思い出す
「そうよ、嫉妬の魔王よ」
「ははっ、そんな名前で呼ばないでよ、昔みたいにシン、って呼んでよ」
「あなたをシンなんて言わないわ、あの子を返して」
「返せと言われても、僕はシンだよ」
二人が話をしていると思うと、アイシャ先生が後ろに下がり、アルカの近くにくる
「アルカ、手を貸して」
アイシャ先生が、アルカに一緒に戦ってほしいと言ってくる
「・・・は、はい」
少し迷いながらも、引き受ける
「心配しないで、エレナちゃんのところにもミーシャを向かわせてるから」
アルカの懸念を見抜き、アイシャ先生はそういってくれる
「! ありがとうございます、それなら何も心配いりません」
アルカがエレナの元に行くよりも、ミーシャさんが言っているなら何も問題がない、なので時間を気にせずに戦うことができる
「どう動きますか?」
アイシャ先生に、自分はどう行動するのかを確認する
「アルカはあいつに近づかないで、遠距離で攻撃して」
「わかりました」
「その前に私が知っているあいつの能力を説明するわ」
まず戦い始める前に、アイシャ先生が魔王について話し始める
アイシャ先生の知っている嫉妬の魔王の能力は二つ
強取:相手から任意のものを写し取る
写身:触れたものになれる
「私の知っているのはこれだけよ、多分まだ能力を持っていると思うわ」
「わかりました」
「どちらも発動条件は触れることよ、だから絶対にあいつには近づかないで」
任意のものを奪い取るということは、能力なども奪えるのだろう、であるならば魔王がアルカの能力である時断ちを使えたことに納得する
「それじゃあ、いくよ」
アイシャ先生が魔王との距離を詰めていき、戦闘が始まる
「リズは下がってて」
リズは先ほどの魔法でもうほとんど魔力が残っていないだろう、なので巻き込まれるといけないので、リズをなるべく下がらせる
「魔法じゃだめだ」
魔法では、接近戦をしているアイシャ先生も巻き込んでしまうので、攻撃は主に投げナイフになる
「[ベクトル指定]」
アイシャ先生の攻撃の合間に隙を狙ってナイフを投げていく、その際、確実に狙えるように異能を使っていく
「邪魔だなあ」
数回、それを行っていると、さすがに対処されて、投げたナイフを受け止めて、こちらに投げ返してくる
「っと」
しかし、それはアイシャ先生の攻撃をよける合間に行っているので、威力はそれほどではなかった
「アイシャ先生! そろそろ遠距離武器が切れそうです!」
投擲を続けていたが、なかなか当たることはなく、防がれるか、よけられていく、その際、魔王はできる限りのナイフをつぶしていったので、回収できる量が減っていき、ついに手元には一つも残らなかった
アイシャ先生が一度大きく飛び退き、話をするためにアルカの元に下がってくる
「それなら、土魔法で相手の足元を操作して」
「わかりました」
「私のことは気にしないでいいから、次々にお願いね」
相手に聞こえないように小声で会話した後、再びアイシャ先生は魔王に向かっていく
「[アースホール]」
まず初めに、相手が右足を踏み出した瞬間にその足元に小さな穴をあけていく
「おおっと、がはっ!」」
相手にとっては不意打ちであるので、うまく引っ掛かり、体勢が崩れたところにアイシャ先生の攻撃がクリーンヒットする
「いってえ、くくっ」
しかし、ほとんどダメージはなさそうにふるまい、なぜか微笑んでいる
「いいのかい?中身は僕でも、体はシン君のなんだよ?」
アイシャ先生に向かって、そういいながら、武器を手放し、無防備に近づいていく
「・・・」
アイシャ先生は、それに対しては何も答えず、ただじっと、魔王をにらんでいた
「さあ、殺すなら今だよ? この距離なら、攻撃を外すことはないでしょ?」
手を伸ばせば届く距離まで魔王は近づいていくが、アイシャ先生は何もすることはなかった
「無理だよねえ!さっきからの攻撃には、一切殺意がこもっていないんだから、殺す気なんてないんでしょ!」
魔王は、アイシャ先生の首元をつかみながら、持ち上げる
「くっ、れ、[冷血]」
アイシャ先生は、首元をつかんでいる腕に触れて、魔法のような何かを発動する
「おおお!?なんだこれ?」
何か起こったのか、首元から腕を離して、その腕をおさえていた
「あなたの血を凍らしたのよ、これなら腕は凍らせた箇所は使えなくなるけど、死ぬことはないわ」
凍らせただけならば、治癒魔法などでいくらでも治すことができる、なのでこの方法ならとらえることはできるだろう
「私の目的は、貴方の捕獲よ、シンを取り戻すためにね!」
そういい、再び相手に接近し、触れようとするが
「[憎悪]]
相手に触れる直前に、急に視界が真っ暗になる
「なんだ?何も見えない」
単純に、光が入らないのではない、ライトの魔法を使っても、周りが明るくなることはなかった
「ん?」
体に違和感があり、なんだか力が入らないような感じがした
クラッ
次に視界が揺らいで、だんだんと立っていられなくなる
「まずい、意識が」
意識も薄れていき、倒れる寸前に、暗闇は晴れ、視界がはっきりとする
「! アイシャ先生!」
視界が明け、真っ先に目に入ったのは、魔王の前で、ひざに手を置き、今にも倒れそうなアイシャ先生であった
「だ、大丈夫よ」
口ではそういっているが、顔色も悪く、今にも倒れそうであった
「このままじゃあ、やられる!」
あの状態なら、アイシャ先生は動けなく、やられてしまう
なので、助けるために、魔王に切りかかる
「ふっ、いいのかい?僕に近づいて」
アルカが近づいたことにより、能力を奪おうと、手を伸ばしてくる
それを何とか触れられないように躱して、アイシャ先生に肩を貸す
「あ、ありがとう」
「何があったんですか?」
「わからないわ、ただ、体に力が入らないわ」
「僕もです、今はだいぶましですが、さっきまでは立っていられないくらいでした」
少し時間がたてば、特に問題ない間で回復したが、何が起こったのかわからない
「アイシャ先生が、動けるようになるまで、時間を稼ぎます」
「ありがとう、ただ無理はしないで、あと、絶対に殺しちゃだめよ」
「・・・はい、わかりました」
殺してはダメなのは、アイシャ先生の息子の体であるからなのか、念を押される
「いくぞ!」
剣を構え、一気に距離を詰め、剣を振るう
ただ、その瞬間に違和感が襲う
(体が、思うように動かない!)
剣がすこし重く感じ、思った通りに剣を振るえない
「遅いねえ」
魔王は剣をよけ、アルカに触れてこようとする
「はっ!」
幸いにも、なんとか腕をよけるくらいには動けるので、つかまることはなかったが、今の行動で少し息が上がる
「なにを、した?」
「君たちの身体能力を削っただけだよ、思った通りに動けないでしょ?」
どうやら先ほど魔王が行った技はステータスを下げる技であったようで、体が動かしにくい理由がわかる
「ってことで、お母さんが戻る前に、まずは君の能力をいただこうかな!」
相手の能力に、奪う力がある以上、異能が奪われる可能性もある、相手も異能を奪う気でガンガン攻めてくるので、かわすのに精いっぱいになる
「さっきのうちに奪えたらよかったんだけどね!」
そういえば、先ほどは時断ちを使っていた、しかし、それは奪っていたわけではないのかと疑問に思う
「[瞬速]!」
体は動かしにくいが、異能は何も問題なく使えるので、基本的に異能主体で戦闘を行うことにする
ただ、そうなると、体への負荷が大きくなるので、連続使用に気を付けなければならない
「がはっ!」
瞬速で一瞬にして、魔王の背後に回り込み、剣の柄で首の後ろを思い切りつく
「さすがに厄介だねぇ」
すぐさま魔王は立ち上がり、異能を奪おうと距離を詰めてくる
「[瞬速]」
それをよけるために、再び瞬速を使用し、魔王と距離をとる
「! くっ!」
十分に距離を測って移動したと思ったが、瞬速で移動した瞬間に、そこに相手が向かってきており、あと少しのところで触れられるところであった
「あ~、今のは惜しいね」
「ちっ、やりにくい」
やはり、異能を中心にしていると、いつもと違うので少しやりにくい
「アルカ!下がって!」
後ろの方から声がかかり、とっさに反応し、後ろに下がる
「があああ!!」
すると、その瞬間に空中から無数の氷の槍が発生し、魔王に突き刺さる、しかし、その傷はすぐさまふさがっていき、何事もなかったように立っていた
「もう大丈夫よ、ありがとう」
どうやら、アイシャ先生が戦闘ができるくらいに回復したようで、再び前に出てくる
「大丈夫なんですか?」
「なんとかね、アルカは後ろで、安静にしといて」
「いえ、僕も戦います」
「そう、それなら、ぜひお願いするわね」
アイシャ先生も、今のままならどうあがいても敵わないと分かっているのか、一応先生としてアルカを下がらせようとするが、それを断って一緒に戦うというと、了承してくれる
「それじゃあ、行くわよ、くれぐれも力は奪われないようにね」
「はい!わかってます」
今の弱っている状態で、魔王を殺すのではなく、とらえなければならない、それは非常に困難なことであるがやるしかない
「私があの子に触れれば、[冷血]で身動きが取れなくできるわ、ただ相手はそれをわかっているから対策はしてくるだろうし、次は多分触れると同時に奪われると思う、だからチャンスは一回、心臓付近に触れるしかないわ」
「それじゃあ、僕はなるべく相手の身動きを止めることに専念します」
「無理はしないでね」
相手の身動きを止める方法を考えながら、アイシャ先生のサポートを行っていく
「ちっ、面倒だなあ」
魔王は二人の対応をしなければいけなくなり、先ほどよりはやりやすくなる
「・・・」
集中して、相手の隙を伺い、完全にアイシャ先生にのみに意識を向かう瞬間を狙う
(いまだ!)
魔王がこちらを狙った瞬間に、アイシャ先生が魔王の背後に回り、攻撃しようとした瞬間、一瞬アルカから意識を外す、その瞬間に一気に近づいて後ろから相手の両手首をつかむ
「! なに!」
魔王も予想していなかったのか、驚き、アイシャ先生から意識を一瞬外す
「今です!」
「よくやったわ!」
そしてがら空きの胸元に手を当てて、アイシャ先生が冷血を発動する
「[冷血]!!」
そして、次の瞬間には、魔王の体が冷たくなっていき、抵抗しなくなる
「ありがとう、アルカ、貴方のおかげよ」
完璧に動かないことを確認し、戦闘が終了する
「いえ、うまくいってよかったです」
「そうね、力は奪われてない?」
もしかしたら、両手首に触れられた瞬間に奪われているかもしれないので、一応確認しておく
「[虚数空間]」
異能の虚数空間を発動し、中から水を取り出す
「奪われなかったようです」
「よかったわ、それじゃあ、この子を連れていきましょう」
アイシャ先生が、魔王を連れて行こうと、近づき持ち上げようとした瞬間
「はい、だめ」
アイシャ先生の手が何かにはじかれる
「誰!?」
アイシャ先生と、魔王の間に、一人の男が立っていた
「どうでもいい、こいつは返してもらう」
そういい、いきなり現れた男は、魔王にむかって手をかざす
「[送還]」
つぎの瞬間には、その場に魔王の姿も、男の姿もなかった
「くそ!やられた!」
どうやら、魔王の仲間であったようで、救出されたようだった
「どこへ行ったんですか?」
「わからないわ、一切の反応がないから、もうこの辺りにはいないと思うわ」
アイシャ先生は、魔王が消えた瞬間に周辺を探っていたらしいが、どうやら反応はなかったようだった
「嘆いていても仕方がないわ、行きましょう」
「いいんですか?」
「ええ、どうしようもないからね」
アイシャ先生は、何も気にしていない様子をしているが、実際は、そんなことはないだろう
ただ、それに口を出すわけにはいかないので、黙ってついていくことにする
「リズ、けがはない?」
その前に、巻き込まないように隠れさせていたリズを呼びに行き、一緒に連れていく
「どうする?一緒に来る?それとも森を出る?」
「僕はついていきます」
おそらくアイシャ先生は、まだ森の中にいる反応を処理しに行くのだろう、それならば手伝うつもりであるので、ついていくことにする
「リズはどうする?」
「私もいく」
リズもついてくるようで、三人で森の中を進んでいくことにする




