襲撃
・46・
side:アルカ・ロワール
試験が始まり、とりあえず三人で集まり、どうするかの話し合いをする
「どうする?今から向かう?」
「私は今からでも大丈夫よ」
「私も大丈夫」
エレナもリズも、準備は万端らしく、いつでも向かえる状態であった
「それじゃあ、行こうか」
さっそく魔物狩りを始めるために黄昏の森に向かう
「それじゃあ、またあとで」
森の前までは三人で行ったが、そこからは、各々別に行動することになる、その方が点数を稼ぎやすいためである
「エレナは大丈夫だとは思うけど、リズが少し心配だな」
エレナはアルカと同じく近接戦をするので、多分一人でも戦えるとは思うが、リズに関しては、魔法を主に使って戦うので、もしかしたら一人ではきついかもしれない
「最初は近くでいとくか」
もしかしたら一人では危険かもしれないので、少しリズを感知できる範囲で行動し、もし一人がきつそうなら二人で狩りを行おうと思っている
「それにしても前より魔物は弱いけど数が多くなってる」
この前に来た時よりも、魔物の種類は変わっており、ゴブリンやオークなど黄昏の森では生きてはいけないような魔物まで生息していた
「なんか嫌な予感がするな」
アルカがこの森で狩りをし始めたころは、このような魔物どころか、上位種のゴブリンチーフや、ハイオークでさえ見たことがなかったのだが、最近ではそいつらをよく見かける
しかし、森の奥に進んでいくと、いつも通りの魔物が変わりなくいるので、すなわち王都付近で何か起こっているのではと予想する
「まあ、いいか」
考えても分かりそうにないので、とりあえず周りの魔物を狩りながらリズを見守る
「・・・問題なさそうだね」
リズは危なげなく魔物を狩っていっており、助けは入らないだろうと判断し、アルカは森の奥に進んでいくことにする
「強い魔物の方が点数も高いだろうし、ついでに訓練にもなる」
この試験は魔物の数が多くなってきたからそれを減らすために行われたので、本来なら森の浅いところで増えている魔物を狩るのがいいのだろうが、そんなことは説明の時に言われていないので構わず森の奥に進んでいく
「まあ、あれだけ受ける生徒がいれば大丈夫だろう」
あれだけ生徒がいれば三日もあるので最終日にはほとんど狩りつくされているだろうし、それになるべく浅いところの弱い魔物を狩らないでいるとエレナたちがそっちに集中して危険な森の奥に来ることはなくなるだろうと思い、奥に入ってそこの魔物を狩ることにする
「まだ、エレナにはここの魔物は早いだろう」
アルカでさえ、異能を使っていかなければ苦戦するような魔物が多いので、エレナにはここの魔物は危険になる
「いた」
奥に進んでいき、最初に出会った魔物は、獅子狼という魔物だった
その魔物と出会った瞬間に剣を抜いて、相手が気づく前に一気に駆け出して後ろ足を切り落とす
「ギュアアアア!!」
奥に進む前に異能の[隠匿]によって匂いから音、魔力などを消していたので、最初の一撃が気づかれずに入れれる
そして、一発入れて、相手もこちらに気づいたので、攻撃が来る
「っと」
獅子狼は動きがとてつもなく早く、その早い動きからの噛み付き攻撃がとても強力であるので、足を切り落とすことで、機動力を減らすことができる
ただそれでも油断できない速さであるので、気は抜けない
「ここ!」
何度かの攻撃をかわしながら、すきを窺い、タイミングよく剣を合わせる
「ギャウ」
そのまま一気に攻撃し、相手の息の根を止める
「はあ、やっぱりおかしい」
いつものこいつなら、あんなに何も考えずに何度も突進してくるなんてことはない
獅子狼は以外にも頭がよく、慎重なタイプなのでいつも長時間の戦闘になっていたのだが、今回はすぐにけりが付いたので、アルカは疑問に思う
魔物の死体を観察してみるが、それといっておかしな場所などはなかった
「ほかの魔物もそうか?」
他の魔物がどうなっているのかを確かめるために近くの魔物を観察する
とりあえず歩き回り、はじめに出会った魔物はクーと言われるシカのような魔物である
このクーは黄昏の森にいる数少ない友好的な魔物であるので、襲われる必要はない
なので、どこかおかしいところはないか見るために近づいていくが
「うわっ!」
クーに触れようとした瞬間に、いきなり暴れだして、こちらに攻撃してくる
「どういうことだ?」
こちらが何もしていない状態で襲われるというのは、いままでなかったことなので、少し困惑するがよく観察してみると
「息が荒いし、目が血走っている?」
明らかに興奮状態であると見てわかるくらいにいつもとは違う様子であった
「倒すしかないか」
いつもなら倒さない魔物であるので、未知数であるので、慎重に戦っていく
「攻撃がわからない以上、うかつに動けないな」
友好な魔物であるがここにいる時点で決して弱いわけない、うかつに近づいて、攻撃されると一瞬でやられる可能性がある
「きた!」
クーが動き出し、こちらに突進してくる
「[時断ち]」
一瞬の判断で時断ちの応用として、相手に斬撃を当てるわけではなく、何もないところを横なぎする
それはちょうどクーの首の高さのところになっており、そのまま突進してきたクーがそこを通ると、首が落ちる
ただごれの弱点として、効果があるのは切った後1秒もないので、動きが遅い相手にはそこまで使う必要もないくらいであった
クーの動きが以外にも早かったのが助かった
「[魔眼:魔視眼]」
クーの死体が何かおかしいと思い、かすかに魔法のような気配を感じるが目に見えない、なので異能の魔眼を発動し、魔法を可視化する
「なんだこれ」
クーの体には、いばらのようなものが巻き付いており、今もなお締め付けているようで、徐々にクーの死体に食い込んでいく
「なるほど、これのせいで、凶暴になっていたのか」
おそらく、徐々に締め付けられて、それによって興奮状態になったのであろう
「けど、さっきの獅子狼にはこんなのなかったはずだ」
先ほど倒した獅子狼には魔力の気配は一切なかったので、おそらくこのような魔法はかけられていなかっただろう
「誰かがやったのか?人か、魔物が?」
このような魔法、見たことがない
「ここらへんの魔物、全部そうなのか?」
もしこの辺りにいる魔物すべてにこのような暴走させるような魔法がかけられているとすると厄介なことになる
おそらく、見境なしに動いている者に襲い掛かるようになり王都まで降りてくるかもしれない
「それならすべて倒すか、元凶を断つしかないけど」
すべて倒すにしても一人では倒す量が新たに沸く量に追いつかなく、きりがない
それなら元凶を断つ方がまだ希望が見えるが
「元凶はなんだ?」
ある程度予想はつく、このような魔法を使うのはおそらく人間か魔族か、ある程度知性のある魔物であろうが
「少なくても2種類の魔法、それにこんな精細なもの、魔物には無理だろう」
魔物でも、いくら知性があるとしても、このようなことはしない、そもそもできないであろう
「とりあえず手がかりを探すしかないか」
今は、ほとんど手がかりがないので、探すためにさらに魔物を狩ることにする
それから数時間、魔物を狩り続けて、その死体一つ一つを調べていき
「今のところ獅子狼とトレント以外にはすべて魔法がかけられている」
結構な種類の魔物を狩っていたが、その二種類以外はすべて何かしらの魔法がかけられており、それの影響で暴走していたが、この二種類に関しては、魔法の影響は一切なかったが、なぜか暴走していた
「だめだ、まったくわからない」
たくさん魔物を狩って、手がかりを探すが、ほとんど何もない
「ただわかるのは、すべて同じ奴がやってるってことか」
普通の魔法であれば、同じ人が使っているかどうかはわからないが、この魔法はどうやらどの属性の魔法にも属さないらしい
このような特殊な魔法であれば、異能である程度調べられる
「闇魔法か、聞いたことないな」
闇魔法については、ほとんどわからなかったが、これは一応固有魔法であるらしい
ガサッ
いろいろと考えていると、後ろの方から音が聞こえ、魔物かと思い、瞬時に身構えるが
「あっ、すいません」
そこにいたのは、一人の女性であった
「あ、こちらこそすいません」
女性に対して剣を向けてしまったことを謝罪し、剣を収める
「こんなところで何してるんですか?」
女性に尋ねる
「私ですか?あなたと同じ試験を受けてる生徒ですよ?」
女子生徒がそう答えるが、アルカはそう答えるのはわかっていた、制服を着ているのだからそんなことはわかっている
「はい、それはわかっていますが、ここは危ないですよ?」
「そうなんですか?この辺りほとんど魔物がいなくて、ずっとうろうろしてたらこんなところまで来ちゃったんです」
「そうですか、それなら早くここから離れたほうがいいですよ、今ここの魔物は凶暴なので」
「わかりました、そうします」
そういって、女子生徒は振り返り、帰ろうとするが
「あの・・・送ってもらうことってできませんか?」
少し申し訳なさそうにそう言ってくる
立ち振る舞いからわかるが、明らかに戦闘慣れしていない動きであり、あまり周りを警戒していない
そんな子がもし今の凶暴な魔物にあってしまうと一瞬で殺されてしまうだろう
「わかりました、安全そうな場所までは送ります」
「ありがとうございます!!」
頭を下げながらお礼を言ってくる
そこから安全なところに行くまでは周りを警戒しながら進んでいき、ある程度行ったところで口を開く
「よくここまで来れましたね」
「運が良かったんですかね?一回も魔物に会わなかったんですよ」
「・・・へえ、そうなんですか」
そこから少し話をしながら進んでいき、ほかの生徒がいるような場所に来ると
「この辺りで大丈夫です、ありがとうございました」
「いえ、大丈夫ですよ」
「それじゃあ、またどこかで」
女子生徒と別れる前に、少し気になることを質問する
「あの、すいません」
「? はい」
「闇魔法って知ってますか?」
この女性、何か変な雰囲気であったので、こっそりと魔眼を使い、見てみた
すると、先ほど魔物に対してかかっていた魔法がいくつもこの女性にかかっていた
その状態で、何事もないようにしているので、それはおかしいと思い、聞いてみた
「? どうしてですか?」
「少し気になることがありまして、で、知ってるんですか?」
「へえ、知ってたらどうするの?」
その瞬間に女性の雰囲気が変わり、まるで別人のようになる
「少し聞きたいことがありまして」
「そう、いいよ、何が聞きたいの?」
「・・・知ってるんですね」
「知ってるも何も、私の魔法だからね」
そう答えた瞬間に、アルカは動き出し、その女性をとらえようとするが
「おっと、危ないなあ、いきなりどうしたの?」
とらえることができず、よけられてしまう
「あなたの魔法であるなら、とらえさせてもらいます」
「どうして?」
「森の魔物に魔法をかけたのはあなたですよね?」
「え、どうしてわかったの?」
女性が驚いたように反応する
「まあ、いいや」
大して気にしていない様子でそういいながら女性は歩き出す
「ばれたなら、仕方ないね、ちょっと予定より早いけど始めようかな」
女性はそういって、手を上に向けて何かを唱えようとしている
それが何か嫌な予感がしたので、止めようとするが
「[止まれ]」
女性がアルカに向かってそう言うと、アルカの体は一切動かなくなる
「邪魔しないでね」
何かの力で、声も出す事さえできなくなり、止めることができなくなる
(くそっ、あれは絶対に唱えさせたらだめだ!)
このままなら何が起こるかわからないが、唱えさせたらいけないことだけはわかる
すると
「とりゃ」
アルカの視界の端に、何かが通り、それが女性に襲い掛かる
(エレナ!)
「アルカ、大丈夫!?」
目の前に現れたのはエレナであり、エレナもあの女性の唱えようとしているものの危険性がわかったらしく、妨害しようとしてくれたが
「いたた、びっくりした」
なんとか阻止できたらしく、エレナの放ったナイフが左足に突き刺さっていた
「どういう状況?」
エレナがアルカに近づき、状況説明を求めるが
「もしかしてしゃべれない?」
「う、ぐ」
だんだん体も動くようになってきて、なんとか立ち上がる
「だい、じょう、ぶ」
「おお、解けるの早いね」
「あなたは誰?」
「攻撃してから聞かないでよ」
エレナが女性に対して質問する
「それもそうね、いきなり襲ってごめんね」
「仕方ないなあ、許してあげるよ」
「それより、あなたの唱えようとしてた魔法、なんなの?」
「さあ、なんだろうね」
二人がしゃべっているうちに、ちゃんと動けるようになり、エレナに声をかける
「エレナ、あの子捕まえて」
「え、なんで?」
「あとで説明するから」
「わかったわ、ということで、捕まえるね」
「うーん、困るなあ」
エレナが相手に距離を詰めてとらえようとし、その体に触れる瞬間
「[断絶]」
そのエレナの手が何かにはじかれて捕まえることができなかった
「邪魔されちゃあ、魔法も唱えられないよ」
女性がうんざりしたような様子でそういう
「唱えさせませんよ」
「まあ、別にここで唱えなくてもいいからね」
女性が手を振りながらこちらにこういう
「それじゃあ、またね、アルカ君」
「! まて!」
女性の体が消えていき、完全に気配がなくなる
「くそ!」
完璧に逃げられ、周辺を探すが、見当たらない
「ねえ、あの子、なんなの?」
エレナにあの女性のことを聞かれて、事情を説明する
「なるほどね、もうこの辺りにはいないの?」
「わからない、ただ何が目的かわからないから、何とも言えない」
この森でやることがあるのか、何が目的かわからないので、まだこの森にいるかどうかも分からない
「なら一応この森を探してみる」
「そうだね、探すよ」
とにかく見つけて止めないと、何か大変なことになると思うので、森の中をくまなく探すことにする
「それじゃ、奥の方を探しに行くから、エレナはこの辺りをお願い」
「うん、わかったわ、気を付けて」
二手に分かれて探すことにして、アルカは森の奥の方、エレナはそれ以外のところを探すことにする
そして分かれて少し経つが、
「サーチにも一切引っかからない」
女性の魔力はある程度把握しているので、少しでもサーチの届く範囲に入ると分かるのだが、一切引っかからない
「もういないのか?」
一応森の奥に行った後に戻って探したのだが一切引っかからなく、もういないのではと思っていると
「! なんだ!」
急激にサーチにたくさんの闇魔法の反応が引っ掛かりだし、そして空が暗闇に包まれる
「まだいたのか!」
闇魔法の反応があったということは、まだこの森の中にいたということであり、おそらく魔法を発動されたのだろう
「くる!」
そして反応が一つ、こちらに急速に近づいてて来る
ドシン
警戒していると、何かが上から落ちてくる
「ああう」
「お前は!」
そこにいたのは、以前災群生の森に入ったときに遭遇した、フロッピーという仮面をかぶった男であった




