力を求めて
・31・
side:アルカ・ロワール
「次、それやったら失格ね」
審判にそういわれ、構えを解いた
「試合を止めてごめんね、再開していいよ」
審判が元の位置に戻り、再開の合図をする
再開した瞬間に、先ほどよりも少し力を入れ、剣を振るい、相手の剣を飛ばす
そしてそのまま首元に当て、試合を終わらせる
「勝負あり、勝者アルカ君」
対した喜びもなく、二人の元まで戻る
「お疲れ様」
「ありがとう、っていっても、ほとんど疲れていないけどね」
「まあ、ほとんどなんもしとらんしね」
「それよりも、さっきのなんだったの?」
「うーん、ちょっと危ないことしようとして注意されちゃった」
正直、なぜ止められたかは、はっきりとはわからないが、今後は使わないようにしようと思った
つぎからの試合は、相手の実力も確かめることなく、試合を終わらせ、決勝もそのまま終わらそうとしていたが
「それじゃあ、決勝戦、始めようか」
今日の試合の、最後の試合となる
その相手は、Cクラスの一番の問題児、アーノルドであった、彼はけんかっ早く、口も悪い、戦った相手はすべて重傷を負うまで痛めつけるという
「お互いに礼、はじめ」
始まると同時にアーノルドが声をかけてくる
「なあ、おい」
「なに?」
「何でそんな適当にやってんだ?」
「なんでって、」
「俺らじゃあ、本気を出すまでもないってか?なめんじゃねえよ」
なぜ本気を出さないかも知らないくせに、好きかって言ってくるアーノルドに少しイラっとする
「なめるっていうか、本当のことじゃない?実際、本気出したら、一瞬で終わるよ?」
「やってみなきゃわかんねえだろうが、できるもんなら一瞬で終わらせてみろや!」
そういいながら、剣を振りかぶり、突進してくる
アルカは、それを躱し、アーノルドのはるか後ろに回る
「審判さん、危ないと思ったら、止めてくれるんですか?」
「ん?ああ、そのためにいるからね、けど一回戦の技つかったら、間違いなく、あの子死ぬからやめてね」
アルカと審判はアーノルドに聞かれないように小声で話す
「…知ってるんですか?」
「その話はまたあとでね」
話をしているうちに、アーノルドが距離を詰めてくる
アーノルドがずっと攻撃を繰り出すが、一撃もアルカには当たらない
「おいおいどうした!よけてばっかじゃ勝てねえぞ!!」
「そっちも当たってないよ?それじゃあ勝てないよ?」
先ほどからずっと、アーノルドは口を開いている、それにイライラしながら、一撃はじき
「ねえ」
「ああ?」
「黙ってできないの?お前も本気でやってるの?」
そういうと、アーノルドは、明らかに怒ったような表情になる
アルカの言葉には答えずに、こちらに向かってくる
しかし、黙って剣に集中したからと言って、アルカに攻撃が当たるわけでもなく、すべて躱す
そして、上からの大振りを躱し、剣が下に来た時に、それを踏み、一瞬動けなくし、そのがら空きの首元へ、剣を振るう
「がっ!!」
その衝撃で、地面に強く激突するが、すぐさまアルカの足をどかすように剣を振るう
「もういいや、やっぱりつまらなかったよ」
「ああ?どういうことだ!!」
「君には本気を出すまでもないってことだよ、もっと君が強ければ楽しかったのに」
もうやる気も興味もなくなり、勝負をつけようと、アーノルドの顔を横から薙ぎ払うが、当たる直前に、審判に止められる
「はい、そこまで、終わりでいいかい?」
「いいです」
「はあ?どういうことだよ!?まだ終わってねえぞ!!」
アーノルドが意味が分からないと、審判に抗議する
「いやあ、さすがに、こんなとこで死人を出すわけにもいかないからね」
「はあ?あんなのが当たるだけで俺が死ぬっていうのか!?」
「うん、100%死ぬよ?」
「は?」
アーノルドが、驚きで固まる
「それじゃあ、勝者、アルカ君!」
勝者が決まり、今日の選抜戦がすべて終わる
「それじゃあ、とりあえず、勝者の三人以外は解散ね、お疲れ様」
選抜戦を勝ち抜き、礼王戦に出ることが決定した三人以外の生徒たちは、ぞろぞろと会場を後にする
「はい、それじゃあ、さっそく説明に入ろうか」
礼王戦の日程や、ある程度のルール、どんなところが参加するのかなどの、いろいろな説明を受ける
「それじゃあ、何か質問はある?別に今はなくてもいつでも先生たちに聞けばいいけど」
「特に大丈夫です」
「私もです」
「ないです」
三人とも、特に気になることもなく、質問も出なかった
「それじゃあ、最後に、基本的に合計18人が出場するけど、ほかの学園はうちの学園とは違って、多分全員各学園の強い人から順に出場すると思う、だから簡単には勝てないよ」
「はい、それはわかっています」
「それは良かった、君たちはクラスの代表であるんだ、だからくれぐれも恥ずかしい真似だけはしないように、応援してるよ」
「はい!ありがとうございます!」
エレナが大きく返事をする
「それじゃあ、今日は解散!」
やっとすべてのことが終わり、変えれるようになる
「エレナ、先に帰ってて」
「ん?わかった、じゃあまたあとでね」
エレナたちと別れ、審判の元に戻る
「やあ、戻ってきたかい」
「はい、それで、あの技についてですけど」
「ああ、あの技の名前は知っているね?」
「はい、でも、名前とやり方しか知りません、どんなものなのか、何もわかりません」
「まあ、そうだろうね、それじゃあ説明しようか、普通、剣を振るうと当たるまでそれを防ぐ手立てはいくつかあるよね?[裏通し]に関しては、剣を振るってから当たるまでの過程がなく、当たったという結果だけが残るから、防ぐことができない」
「なるほどです」
「と言っても、絶対に防げないわけではないから、注意してね」
「わかりました」
「それじゃあ、ほかに聞きたいことはある?」
「それじゃあ最後にいいですか?」
「いいよ」
アルカが、技の名前や詳細を知っていることや、ある程度、自分の異能に聞いていることから、ほぼ確信し、ある質問をする
「あなたは、[異能]って知ってますか?」
「あ!そうだった、自己紹介も何もしていなかったね」
審判の人はそうだったと手をポン、とたたいて、耳についているピアスを外しながら答える
「僕はルーク・ヴァレンティ、君と同じ、[異能]のもう一人の所持者だよ」
ルークさんとの話も終わり、家へと戻ると、すでに三人が帰ってきており、各々作業をしていた
「ただいま」
「おかえり~」
「お兄ちゃん、おかえり」
くつろいでいた二人が返事をする、ちなみにセレスさんは、キッチンで料理をしていた
「リズ、結果はどうだったの?」
「ばっちり勝ったよ!」
「よかったね!」
その後、晩御飯の時間まで、三人でしゃべる
リズによると、そもそもクラスで選抜戦の参加者が5人しかいなく、簡単にきまったらしい
エレナと二人で、こっちのクラスでの出来事などを話、時間をつぶしていると、時間となり、料理が運ばれてくる
「できたよ、席について」
セレスさんが三人を呼び、食事を開始する
いろいろな雑談をしながら、ルークさんに提案されたことを三人に話す
「僕、この家を出ようと思います」
「ん?急にどうしたんだい?」
「僕に剣を教えている人が、家に住み込みで修行しないかって言ってくれたんです」
「その人は信用できるのか?」
セレスさんが心配そうに聞いてくる、最近になって聞いたが、セレスさんは、アルカ、リズ、エレナがこちらに来てからの世話を親から頼まれていたらしいので、あるかが出ていくのは心配なのである
「大丈夫です、セレスさんも知っている人なので心配ないと思いますよ」
「誰だい?」
「ルークさんです」
「そうか、なら心配ないな」
セレスさんがほっとし、許可が出る
「リズも一緒に行く?」
「ううん、私はここに残る、いろいろセレスさんに教わってるから」
最近になり、リズもエレナと一緒にセレスさんに修行をつけてもらったり、家事を教えてもらっていたりしているので、このままここに残るらしい
「いつから向こうに行くのかは決まっているの?」
「はい、明日の朝には出ようと思います」
「それじゃあ、準備しないとね、手伝いいる?」
エレナが親切心で提案してくる
「いや、大丈夫だよ、着替えとかも持っていくから」
さすがに下着などは見られるのが恥ずかしいので、手伝いは断っておく
その後、軽く雑談をした後、早めに部屋に戻り、荷造りを開始する
「そういえば、この剣もあんまり手入れできていなかったな」
村を出るとき、父親にもらったミスリルの剣であるが、受け取って以来、手入れをしていないので、少し傷が目立っている
「あした、向こうに行く前に鍛冶屋に出しに行くか」
準備が終わると同時に、部屋にリズが入ってくる
「お兄ちゃん、、」
「どうしたんだい?」
「ちょっと、お話がしたいなって」
「いいよ、ここに座って」
リズを自分の隣に座らせる
「最近のお兄ちゃん、なんか変だよ?」
リズが不安そうな顔をしながら、そう伝える
「変?」
「うん、お兄ちゃん、最近少しでも休んだ?」
「大丈夫だよ?ちゃんと睡眠もとってるし」
「嘘つかないで、夜みんなが寝た後、どこかに行ってるでしょ?」
「・・・・」
実際、アルカはみんなが完全に寝静まった後に家を出ていたはずだが、なぜかリズには気づかれていた
「ばれてないと思った?」
返事をしないアルカをにらみながらリズは言う
「どうやって気付いたの?」
どうやって夜起きていることを気づいたのかを聞いてみる
「自分では気づいてないと思うけど、お兄ちゃんってね、いつも横向いて寝るの、だからね、毎朝同じところらへんに寝癖ができるんだよ」
「そうなんだ、知らなかったよ」
「だって、毎朝私が直してたんだから、最近寝癖がないことぐらい、すぐ気が付くよ」
たしかに、夜、寝ないようになってから朝にリズが髪の手入れをするのがなかった
「そっか、いっつも寝癖治してくれてたんだね」
リズの頭をなでながら、お礼を言う
「ねえ、いつも何をしているの?」
リズに、夜やっていることについて聞かれる
「俺は、強くならなきゃいけないんだ」
自分の手を見つめ、心の中で[異能:真理の目]を発動する
アルカ・ロワール
LV:56
種族:人間
生命:1775/1775
魔力:1645/1665
攻撃:1567
防御:1494
魔攻:1991
魔防:1101
体力:1295
俊敏:1984
知力:1292
「俺のせいで、エレナやメイナが、俺がもっと強ければ、あの時、何事もなく出れたんだ」
そういいながら、あのダンジョンでの出来事を思い出す
あの時、アルカがもっと強くなっていれば、エレナたちを傷一つなく脱出ができていたはずだ
「だから、寝ている暇なんてないんだよ」
「お兄ちゃん・・・・」
「俺が、みんなを守らなきゃいけないんだ、だから力がいるんだよ」
「・・・」
リズが泣きそうな目をしながらこちらを見てくる
彼女は、ここまで追い詰められているアルカを見て、アルカの守る対象に自分も入っているから、その分、負担をかけているのを自覚したからである
「寝ると、夢を見るんだ、みんな、夢で、死んでしまうんだ」
アルカが泣きそうな声でそういう
そんな彼に、リズは抱きしめて、答える
「大丈夫だよ、だれも死なないよ、安心して」
アルカを落ち着かせるように言い聞かせる
リズは、アルカと話して理解した、彼の精神は壊れ始めており、このままではもういつものアルカには戻らないと思っていた
それに、だんだんと、会話が成り立たなくなっていく
「ゆるせない、あいつが、あいつのせいで」
アルカの体が強張り、怒りが伝わってくる、ただリズを抱きしめる力はやさしかった
「あいつに負けたら、みんなが、だから、消さないと」
「あいつ?あいつって誰?」
アルカが物騒なことを言っているので、それについて詳しく聞こうと思ったが
「でも、いまではまだ勝てない、もっと強くならないと」
そういい、リズのことを離し、立ち上がる
「お兄ちゃん、お願い、今日は休んで」
また毎夜のように出かけようとするアルカを、リズは引き留める
「大丈夫、リズも、エレナも、みんな俺が守るから、安心して」
しかし、それを無視し、出ていこうとするアルカ、言葉では言うことを聞かないと思い、無理やり、寝かせようと引っ張るが
「リズ、まだ起きてたの?早く寝ないと」
そういい、リズに向かって手を伸ばし
「[陽だまりのゆりかご]」
その言葉を聞いた途端、意識がもうろうとしていき
「おやすみ」
そこで意識が切れる
「さて、行ってきます」
親にもらった剣とは別の剣を手に取り、窓に手をかけ、外に出る
まっすぐに門に向かい、衛兵に見つからないように、静かに移動し、森の中に入る
今のアルカでは、黄昏の森にいる魔物程度では、もう相手にならないので、さらに進んで、奥へと向かっていく
奥へ奥へと進み、ある程度行くと、明らかに雰囲気が変わる地点があり、本能で立ち入るのをためらう
「明らかに、やばい雰囲気だけど、行くしかないんだ」
覚悟を決めて、災群生の森へと足を踏み入れる




