一月の攻防(後編)
・15・
side:アン
急に前を進んでいたアルカたちの足元に、魔法陣が浮かんだ
「えっ」
アルカが声を発した瞬間、アルカ、エレナ、メイナの姿が消えた
「アルカ?」
「おい、三人が消えたぞ!」
「まずいよ、きっと公爵家の人の罠だよ!」
「とりあえず、先生に報告に行くぞ!」
急いで降りてきた階段を上る
「ん?どうしたんだ?ほかの三人は?」
「アルカたちが魔法陣で消えた!」
「は?罠か?罠なんかなかったぞ?」
クリスさんたちは、先に進んで罠の確認をしていたので、そこにあるのはおかしかった
「何であそこに罠があるの!!」
「それはわからない!俺たちが確認したときには確かになかった!」
「お前たちが仕掛けたんじゃないのか!」
アンが怒って声を荒げる
「いまはだれが仕掛けたとかはいいから、先に先生に報告しよう」
アーロが冷静にアンのことをなだめる
「そうだね、とりあえず、先生に報告にいこう、みんな、行くぞ」
クリスさんの呼びかけに、ほかの三人が集まってくる
その際、アンとアーロは違和感を覚えた
(ん?なんだろう、なんかおかしい)
違和感の正体を確認する前に、急いで報告のために入り口へと戻る
戦闘はすべてクリスさんに任せて、ただ走ることだけに集中する
走り始めて十分後、入り口に戻る
「はあ、はあ、せん、せい、せんせいは?」
息もとぎれとぎれになりながら、先生の元へと向かう
「そんなに慌ててどうしたの?」
「先生、アルカたちが!」
「!!アルカたちがどうしたの!?というか、メイナは?」
「三人が、中の罠で消えちゃった!」
そういった瞬間アイシャ先生が叫ぶ
「ミーシャ!来て!!」
「どうしたにゃ」
アイシャ先生が呼んだ瞬間隣にミーシャさんが現れた
「メイナが罠にかかって消えた!多分転移の罠!すぐ助けに行くよ!」
「わかった、とりあえず、中の生徒全員出して」
アイシャ先生は、外にいるAクラスの生徒を集合させ、ダンジョンの中にいる生徒にすぐに外に出るように呼びかけさせた
「クリス!君とアンとアーロは話を聞かせて!」
「はい!」
アイシャ先生に、その時の状況を説明していく
「アイシャ先生、私たち4人が罠を確認したときは、転移の魔法陣などなかったです」
「ん?4人?」
アーロが首をかしげながら声を上げる
「なあ、アン、クリスさんのパーティーって4人だったっけ?」
「ううん、確か5人いたはずだよ?」
「だよな」
「君たちは何を言ってるんだい?僕たちは最初から4人のパーティーだったよ?」
確か、最初にあったときに、アンは、クリスさんのパーティーは同じ人数、同じ陣形であるので、今後の参考にしようと、観察をしていたので、よく覚えている
「アーロ、あの女の人がいない!」
「おそらくあの女の人が仕掛けたんだ!アイシャ先生!」
「わかった、とりあえず、中の生徒がいなくなり次第、入るよ!ミーシャ!」
そして一時間後、すべての生徒が出てきたことを確認する
「ミーシャ、力、封印するね」
「オッケーにゃ」
「ちゃんとあれ持った?」
「持ったにゃ、行けるにゃ」
「じゃ、行くよ」
そういった瞬間、アイシャ先生と、ミーシャさんの姿が消えた
「あれ、もう行ったの?」
「ああ、行ったよ、さすがだね、Aクラスの僕でさえ、ほぼ見えなかったよ」
アンとアーロには全く見えなかったが、クリスさんには、かろうじてダンジョンに入っていく姿が確認できたらしい
「メイナちゃん、お願い、無事でいて」
・・・
side:ミーシャ・ヴァレンティ
「ミーシャ、どこにいるかわかる?」
「まだ匂いや音はないにゃ、多分、もっと下にいるにゃ」
ミーシャたちは、ダンジョンに入って数分で、20階層まで下っていた
「ミーシャはまだ戦っちゃだめだからね、封印解けちゃうから」
ミーシャにかけられた封印魔法は対象のあらゆる能力を100分の1にする魔法である
しかしミーシャの力は強すぎるため、少しでも力を使うと封印が解けてしまう
よってアルカたちと合流するまで、戦うことはできない
万が一に備えて、戦えるものは持ってきているがそれを使うと少しの間、動けなくなり、時間がかけられない今、使うことはできない
さらに進んで、30分ほど下っていくと魔物がほとんどいない階層に出た
「おかしいわね、魔物がほとんどいないわ」
ミーシャは、アイシャの言葉には返事をしなく、とある方向を向いていた
「誰かいるにゃ」
「どこ?」
「あっちにゃ」
ミーシャが指をさした方向へアイシャが杖を構えたまま様子を見に行く
「ミーシャ、この中?」
「そうにゃ」
アイシャは扉のまえで、ミーシャに確認をする
慎重に、扉を開けて、中に入る
そこには、ボロボロになったメイナとエレナがいた
「メイナ、エレナ、大丈夫!?」
「せん、せい?」
「今魔法をかけるから、待ってて、[オールヒール]」
かろうじて、エレナは意識を保ちながら口を開く
「下で、アルカが、助けてください」
「わかったよ、君はもう休んでて」
エレナに続いて、メイナにもオールヒールを唱える
しかしメイナは意識を失っており目は覚めなかった
アイシャが二人のいる部屋に結界を張り、敵意を持つものが入れないようにする
「ミーシャ、下の階層に、アルカがいるって」
「聞こえるにゃ、何か聞こえるにゃ」
ミーシャが耳を澄ませながら答えた
「この音は、戦ってるおとにゃ、急いだほうがいいにゃ」
ミーシャが真剣な顔でアイシャに伝える
急いで階段に向かい、さらに下へと向かっていく
さらに数分後、音のする場所が近づいてくる
「この下にゃ、行くにゃよ」
音を頼りに進むと、この階段の下で戦いの音がする
階段を降りきると、そこには倒れているアルカとそれにとどめを刺そうとするオーガの姿があった
「ミーシャ!」
「風切!」
ミーシャが懐から小刀を取り出して、オーガに向けて突進する
小刀の風切によって、一瞬でアルカの前へと移動する、まるでアルカの使っていた瞬足のように
そして、オーガの体を細切れに切り刻む
ボロボロになったアルカのほうを向き、声をかける
「遅れてごめんにゃ、もう大丈夫にゃよ、アイシャ、治してあげるにゃ」
「は~い、[オールヒール]」
アルカの体から傷がすべてなくなる
それと同時にアルカは意識を失う
「ああん?誰だお前ら」
「やばいよ、あいつら、オーガを一瞬で倒した」
ミーシャたちは、声のする方向を振り向く
「誰にゃ?お前たち」
「俺たちは、公爵家に雇われた者だ!」
男がそういった瞬間、ミーシャから殺気が出てくる
「そうか、お前らか、じゃあ、殺すよ」
「ミーシャ、まだ動けないでしょ、私が相手するよ」
ミーシャは風切を使ったことにより、一時的に体が動かなくなる
「まずいね、とりあえず、逃げようか」
「いや、あれを使うぞ、多分逃げても殺されるだろうよ」
「わかった」
男と女が懐から、十字架のようなものを取り出す
「「従属召喚」」
二人が唱えた瞬間、大きな魔法陣が現れ、何かが出てくる
「なんだ、貴様らは」
「おい、お前、そいつらを殺せ」
「誰に命令をしている?」
現れた何かがそういった瞬間、男の上半身が消し飛ぶ
「えっ?」
続いて、女の体が両断された
「我を従属化などしようとするからだ、死んで詫びよ」
アイシャはその出来事を静かに見ていた
「あなた、ヴァンパイアかしら?」
「ん?なんだ貴様は、まあいい、我をヴァンパイアごときと一緒にするな、我はヴァンパイアロード、名はモダンだ」
「ヴァンパイアロード?なんでそんな奴が召喚なんかされてるの?」
「召喚ではない、封印を解いたのだろう、我は数百年十字架の中に封印されていたのでな」
会話をして時間稼ぎをして、ミーシャの回復を待つ
「アイシャ、もう動けるにゃ」
「ミーシャ、封印を解くよ、本気で行かなきゃ勝てない」
「でも、封印を解いたら一気に魔物が現れるにゃ」
「それでも、ここで勝てなきゃ意味ないよ」
「そうにゃね、本気で行くにゃ」
ミーシャが封印を解き、一気にモダンへと攻撃をする
しかし、モダンの腕から、剣が現れて、攻撃を阻止される
「いきなり襲い掛かってくるな、焦らなくても殺してやる」
「ちっ、やっぱこれじゃ無理かにゃ」
ミーシャの手にもつ風切を見ると、刃が少し欠けていた
「アイシャ、詠唱頼むにゃ、時間は稼ぐにゃ!」
「わかった」
すぐさま詠唱に入るアイシャ
「何かするつもりか?」
「教えないにゃ」
「まあいい、どうせ我には効かん」
ミーシャとアイシャはこの詠唱が完了すれば相手を殺すことが可能であると知っていた
「油断しているうちに時間を稼ぐにゃ」
ミーシャが風切を懐に直して、構える
「武器を使わないとは、我をなめているのか?」
「生半可な武器じゃ、きかないからにゃ、それなら、内部に攻撃するにゃ、発勁」
「ごあ」
格闘術による発頸により、モダンの内臓を破壊する
「貴様、我に傷を負わすか、面白い」
そういうと、モダンの目が赤黒く変化する
その瞬間、ミーシャの前へ現れる
「ふん」
相手が、ミーシャと同じ技を使ってくる
「危ないにゃ」
ミーシャはモダンの姿が消えた瞬間、化勁の構えをとっていたよって、一切のダメージを負っていない
「ほう、これを防ぐか」
「まあ、しってる技だからね、いくら早くても、受けないにゃ」
時間を稼ぐことが目的のため、決して大技を狙わずに攻めていく
モダンの懐に潜り込み、短頸という技を発動する
発頸よりも、威力は低いものの、小さな動作で攻撃できる短頸を連発していく
「こざかしいな」
モダンが再び剣を出すが、先ほどとは内包されている魔力が桁違いだった
「もう飽きた、死ね」
モダンが剣を振り上げた瞬間アイシャの詠唱が完了する
「・・・輝く世界よ、悪に落ちたものを浄化せよ、[ホーリークロス]」
部屋全体を包む光によって、モダンの体から煙が出る
「なんだ!?この光は!熱い!」
「終わりにゃよ」
「きさまかあああ!!」
モダンが最後の力をふるい、アイシャに向けて剣を投げる
「アイシャ!!」
アイシャは魔法を唱えたばかりであるので、動くことができなく、このままでは、直撃してしまう
ミーシャは再び風切を取り出して、アイシャの前へと一瞬で移動する
その際、風切が砕け散る
「はああああ!」
ミーシャは、全力で飛んできた剣に向けて、殴りつける
ミーシャの攻撃により、剣は粉々になるが、彼女の肘から先も、なくなっていた
「ミーシャ!!」
「大丈夫にゃ、これくらい、それよりも、ここから出るにゃ」
アイシャの魔力はもうほとんど残っていなく、ミーシャの傷口の血を止めることしかできない
それに、ミーシャに対して封印魔法を使うこともできない
「アイシャはアルカを背負って、私について来るにゃ」
ミーシャがモダンに対して本気を出したことにより、ダンジョンは活性化をして、非常に強力な魔物が現れるようになる
途中で、メイナたちを拾い、上へと向かう
階段を上り続けて、大きな広間へと出るそこには小さな子供のような魔物がいた
「まずいにゃ、小鬼にゃ」
「ミーシャ、かてる?」
「片腕が使えないと、厳しいにゃ、アイシャは三人を連れて、先に行くにゃ」
「わかった、気を付けて」
アイシャたちを先に行かせて、一瞬でかたをつけようと、前に出る
しかし、あと少しのところで気づかれてしまう
「ちっ、やっぱり片腕じゃあ、きついにゃ」
早くかたを付けないと、アイシャたちが危険になる
「焦るな、確実に決めるにゃ」
そうして気持ちを落ち着かせる
チリーン
「ん?」
鈴のような音がして、そちらの方向を見ると、黒い猫がいた
ニャ~ン
猫が鳴くと、ミーシャの体が光り、腕と体力が元に戻る
「あの猫は、、ありがとにゃ」
光が収まった瞬間、小鬼の首を折る
「カラス、来るにゃ!」
ニャン
急いで階段を上り、アイシャのところまで全速力で進む、そしてアイシャたちと合流する
「ミーシャ!それにカラス!何でいるの?」
「わからないにゃ、気づいたらいたにゃ」
合流した後は、無事にダンジョンの外に出ることができた
「やっと出た!」
「アイシャ先生!ミーシャさん!」
外に出ると、アンとアーロが声をかけてくる
「メイナたちは大丈夫ですか?」
「問題ないにゃ、気を失っているだけにゃ」
アンたちにアルカたちを渡して、救護室へと運んであげるように言う
「あっ、その猫、無事だったんだ」
「知ってるにゃ?」
「うん、黒い髪の男の人が連れてきて、ダンジョンの中に入れてました、注意しようとしたら、すぐにどこかへ行ってしまいましたが」
「そうにゃのか、この子のおかげで助かったから、よかったにゃ」
「そうなんですか?」
「そうにゃ、あと、もうメイナちゃんのことは大丈夫だから安心するように言ってあげるにゃ」
「わかりました」
こうして、アイシャと別れ、ミーシャは帰宅する
「ただいまなのにゃ」
「おかえりなさいませ、ミーシャ様」
「ルークさん、帰っているにゃ?」
「はい、先ほどお帰りになりました」
帰っていると聞いて、ルークの部屋へと行く
「ルークさん、入るにゃ」
「ん?いいよ」
部屋に入ると、何か書類を書いているルークがいた
「どうしたの?」
「からすを送ってくれてありがとにゃ」
「大丈夫だよ、気にしないで」
「わかったにゃ、それから、お願いがあるにゃ」
ルークに、メイナについてのことを伝え、王様に行ってもらうよう頼みこむ
「いいよ、あとで言っとくね」
「ありがとうにゃ」
翌日、公爵家は、暗殺の容疑で投獄された
公爵家でも、平民とはいえ、命を奪う行為は王都では禁止されているため犯罪者として処罰されることとなる
こうしてメイナの問題は無事解決した
発頸:近距離から、相手の内部に向かって攻撃する技
化勁:相手からの攻撃の向きのベクトルを変え軽減する技
短頸:発頸よりも威力は弱いが、少ない動作で発動できる発頸の下位互換




