一月の攻防(中編)
・14・
side:アルカ・ロワール
「えっ」
足元の光が収まって、あたりを見回す
「ここどこ?」
メイナはきょろきょろとしながら言う
少し狭く、じめじめとしている洞窟のようなところにいる
その場にいるのはメイナ、アルカ、エレナの三人である
「転移の魔法かな?ここはどこだろう?」
「わからないよ、それにアンとアーロは?」
「多分、後ろの方にいたから、範囲に入っていなかったんじゃないかな?」
「うん、なら、助けを呼んでくれるんじゃないかな?」
アルカとエレナが話しているのを見ていたメイナが口を開く
「ごめんなさい、多分私を狙ってやったんだ、巻き込んじゃってごめんなさい」
声を震わせて、謝るメイナ
そんなメイナに抱き着くエレナ
「大丈夫だよ、守るって約束したもん、メイナちゃんが一人で移動しなくてよかったよ」
「そうだよ、きっと守るから、安心してね」
とりあえず、ここがどこかを確認しなくてはならない
今いる場所には、入り口の扉が一つしかなく、そこからのぞき込む
「暗くて見えないね、[ライト]」
アルカが魔法を唱えると、光が現れて、外が見えるようになる
「少し、先を見てくるから、二人は待ってて」
魔物の気配はあんまり感じられないので、二人を残して、少し先を見に行くことにする
「ここはどこだろう?4階層までの構造と全く違うぞ?」
4階層までのダンジョンは洞窟みたいな見た目で、道はごつごつとしていた
しかし、今いるところは洞窟のような雰囲気は全くなく、明らかに人工の建物のような場所であった
「もしかして、ダンジョンの外に転移させられた?」
それなら、魔物の気配が少ないことにも納得できるが、もし公爵家ならわざわざ外には転移させないだろうと思った、外には護衛の人もいるからである
確実に消すためには、ダンジョンの深くに転移させるだろう
とりあえず、ここはダンジョンの下の階層であると仮定しておく
二人のところへ戻り、情報を共有しておく
「どうする?多分ここはダンジョンの奥深くかもしれない、それで、先へ進んでみるか、ここでとどまるか、どうする?」
「ここでとどまるのは、食糧問題とかがあるから、よくないと思うわ、だから進んで、上を目指しましょう」
「でも、もしかしたら、別のダンジョンに飛ばされてて、上の方がダンジョン深部かもしれないよ」
「多分大丈夫だと思うよ、昔お父さんに聞いたんだけど、このオーラシア大陸には地下へと続くダンジョンしかないんだって」
「それなら、大丈夫かな、じゃあ、上を目指そう」
三人で部屋を出て、再びライトの魔法を使う
「それ、光魔法なの?」
「そうだよ、光魔法の初級のライト、魔力もそこまで使わないから、便利だよ」
普通、ダンジョンなどでは松明などの光源を使うが、その場合、片手がふさがってしまうので魔法を使える場合、そちらの方が良いといわれている
「一本道ね、一応地図書いておくね」
もしかしたら、戻れないことがあったときに、休憩場所として先ほどの部屋を使うことにし、そこまでの道を確認するため、エレナが地図を描くことになった
そして、少し進んだところで、下へと続く階段とまっすぐ進む道の分かれ道についた
「とりあえず、下にはいかずに、まっすぐ進もう」
まっすぐに進んで、少しすると上へと進む階段へとたどり着く
「どうする?このまま上に行く?」
「そうね、メイナちゃん疲れてない?」
「はい、まだ大丈夫です」
メイナは、この三人の中では一番幼く、体力もあまりないので、メイナのペースに合わせて進んでいくこととなっている
「じゃあ、進むよ」
上に行くと、少し広いところに出た
「おかしいね、魔物が一匹もいないよ、本当にダンジョンかな?」
ダンジョンであるなら、先ほどの部屋から少なくとも一回は魔物と遭遇しているはずである
しかし、争った形跡もなく、討伐されているわけでもない
アルカはもしかしたらここはダンジョンではないのかもしれないとおもった
「ねえ、エレナ、こんなに魔物がいないのっておかしいと思わない?」
「ええ、少し不気味ね」
魔物がいないからと油断するのはいけないので警戒しながら進んでいく
しかしまたしても魔物と会わないまま、上へと続く階段へとたどり着く
「少しここで休もうか」
「ええ、そうね、メイナちゃんも疲れていると思うし」
メイナは少し汗をかいて、息を切らしていた
ここまで1時間ほど歩き続けているのでアルカたちも多少は疲れている
三十分ほど休憩をして、出発して、階段を上ろうとした瞬間下の方から何か音が聞こえた
「「「「「「グアアアアアアアアアア!!!」」」」」」
先ほど、アルカたちが来た方向から音が聞こえてくる
「何?何の音?」
「もしかしたら、魔物かもしれない、急いで登ろう!」
もしかしたら、先ほどの広間で魔物が生まれたのかもしれない
基本的にダンジョンでは、魔物が死んでから時間がたつと魔物が再度出現する
「さっきの音、一つの音じゃなかった、いっぱいいるのかも」
メイナは猫獣人であるので、耳が良く、先ほどの音を聞き取れていた
「それはまずいね、急ぐよ!」
階段を上りきって、急いで進んでいく、幸いにも魔物の気配はなく立ち止まることなく進んでいく
「メイナ、後ろから音は聞こえる?」
「はい、いっぱい足音が聞こえます!すごい早さです」
このままでは追い付かれるので、この階層で隠れるところを探していく
この階層は道が入り組んでおり、隠れることは可能であるが、もしかしたら魔物が嗅覚で探すかもしれない
「そこに扉があるよ!」
エレナが扉を見つけて、その中へと入っていく
入った先には、広い間とその奥には上へと続く階段があった
しかし、この広間は階段までの距離がすごくあり、おそらく会談につくまでに魔物に追いつかれるだろう
アルカは覚悟を決めて二人に向けて言う
「ここは僕が時間を稼ぐから、二人は先に行って」
「だめです!どんな魔物かわからないんです!死ぬかもしれないですよ!」
「でも、このままじゃ、みんな追い付かれて、下手したら全滅するよ、この中では僕が一番強いから、残るよ」
「でも、死んじゃうかもしれないんですよ?」
「死ぬ前には逃げるから、大丈夫だよ」
そういいながら、エレナのほうを向き目で合図を送る
「メイナちゃん、行くよ」
エレナはメイナの手を引いて、階段の方へと向かっていく
「えっ!エレナさん!アルカさんが!」
「大丈夫よ、アルカを信じて」
どこか悲しそうな顔をして、メイナの手を引いていく
そしてもうすぐで階段だというときに入ってきた扉が吹き飛ぶ
「ようやく追いついたぜ、逃げてんじゃあねえよ」
部屋に入ってきたのは、大剣を背負った男と、魔物に乗っている女の二人であった
その後ろから、ぞろぞろと魔物が入ってくる
明らかに、アルカ一人では生き残ることはできないほどの魔物の量であった
「アルカ!!」
「大丈夫!早く行って!!」
「くっ、わかったわ、アルカ、死なないで、きっと助けを呼んでくる!」
「アルカさん!!」
アルカを残して、二人で階段を上っていく
「ここは通さない!」
「いいねえ、君かっこいいね、じゃあ、君を殺してから、追うことにするよ」
「お前らは公爵家の兵士か」
「兵士ではねえよ?まあ、何者かは教えないがな」
二人は公爵家に多額の依頼料をもらい、メイナを殺すように依頼を受けた冒険者であった
「どうでもいい、絶対にここは通さない!」
「そうか、まあ、おれはあんまり強くねえから、魔物の相手でもしときな」
隣の魔物に乗っている女の人が手をこちらに向けると、オオカミのような魔物が襲い掛かってきた
「まずは、小手調べ」
「おいおい、あまり時間をかけるなよ?逃げられたらどうするんだ」
「大丈夫でしょ、どうせここからは出られないし」
「まっ、そうだな」
アルカは、襲ってきたオオカミのような魔物に対して剣を向ける
(勝てるか?いや、絶対に勝つ!)
魔物が襲い掛かってきたと同時にすっ、と横にずれてそれに合わせて剣をふるう
アルカは魔物の速さを使い素早く倒した、これはミーシャさんに習った、長く戦う方法であった
相手の力を使い、自分の力をあまり使わない方法である
「おお、君強いね、じゃあ、つぎね」
つぎは先ほどの魔物が3体同時に襲い掛かってきた
アルカは、先ほどと同じ方法で倒していったが、右肩を少しかまれてしまう
「おいおい、やばいんじゃねえか??死ぬぞ~」
それから、何度も何度も魔物をけしかけられて、体は傷だらけになっていた
「お前の従属化ってすげえ強いよな、ダンジョンでは無敵じゃん」
「ふん、まあね」
「そんじゃ、そろそろ終わらすか」
「そうね」
そういい、女が手をかざすと鬼が出てきた
「この子は、このダンジョンのガーディアンのオーガよ、階層主よりは弱いけど、その次には強いんじゃないかな?」
アルカの体は思うように動かず、オーガの相手をするのは絶望的であった
オーガはアルカに近づき、手に持つ大きな棍棒を振り上げた
(ごめんね、エレナ、メイナ、死なないって約束守れなかったよ)
アルカは死を覚悟したとき、頭に声が響いた
({異能・瞬速}を手に入れました)
(緊急時により自動発動をします)
頭に言葉が響いた瞬間、体が勝手に動いた
オーガの振り下ろした棍棒が地面に当たった瞬間、アルカは離れたところにいた
(えっ、何で?体は動かなかったはずなのに)
({異能・回帰}を手に入れました、発動します)
光がアルカの体を包み、傷や疲労が嘘のようになくなった
(助かったよ、異能さん)
アルカは疲労もなくなり、動けるようになった
「まだまだ、時間を稼がせてもらうよ」
「なんだ?さっきオーガの足元から一瞬で消えたぞ?」
「わからない、なんかの能力かな?」
「まあ、さっさと殺そうぜ」
再び、女が魔物に命令を下し、オーガが襲い掛かってくる
(瞬速)
心の中で唱えた瞬間、別のところにいた
(一瞬で移動する能力か?)
もう一度瞬速を唱え、オーガに一気に近づき、剣をふるう
カキン
しかし、アルカの剣はオーガの体には傷一つ付けられなかった
(まずい、攻撃はよけることはできるけど、倒すことはできない)
アルカの剣の腕では、オーガに対してダメージを与えられない
それを知ってから、アルカはオーガの攻撃をよけ続けて時間を稼いでいた
そして一時間がたった
「はあ、はあ、はあ」
アルカは回帰と瞬歩を使いオーガの攻撃をよけ続けていたが回帰の使用回数がなくなったのか3回使用した後は発動しなかった
そしてアルカの体力も限界に近づいた
「ようやくへばったか、結構時間かかったな、逃げたやつらは大丈夫か?」
「大丈夫、あいつがオーガと戦っている間に何匹か送り込んだから、うまくいけば死んでるかもね」
「おお、やるじゃねえか、じゃ、そろそろとどめを刺すか」
オーガの横なぎがアルカの腹へと当たる
「おえ、、」
アルカが血を吐きながら、壁へと激突する
(今度こそ、もうダメかな、ごめんね)
アルカはあきらめて、目をつぶった
もうすぐそこまでオーガは近づいている、死ぬのは時間の問題であった
しかし、いくら待っても、アルカには何も起こらなかった
アルカは恐る恐る目を開けるとそこにはミーシャさんとアイシャ先生がいた
「遅れてごめんにゃ、もう大丈夫、アイシャ、治してあげるにゃ」
「は~い、[オールヒール]」
アルカの体が光に包まれ、傷が癒えていく
そこでアルカは疲れ果てて、意識を落とした
アルカの異能:真理の目、 瞬速、回帰




