再開の時
・110・
side:エレナ・ルーシュ
「はあ、これが限界かな・・・」
クロノスを使い始めてどれくらいたったかわからないが、もう意識しなくても使えるようになった
だが、クロノスを使うには魔力が必要になり、魔力が自然に回復する領は消費する領を上回ってはいるのだが、微々たるもの
なので、基本的に魔法を使うことがほとんどできない
発動できたとして、一日で三回程度、それ以上使ってしまうとクロノスのための魔力が一時的になくなってしまう
ずっと自然に回復する量を増やすためにいろいろしていたのだが、今の現状が限界となる
「まあ、それでも覚えるんだけどね」
今は体を動かすことに魔力を大半使っているので、もしこれが治ればその魔力を魔法に使うことができるので、覚えていて損はないと、毎日少しずつ魔法を覚えていっている
「そろそろ行かないと」
ミーシャのところに行くために準備をする
といってもクロノスで体を覆って服を着替えるだけ
「よし」
ちゃんと覆えているか確認し、ミーシャの元へと向かう
「お待たせしました」
「ん、それほど待っていないにゃよ」
到着した場所では赤ちゃんを抱いているミーシャが待っていた
この赤ちゃんはルークとミーシャの子供で、名前はアリス、まだ生まれたばかりですごく小さくてかわいい
「ギリギリになったから準備できてないにゃ、ちょっとアリス預かってて」
ミーシャはまだ起きて時間が経っていないようでよく見たら服装も薄い寝間着だった
「そんな服で出ないでくださいよ」
「ん?」
よく見たら下着が見えそうなくらい薄い服装だったので注意する
ずっと一緒にいてわかったことは、ミーシャさんはすごく大雑把で服なんかは言わなければ着替えないし、風呂も自分からは入ろうとしない
最近は私かレイナさんが言わないとずっと自分のことはせずにアリスの世話をしている
「アリスちゃんにかまうのはいいですけど、ちょっとは自分にも気を付けてください」
とりあえずアリスを受け取ってミーシャにちゃんとしてきてもらう
「小さいなあ」
改めて腕の中でじっとしているアリスを見る
初めの頃はミーシャかレイナ以外の人が抱っこするとすぐに泣いていたが、今はもうエレナでも泣くことはなくなった
「大きくなったら美人になりそうだね」
ほとんど毎日会っているので、なんだか妹ができた気分になってきて、ものすごくかわいく思える
ぷにぷに
気持ちよさそうに眠っているアリスの頬を突っつく
「あ! エレナの姉ちゃん来てたんだ!」
するといきなり後ろから声をかけられる
「ミナ、おはよう」
声をかけてきたのはミナで、多分今から学園の方に行くのだろう
「今日はマナと一緒じゃないの?」
「なんか先に行ってるって言われておいてかれた」
「ミナが準備遅いからじゃないかな?」
「ふっ、私が遅いんじゃないよ、マナが早すぎるんだ! それじゃ! 行ってきます!」
そういい、走りながら学園に向かっていく
「元気だね」
朝も早いのにあれだけ元気なのはすごいと思う
「お待たせにゃ」
そしてやっと、着替え終えたミーシャさんが戻ってくる
アリスをミーシャに再び返して、自分も準備をする
「今日は何がしたいにゃ?」
「うーん、実際もうできることってあまりない気がするんですよね」
クロノスはこれ以上練習しても扱いは上達するとは言えないし、魔物との戦いに関しても災群生の森の魔物も相手にならない
なので、やることといえばミーシャさんやレイナさんとの組手ぐらいだが、ミーシャさんが何がしたいか聞いてきたということは二人とも手が離せないということ
「まあ、そうにゃね」
「うーん・・・」
やることがないのなら別に休んでいてもいいとは思うのだが、さすがに何もしないとなると落ち着かない
「じゃあ、とりあえず冒険者ギルド行って来るにゃ?」
「あ、確かにいいですね」
それなら適度に体を動かせるし、人助けになるかもしれない
「それじゃあ、行ってきますね」
「あ、ちょっと待つにゃ」
「え? はい」
ギルドの方に向かおうとしたところでミーシャさんに止められる
「多分そろそろルークから連絡が来るにゃ」
「あ・・・」
この言葉ですべてを理解する
「また連絡が来たら教えるにゃ」
ミーシャさんの旦那さん、ルークさんからもらった手紙に書いてあったアルカに会える時が来るということ
だが、素直には喜ぶことはできない
このことのすべての意味を知っているから
直接聞いたわけではないが、ミーシャとレイナが話しているところを聞いてしまったのだ
(アルカと会える・・・けど、その時にルークさんは・・・)
アルカとルークは現在共に行動して訓練しており、それが終わると同時に、最後はアルカの手で命を終わらせると言っていると聞いた
なぜ、アルカの手でなのかはわからないが、それを聞いてしまってはアルカと会えるからといって素直に喜べない
私自身はルークさんとはそれほどかかわりはもっていないのだが、ずっとお世話になっているミーシャさんたちの大切な人と聞いて、何も思わないことはない
「エレナは何も気にしないでいいにゃ」
そんなことを考えていると、こちらの気持ちを読み取ったのか、そう言葉をかけてくる
「エレナがあの時聞いていたことは知ってるにゃ」
まあ、そうだろう、ミーシャさんくらいなら私が近くにいたことぐらいわかるはず
だが、あえて何も言わずに今までいたのだろう
「エレナはアルカと会えることを喜ぶといいにゃ、こっちは心配しないで大丈夫にゃ」
「・・・・はい」
ミーシャ自身も、エレナはやさしい子であると分かっているので、今の言葉を言ってもこっちのことを考えるのはわかっている
「と、とりあえず、行ってきます!」
今考えても仕方がないと思い、気を紛らわすためにギルドへと向かう
「今は、このことは考えない!」
なんとか自分に言い聞かせて、余計なことは考えないようにする
今考えても仕方がないから
そしてギルドに到着して、長い間だれにも受けられていない討伐系の依頼を受けて、その場に向かう
だが、一つ失敗したことがある
それは、依頼内容が簡単すぎて、考え事をしていても終わらせられるということ
だから、ついつい考えてしまう、ミーシャさんやレイナさんが悲しんでいる姿を
「アルカに会えるのはうれしい、うれしいけど・・・」
つくづく、この世界は残酷だと思う
どうして大切な人を奪おうとするのだろうか?
どうして誰しもが幸せになれないのか?
「そもそも、何でルークさんは死ぬんだろう?」
死ぬということは聞いたのだが、その理由まではわかっていない
「ミーシャさんたちを残して死ぬって、そんな理由があるの?」
大切な人たちより大事な理由があるのだろうか
「聞かなきゃ・・・、そして、できれば止める・・・」
理由を聞きたい、そしてできれば説得したい、大切な人を残して本当に死んでもいいのか、と
「そうと決まれば、どう説得するかを考えないと」
やることは決まった、もし成功すればみんなが幸せになれるかもしれない
雰囲気からして、ミーシャさんたちはルークさんを止めようとしていない
であるのあらば、これができるのは私だけ
「みんなが幸せになれる、それが一番いいもん」
説得することはだれにも伝えない
ルークさんに会った時にどんな話をするのかを考えながら依頼をこなしていったり、クロノスの練習をしていった
そして数日が立った時、ルークから連絡があったと教えられる
「今日の深夜、ここに来るにゃ」
「わかりました」
今日の深夜だと、あと半日ほどある
実際に会う場所はこの辺りではないようで、一度このヴァレンティ家に集まってから移動するらしい
「剣、忘れないように」
「大丈夫です」
ミーシャが言っている剣とは封魔の太刀のこと、この剣にアルカの魂と力を封じているようで、それが明日必要になるらしい
この剣を忘れないように言われるが、毎日肌身離さず持っているので、忘れることなどない
「それじゃあ、遅れないようににゃ」
今日はそれで解散となり、私は家へと戻る
「アルカ・・・できるかな?」
封魔の太刀に語り掛ける
ちょっと気持ち悪いと思われるかもしれないが、 不安な時や眠れないときはたまにこうしている
これをすると少し、心が落ち着く気がするから
「それじゃあ、行こっか」
約束の時間となり、家を出てヴァレンティ家へと向かう
「来たにゃね」
到着すると、ミーシャ、レイナ、マナ、ミナ、アイシャ、ククル、ハルそしてアリスの八人がすでに集合していた
まだヴァレンティ家には人がいるのだが、深いかかわりがあるのがこの七人であるようで、そこに私を加えた合計九人で向かうようだ
「それじゃあ、レイナ、お願いにゃ」
ミーシャがレイナに言葉をかけて、魔法を唱えさせる
「わかりました、それではみなさん、集まってください」
その言葉に従って、レイナの元に集まる
「【テレポート】」
そして、レイナが魔法を発動した瞬間に、目の前の風景が変わり、見覚えのない廃墟の前に照っていた
「入るにゃ」
ミーシャについていき、その廃墟の中に入る
そして、その中にいたのは、二人の男性
ミーシャたちの大切な人、ヴァレンティ家の主、ルーク・ヴァレンティ
私にとっての大切な人、アルカ・ロワール
「みんな、ただいま」
そして、私にとって、そしてみんなにとっての
運命の時が来る




