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麗しき世界に始まりを告げよう  作者: 森のスダチ
第4章 全ての始まり
114/128

VS憤怒の魔王

・104・

side:神代 アキト


 空に黒い幕が下りてすぐ、目の前に男が現れた


 「アキト、下がって」


 セニアが神代を後ろに下げて、戦闘態勢に入る

 

 「何もしないで、ただ見てて」


 「わ、わかりました」


 生半可な戦力では、目の前の敵には意味はないと知っているので、おとなしく見学していてもらう


 それに、セニアも勇者としての力を使うのなら、周りを考えることなどできない


 「やっぱり来てくれたんだね」


 「知り合いですか?」

 

 「・・・憤怒だ」


 神代は前もって伝えられていた、もし戦闘になるのなら、絶対に憤怒の魔王と戦うことになると


 「とにかく、遠くへ」


 そして、その場合は、ただ何もせずに離れてみておくように言われている


 「は、はい」


 セニアの言葉通り、ぎりぎり状況を見えるくらいに離れる


 「それじゃ、始めようか、セニア」


 「ああ」


 セニアは、神代が離れたことを確認し、改めて目の前の男、憤怒の魔王であり、セニア・マクーレンの兄である、セシル・マクーレンに向かう


 「力を使うのはいつ以来?」


 「・・・覚えていない」


 もう長い間【憤怒】の力を使っていない


 「はあ、言っただろう、こまめに使えって」


 「使えるわけないだろう」


 憤怒は簡単に言えば暴走、そんなもの、簡単に使うことなどできはしない


 「ははっ、それもそうか」


 「じゃあ、まずは3割だ、【憤怒の仮面】」


 「! 【憤怒の仮面】!」


 【憤怒の仮面】、強大すぎる力を仮面として具現化させ、装着したものにその力を授ける能力を


 「はあ、唯一の欠点としては、いちいちこんなことをしなければいけないことだな」


 セシルが仮面をつける際、愚痴をこぼしていた


 「まあ、仕方ないけどね」


 そういうものなのだから、愚痴を言っても仕方がない


 もし、仮面を媒体にせずに直接体に送り込んでしまうと、終わりのない暴走が始まり、それを解くには死ぬしかなくなってしまう


 「さあ、早くつけなよ」


 セシルは、すでに仮面をつけ終わり、セニアがつけるのを待っている


 「・・・」


 いつ振りかわからない、憤怒の仮面、少しつけるのをためらう


 「早くつけろ」


 「うっ!!」


 すると、そんなセニアに苛ついたのか、セシルは仮面をつけるのを待たずに攻撃を仕掛けてくる


 「くっそ!」


 早くつけなくては、すぐにやられてしまう


 「さあ、早くつけろ!」


 セシルはセニアが仮面をつけるまで自我を失うのをこらえている、そうしなければ、仮面をつけていないセニアなど一瞬で殺してしまうからだ

 

 「すう、はあ」


 息を整え、心の準備をする


 そして

 

 「・・・っ!!!」


 ようやく決心がついて、仮面をつける


 「よし、それじゃあ始めよう!」


 セニアが仮面をつけたのを見届け、セシルも意識を手放す


 「ぐっ・・、がああああ!!」


 久しぶりの憤怒の感じに体が追い付かない、が、それとは裏腹に、高揚感がわいてくる


 「ああ、いいなあ、この感じ・・・」


 この高揚感がセニアが使いたくなかった一番の理由


 つけた瞬間に湧き出てくる力、体が軽くなる感じ、一度味わってしまうともう一度使いたくなる中毒性、だが、使ってしまえば敵味方などほとんど関係なく攻撃してしまう


 そんな力、むやみやたらに使うわけにはいかない


 だが、今同じ憤怒に侵された相手がいるのなら別、ほかの相手に目移りする心配がないから、遠慮なく身をゆだねられる


 「ははっ、ははははっ!」


 セニアの笑い声と共に戦闘が始まる


 「おらぁあ!」


 戦いは単純な殴り合い


 セニアの右の大振り、だが、セシルには当たらなく、空振りしたところにセシルがけりを入れるがそれもセニアには当たらない

 

 二人とも理性などないので、戦略もなく、ただががむしゃらに攻撃を仕掛けていくだけ


 「いいぞ! セニア! もっとこい!」


 「ははっ!」


 セニアに関しては、久々の憤怒の力にただただ楽しんでいる状態だが、セシルに関してはまだ物足りないと感じている

 

 セシルは、セニアとは違い、定期的に憤怒の力を使っているのでその気になれば理性を取り戻せるのだが、セニアに関してはそうではなく、久々の使用によって完全に理性はなくなって完璧に暴走している


 暴走状態のセニアは疲労や体の限界を考えることなく無理な姿勢での攻撃や、セシルの攻撃を受けながらもお構いなしに攻撃を繰り出していく


 そのまま数分、数十分と殴り合いは続いていき、ついにセニアの攻撃はろくに当たることなく憤怒の効果が切れる


 「がっ・・・はあ、はあ」


 「ん? もう疲れた?」


 セシル的にはまだ全然戦い足りないが、セニアの方が限界が近づいてきた


 「まあ、三割じゃこの程度だよね」


 セシルががっかりし、セニアに近づいていき


 「次は五割だ、準備しろ」


 「はあ、はあ・・・くっ! 【憤怒の仮面】!!」


 疲労と憤怒の反動でほとんど動かせない体を無理やり起こされてもう一度【憤怒の仮面】を発動させられる


 「ぐ、がああ!!!」


 しかし、憤怒の力に体が追い付かず、暴走が始まる前に激痛で能力が解けて倒れてしまう


 「ちっ、その程度か」


 セシルはもっと力を出してもまだ耐えれると思っていたが、予想よりもセニアの体はなまっていたようだ


 「ん? ああ、解けちゃったか」


 セシルが空を確認してそうつぶやく


 「【ヒール】・・・足りないか」


 セシルが倒れているセニアに魔法をかけて見える限りの傷を治そうとするが、一回の魔法では治りきらない


 「おーい、そこの君」


 そして、倒れているセニアの代わりにこの戦いを見ていた神代を呼ぶ


 「もう戦わないから出てきていいよ」


 「・・・」


 神代はその言葉を聞いても出ていこうとはしない


 明らかに罠だってわかっているところに出るわけがないが


 それならなぜセニアの傷を治したのかがわからない


 「早く出てこないと、本気でセニアを殺すよ?」


 「・・・・わかった」


 セニアが 人質になっている以上、出ていかないわけにはいかない


 「ありがとう、君、魔力はあるよね?」


 「・・・ああ」


 出ていきはしたが、警戒してできるだけ遠くの方にいる


 「君の魔力、少し貰うね」


 その言葉と同時に、神代の体から魔力がなくなっていくのがわかる


 「くっ・・・何をした?」


 「だから、魔力貰ったんだって、どうせ君治療系の魔法使えないでしょ?」


 「治療・・・、どうしてセニアさんを?」


 「はあ、別に弟を治療しても何もおかしくはないだろ? それにすぐにでも治療しないと大変なことになるかもだし」


 そういいながらも、セシルは神代の体から魔力を奪いながらセニアを治療する


 「よし、終わった、それじゃ、あとは任せるよ」


 「あっと、それと忘れてた」


 セシルが懐から紙とペンを取り出して、さらさらと何かを書いていく


 「これ、起きたらこいつに渡しておいて、じゃ」


 「・・・帰っていった?」


 セシルは神代に紙を渡して、そのままどこかへ行ってしまった


 「それより、セニアさんを・・・」


 どこかに行った相手より、たおれているセニアさんの様子を見る


 「・・・う、ああ、気を失ったのか」


 少し経つと、セニアが目を覚まし、自分の状況を理解する


 「傷は・・・治ってるか」


 やはり、といった感じでセニアは自分の体を確認する


 「わかってたんですか?」


 「ああ、いつもだからね」


 セニアとセシルが戦った際は、いつもセニアが気を失うまで戦闘になり、いつも目が覚めたら傷一つない状態になっている


 「アキト、あいつから何か聞かなかった?」


 「聞かなかった? あ、何か紙ならもらいました」


 「もらえる?」


 「はい」


 神代はセニアに紙を渡す


 「・・・かえって読むか」


 セニアは傷は回復してるが、動けるほど疲労は回復していないので、紙の初めのところだけを読んで懐にしまう


 「え、魔王はいいんですか?」


 「ああ、紙にはもうここを離れるって書いてるから、もういないはずだ」


 「信用できるんですか?」


 「ああ、こんなところで嘘なんかつかないから、安心してもいい」


 セニアはいくら魔王と勇者という立場ではあっても、兄弟である以上、兄であるセシルのことは信用しているようだ


 「ん?」


 「お疲れ様」


 何か音が聞こえ、そっちを見ると、アイラたちが合流してきた


 「ああ、そっちもな」


 あっちでも戦闘はあったようで、二人とも疲れた顔をしていた


 「こっちは、ひどいね」


 「・・・・とりあえず王都に帰ろう、疲れてるだろう?」


 今は話し合う気力もないので、とりあえず戻ることにする


 「そうだね」

 

 それに関してはアイラも何も異論はないようで、言葉に同意して戻っていく


 「それじゃ、また明日」


 帰り道もほとんど何も話さないまま、ふらふらしながらなんとか王都へと戻り、それぞれ宿へと戻っていく

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