作戦開始
・101・
side:神薙 カホ
「みんな、準備はできてるか?」
いよいよ計画の日になり、学園の生徒たちが黄昏の森に向かうので、それに遠くからついていく
「俺はカミシロと、アイラはカンナギと行動だ、絶対にはぐれたりするなよ?」
はぐれてしまったらそもそも戦えないし、もし魔王と出会えたとしても足止めさえできない、なので絶対にアイラと行動しなければならない
「それじゃあ、各自持ち場へ」
魔王側からもらった計画書に、具体的な黄昏の森で襲撃する場所も書かれていたので、事前にそこへと向かい、身を潜めておくことになる
「この辺りで大丈夫ですか?」
「うん、身を隠せる場所も多いし、ほとんど真ん中だから」
「今回の目的って、魔王の力を実感するってことですよね?」
もう一度、この行動の目的をおさらいする
「それもあるけど、あれじゃないかな、少しでも被害を抑えるためでもあるんじゃないかな? いくら向こうが殺しはしないって言っても、魔王だから信用できるとは思えないしね」
確かにこの計画を隠れて聞いていた時は殺しはしないで、あくまでこちらの戦力を見るだけといっていたが
「そうですよね、もし、本当にそれだけが目的なら、そんなに魔王が来る理由にはならないですよね?」
もしそれが目的で、魔王が来るとしても一人や二人で来ると思う、セニアさんが言うには今回来る五人が現在動ける魔王全員になるようで、それを全員連れてくるようなこととは思えない
「多分、ほかの目的もあるんだろうね、でも、それがわからない以上、私たちがやることは一つ、時間が来るまで一人でも足止めすることよ」
足止めをさせるだけで、相手がしようとしていることを止められると思うので、できる限りそれに力を注ぐ
「・・っ! 来た!」
アイラがいち早く気配に気づいて、そのすぐ後にカホもすぐに気配を感じる
「・・・」
どこにいるのかはわからないが、この辺りにいるのは間違いない
「始まった・・・」
アイラが空を見上げて、そうつぶやく
空は黒い幕のようなものが下りてきた、確か範囲から出入りできないようになるのと、外からの感知ができなくなるようだ
「まだ反応は固まってる、動き出したらこっちも動くよ」
すでにアイラは魔王の反応が出てから索敵系の能力で魔王の位置を探り出しており、相手の動きを確認していた
そこから、数分、全く魔王側の動きはなく
「何か話し合いでもしてるんですかね?」
「多分そうだろうね」
アイラの索敵を欺いたりはしていないようで、確実に現れた場所から動いていないようだ
「! 動いた! 行くよ!」
やっと動きがあったようで、すぐさまこちらも行動を開始する
「反応が一つまっすぐにこっちに来ているわ」
移動しながらも反応を確認していて、そのうちの一つが私たちについてきているようだ
「もう少し移動して、迎え撃つよ」
向こうから来てくれるのなら好都合、周りに人的被害が出にくいところまで移動する
「見えたら速攻で仕掛けるよ」
私たちを追ってきている理由はわからないが、先手を取らないと相手が悪ければすぐさまやられてしまうかもしれない
「・・・・」
アイラが【スキルブック】を発動させながら待機し
「・・・・! 【風牙】!」
姿が見えた瞬間、今使える技の中で、最も早いものを唱える
「ふふっ、いいわね」
しかし、それは読まれていたのか、ひらりと躱される
「さあ、始めましょう」
どうやら、相手の目的は戦うことだったようで、私たちの姿を確認するとすぐに戦闘体勢に入る
「あなたは・・・色欲でいいのよね?」
アイラが会話を試みる
「そうだけど・・・何で知ってるの?」
なぜアイラが相手の正体を見破れたのかが相手は不思議そうにしていた
「何でわかったんですか?」
セニアさんからはどれがどの魔王かは教えてもらっていないはずだが
「魔王に女性は三人しかいないわ、だからそれから推測しただけ、間違ってる可能性もあったわ」
「まあ、そんなことはどうでもいいか、それより早く始めましょう? あ、もしかして時間稼ぎ? だったら無駄、もう会話する気はないから」
どうやらこっちの狙いはわかっていたようで、会話での時間稼ぎはできないようだ
「これ以上は無理か、カホ、下がって」
「はい」
近くにいると、戦闘に巻き込まれるかもしれないし、離れたほうが補助もしやすい
「あれ、そっちの子は戦わないの? 二対一じゃないと話にならないけど?」
神薙が離れると、それを相手に指摘される
「もしかして後方? なら攻撃しないであげる、好きなだけあがいてね」
その言葉と同時に相手がセニアとの距離を詰め、いつの間にか剣を取り出しており、それを振りかぶる
「くっ・・おもっ」
アイラはそれになんとか反応して剣は受け止めれたが、思ったよりも威力が高かったのか体勢を崩してしまう
「【ファイアエンハンス】!」
それを見て、すぐさま神薙はアイラに力を上げる魔法をかける
「! よし!」
神薙の魔法のおかげで、なんとか体制を崩さずに受け止めれるようにはなるが
(だめ、すべてにおいて相手が格上過ぎる・・・)
アイラもなんとか反応はできているが、ぎりぎりになっているし、アイラの攻撃も当たる気配はなかった
「カホ! ウィンド!」
「わかりました!」
基本的に、補助は神薙が考えてかけることになっているが、今のように緊急であればアイラさんから指示がありそれを優先してかけるということを話し合いで決めていた
「疾風よ、汝の力を授けたまえ【ウィンドエンハンス】」
そして、この場合は時間をかけてでも完全詠唱、これくらいしないと、目の前の敵にはほとんど意味がないからだ
「これなら・・・」
完全詠唱の魔法を使ってようやく相手になんとか追い付けるくらいの俊敏性
だが、これでなんとかアイラは【スキルブック】を発動できるようになる
「へえ、固有技能か・・・ははっ、いいじゃん」
相手がアイラの力を見ると満足そうに笑い、手を大きく広げる
「それじゃあ、こっちも少し力を出そうかな、【魅惑の香】」
相手が何か力を発動させると、急に目の前が歪みだして、頭がボーッとしてくる
「カホ! 息を止めて!」
だんだんと意識が遠のいていくが、そんな中で何とかアイラの声に従うことができた
「【清浄の域】、もういけるよ」
アイラがスキルブックから、浄化系の能力を使って相手の能力を無効化する
「はあ、はあ、今のは?」
「今のは色欲の能力の一つ、相手の意識を操る香りを出す能力だよ? そっちが本気を出すのなら、こっちも力を出さないと」
「色欲に操られたら戻れなくなるから、絶対に気を付けて」
今はアイラのおかげで香りは浄化されているが、範囲が決められているので、そこから出てしまうと能力にかかってしまう
「さあ、どうする? ごめんだけど、この香りを止める気はないから、なんとかしないと終わらせるよ?」
清浄の域の範囲はそれほど広くなく、アイラと神薙が二人やっと入るくらいの広さしかないので、相手に攻撃するにはここから出ないといけない
「カホ、魔力は?」
「まだ、ほとんど減ってません!」
「じゃあ、全力で私の俊敏を上げて」
言われた通り、俊敏を上げる魔法を何重にもかけていく
「よし、すうーーっ、はあーーーっ」
魔法をかけ終わると、アイラは大きく深呼吸して息を止めて、その瞬間に姿が消える
「おっと、危ない」
目で追えない速度で移動して、相手に攻撃を繰り出したが余裕の表情でよけられる
「うっ、いてて」
何度も攻撃を繰り返すうちに、アイラはやっと相手の動きに慣れ始め、徐々に攻撃が当たるようになってくる
「はあ、はあ、惜しかった・・」
「あれ、もしかしてばれてる?」
「ばれてる?」
アイラの言葉に相手が反応する
「さっきから、相手はあそこから動いてないでしょ? おそらくこの香りを出し続けるにはじっとしていないといけないと思うわ」
確かに、先ほどからアイラの攻撃が当たっているときも、動けばよけれたのにそうしなかったことからアイラはそう推測したのだろう
「なら、とりあえず動かすことさえできれば、自由に動けるようになりますね」
相手の能力が発動している以上、アイラは一度呼吸のために戻ってこないといけないので、あまり攻撃を続けられない
それに、見たところ、かすり傷程度のものなら、すぐに回復していた
「こっちからも攻撃してみます」
「ええ、ただ、むやみにしちゃダメ、カホも攻撃してくるってわかったら、そっちも警戒されるから」
向こうは神薙が支援魔法しかしてこないと思っており、攻撃してくるとは思っていないので、有効な攻撃は最初の一撃だけだろう
なので慎重に観察して、その機会を待つ
(まだ・・・)
その間も、アイラがずっと攻撃を繰り出しているが、思ったよりも隙はなく神薙が攻撃するタイミングはなかった
(・・・・今!)
一瞬、アイラの攻撃をよけるためにいつもより少し大きくのけぞった、そのタイミングを逃さずに、攻撃を仕掛ける
「・・・!!」
相手は神薙の死角からの攻撃に反応できず、足をわずかに動かしてしまう
「ちっ、やるじゃん」
神薙をにらみながらも動かされたことをたたえる
「じゃあ、能力も切れたところで・・・」
相手が二人から距離を取り、改めて何かをしようとしている
「何が来るかわからないから、離れないで」
先ほどのような能力を使われた場合、神薙だけでは対処できないので、アイラは神薙から離れることはできない
「第二ラウンド、スタート!!!」
相手はその言葉を合図に、何かの力を発動させた




