基地襲撃
・93・
side:神薙 カホ
「とりあえず、アルミナ様が戻ってくるまでに先ほどの女性から得た情報を」
「あの短時間で、聞きだしたんですか?」
「まあ、方法がありますので、それより、聞きだしたところ、相手の目的は人身売買目的の子供の融解ですね」
「誘拐・・・」
まあ、子供を見ていると思った時点で、なんとなくそうではないかと思っていたが
「それで、おそらくカホさんがみた男も、その仲間だとは思います」
「本当ですか?」
それが本当なら、解決に近づくが
「おそらくは、ですね、私はその男を見たことがないので、本当にあっているかどうかはわからないんです」
シイルさんは、その男の存在は知っていたが、実際にはあったことはないらしい
「なるほど、それで、どうするんですか?」
その情報を得て、今後はどういう行動するのかを確かめる
「向こうの、拠点も、わかってるので、すぐにでも、攻め込みます」
「え、攻め込むんですか?」
拠点がわかっているのなら、ほかに、確か国の騎士団か何かが犯罪者を取り締まっているはずなので、そっちに頼む方がいい気がするが
「だめですね、それじゃあ逃げられると思いますよ」
「そんなに早くですかですか?」
「こういった集団は、行動は早いですから、すぐにでも行かないと」
ちゃんとした犯罪集団となると、仲間が戻ってこない時点で居場所がばれたと思い、すぐにでも拠点を変えるといったことをするところが多いらしい
「この王都は、特に騎士団による治安維持が活発なので、生き残っている集団を捕まえるのも、一筋縄じゃあいかないんですよ」
ここのそういった部分については、聞ける機会がないので、少し勉強になる
「治安維持が活発でも、やっぱり犯罪はなくならないんですね」
「どうしても、目が届かないところはあるので、仕方ないですね」
それはそうだろう、いくら人を多くして、注意深く見たとしても、目が届かないところは多少はある
「とりあえず、向かう拠点を教えておきます」
シイルさんが棚から、一枚の大きな紙を出してきて、それを机の上に広げる
「拠点はここです」
シイルさんが印をつけた地点は、ここから少し離れたところで、入り組んだような区域のところだった
「スラム街、少々面倒ですね」
(スラム街・・って何だっけ?)
聞いたことはある気がするが、何だったかが思い出せない
「よければ、カホさんもついてきてくれませんか?」
「その、拠点にですか?」
「はい、もしかしたら、すでにつかまっている人もいるかもしれないので、私一人で、手に負えるかどうかが」
確かどれだけその拠点に人がいるのかもわからないし、一人だとつかまっている人を助けることも難しくなる
「別に、ついていくのはかまわないですが、ここはいいんですか? もしかしたら私が見た人が、別人な可能性もあるんじゃ・・」
「そうですね、なので、できるだけ早く済ませ、あと、緊急連絡用の魔道具なども・・・」
「あ、それなら、一つ提案が」
今の計画なら、もしかしたら、ここに危険が及ぶかもしれない、なので、もっといい案があると、伝える
「信用できる人がいるので、その人に、ここを守らせられませんか?」
「・・・信頼できるなら、それが一番いいですね、今すぐにでも連れてこれますか?」
「多分いけます」
おそらく本当に信頼して、ここを任せれるのかを見るのだろう
いったん、私たちが泊っている宿にもどり、受付で神代君がいるか確認する
「えっと、カミシロ様の外出は確認していませんね、おそらくへやにいます」
外出するのなら、受付にカギを渡すのが一般で、神代君は毎回預けると言っていたのでおそらく部屋にいるだろう
「神代君、いる?」
ドアをノックし、声をかける
「ん? どうした?」
すぐに反応があり、ドアがひらく
「ごめんね、寝てた?」
「いや、丁度起きるところだったよ」
多分夜更かしでもしたのだろうか、こんな時間まで寝ていたらしい
「それで、どうした?」
「あ、ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど」
「ああ、ひまだからいいけど、準備してくるから待っててくれ」
とりあえず、神代君の準備が終わるのを下で待つ
「お待たせ」
準備が終わったようで、すぐに降りてくる
「で、何を手伝ってほしいんだ?」
「詳しくは、向こうで伝えるから、とりあえずついてきてもらってもいい?」
「わかった」
神代君が、シイルさんに信用されなければ、そもそも意味はないので、とりあえずは孤児院に向かう
「連れてきました」
「ありがとうございます、そちらが?」
「初めまして、カミシロです」
「・・・」
シイルさんが神代君のことをじっと見て、多分信頼できるかと、戦えるかを見ているのだろうか
「どうですか?」
「ん? なにが?」
神代君はシイルさんが何をしているのかわからないので、不思議そうな顔をしている
「大丈夫そうです」
「よかったです、それでね、神代君・・」
シイルさんから許可も出たので、手伝ってほしいことを伝える
「なるほどな、おっけい、こっちは任せろ」
「ありがとうございます、それでは、カホさん、アルミナ様はもう戻ってきているのですぐにでも行けますか?」
「はい大丈夫です、神代君、任せたね」
「おう」
時間もあまりかけてはいけないので、急いでシイルさんが聞き出した拠点の場所へ向かう
「ここです」
「ここは・・・宿?」
なんの変哲もない、ごく一般の宿だったが、ここが犯罪集団の拠点であるらしい
「それでは、行きますので、入った瞬間にその場で飛んでください」
「? わかりました」
その理由はわからないが、とにかく従った方がいいと思ったので、身構える
ドン
シイルさんが、ドアを蹴り飛ばして、中に入ると同時に床に手をつき
「【地を這う雷光】」
魔法を唱え、床一面を雷が張っていき、私以外の床に足をついていた人々はしびれて動けなくなっていた
「よけてくれてありがとうございます」
「いえ、それよりも、いいんですか? もしかしたら一般人もいるかもしれないのに」
「いたら、その時に考えますよ、音を出さずに無力化するにはこれしかなかったので、それに、この魔法は対象をしびれさせるだけなので、大丈夫です」
まあ、確かに一人ずつ確認していたら、ほかに仲間がいて呼ばれるかもしれないので、この方法はまあ、いいかもしれない
「それよりも、おそらく地下があるかもしれないので、探してください」
確かにここが拠点なら、とらえた人たちを閉じ込めておく場所があるはずだが、見当たらないし、建物を見ても、どうかんがえても二階があるとも思えない、なので、消去法から地下だと考えたのだろう
(うわ、拘束がすごく早い)
私が地下を探している間にシイルさんが一人ひとり縄で身動きを取れなくしていっている
「ん? シイルさん! ここです!」
カウンターの内側に動かせる棚があり、それを動かすと、扉が出てくる、おそらくここから地下に行けると思う
「おそらく向こうはもうこちらに気付いているので、出会い次第、即拘束してください」
「わかりました」
シイルさんが先行して、棚を動かして、中に入っていく
「いったん止まって下さい」
分かれ道のところで、シイルさんの指示で立ち止まり、どちらに行くのかを耳を澄ませて、向かうさきを確認している
「カホさんはこちらをお願いします、おそらくとらわれている人がいると思います」
「わかりました」
「もし見張りがいたら、対応できますか?」
「・・頑張ります」
「とらえることにこだわらないでください、最悪命を奪ってもかまいません」
「・・はい」
もし、本当に戦闘になったら、犯罪者集団にいるのだから、向こうはつかまるぐらいならこっちを殺そうとしてくるだろう
なので、ためらっていたら、こっちが危なくなるが、まだ人の命を奪うのには慣れていない、いざとなれば、できるかもしれないが極力やりたくない
「私が戻るのを待たなくてもいいです、終われば先に孤児院の方へ戻っててください」
こっちにとらえられている人がいつのなら、シイルさんの向かう方には、残りの犯罪集団がいるということだろう、なので、戦闘になるとは思うが、さっきのを見たところ、おそらく邪魔になるかと思うので下手に加勢しに行かない方がいいだろう
「もし、どうしても助けが必要になれば、この笛を吹きます」
地下で窓とかがないのなら、そういった音は問題なく聞こえるだろう
「わかりました、それじゃあ、がんばってください」
「ええ、そちらも」
そして、シイルさんと別れ、道を進んでいく
「思ったよりも、広い、これなら気づいてないんじゃないかな?」
明らかに上の宿よりも広いし、作りもちゃんとしているので、上の宿で騒いでも気が付けないのではないかと思う
(ついた・・・見張りは、一人)
到着したのは牢屋のような作りになっているところで、その前に見張りが一人、やはりまだ私たちが入ってきたことに気が付いていないようだった
(一人なら、気を引けば)
私がいるところ以外に入るところはないのでほかに見張りがいないことは確実
(つかまってるのは・・暗くてよく見えないけど、一人、寝てるかな?)
つかまっている人が寝ているのならこちらとしては助かる、もし私に気付いて何か反応されると、見張りにも気づかれてしまうから
(まずは、気を引いて)
今のままでは、すぐに気付かれてしまうので、檻に向けて、物を投げる
「あ? なんだ、起きたか?」
うまく行ったようで、檻の中の人が出したと勘違いして、見張りが降りに近づいていく
(今!)
そのうちに、すぐに近づき、後ろに回り込んで首を絞める
「ぐっ! なんだてめえ!」
いきなりのことに驚き、簡単に首を絞めることに成功し、そのまま足をけって地面に転がす
「ぐ、くそ・・」
そのまま意識を落とすまで絞め、確実に気を失ったのを確認してから離す
「眼が覚めないうちに」
いつ起きるかわからないので、今のうちに手足をひもで拘束していき、さらに檻に縛り付ける
「カギは・・あった」
腰に牢屋の鍵を持っていたので、それを取り、牢屋を開ける
「大丈夫?・・・・ん?」
暗かったので、近づくまでわからなかったが、つかまっている人のすぐ横に腰かけて確認するとあることに気付く
「? なにこれ?」
見てみると、体中にツタがあり、手足に絡まっていた
「これ、体から生えてる?」
ツタは、ただ絡まっているだけでなく、腕や足から生えており、それが体に巻き付いていた
「たしか・・・ドライアド?」
いつか呼んでいた本で、人以外の人種がいることは知っていたが本物を見るのは初めてだが、体からツタや葉が生えているのはドライアドの特徴だったと思うが子供だからだろうか生えている植物は少なかった
「それよりも、今はここを出なくちゃ」
ここ以外には牢屋も部屋もなかったのでこの子だけを連れて行けば、いいはずだ
「よいしょ」
少し声をかけても起きなかったので寝ている状態のまま抱き上げて連れていく
「シイルさんは・・・・いや、先にこの子を」
様子を見に行くにしても、この子を安全な場所に連れてからにしないと、戦うことはできないし、足手まといになるだろう
「外には・・・増援はなしね」
入ってきたところからちらっと宿の中を見たが、捕まえてる人以外誰もいなかったので、宿の方に戻る
「どうしよう、この子を置いて、シイルさんの方に行く・・・いや、まだここが安全かわからない」
もしかしたら、今はまだ来ていないが、今後相手の増援が来るかもしれない、なので、この子を置いていくのはあまり得策とは言わない
「待つしか、ないかな」
もし助けが必要なら、笛を吹いてくれると言っていた、なので、とりあえず地下への入り口のところで待機しておく
コツコツ
(誰か来た・・・)
足音で、誰か来たのはわかるが下を見ても、暗くてぎりぎり誰が来たのかわからない、なのでシイルさん以外の人の場合を想定して身を隠す
「? まだ来てない・・・いや、カホさん?」
「よかった、シイルさんでしたか」
もどってきたのはシイルさんだったので、隠れていたところから出ていく
「そちらは大丈夫でしたか?」
「はい、見張りが一人いましたが、拘束しときました」
「わかりました、その子はつかまっていた子ですね? とりあえず戻りましょう」
どうやらシイルさんの方も拘束はしたが、人数が多すぎて私たちで騎士団のところまで連れていくのは厳しいようで、あとの始末は騎士団に任せるようだ
「ちょっと大きな音出ますよ、耳をふさぐことをお勧めします」
シイルさんがなにかを取り出し、大きな音を出して空に向けて打ち出す
言われた通り耳を防ごうとしたがこの寝ている子の方の耳を防いだので、直に大きな音が鼓膜に響く
「うう・・」
耳がキーンとし、思わずうなり声をあげる
「大丈夫ですか?」
「はい、少し経てば、治ると思います」
別に行動に支障はないので、再びドライアドの子を抱えて、孤児院に戻っていく




