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剣豪の息子、旅に出る  作者: 三久
第1章 剣豪の息子、冒険者となる
6/81

005 遺跡発見



大森林地帯奥地へ侵入して一週間。

露営を繰り返して必要な原料を入手する。

ターシャ用に必要な原料は、3つのうち2つ入手できた。

あと1つは・・・運が味方しないと手に入らない。



とある断崖部分を通過しようとして、オレは見慣れないモノを発見する。

遺跡である。

こんな場所に遺跡?


安全を確保できる場所で、ステルスを解く。

改めて冒険者ギルドで発行された大森林地帯の地図を調べてみる。

・・やはり載っていない。

おそらく未発見の遺跡である。

通常、未発見の遺跡を探索して遺失物を習得する権利は発見者にある。

放っておいて立ち去るのは、如何にも惜しい。


木々に侵食され、半ば朽ちた石段を登る。

頂上には頑丈な扉があった。

しかしながら長いあいだの侵食で変形の圧力が加わったのだろう、

扉がひしゃげている。

隙間を通ってオレは内部へと侵入した。


内部に侵入すると、最初に広場があった。

頭上は木々に覆われ、厚い緑のカーテンが敷かれている。



歩いてゆくと、正面の壁に大きな壁画がある。

神官の礼拝の様子かな。

左右に神官が展開して、中央の丸い図案に囲まれた顔を礼拝している。

中央の顔はベロを出し、なんとも不気味な顔である。


オレは遺跡を調査する。

崩れた石造りの建物を巡り、中に何かないかを確認してゆく。

木の根っこがボコボコ出ているので、ひどく歩き辛い。

思ったより動けないで最初の一日が終わった。

今日はここまでだ。

周辺を軽く整頓して、休息できる場所を確保する。

もちろん、見えないようにカモフラージュはしっかりとする。

覆いの下で食事をとり、休息をとった。




遺跡発見2日目。

起きた後、しばらくじっとしていて周辺の雰囲気を読む。

・・・よし。

静かに周辺を観察する。

誰もいない。

覆いから起き上がる。


今日は引き続き建物内の調査である。

食料はまだ充分に持っている。



とある狭い通路を通過している。

とある廊下で、おかしい感触の石があった。

踏み抜く直前にスッと身を戻すと、スパッと目の前を何かが通った。

(やじり)である。


遺跡にはワナが多い。

盗賊スキルをもっていない冒険者は、カモになる。

オレの場合は盗賊ギルドに知り合いがいて、モグリで色々教えてもらった。

・・いつかオレがやられるかもなw


時々休憩をはさみながら、遺跡の探索を続けてゆく。


神経を集中して行動するのは、ひどく疲れるものだ。

夕方にはぐったりして野営の準備を行う。

乾物中心の食事をとる。

食後、ロウソクの炎で湯を作る。

ゆっくりと飲み、暖かさを味わった。




遺跡発見3日目。

野営の準備はあるから寒くはないが、硬い床に寝るので身体が痛い。

起き上がると体操をして、動けるように身体を温める。

昨日は成果無し。

今日は何かあると嬉しい。



・・午後になったが相変わらず成果無し。

この遺跡はハズレらしいと諦め始める。


ある建物を調査している時、石棺を見つける。

グッと蓋を移動させると中が見えた。

クモの巣とクモがウジャウジャいる。

ウエッと思って後ろに逃げた。


建物を出て、次の建物へ向かう。



そろそろ遺跡調査も飽きてきた。

もう諦めて本来の探索に戻るかなと思ったとき、後ろに異様な雰囲気を感じる。

とっさに前転して後ろを振り返った。


眼の前にはクモの巣で覆われた、異様なものが(うごめ)いている。

オレは飛び退(ずさ)り、相手との距離をおく。


「○△☓□◎△~!」

それは何事かを叫び、ヨタヨタとこちらへやってくる。


オレはさらに飛び退り、

「オマエ、何なんだ!」

大声で叫ぶ。

それはビクッ!とした後、まだウゴウゴと近づくので、

槍を突き出して「動くな!」と威嚇する。


言った意味が分かったのか、動きが止まったので、用心してオレはそれに近づく。

槍の先を使って、クモの巣を外す。

ネチーッとイヤな感覚を残して、クモの巣は外れてゆく。


外してみると、中から金属の仮面が表れた。


さらにクモの巣を取り去ると、ボロに覆われた全身が出てくる。

ボロに覆われたソイツは再びウゴウゴと動き、仮面を脱ぎ捨てる。


仮面が外れて子供の顔が現れる。

その顔は、覆っていた仮面の汚れに反して、綺麗である。

「プハーッ!」

子供は息をすると同時にオレを見る。


「ワタシのコトバわかる?」

ひどくナマリのある発音で喋った。

オレは頷く。


「まったく酷い目にあったよ。

いきなり箱の中に押し込まれて、それから真っ暗な中で。

ずーっとだよ? 

君が助けてくれなかったら、いつまで閉じ込められていたことやら。」

今度は身体を覆っていたボロを脱ぎ始める。

中からは、際限なくクモがポロポロとこぼれ落ちる。


素っ裸になったことで、子供は少女であることが分かった。

「水。水ある!?」

突然叫ぶ。

オレは持っている水筒を差し出す。


少女はフタを開けると、いきなり頭にふりかけ、口を付けてゴクゴクと飲む。

すっかり飲んだところで「プハーッ!」

突然気づいたのだろう、「さ・寒ぅー! 服無い? 服!」

オレは自分の着替えを、とりあえず分けてやる。



着替えて人心地が着いたのだろう、

少女は脱ぎ捨てたボロの中から使えそうなものを探している。

オレは、今日の探索はここまでだなと思い、今夜の野営地を考える。


「何それ? 地図?」少女が覗き込む。

オレは少しビクッとする。


オレは、まだこの存在に気を許してはいない。


大体、コイツが子供の訳はない。

石棺の中に『何年も』隠れてる子供がいてたまるかw

それでも敵意は感じられないので、一応注意レベルまで警戒は下げている。


「今まで調査できた場所の地図。

ここから少し戻った場所に露営するには良い場所がある。」

オレはそう言って立ち上がり、荷物を持って歩く。

少女は物珍しそうにオレを見て、一緒に歩き出した。



戻った場所は、元は小広場らしき所である。

まだ噴水が残っていて、そこから水がチロチロと湧き出している。


「ヒャッホー!」

少女は素っ裸になると、叫んで池に飛び込む。

浸かると同時に「寒ぅ~w」

それでも出ないで身体をこする。


「もう、なんていうか、クモの巣がね、イヤなの。

ネチネチしてさ、まだ付いてる感じするしぃ。」

ゴシゴシこすっている。


オレは少女が浸かっていない上の方の水たまりから水をくむ。

「水浴びが終わったら、薪を採ってきてくれ。」

そう頼んで食事の支度を始める。

身体をこすっていた少女は「リョーカイ。」

そう言って池から出た。



夕暮れ時になって食事は完成する。

野火を焚くと場所が特定されるから嫌なのだが、

ここなら厚い緑の天蓋が、オレ達の存在を隠してくれるだろう。


「口にあうかどうか判らんが、メシだ。」

少女は、椀を差し出すとクンクンと匂いを嗅いで

「よし。」

食べ始めた。

オレはそんな彼女を見て、とりあえずメシは食べられることを確認する。


明るいうちに食事を終えて、建物の影を今日の棲家(すみか)とする。

日が暮れて暗くなるまでに明日の準備も済ます。


夜になる。

焚き火が()き火となって、オレが寝床で寝ようとすると、

少女が「ワタシのは?」

オレは少女に

「寝るのか?」

「寝るよぉ。」

「寒いとかの感覚はあるのか?」

「あるよぉw」


「オレに対して危害は加えるか?」

「それは絶対にない。」

「ホントに?」

「ホントだってw」

・・・信用することにした。


「ホレ。」

オレの寝床の中に入れてやる。

少女はゴソゴソと中に入り、チンマリと丸くなると、すぐに寝てしまった。




遺跡発見4日目の朝。

日の出る前に目を覚ます。

少女はオレの傍らで、まだ寝ている。


不思議な事だが、遺跡の中では害獣を見ない。

なので通常ならばしないのだが、ここの所、歩哨を立てていない。

遺跡全体で、かすかにだが蚊の飛ぶような音がずっとしている。

そのせいだろうか。


前日の熾火(おきび)が残っていたので、そのまま焚付(たきつけ)にする。


温かい食事は、やる気が起きる。

食後に、お茶をいれる。

「ホレ。熱いから気をつけろ。」

少女はもらったお茶を、おっかなびっくり飲む。

「アチッ!」

唇をフーフーしていたが気に入ったらしい、ゆっくりと飲みだした。



「さて、調査を始めるか。」

そういってオレは立ち上がる。

まだ未調査の部分は多いが、そろそろ引き時だろう。

「今日調査をしたら、遺跡の調査は終わろうと思う。」

少女は頷いて、とある方向を示す。

「あっちは調べた?」

オレは首を振る。

「じゃ、行こう。」

彼女は先頭になって歩き出す。



木々を越え、ベコベコになった広い石畳の場所へ出る。

奥に塔頂部分が半分壊れた、台形状のピラミッドがある。

こいつは大きい。

「こいつは・・」オレがつぶやくと、

「ヘヘン。」

少女は胸を張ってオレを見る。


「ここはラ・ナヤの神殿。お目当てのお宝なら、ここにあると思うよ。」

「ここってラ・ナヤっていうのか?」

「そう。多分、もう大昔になってると思うけど、大勢の人が住んでいたよ。」


オレは少女を見下ろし、彼女の(ほお)に手をあててスリスリする。

スベスベした感触がある。

頬をつまんで、キューッと引っ張る。

「痛い、イタイw」

何するんだという顔をしてる。


オレは少女をジッと見て、

「オマエ、何者なんだ?」


見れば分かるが、この遺跡は相当前のものだ。

コイツが隠れていた箱も状態からすると、かなり古いものだ。

そんなに隠れて生きていられる生物なんて、オレは知らない。


「何だと思う?」

キラキラした目で少女が見返す。

「オレが質問したんだけどな。」

苦笑する。

「謎はナゾのままとっておいた方が楽しくない?」

ニカッと笑って、訳の分からない返答を返された。


オレは、ため息を1つついて

「名前は?」

「名前?」

「オマエのさ。」

「えーと、」

そう言って、腕を組んで考えている。

「・・・わかんない。」

難しそうな顔をして、そう答えた。

「そうか。」


一挙に面倒くさくなった。

「名前が無いのも不便だな。・・そうだ。『リドル(Riddle)』ってどうだ?」

「リドル?」

「そのまま『謎』って意味だ。良いだろ?」

「いいのかなぁ?」

そんな感じで適当に名前を決めた。


オレは「いくぞ。」

(いざな)うように手を振って歩き出す。

オレ達は、壊れたピラミッドに近づいてゆく。



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