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剣豪の息子、旅に出る  作者: 三久
第2章 剣豪の息子、故郷にて??になる
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040 緊急発進  



瑞穂の国、深夜。

「姫様。大丈夫でしょうか。」

乳母は心配である。

遠い場所にいる人物を引き寄せる術は『仙道術』と呼ばれ、

仙術を極めた者以外には使えないとされている。

実は例外があった。

ある血統の者は、所定の手続きさえ踏めば使えてしまうのである。

ただし・・・



姫は王城、奥座敷にある神前の間に入り、拝殿にて準備を整える。

祝詞(のりと)よーし。

お供えよーし。

魔法陣よーし。


精神を統一して神前にて三拝。

おもむろに祝詞を始める。

「高天原に千木高知りて 皇御孫命(すめまのみこと)の 瑞の御舎(みあら)へ参りて・・・」

祝詞が進むに連れて、魔法陣が白く輝き始める。

「種々の罪事は 天津罪国津罪(あまつつみくにつつみ) 許許太久(ここだく)の罪出む・・・」

魔法陣はキラキラと輝いて、丸い光のスクリーンを作る。

「・・・天津祝詞(あまつのっと)太祝詞事(ふとのっとごと)()れ!」


最後の祝詞(のっと)を述べた途端、中心にホログラムが形成されて人影が出来上がる。

人影は輪郭を次第に明らかにして、ドットが細かくなってゆく。

最後に『ピカッ☆』と光ると、中心に人が一人立っていた。


「ヨシュア!」

姫は光が消えると駆け寄った。

「・・・あなた、誰?」 

そこに立っていたのは、年の頃16、7の娘であった。




その日、ヨシュアは商業都市シュヴァインフルトの便利屋ギルドの要請により、

マンドラゴラの採集を行っていた。


迷宮都市シュウェリーンからは、しばらく前に帰っている。

当時のパーティは解散したのだが、

リドル・ターシャ・イズン・リン・ノードは冒険者レベルが近いせいか、

何のかんの言って一緒にクエストをこなしている。

受けたいクエストが難しいなと感じると、

アリゼに頼んでリーダーになってもらい、コツコツと達成している。



ヨシュアは新米(ルーキー)を率いて迷宮を第7層まで制覇した功績と、

取得したアイテムによって1階級。

昇進テストで合格して1階級の、2階級特進を果たしていた。


本来はめでたいことなのに、

「アイツ、やっぱり死神に・・・」とか、

「あー、死亡フラグ立ったな。」とか、

ロクなことを言われていない。

・・・2階級特進の代表例が『殉職』だもんなぁw



現在ヨシュアは、シュヴァインフルトから1日の距離にある、

ノイヒュッテンという町に隣接するシュペッサートの森にいる。


ここはモンスターがいるアウトバックとは違った意味で、不気味な森である。

たまにだが、失踪事件が起こるというのである。

短い時で数日、長いと数ヶ月失踪する。

死亡した例は無く、いずれも後日、本人は戻ってくる。


奇妙なのは、本人に失踪したという感覚が無いことだ。

どこにいたかという記憶も無い。

ただ、森から戻ってくると、日数が経過しているのだ。


気が付かないうちに日数が経っているのもそうだけど、

何処にいたかも解んないっていうのが気味悪いな。

ヨシュアは森の伝説を考えながら、マンドラゴラを引き抜く準備をしている。



マンドラゴラは、引き抜く時叫び声を上げる。

その叫び声を聞くと、聞いた人は死ぬ。

本を読むと別の生物に引き抜かせるとか、ゴレームを使うとか書いてあるが、

冒険者の中では『首チョンパ』が普通である。

露出している根の部分と草の部分、

つまり『首』のところで悲鳴を上げられないようにスパッと斬って、分けて採取する。


今回のオーダーは「草と根を分けずに採取してほしい」。


オレは使役獣使いでも、ゴーレムを使える機械魔術師(エンチャンター)でもない。

周りを丁寧に掘り進み、ある程度露出したところで

気力(きりき)を使って植物を包んで根を切るという方法をとっている。


時間はかかるが、自分で見ても取得物の状態は良い。

日が暮れる頃、今日もいいもの採れたなという感じで一日が終った。



夜。

ここ何日か張りっぱなしにしているテント場で、ヨシュアは取得品の選別をしている。


最初、近くのノイヒュッテンに戻って出るを繰り返した。

ところが、ノイヒュッテンには宿屋が無い。

納屋借りるなら幕営も一緒と思い、ここにいる。


幸い天候も変化が無く、穏やかな日々である。

これなら明日中獲って、明後日には撤収できるであろう。




深夜、異変は発生した。


《ヨシュア。何かヘンだよ》

妖精(フェー)の姿でミナーヴァが表れて言った。


ヨシュアも少し前に気づいている。

肌がピリピリする。

寝たまま刀を引き寄せたが、事態に変化はない。

急いで服を着て装備を整える。


テントから外に出て、状況を探る。

辺りに怪しい気配は無い。

ただ、肌のピリピリする感じは、ますます高まっている。


「これは何かあるな。」

オレが警戒を解かずにささやくと、ミナーヴァが

《何かがやって来る》

そう言って周囲を警戒する。



用心して幕営地から移動しようとしたら、すでに遅きに失していた。

・・・どこだ、ここ。


平らで真っ暗な平面に何かの魔法陣が光り、自分はその中心にいた。

移動しようにも、おそらく魔法陣の外側は、何もない空間だろう。

魔法陣は真っ暗な空間をフラフラと漂い、どこかへ流れてゆく。


肌のピリピリ感は既に無く、今度は、どこかに引っ張られるような感覚がある。

《ヨシュア、ワタシは隠れ・・・》

ミナーヴァが喋ってる途中で、どこかへ急速に引っ張られる。

これは、どこかに召喚されるな。

そう思った途端、明るい光の只中に放り込まれ、何も見えない状態になった・・・




目が見えるようになると、そこには少し大人になった、見慣れた顔があった。

その顔は、怪訝な顔をしてオレを見て

「・・・あなた、誰?」


「ここ、どこだ?」

辺りを見回して気づく。

どうもオレは、故郷に戻ったらしい。


そう気づいた瞬間、ヨシュアは気を失った。



第2部です。

今までの設定とガラッと変わりまして、日本の時代物となっております。

よろしくお願いします。


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