039 緊急事態
ここはヨシュアがいる国から遠く離れた、ヨシュアの故郷
・・・の、ヨシュアの生家。
二頭の馬が全速力で駆け込んでくる。
「開門、開門!」
騎乗していた武士が、門から駆け込む。
「御館様は?」
すぐに奥の座敷に面する中庭に案内される。
大座敷には、主なメンバーが揃っていた。
武士二人が座敷の中庭に達すると同時に、
座敷に座っていたヨシュアの叔父が、
「どうだった!?」
武士の一人が荒い息を整え、キッと厳しい顔をして
「御館様! 決裂でございます!」
御館様と言われた男は、座敷の上座に目を閉じて座っていた。
横にいた若い武士が
「父上! かくなる上は、我々も・・」
反対側にいた、厳つい形相の叔父が、
「まだだ! まだ早い!」
「しかし!」
「ええい、いかん!
われわれは本来、どちらに与するわけにもいかん立場なのだ!」
その言い争いを皮切りに、
屋敷では喧々諤々(けんけんがくがく)の議論が始まった・・・
少し離れて、王城・奥座敷。
「姫様。どうなるのでございましょうか。」
乳母の心配そうな声がする。
姫は静かに花をいけている。
「私達が騒いでも、どうなるものでもありません。」
至極落ち着いた様子である。
「それでも・・」
乳母は、なおも言葉をつなぐ。
姫は花をいける動作を止め、ふとつぶやいた。
「ヨシュアならば・・・何か解決策を見つけるかも。」
姫とヨシュアは幼馴染である。
父同士は主従の関係であったが、ヨシュアは気にすること無く姫に接していた。
仲は良かったと思う。
昔は泥まるけになって、一緒に遊んだものだ。
そういえば修行の旅に出て、もう三年になる。
そろそろ戻って、旅の話を聞きたいものだ。
フゥとため息をついて、姫は姿勢を正す。
「ヨシュア。 お家の・・いいえ、私の一大事です。戻ってきて。」
姫は花をいける動作を止めた。
そこには、端正に整えられた生け花が、静かに完成しているのみである。
長らくお読み頂き、ありがとうございます。
ここで第一部、完了です。
ここから第二部・・・なんですが、現在進行度合いが1/3くらいでして、大急ぎで書いてます。
大変申し訳無いですが、時々遅れるかと思われます。
ご了承くださいませm(__)m




