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剣豪の息子、旅に出る  作者: 三久
第1章 剣豪の息子、冒険者となる
24/81

023 迷宮生活・2



夜明けから数えたほうが早い時間。

オレは歩哨で起きている。

あちこちのパーティでも用心深いところは歩哨を立てている。


オレ達がいる場所は、10人くらいが寝られる広さがある部屋で、

もちろん戸や窓枠はないが、プライバシーがある程度は確保できる場所である。

オレは出入り口に近い場所で、時々薪を焚き火に入れながら静かに起きている。

ターシャは焚き火の近くの場所で壁の残骸に寄りかかって、半分寝ている。



夜が明ける少し前。

イズンが起きてきて

「おはよう。」

身繕いすると、昨晩の残りに何がしかを足してスープを作り始める。


朝食が出来上がる頃、みんなが起き出す。

アリゼが骨をゴキゴキ鳴らして起きる。

「ああ、身体が凝るよぉ。そろそろベッドが恋しいかなぁ。」


クエストを行っている最中は、食事時間は不規則である。

各人が役割に応じて取る時間が決まる。

今朝のオレは歩哨に立っていたので、早めに食べている。



出発前、オレは用を足そうとトイレに向かう。


とある角を通り過ぎようとする際、影から手が伸び、

ボロを被せてオレを影へと引きずり込む。

「やったぞ!」

「叩きのめせ!!」

それから後はボコボコである。


「ざまあみやがれ!」

「俺達をナメるからだ!」

まだケリを入れてる奴がいる。

「おい、もう逃げるぞ!」

そう言うと、急いで逃げていった。



「あ、来た来た。何やってんの。 行くよ!」

アリゼが怒る。

「スマンスマン。少し時間がかかってね。」

オレは自分の装備を付けると、急いでパーティへ加わった。




それから少し後。

オレ達パーティにケンカを売った連中が出発しようとしている。


昨晩のケンカに負けた腹いせに、今朝、勝った男を襲撃してボコボコにしてきた。

誰だか判らないように、ボロを被せて殴ったのである。

全員、いい気分であった。


「おい、スミスがいないぞ。」

「アイツ、何やってんだ?」

探してみても、どこにもいない。

ある男がひょっとしてと思い、襲撃した場所に行ってみる。


そこには相変わらずボロに包まれた奴がいて、モゴモゴと動いている。

「ヘッ、ざまあみろ」

ペッとツバを吐いて、蹴り飛ばす。


様子を少し見て、急に不安になった。

ボロを開けてみると・・ボコボコになったスミスがいた。


「ヨシュア。あんた、そんな帽子持ってたっけ?」

アリゼが、カウボーイハットをかぶったオレを見て不思議そうに言う。

「ああこれ? 今朝もらったんだ。」

「もらった? だれに?」

「ナイショ。」




第2層も半ばをまわり、宝箱も幾つか開けた。

リンの解錠スキルは大したもので、大抵のワナは解除している。

実際、パーティはワナの解錠で死傷する場合が多い。

うまい解錠スキル持っている人間がパーティにいるだけで、

生存率は大きく上がる。

しかしながら収穫無し。箱の中はカラばかりである。


「2層は、当たりが少ないなぁw」

リンはガッカリしている。

地図屋のトールから、5層まではヒット率は低いと教えらている。

オレはリンの肩を軽く叩いて

「事故無く開けてくれるのが一番さ。ありがとう。」



昼過ぎ。

気がつくと、2層最後の領域へと近づいていた。

オレは地図より『休憩に最適』と書いてある場所で小休止をとる。


「第2層からはボスがいる。

今まで出会わなかったから、このあたりにいると思う。

出会ったら攻撃。

えーと、ボス初めての人?}


手を上げてもらうと、リドル、ターシャ、イズンが初めてである。

オレはアリゼと相談してフォーメーションを決めた。



今回はリドルが先行する。リンは最後尾でリードとイズンの援護である。

みんなが歩いて道になった場所を歩く。

ここは広くテーブル状に開けた場所がブッシュ化した地域で、

泥炭化した腐葉土が積み重なって歩きづらい。



チュクチュクいう泥道を進んでいると、アリゼからハンドサインがある。

静かに近寄ってみると、プーカである。


プーカはオーガの小型種で、コブリンよりも狡猾である。

ゴブリンと同じく、資源としての価値がない。

討伐依頼が来ない限りは相手をしても得がない種族だ。

ネッカーとハウブマンがいて、

ネッカーは索敵、ハウブマンが攻撃と、大まかに分けられている。


「ネッカーだね。」

アリゼがささやく。


そいつはキョロキョロと当たりを見回して、通路に『ワナ』を仕掛けている。

気が付かないで踏むと『グサッ☆』ときて、怪我人が出るシカケのものだ。

そのパーティは動きが遅くなるから、ゆっくりと始末しようという魂胆だろう。


オレが合図すると、アリゼが弓で始末する。

オレは静かに近寄ってとどめを刺すと、ワナを解除する。



少し進むと、プーカとサイクロプスが一群となってたむろしている。

サイクロプスが2頭とプーカ30匹くらいいる。

近くに・・・あー、先行したパーティがやられたなw

ボロボロになった装備と、肉塊が転がっている。


オレ達は少し下がって、素早く作戦を立てる。

各人所定の場所へ移動して、準備を始める。


リドルとリンが索敵を行い、隠れて周辺を警戒していたネッカーを見つけ、

オレとアリゼが、ボウガンと弓で片付ける。


下準備が終わった所で最終チェック。

よし。後方の敵は排除完了。


オレが合図すると、ノードが静かに呪文を開始する。

程なくして

『コールド』

魔法が発動する。



サイクロプスを中心にして、プーカに水系魔法がかかった。

周辺に若干のダメージと行動力の低下が発生する。


オレとターシャが先行で、サイクロプスを狙う。

アリゼは弓でプーカ、特にハウブマンを優先して排除する。

リンとリドルはネッカーを狙う。


オレは最初の一撃に気力(きりき)を込める。

『フンッ!』

袈裟斬りに降ろした刃先は、サイクロプスを切断する。


ターシャの電撃系の魔力を込めた刃先は、

もう1匹のサイクロプスに触れた途端、雷撃を起こし、

全身に電気の回ったモンスターは、痙攣を起こしながら倒れた。


再び起き上がろうとする所を、ノードが『アイスニードル!』

胸につららが刺さる。

続けざまにターシャが急所に剣を突き刺す。

今度こそサイクロプスは終わる。



総攻撃すること(しば)し。

集まっていたモンスターは、全て排除した。


「これでおしまい?」

ターシャが尋ねる。

「第2層のボスは、トールの資料には明記されていなかった。

こんなもんじゃないかな。」

そう言って、オレは刃の汚れを拭いて鞘にしまう。




ダンジョンの生態というのがあって、

我々なりモンスターが倒されると、周辺から掃除役(スカベンジャー)が寄ってくる。

ここは昆虫種が主で、しばらくすると毒のあるヤツがウジャウジャと寄ってくる。



戦闘が終ったオレ達は、急いでアイテムの回収にかかる。


みんながアイテムを回収している間、オレは倒れたパーティの状況調査を行う。

パーティが全滅しているのを見かけた場合、可能ならば遺品を回収する。

またできればだが、全滅に至った経緯なども調べることになっている。


6人のパーティ。

男4人。女2人。

全員死亡。

原因、刺殺・切断及び撲殺。

遺品は・・・認識票(ドックタグ)だけ。

衣類と装備は剥ぎ取られて放置されていたから、認識票あっただけでもめっけ物か。

視線を感じて上を見ると、クモのバケモノ、アラキスがこちらを見ている。


「作業時間、あと3分。」

監視要員のリドルが言った。


懐にドックタグを懐にしまうと、オレもアイテムの回収にかかる。

ざらっとアイテムの回収を行い、現場より急ぎ退避する。



しばらく進むと穴の開いた塔があって、入ると螺旋階段が下へ向かっていた。

地図を調べたオレは

「これで第2層完了。これを下って第3層入り口のところに街がある。

そこから帰還する。」


「やったー!」

みんな疲れているにも関わらず、歓声が上がる。

「水を差すようで悪いけど、

さっきみたいなモンスターに、途中出会わないとも限らない。

油断せずに行くよ。」

ここで何かあったらバカみたいだ。



ここからの下りは結構長かった。

螺旋階段で頭がグルグル回る頃、地上に着く。


「ここが地面?」

尋ねるリンに

「地下だから地上っていうのもヘンだけど、地面には着いたと思う。」

やっと第3層に着いたらしい。



そこは日が差さないジメジメとした場所で、カビくさい匂いが漂っている。

「こっちだ。」

地図を見てダンジョン・コンパスで確認して、オレは進む。

段々暗くなって、ランタンを灯す。

滑りやすく、よく見えない道を歩いてゆくと、突然、明かりの下に出た。


『歓迎! 第3層』

門の上にそんな看板のある入口を通り過ぎると、町がある。

迷宮都市の中の町『ハングタウン』であった。



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