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相棒が凶暴  作者: 猫山音王
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一話 事件

処女作です。生活の都合上、不安定な投稿となってしまいますが、御容赦下さい。また、本作は厨二病全開です。耐え切れた方を尊敬するレベルです。頑張って読んでいただけると、嬉しいです。感想は、誤字・違和感・厨二病がやばいのみ受け付けております。それ以外はご遠慮下さい。

「何が、、、、、、起こった?」


 少年はそれを見て言った。

 帰宅して自分の家が真っ赤っだったら誰だって驚く。部屋の大体が同じような状態だ。壁に手をやると温かさを感じた。更に、生臭い異臭も。


「血、、、、?!」


  靴下が汚れるのも気にせずに家の中へ駆け込む。

 足がもたつくが、そのことも頭から放りだす。部屋の奥に行くと、動く物体を発見した。

 彼が発見したのは、妹を貪り喰らう母だった。

 妹の頭部はまだ残っているが、腹部は切り裂かれ、死んでいることが確認できる。少年の視界は、何もかも白く染め上げられる。何も考えられない。


「何を、、、している、、、?」


 思わず敬語が口から出ることを拒んだ。思考は既に行動を諦念していた。手が震える。足が震える。肩が震える。怖い。怖い。怖い。


「あら、、、おかえりなさい」


  ニタリと微笑む彼女の左手には、妹のであろう血液が付着した刃物が握られていた。逆の手には、先程から喰っている妹の内臓を持っている。


「うっ、、、、」


 急に吐き気が食道を駆け上がり、急いで身体の外へ飛び出す。何が何だかわからない。取り敢えず、逃げなければ。そう思うが身体がついてこない。先程の光景と、吐き気が頭を掴んで、この場所に押さえつけている。足が動かない。何も出来ない。


「どうしたの?、、、、具合でも悪いのかしら?、、、、フフフ」

「な、、、何で!?」

「あぁ、あのこと、、、、、あの方に捧げたの」「捧、、、げた、、、、?」

「、、、、、、、貴方は死ななくてはならないわ。見てしまったのだもの」


 言っている意味がわからない。一体何故、何があってこんなことになり得るのか、少年にはわからなかった。彼女は赤い雫を垂らす包丁を持ち、ゆっくりと近づき始める。咄嗟に少年は、頭を抱えながら走った。例え1秒でも良いから、考える時間をくれと、思いながら。


  気がつくとそこは、近所の公園だった。少年はそこで、呼吸を整える。落ち着くように己に語りかけ、暴走する鼓動をどうにか鎮めた。汗がダラダラと流れ、衣服が執着するように身体にへばりつく。小さな頃は母と一緒にここで良く遊んだものだ。そんな明るい思い出も、今となっては混乱の原因にしかならない。頭に痛みを覚え、両手で抱える。腰が抜け、大きな音を立てて長椅子に座り込んだ。母と妹のことの衝撃が緩んで、脱力したのだろう。気付かれることを心配する余裕もなかった。


  母はどうしてしまったのか。昨日までは、普段通りの母親だったはずだ。何か昨日の夜にあったのか、それとも、今までの母が偽りの仮面を被っていたのか。悪夢という線もあるが、それにしては感覚がしっかりとし過ぎている。先程の生臭さや、温度だ。


「おかしい、、、、、何があった?」


  情報整理が先決だと考え、働かない思考を無理矢理動かす。いつまでも休んでいるわけにもいかない。取り敢えず、妹が死んだ。これは紛れも無い事実だ。受け入れるしかない。そして、殺したのは多分母だ。認めたくはないが、実際に見たのだからそうなのだろう。おそらく、彼女はまた襲撃してくる。その前に対策を考えなければならない。


「とは言ってもな、、、、何が出来る?」


  浮上してくる案などない。自分は素手だ。武器も防具もない。それに対して、相手は包丁を持っている。もしかしたら、敵は彼女だけではないかもしれない。男性が複数加われば、自分に勝ち目はない。援軍には期待出来ないだろう。何故なら、自分の人脈が乏しいからだ。この時ばかりは、ボッチの自分を呪いたくなる。何にしても、情報が少な過ぎる。所謂、八方塞がりと言われるやつである。


「、、、、いっそのこと、自分から死んでしまおうか」


そんなことすら呟いている。この世に未練などとうに無い。しかし、こんな衝撃的な形で死ぬのか。そう思うと、何故か笑いが滲んでくる。こんなにも急に命を落とすのだと思うと、怖いという気持ちが霧散する。その代わりに心を埋めるのは、怒りだけだ。燃え滾る、怒りと憎悪のみが頭の中で渦巻く。


「、、、くくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくククククククククククククククふふふふふふあはははははははははははははははははははははははハハハハハハハァ、、、、、、、、、はぁ、、、」


  自然とおかしな笑いが込み上げ、楽しくなってきた。笑った後は無意識の内に、恍惚の表情を浮かべていた。今日起こったことがあまりにも彼に衝撃を与え過ぎたのだろう。何も成す術が無いことが可笑しくなり、理性という名の箍が外れたのだ。常人が耐えれるストレスのキャパシティを超えた。


「こんなところにいたの?」


  声をかけてきた方に頭を動かすと、包丁を握り込んだ母が立っていた。顔は湾曲した口と、丸くなった眼が貼りついていた。不思議と、恐怖は無かった。寧ろ、込み上がってくるのは、殺意。冷静に。ただただ冷静に彼はこの状況を愉しんでいた。常人からしたら慌てる状況かもしれないが、壊れた彼にとっては遊びだとしか認識されなかった。


「、、、、、、、、お前は、殺す。楽しく、殺してやる」

「、、、どういうことかしら?」


 直ぐにでも彼を襲おうとした彼女の手が止まった。何の、と言われても楽しいのだ。他に答えようがない。「何故あなたは食事をするの?」と、聞かれるようなものだ。それ程、彼にとってこの状況は楽しいと感じることなのだ。殺意が心地よい。凶器が面白い。血液が美しい。憎悪が愛しい。全部が快楽。そんなことばかりが彼の脳を飛び回った。

  生きなければ。この愉しみを奪われるわけにはいかない。生きなければ。生きなければ。生きなければ。その為に何をする?

 殺される前にこちらから殺さねば。殺さねば。殺さねば。殺さねば。殺さねば。殺さねば。殺さねば。殺さねば。殺さねば。殺さねば。

 今の彼の形相を見かけたら、誰もが逃げ出すだろう。

  彼女は振り上げている包丁で、今にも少年の首を切り裂こうとしていた。殺られる前に、殺る。

 思い切り振り下ろされる刃を寸前のところで回避し、ゴロンと下手くそな受け身で距離をとる。所々、打ち付け、浅く擦りむいた。しっかりと体制を整え、相手の次の行動に備える。横薙ぎの一閃。避けきれないと判断して懐に入り、腕を抑えようとしたが、吹き飛ばされた。女性とは思えないほどの腕力だ。背中を勢いよく打ち付け、カハッと肺の空気が無理矢理押し出される。気付くと目の前には思い切り刃物を喉へ突き立てようとする影が覆う。咄嗟に振り解き立ち上がった。


「楽しみね、、、、あの方には何処を捧げようかしら。肝臓?心臓?」

「あの方?さっきから捧げると言っているが、誰に、何の目的があってそんなことをしている?」


  精神が落ち着いて、冷静になった彼は、急に喋り出した彼女に純粋な疑問をぶつける。それもそうだ。彼は何も分からないまま、実の母親に刃物を向けられているのだから。


『私の為さ、少年』


  歪んだような、表現しづらい声が聞こえてきた。声の方を向くと、異形の化け物がいた。頭からは曲がりくねった双角が伸び、背からは蝙蝠の翼を広げている。まさにこれこそ悪魔と言われるものだ。表情などは包帯に隠されていて判断が難しいが、燕尾服を着ている。また、紅く光る両目には、黒縁の眼鏡を掛けていた。極めて奇天烈な格好だ。


「誰だ?」

『分かっているじゃないか。悪魔さ。奇抜というのはいただけないが』


  当然、少年は疑った。しかし、相手はこちらの思考を読んだ。取り敢えず、人間ではないことは確かだ。


『信用を得られないというのは哀しいね』

「そうかな?この状況じゃあ仕方ないと思うけどね、、!」

『悪魔に冗句を言うかい、、、、?』

「傷ついたのかな?悪魔のくせに」


  現在の状況に興奮し、危険だと分かっていても相手と対話してしまう。大量のアドレナリンが、頭を熱くさせる。悪魔だと自称する化け物から、圧迫するような殺気が放出される。怖いが、逃げ出す程ではない。少しばかりの恐怖も消えた。彼の感覚はとっくに普通を超えているのだ。この程度と、思いながら必死になって口を動かす。


「気を悪くしたのなら謝『面白い!』 ろ、、う、、、、はぁ?」


  勢いで悪魔を揶揄うようなことを言った少年から、間の抜けた声が飛び出す。限界が近かったのだ。せめてもの意地で笑いを含んだ謝罪をしようとした途中、予想外の言葉が出て彼は困惑した。


『この私にそのような口を聞いたニンゲンは未だかつていなかった!実に、実に素晴らしい!』


 、、、、、 どうやら、まともな会話を求めていたのが間違っていたらしい。全くもって、話についていけない。何か、変なポーズをとっていることからも、相手がオカシイ奴だと分かる。もう色々なことがあり過ぎて、頭の中が絶賛大渋滞中だ。


『少年、名は何と言う』

「夛田皇輔だ」

『コウノスケ、、、。うむ、君は合格だ」

「ご、合格?」


  真意が不明だ。話からして、相手はこちらを試していたということだろう。何故、自分なのか。他にも、このような状況にある人物はいるのか。合格した先には何が待っているのだろうか。


『そう一度に聞かれて答えられる者などいないよ。まずは目の前の問題をどうにかすべきだろう?』


  確かにそうだが、状況が悪い。二対一の上、内一人は悪魔だ。なす術はない。だが、何か行動を起こさなくては死んでしまう。しかし、悪魔だというからには想像だにしないことをする可能性が高い。何処か、何処かにヒントはないのか?そう思い頭を上げると、奴がにやけながら自分の顔を見ている。それも、こちらを品定めをするかの様に。少しムカつく。もし、奴が人間だったら顔面を殴っているところだ。だが、相手は人外。どのようなことをしでかすのか分からないが、悪魔だと言うからには、警戒しておくに越したことはない。その発言が本当ならばの話ではあるが。


  (せめてこちらに誰か味方がいればまだ違ったのかもしれないが、、、やつが本当に悪魔だと言うならば、二人になったとして意味はあるのか?、、、いや、待てよ)


  皇輔はある賭けを思いついたが、直ぐに自分の中で却下する。リスクが高い上に、挽回の可能性を潰してしまうこともあり得る。だが、彼にはその方法しか残されていなかった。もう、行動する他はない。運命が決まる。呼吸が浅くなる。心臓はスプーンで抉られるような痛みを覚えた。しかし、そのことすら気にする余裕はない。気にしてはいけない。気にしていたら、自分の命が終わる。愉しみを奪われる。焦る自分をどうにか抑え、重い口を動かした。


「、、、俺を助けてくれないか?」

『ほう、この私を味方に誘うかね?』

「あぁ、俺となら愉しいことがたくさんあるぞ?」

『例えば?』

「あぁ、、、、、、、、未知数かな」

『曖昧だな。具体的な説明をしてもらおうか』

「考えてもみろよ。こんな状況でも臆することなく君にジョークを言える人間なんだ。ぶっ飛んでるだろ?きっと何処に行ったって君は楽しめる」

『なるほど、だから"未知数”な訳か』


  皇輔はゆっくりと頷いた。これが賭けだ。悪魔をこちら側に引き込む。例え彼女が自分よりも強者だったとしても、その元凶なら対抗するすべを持つはずだ。先程相手は自分を「面白い」と言ったが、認められたわけではない。問題は相手が乗るか、否かだ。成功すれば、生き伸びる。成功しなければ、死ぬ。正に人生を賭けたギャンブルだ。


『君は些か傲慢ではないかね』

「っ、、、、」

『確かに私は先程、君を合格だと言った』

「だったら何故!」

『それはただ単に、君が現時点でここに存在しても良いと判断したに過ぎない』


 皇輔は憤慨した。 それならおまえだって傲慢じゃないか。そう言いたかった。しかし、そんなことを口にできるはずもなかった。だが、考えてしまった。相手はまた思考を読んだのか、嘲笑の形に顔を歪め、『悪魔だからね』と、言葉を叩きつけた。


「もういいかしら?貴方ももう諦めて楽になりましょう?」


 、、、、、、、、、死にたくない。死ねば、妹の様に喰われるのだろうか」。何より、母に殺意を向けたときのあの愉しみが、高揚感がもう味わえなくなる。それは嫌だ。殺さねば。いや、、、、。


「殺す!」

『いいね、、、その殺気、、、、稀に見る濃さだ、、、、』


  そして奴は、彼女の首を切り落とした。あまりの出来事に呆然となる。何が起きた?母の味方であるはずの奴が、母の首をその鋭利な爪で一閃した。再び脳が動き出す間に、彼女の頭部は鈍い音を立てて大地の上へ落下し、転がっていった。顔には驚きの表情が浮かんだまま、首が地に置かれている。理解に数分を要した。


「てめえ、、、、どういうことだ?!」

『何、気が変わっただけのことだ』

「彼女は仲間じゃないのか?」

『おいおい、、、、母親の心配じゃなくて自分の疑問の解決を優先するかい。確かに、”ぶっ飛んでる”ね。、、、悪魔に裏切りは付きものさ。それに、君にとっても邪魔だったのだろう?彼女は私にとってもう必要ない。必要なのは、、、、、君だ』

 殺すことに何の躊躇いもないあたり、人間でもそうでなくとも、まともな部類には入らない。さらには、敵であった自分が必要だと言いだした。こんな理不尽な中でも、冷静でいられるようになった自分に嫌気が差す。満天の星空を眺めながら、自分はこれからどうなるのかと、少年は一人頭を抱えた。

最後までありがとうございました。まだ厨二病を入れていいという場合は、感想でお願いします。

次回もよろしくお願いします。

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