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世界の果てへ  作者: 上代
2/2

真っ白な部屋


「ふぇ?」


目を覚ますと、そこは真っ白な部屋の白いベッドの上だった。


「あれ?、私確か・・・。」


目を閉じ右手で目元を押さえながら記憶をたどる。


「確か爆発が起きて、それで・・・。」


思い出すのは自分にとってつい先程の光景だった。


真っ白な町、真っ白な空、蠢く煙、そして近づく地面


「私、確か落っこちたんじゃ・・・。」


目を開き周囲をよく観察する。


記憶に残るのは急激に近づく地面、言いようもない恐怖と死の予感、諦め。


「死んでない、どうして・・・。」


思い出す死の恐怖で体が震えた、周囲に音はなくまるで死後の世界に来てしまったかのような感覚さえする。


動悸が激しくなる、体の震えはより一層強まり視界さえボヤけてきた、疲労感があるわけでもないのに肺が酸素を求め、呼吸は激しくなった。


自分は死んでしまったのか、震える視界に自分の腕を出した。


記憶にあるかぎりそれは自分の腕だった、腕に巻いてあるバンドと包帯、腕時計、大小様々な傷痕、それは確かに見慣れた自分の両腕だった。


震える両手を握りしめ開く、動作こそゆっくりだが確実に自分の思い通りに動いた。


次に体を探った、両手に伝わる感覚と共に腹、胸、足、全てに感覚は存在した。


最後に頭へと手を伸ばした。


髪を触り、頭部をなで回し、頬をさすった。


そこから伝わる感覚も間違いなく自分の体のものだった。


「何でも生きてるの?。」


記憶に浮かび上がる光景には、到底落ちては生きてはいないだろう高さと眼下に迫る真っ白な地面だけだった。


「あんな高さから落ちて生きてるわけないんだけど。」


掛かっていた布団をどかしゆっくりと床へ足をおろした。


冷たい床の感触が足の裏から伝わってきた、ふと足元を見れば自分の履いていたブーツも見つかった。


一瞬の迷いのあと、ブーツをつかみ確認した。


そこに残る傷も、すり減った靴底に最近新しい物に変えた留め具、その全てが記憶にある物そのままだった。


「とりあえず生きてると仮定しましょ、どうせ考えてもわかんないんだし。」


自分に言い聞かせるように呟きながらブーツを履いた。


ベッドから立ち上がり体を伸ばす、全身のどこにも違和感を感じなかった。


「鏡でもあれば身なり確認できるんだけど・・・。」


周囲を見渡しても鏡は見つからなかった、部屋の中にあるのは自分の寝ていたベッドとそのとなりにある小さな机、そして机の上に乗っている小さな機械だけだった。


「いくならんでも殺風景すぎ、なにここ。」


生活感の欠片もない汚れ一つない真っ白な部屋、必要最低限しかない調度品、窓の外に広がる真っ白な町並み。


「もしかして本当に死後の世界?、私死んだ?。」


忘れようとしていた恐怖が再び全身を駆け巡り始めた。


「大丈夫、きっと生きてる、死んでない。」


自分の体を抱きしめ、わざと強めに言葉を吐いた、そうでもしないと恐怖で押し潰されてしまいそうだった。


今まで恐怖を感じたことは多々あった、しかしそれらの恐怖には常に対象が存在した。


それらの恐怖抗う手段は幾らでもあった、時に逃げ出し、時に立ち向かった、勇気を、怒りを、恨みを、何かしらの感情を起爆剤にすることで体を奮い立たせ立ち向かってきた。


しかし、これはどうすればいいのだろう。


まるで死後の世界のような風景、生命の息吹もなく、何の音も感じない。


部屋には自分の呼吸音だけが響き、体の内側からは不気味に早くなる鼓動の音が響いいていた。


「そうだ、私が落ちたところは!。」


なにもしなければ恐怖に支配されてしまう、何でもよかった、思考の方向性を変えたかった、この無機質な世界に変化が欲しかった。


窓は開いていた、震える足で近より空を見た、自分の落ちてきた場所さえ見つけられればそれでよかった、それさえ見つかれば、少なくともこれが現実であると受け止められる。


しかし


「あれ?」


空は真っ白なまま光を放ち・・・。


どこにも煙や穴は見つからなかった。


両足の力が抜けた。


「なんなのよ、ここ。」


目を閉じ、両手で頭を押さえた。


気が狂いそうだった、これが現実なのか、それとも夢かなにかなのかすらわからない。


「誰か、教えてよ。」


なんとか言葉をひねり出す。


誰もいないことも、答えてもらえないこともわかっていた。


それでもすがりたかった、誰かいるかもしれないという希望に。


「誰かー!」


「はい」


思考が停止した。


自分が叫んだあと、後ろから声が聞こえた。


人の声だった、自分以外の。


ゆっくりと声のした方を見た、そこには一人の人が立っていた。


「なにかようですか?。」


真っ白な人だった、髪や肌、瞳、着ている服まで全てが純白の人間がそこに立っていた。




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