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天空城のソレダッド  作者: 優咲心夜
4/4

お酒は彼を甘くする

いつもより更新が遅れました!

申し訳ありません。

って読んでくれている方は今現在いないですが…

何はともあれ第4話!

2話3話より本文が長くなってしまいました。。

お楽しみいただければと思います。

「ねぇ、ティル…?どう、かな?」

小麦色のスカートをヒラヒラとなびかせ、

レースの着いたシャツに

ツバが広い、赤色のマリンキャップを被ったイリアが、恥ずかしそうにこちらを見ている。

少し身分の高い街娘といったところだろうか。

顔が隠れるようにと勧めた帽子がよく似合っている。

「お似合いですよ、お嬢様。」

そう言ってからかってみたけれど、どうやら彼女の耳には聞こえていないのか、それとも気にしていないのか、眩いばかりの笑顔を向けてくる

…少し値は張るが、まぁ、大丈夫か。

「ありがとっ、ティル!」

嬉しそうに笑った少女は広場を舞う。

その優雅で神々しい立ち振る舞いに、足を止めて手拍子をする人まで現れた。

すると、どこからか踊り子の曲が流れ始め、

「ふふっ、ティルさんティルさん?」

軽やかなステップで話しかけてきた少女は楽しそうに1曲お願いできますか?と聞いてきた。

これを拒む理由も雰囲気も度胸も俺にはない。

まさか広場で踊ることになるとは思わなかった。。


村の宿でけっきょくほとんど眠れなかった俺は、なんとか眠気を取り払い、

無事に街まで来ることができた。

この街は地方からの貴族の出入りも多いために、飛行機の倉庫が設けられている。最近はこういう街が増えてきているから同業者にとってはとても喜ばしいことだ。だが、それと同時に住民からの苦情も多く、あまり堂々としていられるような立場ではなかった。



《時遡り、昨夜の事》

深夜、私は目を覚ました。

月の光と心のわだかまりと不安で、

毎晩のように目を覚ます。

見知らぬ土地に1人できて、私は本当は心細かった。

王国を飛び出したはいいものの、私を追う親衛隊はすぐにくるだろう。

見つかれば私は確実に連れ戻される。

私の非力な腕や足では逃げることはできない。

でも、ティルがいる。

彼は私に手を差し出してくれた。それがどれだけ嬉しかったか、言葉では言い表せないほどの喜びだった。

…喜びと同等に不安もある。

彼だって人間だ、得体の知れない私と、ずっと一緒にいてくれる義理なんてない。

ましてや命の危険も伴うのだ。

ひとりで逃げることも、考えておかないといけない、なのに…それを考えたくない自分がいる。


夜は怖い、もちろんベッドは別々。ティルが気を使ってくれたのだ、それはとても嬉しかったし感謝しないといけない。だけど、

人の温もりが恋しい、彼から離れたくない、寂しい。

そんな感情が心の中で渦巻き、私は気がついたら、

彼の布団に潜り込んでいた。

自分でもおかしいと思う、だけど今は、そんな考えを本能が否定した。

暖かい、ティルは感情も暖かければ身体も暖かいのか。丸くなって寝ている姿が可愛らしく見える。

そのまま心地よい眠りへ…。


朝、目が覚めてハッとした。

昨日あのまま寝てしまったのか?私は!?

ティルは、?いない…

男の人と一緒に寝てしまったなんて、いくら人肌恋しくてもどうかしてる!恥ずかしさで死にそう。

昨日のことは夢だったんだと現実逃避を始める最中、部屋の扉が開いた

「ぁ、お、起きたのかイリア。

朝食を主人が用意してくれているから、顔洗ってから降りてこいよ。」

ティルは優しく笑うと、

早くしろよ?と後押ししてくる。

その笑顔は、引きつっているようにも見えた、

それにしても、目の下のクマはどうしたのだろう。

昨日のことはなにも言わずに部屋の扉は閉まる。


朝食の最中、ティルが質問してくる。

「イリア、ひとつ聞いていいか?」

(どうしよう、布団に入ったこと怒られるのかな)

私は小さくうなづいてティルの言葉を待つ

「お前は、その、着替えとかはないのか」

…彼の質問に心底安堵した。

よかった昨日の事じゃなかった、

「そう、ね、方舟ごと飛んでいっちゃったから」

私が乗ってきた方舟は、鍵は私が持ってるものの、

王の命令には逆らえないようになっている。

だから、もし方舟が地上にあったとしても王の意向で簡単に天界へ帰ってしまうのだ。

(たしかに着替えはないと正直困る。せめて寝るときくらいは着替えたい、いつまでも肌着で寝るのは寒いし…でもそんなこと頼めるわけ…)

「街に行ったら用意しようと思うんだが」

…一瞬なんのことかわからなかった。

すぐに理解が追いついて彼に聞き返す

「い、いいよティル。それくらい、」

いっしょに旅してくれるだけでもありがたいのに服なんて高価なもの (本で知りました!)

彼は言いずらそうに口を開いた

「いや、そのな、

お前の服装がこっちではちょっと珍しいもので…」

ティルは少し目をそらしてそう答える。

…自分の服装を再確認してみる。

服の切れ目から見える肩に、胸元が開いている服、

(見せれるほどの膨らみはないけれど・・・)

スカートは膝下まであるけれど…

たしかに、村で見た女の子たちより露出度が高い気がする。

彼は続ける。

「それに、イリアはかなりの美人でその髪色は人目をひくだろう。あまり目立つと見つかりやすくなる」

なるほど、と納得する。

「じゃ、じゃぁ、お願いします。。」

私の身を案じてくれるティルは、やっぱり優しい。

話がまとまったところで、私はずっと思っていた疑問を彼に投げかけてみる

「私の喋り方って、普通、かな?…ほら、私は空ではお姫様だったから、丁寧な言葉使いが強要されて…」

昔、読んだ本の女の子の話し方を真似ているけれど、全然慣れない…不安ばかりである。

「どこをどう聞いても、普通の女の子だと思うよ?」

そう言って彼は紅茶を口へ運ぶ。

普通の女の子、頭の中で繰り返す。

彼の中で私は普通の女の子、物静かで気品あふれるお姫様なんかじゃないんだ。

そう思うと嬉しくなって、つい頬が緩む。

彼がこちらを見て愉快そうなのが視界に入った。

何故そんなに楽しそうなのだろうか…。


朝食を終え、ご主人に挨拶をして宿を出る。

いい村だったからつい寂しくなってしまう、そんな私の心を察してくれたのか、彼の手が頭に乗った。

「落ち着いたら、また来ような。」

そう言って、彼は優しく笑った。


《時戻りて現在》

「私、あんな大勢の人の前で踊ったの初めてっ」

まだまだ楽しそうなイリアを見て、またどこかで踊り出すのでは…と心配になる。

「俺だって初めてだよ…、」

「またやりましょっ!」

…もう勘弁してくれ。。

楽しそうなイリアに、俺は苦笑いしか返せなかった。


しばらく歩いて宿が見えた。

赤い屋根のシャレた宿だ。イリアも上機嫌である。

けれども状況はかなり悪い。

「ご主人、

ほんっとうに2人部屋は空いてないのですか」

俺は宿の主人に懇願する

宿泊する部屋について話すこと数分。

「悪いね…旅人がやけに多くて、空いてるのはもう、少し広めの1人部屋だけなんだ…。」

1人部屋ということは、

ベッドはひとつしかないということだ。

昨晩のそれがあったとしてもこれはまずいだろう…

「どうしたの?ティル。」

うしろのソファで待っていたイリアが

ひょっこり顔を出す。

「どうやら2人部屋が満室らしい。」

そう伝えると、イリアはキョトンとしている…?

どうしたんだ、それはどういう意思表示なんだ…

「それって…なにか問題でも?」

クエスチョンマークを頭の上に浮かべているイリアに、主人がくいつく

「奥さんは構わないそうですよ旦那。宿泊代は1人分負けときますから勘弁してくだせい。」

そう言って主人は1人部屋の鍵を強引に渡してきた。

俺たちは夫婦ではないのだが…


部屋に着くやいなや、

イリアは耳まで真っ赤にして尋ねてきた。

「ね、ねねねぇティルさん?わたしの目にはベッドがひとつしかみえないのだけれど、もしかして疲れてるのかな、だって、ベッドがひと、ひと…」

明らかに動揺しているイリア。

そりゃあそうだろうな。。

身振り手振りあたふたしている彼女は、必死になにかを訴えようとしている…

「…俺は下のソファで寝るから、」

彼女もさすがに、知り合ったばかりの男と、同じ布団で寝るというのは抵抗があるだろう。

(昨日のことは置いておいて。)

そう言って、ドアノブに手をかけたとき、

イリアが手にしがみついてきた。

「…べ、べつに私は、

ティルがいいならいいん、だからね?」

これは違う、違うんだ、きっとソファで寝る俺の身を案じてこうやって講義してくれているだけで!けして俺にやましい気持ちなんてない!…はず、

心臓の鼓動が一気に高鳴るのを感じた。

魔が差した、悪魔の囁きに負けた、とでもいうのか

視線を俺から逸らして訴えてくる少女が、

あまりにも可愛らしく見えて。

結局俺は、彼女と共に寝ることになるのだった…。

時刻は夕飯時、俺は初めて、女の子と(それも自分より年下の)寝ることを決意した。


その晩。

ティルが青白くなって布団につっぷしている。

何がどうなってこうなったかと言うと…


宿、食堂にて。

「旦那ぁ、わりぃことをじましたぁあ。酒持ってきたんでいっしょに飲みまじょうやぁ!」

宿の主人おじさんが完全に酔っ払っている…

「ご、ご主人、とりあえず落ち着こう。俺は酒は飲まないし部屋のことも気にしてないから」

ティルが優しく、それでもキッパリと断っている。

「そんなぁつれねぇなぁ!奥さんどうです?1杯!」

「っ…!?」

「ちょっと待て主人!」

急に話をふられ困惑するしかない私に、ティルが助け舟をだしてくれた…。

「こいつはまだ飲める歳じゃない。

巻き込まないでくれないか」

「おぉっとこりゃ失敬、

じゃあ旦那がつきあってくだせぇいよ」

そういって宿の主人は酒瓶ごとティルに渡す、そんなに飲んだらさすがに大変なのでは…

「…いいだろう」

ティルが酒瓶を受け取ってしまった・・・

それからはティルと主人との酒飲み合戦が始まった…3本目からはすでに、ティルの顔は真っ赤になっていて、とても続けられそうになかった。

…バタッ。響き渡る鈍い音。

どうしたどうしたと周りの客が騒ぎ始める。

4本目にさしかかろうとしたところで、ティルが倒れてしまった。宿の主人もフラフラである。

とにかく彼を部屋まで運ばなければ…。

合戦はどちらも酔いつぶれて引き分けと幕を下ろした


「…ティル?起きれる?」

「うぅ、いりあぁ」

うめき声を上げながら今にも死んでしまいそうな、まるでこの世の終わりに遭遇したような顔のティル。

(いや、この世の終わりなんて知らないけど…)

「しばらく寝てなさい。」

そう言い終わるか否か、彼はベッドで小さな寝息をたてていた…。


飲みすぎで倒れた彼を部屋まで運ぶのは苦労した…

ほかのお客さんにも協力してもらって、彼を部屋まで連れてこれたはいいけれど。

これからお酒には気をつけねば・・・

わたしも何か飲もうかな…

再び、下の食堂に行こうとしたとき。。

「い、いりあ…」

目を覚ました様子の彼は、紅潮した顔に、普段からは想像できないような甘い瞳と声で私を呼んでいる。

何故だろう、すごくかわいい。お酒のせいかな…

「ど、どうしたの?まだ寝てなきゃ…わっ!」

ベッドのそばにある椅子に腰掛けようと近づいた途端

私の手首はティルにとられ、強い力で引っ張られる。

私はそのまま体勢を崩し、ベッドで身体を起こしている彼に抱きつくような形で倒れ込んでしまった。

「ちょ、ちょっとティル!危ない…っ?!」

…倒れ込んだ私の肩に、

ティルがその大きな手をまわして、そっと抱きしめる

「あの、ティル…?」

トマトのように真っ赤になった私は、今自分に何が起こっているのかわからず、考えるひまもなかった。

男性と付き合ったことなんてあるはずのない私は、こんなとき、どうしたらいいのか見当もつかない。

「…いりあ、」

「はっはぃっ!」

思わず声が飛んでしまう。

私は今、どれほど真っ赤なのだろうか、完全に熟したトマトより真紅に染まっているかもしれないほど、感じる熱は熱い。

(ティルの顔が近いよぉ、どうしたらいいの…!)

彼は無言で、肩にまわした手の力を緩める。

すると、さっきまで隣にあった彼の顔は今、自分の目の前にあるではないか。

ベッドで抱きしめられて向かい合って見つている。

この今の状況は、以前読んだ本にあった男女の…

(どうしてもそういうことを想像してしまう…

さっきから無言で、甘く緩んだ瞳で私を見つめる彼はいったい、何を考えているのだろう、も、もしかして本当にあの本みたいなことを…!?)

「だ、ダメだよ、ティル…わたしたちまだそういう関係じゃ…ちょっ、ティル!?」

ぐったりと私の肩に倒れてくる。

彼は小さな寝息をたてながら眠ってしまった。

ティルはまた倒れてしまった…こんどは私の上に…。

結局、その夜はティルを布団にいれて、自分もその隣で床についた。

もちろん、本に書いてあったようなことは一切なく


『…さん…お兄さん?起きられます?』

少女が呼んでいる、昔からよく聞きなれた声、小鳥のようにか細く、それでも一生懸命に伝えようとするその姿勢はとても健気で愛らしい。

身体は動かず、目も開けられない、なのに耳だけはよく聞こえて、少女はさっきからずっと呼びかけている。この娘の名前は__


目を開けると薄暗い部屋

少し硬いシーツの感覚が背中にある。

徐々に目がなれてくると、知らない天井が見えた_いや、知っている、たぶん宿の部屋の天井だろう_食堂でイリアと話していたのは覚えているのに、そのあとがまったく思い出せない。。

さっきのは、夢か…そんなに時間も経ってないのにとても昔のように感じるな。。

ふと、左腕が重いことに気づいた、仰向けのまま隣を見ると、イリアが俺の腕を枕にして小さな寝息をたてている。丸まって眠る姿は小動物のように見え、無性に撫でたくなった。

たしか、部屋がないから仕方なく、ひとり部屋を2人で使うことになったんだ…

外はまだ暗い。

わずかな月明かりが部屋を照らしている中

隣で寝ている少女は無防備にも、服がズレて小さな胸が見えそうになっていた。

慌てて目をそらすと、少女の眠たげな瞳が俺を見据えている。

「…てぃる?」

少女はいつになく甘い声で俺の名を呼んだ。

眠たげな目、露出した肌、甘い声にどこからか香る不思議な香り…ダメだ、このままでは理性が…

俺が唸っているのを知ってか知らずか、少女は距離を詰めてくる。

「ど、どうしたんだ…?」

「…」

俺がなんとか言葉を発すると、彼女は下を向いて黙ってしまった、かと思えばそのまますり寄ってきた。

「…さみしい、」

…言われてやっと気づいた、この少女は家出してきたんだ、家や両親が恋しいのだろう…。

そっと、彼女の顔に手を当てて、ゆっくりとこちらに向ける。すこし泣いていたのか、目元が赤い。

「イリア、聞いてくれるか?」

イリアはキョトンと、首をかしげながらも頷いた。

それを確認してから

そっと息をついて旋律せんりつを始める。

『心に響く君の声。

暗がりに見えるその雫。

怖いのなら手を繋ごう。

寂しいのなら抱きしめよう。

僕は君の笑顔がみたい。』

5節唱えて彼女の前に人差し指を立てる。

すると指の先から白い燐光が

丸い輪を作りながら光り始める。

「…ティル、これは…?」

白い光がイリアの瞳を照らしている。

その表情からは不安や恐怖といった感情は見られない

「魔法だよ」

「魔法…ティルは魔法が使えるの…?」

顔を近づけてくるイリアに、一瞬動揺しつつも平静を装って答える

「あぁ、一応な」

「お父様以外に魔法を使える人なんて初めて見たから。」

どうやら、イリアのお父上は使えるらしい。

意を決して、彼女に向き直る。

「この明かりに誓う。

俺はお前が望む限り、一緒に旅を続ける。

だから安心して眠っていい。」

「ティル…?」

そのまま彼女の頭に手を置いて優しくなでる

撫でられるのが気に食わないのか、彼女はそのままこちらに背を向けてしまった。

「…ばか。」

「おやすみ、イリア。」

安眠を授ける旋律魔法がよく効いたらしい。

彼女の呟きは聞こえない振りをして、俺もイリアの横で、再び床についた。


お読みいただきありがとうございます!

全然進展しませんね!そろそろひと風吹かしたいところです。。

次回は吹き荒らします!台風並みで!

続く。。。

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