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怪奇JK奥沢彩希Ⅰ 恐怖の遊園地

作者: 湊 蓮

 「ねえ、今度の日曜日にここに行ってみない、彩希さき。」

 「えっ、ここって確か閉園したはずの『裏野ドリームランド』だよね。どうしてそこにしたの?」

 「実はこの遊園地には6つの有名な怪奇現象があってね、今度そのうちの1つである『ミラーハウスでの入れ替わり』の調査をしに行くことにしたんだよ、だからお願い、一緒に行って。」

 「ちょっと、何で私なの、閉園しているんだったら入場ゲートは封鎖されているはずでしょ。入れるわけないじゃない。」

 「大丈夫だって、あたしに秘策があるから。それよりも一緒に行ってくれたら『ドリアード』のケーキセット奢ってあげるから。」

 「わ、分かったわよ千夏ちなつ。それだったら一緒に行ってあげるわよ。」

 「相変わらず甘いものの誘惑に弱いね、彩希は。」

といった駆け引き(?)が教室の一角で繰り広げられていた。口論を繰り広げていたのは赤茶けた短髪のボーイッシュな女子生徒と黒い長髪に薄い紫のメッシュを入れたスタイルのいい女子生徒だった。

 短髪の方の女子生徒の名はいぬい 千夏ちなつ、大のオカルト好きでよく他人を巻き込む厄介な女だ。因みにボーイッシュな顔立ちとスレンダーな体型のため女子からモテるが本人は男子からモテたいと思っているらしい。

 メッシュを入れている方の女子生徒の名前は奥沢おくさわ 彩希さき、薄紫のメッシュと着崩した制服が原因で周囲からはギャルと思われているが常識人で家では自由奔放な姉と暴走しがちな母と兄に振り回されており学校でもクラスのいざこざに巻き込まれることの多い苦労人でもある。また、甘党であり、スイーツの誘惑には弱い。




 そして2日後の日曜日に『裏野ドリームランド』の駐車場を囲んでいる植込みの前で彩希と千夏は待ち合わせたが千夏の後ろに複数人の男女がいて彩希は疑問を覚え、「ちょっと、誰なの後ろにいるの!?」と聞くと「あっ、紹介がまだだったね。この4人はあたしのオカルト仲間で『RISE』で知り合ってそれからリアルで定期的に集まる関係になったんだよ。」と4人の紹介をした。

 「俺は松岡まつおか 凌平りょうへい。こう見えても千夏より2歳年上の18歳、高校3年だ。あと、この集まりでは唯一の桃瀬高校の生徒だ。」と最初に老け顔の男性が自己紹介をして「凌平が18だと知ったときはびっくりしたよ。てっきり三十路みそじを迎えているのかと思ってたよ。担任の銅島先生の方が若く見えたし。」と千夏が最初に会った時に感想を言うと「おい、ちょっと待て。外見の事に触れるのはタブーだろ。」と凌平がツッコミを入れた。どうやら実年齢より年上と勘違いされることを気にしているようだ。

 次に「僕の名前は佐伯さえき 珪一けいいち。好きなものはオカルトと年下の女だよ。因みに千夏と同じ赤峰高校に通ってるんだ。」と先程と同様に長身の男性が自己紹介したがまたしても千夏が「言っておくけど珪一はロリコンだからww」と珪一をおちょくるようにして彩希に向かって話した。そして「いやいやあの子みたいな体躯の女は興味ないから。」と反論し、千夏が「そうだったね。」と返したがロリコンであることは否定しなかった。

続いて明るめの青髪のセミロングと小学生のような体躯の女性が「うらは濱野はまの 未悠みゆっちゅーげん。好きな異性のタイプは料理が上手な人ながや。おゆるっしゅ。」と何処かの方言らしき言葉で自己紹介をしてきたため彩希は意味が分からず軽く混乱した。そこで珪一が「あっ、実は未悠、中学2年の時まで金沢で暮らしていたから金沢弁が抜けてないらしいんだ。そこらあたり宜しく。」と助け舟を出してくれた。

 最後にウェーブのかかった桃色の髪とモデル体型の女性が「江角えすみ 瀬那せなよ。これはまた可愛い女の子が来たわね。今は千夏ちゃんに感謝するしかないわね~」と怪しげな雰囲気を広げて自己紹介を終えたが未悠が「本当はもう一人オカルト仲間がおるけど急にドタキャンしまさったどくしょなめろなが、ほっこりせんやろ。」と今は不在の仲間の存在を貶しながらも教えた。

 今回の目的である「ミラーハウスの入れ替わり」の調査における再確認を行い、一行は園内へと足を踏み入れ、案内板を頼りに目的地へと向かい、まずは瀬那がミラーハウスの内部へと入った。

 いたるところに張られた順路を示す張り紙の表示に従い進んでいくとひときわ目立つおしゃれなデザインの引き戸を発見し、それを開けると壁一面に立てられた鏡が瀬那の視界に映った。その鏡に瀬那が自分の姿を映すといきなり部屋に青い光が灯り、瀬那の鏡像が鏡から出て来てそれが憑りついた。そして部屋にあるシンプルなデザインの引き戸が音を立てて自動で開きそこから順路通りに進むとゴールに行き着き外に出る事が出来た。

 無事に外へ出れたと思ったがあろうことか瀬那は突然服を脱ぎ始めた。その様子を見た彩希たち5人は驚き、未悠が「ちょっ、何しまさってるん!?はよーらと服を着まっし。」と服を着るように催促した。2番手の凌平が同じようにミラーハウスを進んでいき、外に出ると「もう用は済んだんだし、ずっと待ってるのも億劫だから帰るわ。お前ら、後は頼むわ。」と凌平が帰ろうとしたので珪一と彩希が引きとめると「何なんだお前ら、6人全員が終わるまで待てって面倒な奴らだな。」と言い返した。次は未悠が真相を確認しに行き、数分後、5人と合流すると珪一に向かって「あー、てめーみたいなロリコンは滅んでしまえよマジで。」と毒を吐いてきた。それに対して珪一は「えっ、未悠っていつからそんなキャラになったの。話し方も標準語になってるし・・・」と呆然としながら聞き返した。

 今度は千夏が一抹の不安を見せながら内部に入り、同じように出てくると「ちょっと珪一に頼みがあるんだけど、チュロス代貸してくれない、まあ、返さないけど。」とカツアゲの中では可愛い部類に入るようなことを珪一に向かってしてきた。

 これで残りは彩希と珪一の2人だがどちらも先ほどの4人の様子を見てきたためかとても入りづらそうにしている。それは露出狂に怠惰なめんどくさがりや、そして毒舌家や守銭奴と来たわけだから自分がどんな人格に変貌するのかと想像したら冷や汗が出るのは当たり前だ。ミラーハウスの前で入ろうか迷っていると「あれ、凌平たちじゃん、何してるのこんな所で。」と女性の声が聞こえて来た。その声を聴いて凌平は「何だ、佳織かおりか、何でドタキャンしたんだ?やっぱりめんどくさかったからか?」とその女性に向かって尋ねたら返って来た答えは「実はこの遊園地にある別の怪奇現象の調査をしていたの。それは『観覧車での謎の声』なんだけど興味ある?その前に自己紹介しておくね。あたしは細川ほそかわ 佳織かおり、凌平たちとは『RISE』で知り合ったオカルト仲間なんだ。今回ドタキャンしたのは申し訳なかったけど他の怪奇現象について調べる事が出来たから別にいいでしょ。」と自己紹介を兼ねて自分の成果を報告した。




 佳織が1人でゴンドラに乗っていると「ここから出して、早くお兄ちゃんたちに会いたい・・・寂しいよ。」と女の子の声が聞こえて来た。佳織は恐る恐る声を掛けると「お姉ちゃん、誰・・・?」と返事が返ってきた。それに対して佳織は「誰かは名乗れないけど折角だしあたしと一緒におしゃべりしようか。」と優しい言葉を掛けた。そうすると声の主が実体化して佳織と対面した。声の主の正体は小学校低学年から中学年と思われる女の子で誰かに構ってほしそうにしている。その様子を見た佳織はその女の子の外見年齢に相応しい話題を出してそれについて話すと女の子は嬉しそうにしていた。その後、ゴンドラが1周して別れを告げると「ありがとう、楽しかったよお姉ちゃん。」と言い残して女の子は消え去った。




 「というわけなんだけど観覧車の一件はこれではっきりしたでしょ。だからホラーハウスの分もあたしがこの目で見るからみんなここで待ってて。」と佳織はミラーハウスへと入って行った。数分後、外に出て来た佳織は「実は壁一面に鏡がある部屋があってそこの鏡に自分の姿を映すと鏡像が出て来てそれが憑りつくんだよ。」と説明して、「なんてね、嘘だよ、嘘。」とみんなを欺き、「また、それも嘘だったりするんだ。」と言いたい放題して彩希は「ちょっと、一体どっちなのよ。」とツッコミを入れる。どうやら天邪鬼な女になっているらしい。

 1週間後の正午過ぎ、全員無事に元通りの人格に戻ったことで結論を話すためにファミレスへ集まり、話し合いの結果、元凶はミラーハウスに住み着いている悪霊であることが分かった。後程、凌平の家から自転車で20分ほどの距離にある神社の神主におはらいをしてもらい、一件落着となった。

 作者の湊です。今回は初の短編小説となります。

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