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105★聖女候補が《召還》された理由がわかりました



 エリカがはっとしたように、話しを止めたので、撫子が不思議そうに聞く。


 「どうしたの?……えっと、エリカさんで

 イイのかな?何か気になることでも」


 聞かれたエリカは、大きく頷いて言う。


 「うん、シオババアから岩塩で話しが

 大きくズレちゃったなと思って…………」


 エリカがそう言えば、鈴蘭も頷いて言う。


 「そうね……ズレたわね……話題の元は

 岩塩をドラゴニア帝国に輸入している強みで


 皇帝の1番の妃の座・皇妃を取った

 シオババアなる人のことだったんだから……」


 桔梗もちょっと眉を顰めて言う。


 「岩塩をたてに、内政干渉はねぇ…………

 まして、皇帝の色を纏った者が皇太子

 っていう不文律の決まりごとすら


 岩塩をたてに、皇太子を自分の子になんて

 我が儘をごり押ししようなんて…………


 バチが当たるようなことね

 不文律ってことは、神々とそういう

 暗黙の契約とかあるかもしれないじゃない」


 そんな桔梗の言葉に、牡丹が言う。


 「ねぇ…もしかして…瘴気が溢れたり……

 魔物が魔の森から溢れて跳梁跋扈したり


 災害に不作に凶作のおおもとの元凶って

 ソレじゃない?」


 エリカもソレに気付いて、オスカーに聞く。


 「ねぇーオスカーさん、瘴気が増えたり

 魔の森がら魔物が溢れたり…………


 今、ボタンさんが言ったような

 災害に不作に凶作になり出したのって……


 もしかして、今の岩塩をたてに皇妃になった

 女の人が自分の子供を皇太子だって

 発表とかしてからだったりする?


 もしくは、もっと遡って、岩塩をたてに

 皇妃に収まったあたりからとか?」


 その問い掛けに、聞かれたオスカー(現在102才、アルの亡き祖父と親友だった)はもとより、その側にいたマクルーファ(オスカー同様102才アルの亡き祖父と親友だった)が、唇を噛み締めて低くハモって呟く。


 「「やはり、あのシオババアが元凶か」」


 その声に低さにおののきなからも、エリカをいまだに抱き締めたままだったアルファードにレギオンやギデオン、そして室内にいた騎士達も、思い当たることがありすぎて、重い沈黙が落ちる。


 そんな中、オスカーはエリカに言う。


 「確かに、あのシオババアが我が国への

 岩塩の輸入停止をたてに、現皇帝の

 皇妃の座を望み、嫁いできたあたりから

 国内の作物の不作が増えています


 そして、姫君がおっしゃるとおり

 皇妃の子が皇太子を名乗ったあたりから

 瘴気の湧き出す場所が増えております


 同時期から、魔の森から魔物が溢れる

 頻度が頻繁になったような気がします」


 事実だけを淡々と口にするオスカーの表情は、綺麗さっぱりと削げ落ちて、綺麗な人形のような状態になっていた。

 それだけに、親友の息子(現皇帝アルフレッド)に、他国の姫が嫁いで来るのを反対、否、阻止すれば良かったという悔恨が垣間見えた。


 そんなオスカーの隣りでは、やはりオスカー同様の表情で、マクルーファがエリカに聞く。


 「姫君、国民の大半は餓えております

 その元凶が、あのシオババアにあると

 それが判っても、岩塩が必要なのです


 どんなに、その要求が口惜しくても

 サラディール王国の姫に皇妃の座をと

 要求され、呑むしか無かったんです


 元凶が判ったからと言っても、国内の

 岩塩は掘りつくしてしまいましたので

 どうにもならないのが実情なんです


 不作や凶作に喘ぐ国民に、岩塩すらも

 配給できないというわけには

 いかないんです


 だから、神官や魔法使い達も、今回の

 皇妃リリアーナの『陛下の為』という

 お題目のごり押しによって…………


 将来の有能な神官や魔法使い達の

 命や《魔力》枯渇によって失われる

 将来と引き換えの聖女候補の《召還》を

 呑むしか無かったんだと思います」


 哀しそうなマクルーファと、無表情になったオスカーと、室内の騎士達の沈痛な表情に、エリカはちょっと小首を傾げる。

 そして、自分を抱き締めるアルファードを見上げる。


 アルファードも、何かに耐えるように綺麗な紫紺の双眸を閉じ、エリカを抱き締める腕が微かに震えているのを感じた。

 ソレが、口惜しさから来ているモノだと、エリカには判った。


 そんな沈痛な雰囲気の中、牡丹が考え込むように言う。


 「岩塩かぁ……私達には、あまり縁の無い

 モノだから岩塩の鉱脈を探すのは無理よね」


 蘭が小首を傾げて言う。


 「ようは、塩が有れば良いんでしょう?

 別に、岩塩に拘る必要は無いんじゃない?」


 その言葉に、エリカも確かにそうだと思って、オスカーに聞く。


 「オスカーさん、このドラゴニア帝国に

 海は無いの?」


 エリカの意図を察して、苦笑いをしながらオスカーは答える。

 まぁそこに思考がいきますよね的な口調で………。


 「まぁ…いわゆる、内海ならありますよ

 一応、塩水湖なんですがねぇ…………」


 そこで、オスカーはつい言葉を途切れさせてしまう。

 エリカは不思議そうな表情で聞く。


 「あっ塩水湖があるんだ

 でも、なんかオスカーさんにしては

 随分と歯切れが悪いですね」


 珍しいモノを見たような表情のエリカに、オスカーも情けない表情になって言う。


 「いや、やたらと出るんです、魔物が……

 それも大型の面倒なモノが……


 瘴気が濃くなって魔物討伐が増えたので

 塩水湖の水から塩を作るという作業は

 途轍もなく無理なことなんです


 何時、魔の森から再び魔物が溢れ出すか

 判らない不安定な時期に…………


 塩水湖の水から塩を抽出する方法を試す

 ことは不可能な状態なので…………


 ざっくり言えば、私はムカついています

 私の亡き親友の息子の1番の妃の座を

 岩塩をたてに、ごり押しで奪い


 その孫を、皇帝の色を誕生した時から

 纏っているのに、その意味も理解せず

 ないがしろにするわ、毒は盛るわ

 暗殺しようとするわですから…………


 サラディール王国と皇妃の座に収まった

 あの女が憎いですね


 ぎゃふんと言わせる手段があるなら

 多少の苦労はいといません」


 岩塩を盾に、言いたい放題やりたい放題してくれて……と、いう言葉が滲むオスカーに、エリカは何か良い方法はないかと考える。










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