第5話 不思議な夢
少しエロい表現が入ります。
苦手な方はお気をつけください。
ーゴーン。ゴーン。
重厚な鐘の音に目を覚ます。
「ん・・・?!」
ふと目を覚ますと、目の前に何故かヴィリニオ王子が眠っていた。
(な、なんでぇ!?え、えっと、眠れなくて、星を眺めてて・・・・その後の記憶、ないんですけど?!)
「んん・・・リル・・・」
彼の逞しい腕に捕らわれる。
(超絶イケメンで細マッチョって・・・!!てか、なんで上半身裸なん?!)
これ以上にない眼福に心を乱しまくる。
「ん・・・・リル?」
それは、それは、とても甘く、良い声で。
「リル。おはよう。」
微笑まれる。
(ふぎゃぁぁぁあー!!)
心の中で奇声を上げる。
「リル。可愛い。耳まで真っ赤だ。」
ちゅっ。と耳元で音がする。
(な、な、耳、食まれたっ!はわわっ。)
「!!お、お、お、おうじさまっ!朝からにゃにをっ!」
「ぶはっ。リル。可愛すぎ。」
艶かしい音を立て、キスをされる。
「んっ・・・・あ、朝から、こんなことっ。」
シーツの中に隠れる。
「あぁ。このままふたりの世界に引き篭もろうか。もう離したくない。」
ぎゅっと抱き締められる。
目覚めた時から心臓がバクバク言って、落ち着かないではないか。
「殿下。そこまでです。」
侍女さんの声がする。
「リルヴィア様。父君がお呼びでございます。こちらへ。」
「は、はひっ。」
残念がる王子の腕の中から抜け出て、ベッドから出て侍女さんの先導で部屋を出た。
少し離れた部屋に父がいた。
(相変わらずお父様、ちょいワルオヤジな感じでかっこいいわぁ・・・・。)
「リルっ!嗚呼。良かった。無事で。」
部屋の扉が閉まるやいなや、抱き締められる。
「ご、ごめんなさい。」
「勝手に屋敷を飛び出したことかぃ?それとも、私らを心配させたことかぃ?」
怒りを含んだ声をしながらも、その瞳は娘をひどく心配しているものだった。
「・・・・・」
元より囚われていた罪悪感が増していく。
「リル。もし、今の生活が負担に思っているのなら、場所を移そう。どこか他の国に移住してもいい。お前のしたいようにすればいい。だが、誰にも何も言わず居なくなるのだけは止してくれ。お前がいなかった五年、本当に辛く寂しかった。もうそんなのは嫌なんだ。」
その腕が微かに震えていた。
「っ・・・・・ごめんなさい。お父様。わ、わたしっ、」
涙が止まらず、喋ろうにも、嗚咽の所為で上手く言えない。
(ごめんなさい。ごめんなさいっ。)
◇
「まぁ・・・・心配だわ。魔力もとても不安定だし・・・・」
微睡みの中、お母様の声がする。
「たが、このままでいいと言うわけでもあるまぃ?殿下との結婚だって控えているのだし・・・・」
お父様の声もする。
「結婚なんてまだ早いわ!それに、今じゃとてもじゃないけど無理よ。この国ならまだしも、他国からも話が来ているのよ?全く。リルには自由に生活して欲しいのよ。ただでさえ、【伝説の乙女】なんていう枷をつけさせられているのよ。かわいそうでならないわ。」
「・・・・・さま。」
「!リル。」
「ごめんなさい・・・わたし・・・」
不思議と涙が込み上げてくる。
「無理に話すことないわ。大丈夫。例えどんな姿になったとしても貴女は私たちの可愛い娘よ。記憶なんてものは新しく作ればいいのよ。」
「・・・・・」
「もう少し休みなさい。これからのことは後でゆっくり考えましょう。」
頭を優しく撫でられ、額にキスされる。
(愛されているんだなぁ。)
なんて思っているうちに、夢の中へと入っていった。
ーごめんなさい。貴女を巻き込んでしまって。
?誰?
ーリルヴィアよ。
貴女が?
ーえぇ。魔王によって無理矢理眠らされてしまったの。本当はヴィルと一緒に戦いたかったのだけど。
魔王は私の魂を引き換えにこの世界から手を引くと約束したわ。
到底信じられなかったけれど、あのままでは先に世界の終わりを迎えてしまうから。
けどそれでこうなった理由にはならないと思うのだけど。
ー均衡を保つ為よ。生と死は必ず等しく無ければならないの。それに、「私」が死ねばお母様たちがとても悲しむから。
大切な人たちが悲しむのは見たくないのよ。
大丈夫。貴女ならきっと上手くやれるわ。
それじゃぁ。貴女に神のご加護があらんことを。
「!!待って!!!」
飛び起きる。
汗が吹き出し、髪の毛が張り付く。
『リル。だいじょうぶ?』
不安そうな表情を浮かべる精霊たち。
「大丈夫・・・少し不思議な夢を見ただけ。」
『ゆめ?』
「そう・・・・・」
(今までのが夢オチだったら良かったのに。)
心の中で呟く。
これまで全て私の作り出した夢で、目を覚ましたらあの暮らしに戻るんだ。
また眠れない日々が続いたとしても、それが日常だったから。
ここは色んなものに恵まれ過ぎている。
そう思ってしまうのだ。
これがただの夢オチだったなら、すごいファンタジックな夢を見ていたことに。
みなさんはどんな夢を見ますか?