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第1話 目覚め

お待たせしました!


溺愛王子登場です。

全く眠れずアパート周辺を落ちた枯葉を蹴散らしながら走っていた。

吐く息は白く、けれどジョギングの成果か身体は火照っていた。


ー♪

イヤフォンから流れる曲が終わり、静寂が訪れた時だった。

規則的な鈴の音。

優雅な旋律の雅楽の旋律。

(あれ?そんなの入れてたっけ?)

立ち止まり、ポケットから携帯を取り出す。

携帯のロック画面には音楽の再生表示はなかった。


「・・・・?」


ふと顔を上げると、朱色の鳥居が幾つも建ち並んでいた。

まるで伏見稲荷の千本鳥居のようで、その中は薄暗く、足元は朧げだ。

その中をゆっくり歩く。

いつも聴いているロック音楽とは全く違う独特な雰囲気の曲は鳴り止むことはなく、それはある程度の所で繰り返されている。


「???」


まるで進む道を示されているかのように、突然松明が灯る。

はじめからしておいてくれてもいいじゃないかと思えてくる。背後の松明は消えていて、闇が広がっていた。


「っ・・・・」


摩訶不思議なこの現象に身体が震える。


ーリル!リル!


呼ぶ声が聞こえる。


ー起きてくれ。もう十分、だろ?


悔しそうな声色が降りかかる。


「っ・・・・!!」


突然の頭痛と共に起こる浮遊する感覚。


落ちる。


そう思った瞬間、確かに闇の中へ落ちた。




「リル!リル!」


強く呼ぶ若い男性の声。

何か必死な感じがする。


「っ・・・・」


目を開ける。


茶色の天井。

そこから周囲を囲むようにして垂れ下がる薄いカーテン。

手を伸ばせば届きそうだ。


「リル!」


その手を取られ、その方向へ頭を動かす。


「!?」


見知らぬ男性がこちらを見ていた。

溢れんばかりの涙を宿して。


「・・・・・なぜ、泣いているの?」


(ん?今の声、私??)


「あぁ・・・リル。漸く目覚めてくれたんだね。」


掴んだ手を自分の頰に添える。


金色に輝く髪。深い海のような瞳。彫りの深い美しい顔立ち。

美青年イケメンが隣にいたのだ。


「世界中を捜したんだ。まさか、塔の魔物を倒した先の部屋に君が寝ているなんて。」


「塔?魔物?」


「ああ。君が伝説の乙女になるなんて・・・さ、帰ろう。こんな所にはあまりいたくない。」


「?どこに・・・?」


「僕らの国さ。」


青年は嬉しそうな笑みを浮かべると、私を抱き上げ、部屋を出た。


「あ、あのっ。歩きますっ。」


「平気だよ。それに、長い間眠っていた君には辛いだろう?」


「?」


どういうことか全く把握出来ない。

確かいつものジョギング中に不思議な現象に遭って、それで?

あまりにも情報がなさすぎる。

青年に助け出されている状況も不明だ。

けれど、ひとつ言えることがある。

ここ、異世界だわ。今時流行りの異世界トリップというやつか?

でも、そういうのって、大体神様とかの前触れがあったりするものだ。


「・・・・!!」


目の前に一角獣ユニコーンがいる。白くがっしりとした身体に、金色のたてがみ


「ルーク。待たせたな。彼女も一緒に乗っても平気か?」


「ぶるっ。」


頷く。


「ありがとう。王城へ戻ろう。」


私を馬に横に座らせ、寄り添うように乗り、走らせる。


「・・・・」


『姫さん。落ち着くっす。魔力が暴走してしまうっす。』


突然ヤンキーな口調の声が聞こえてくる。

その声は頭の中に直接聞こえるようで、馬のいななきがなければ幻聴かと思うほどだ。


『魂は違っても、匂いとか一緒なんすね。安心したっす。』


「・・・・分かるの?」


『そう感じたっす。』


「?リル。ルークと何話しているの?」


「え?」


あるじや他の人族には魔獣オレらや動物の声は聞こえないっす。念話も人族同士だけっすから。』


「い、いえ。何も。」


「そう?まあいいや。リル。少しスピードを上げるよ。しっかり掴まっててね。」


ルークの走るスピードを速める。

その感覚は急降下するジェットコースターのようだ。

ぎゅっと目を瞑り、身体を強張らせる。




「リル。目を覚まして。」


ちゅっ。というリップ音と共に頰に柔らかい感触がして目を覚ます。


(い、今キスされたっ・・・!)


その頰に手を伸ばす。


「着いたよ。王都のリバンシュタインだ。」


馬から降りる。


「!!!」


目の前には憧れのあのノイシュバンシュタイン城がそびえ建っていた。


「リル?」


「城・・・?王子様?」


白馬に乗り、己の胸に女性を抱く。

まるであのシーンではないか。

白雪姫を連れ帰る王子のようだ。


「あぁ。僕はエーテルワイズ王国の第一王子のヴィリニオ・リヒト・ソーンツェ。ヴィルと呼んで?」


柔らかな笑みを向け、頰にキスをする。


「ヴィル、様?」


顔を真っ赤にさせる。


「ヴィルとだけ。婚約者の君にまで敬称で呼ばれたくないな。」


「こんやくしゃ?」


また頭の中が?(はてなマーク)に支配される。


「そうだよ。君は、リルヴィア・ステラ・フォン・シェール。僕の愛しい人。」


「っ・・・」


情熱を込めたキスを受ける。

全てを持っていかれそうな感覚に身体を震わせる。


「?リル?」


「ご、ご、ごめんなさいっ・・・・」


涙を零す。


「泣かないで。リル。僕が悪かった。」


と言いつつも、額にキスをする。


(こいつ、懲りてねぇ。)


そう心の中でごちる。


異世界の王子様は私をルークに乗せると手綱を引いて、城壁の門へと向かった。

大混乱の主人公を連れ、城に帰ります!


お城のモデルは、ドイツのノバンシュタイン城です。


次回もお楽しみに!

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