Prorogue はじまりはじまり
初めましての方も、別小説をお読みくださった方も是非よろしくお願い致します。
誰が味方で、誰が敵か。
誰を信じ、誰を訝るか。
本当の意味での寛ぎは何か。
心の安らぎは何と説くか。
人を簡単に信用してはならない。
それが私の家訓だった。
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ーリル。リルヴィア。
青年の呼ぶ声が聞こえる。
ー君が居ない世界など、無だ。どこにいるんだ。
悲しみを帯びた声色。
ー赦してくれ。君を護るべきだったのに。君が"乙女"だったなんて。例え神に叛くことになろうと、僕は君を探し出し、目覚めさせるよ。リル。僕の愛しき人。
決意に満ちた声だけが聞こえる。
「りりあ!りりあ!」
「ん・・・?」
身体を強く揺すぶられる。
「いったいどうしたというの?!」
「え・・・?」
すぐ側にはコンクリートの地面があった。どうやら倒れたらしい。
らしい。のだ。どうも記憶があやふやだ。
「りりあ。病院に行きましょう。ええ。今すぐに!」
私を乱暴に起こし、ぐいぐいと手を引っ張る女性。
彼女はいつも強引だ。束の間の休日に、惰眠を貪る私を買い物に連れ出すような人だ。
けれどその縁は断ち切れないほどだ。
唯一信頼できる人間には間違いない。
「そうですね・・・・」
壮年の男性の医師は書き込んだ書類を見つめながら話し始める。
「日頃からの疲れと精神的なものでしょう。休息することが一番の薬ですね。」
「で、でもっ、仕事は休めませんっ。」
そんなことをしたら確実に私の席はない。
「でも、りりあ。あんなところまで追い詰められているのよ?そんな会社、辞めよう!」
「辞めたくても辞められないよ。そんなことしたら、アパートからも追い出されてしまうわ。」
「そうなったら、私の家に住めばいいのよ。」
「・・・・・・考えてみるわ。」
(これ以上貴女を頼るのは恐いわ。)
本音を言えば、彼女は怒るだろうな。
「いい?りりあ。何かあったらすぐに私に連絡して。・・・・・お願いだから、いなくならないでね?」
こちらを懇願するかのような目を向ける。
「う、うん。わかった。ありがとう・・・・りこ。」
頑張って笑顔を作る。
いつだってそうだった。
心配するそ振りを向けるも、心の中は違うことを考えている。
それに母は「簡単に人を信用してはいけないよ。」と口癖のように幼い私に言い聞かせたのだ。
信頼していた人から裏切られ、酷い目に遭い、最期には自殺に追い込まれて死んでいった。
そんな両親を見たからか、生まれ変わるなら人間じゃないのがいいなぁ。と思うようになっていた。
ーりりあ!逃げて!!
若い女性の声が聞こえた。
「?!」
後ろを振り向くが、誰もいなく、ただ夕闇が広がっていた。
それからと言うもの、突然の眠気や幻聴に悩まされる日々が続いた。
しかし、まさかあんなことになるなんて。