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ガチャでUR種族を当てたら、異世界に飛ばされた  作者: 厠之 花子
序章:王国滅亡編
1/18

0.魔族(希少)当たりました

初投稿で、何かとおかしな点や誤字脱字があります。構造も曖昧で、拙い文ですが楽しんでいただけたら幸いです。

「いよっしゃぁぁあああ!!激レア種族ゲットぉぉおおお!!」


街中で突然の大声を発したのは、まだ小学生くらいの幼い少女。歓喜でふるふると震えている右手を、左手で押さえつけている。


腰まである艷めく黒髪、透き通るような白い肌、嬉しさに細められた瞳は血を吸ったように赤く、身体は僅かな力でも折れそうな程に華奢。

怪訝そうに伺う周りの目も気にせず、少女は全身でその喜びを表している。それが容姿とあまりにも合わない為、凄くちぐはぐに見えてしまい、少女の発言と相まって普通以上に注目を集めてしまっていた。


ヨーロッパを思わせるレンガ造りの建物が立ち並ぶ街⋯⋯の中でも人通りが特に多い大通り、そんな中で大声を発しているのだ。なんだなんだ、と人々が振り返ってしまうのも当たり前の事だろう。


「ついに⋯ついに⋯手に入れた」


信じられないあまり、思わず自分自身で頬をつねってしまう。が、痛覚設定を0%にしている為───当然痛覚などは、ない・・


嬉々とする少女の頭上には『ユウ』とプレイヤー名が電子表示されていた。そして少女の目の前には、青白く透き通ったディスプレイが幾つか重なった状態で存在している。


───そのうちの一つには、〝congratulations!!〟の文字が煌びやかな演出と共に踊っていた。


『おめでとうございます!!見事、ピックアップUR種族〝魔族(希少)〟が当たりました!!』


そう、ここは仮想世界ゲームだ。



────────────



ヴァーチャル・リアリティー・ゲーム───通称VRMMOと呼ばれるそれは、真の意味・・・・で誰でも仮想世界を実際に体験できるということで老若男女、どの世代からも人気だった。


ヘルメットのような機器───『VRG』を被ることによって、電気信号によって作り出された偽りの情報をプレイヤーの脳が受け取り、まるで本当に見たり触ったりしているように感じることができる。

VRGというVRMMO専用の精密機器を使うので、少々値は張るものの売り上げは右肩上がり。これまでに無いスタイルのゲームという事もあり、人気は絶えなかった。


その中でも一躍有名となったのは『Creative World Online』───通称『CWO』だ。

圧倒的なグラフィックの解像度、何でもできると噂される程の自由度の高さ、他の製品とは違うリアルな感覚設定。

製品名にも『Canterville(創造的)』とある通り、自分だけのオリジナルデザインの武器や装備、城、ダンジョン、更にはオリジナルNPCまでもが自在に創れる(もちろん制限はある)。

あるCWOファン曰く、『やり込み度がハンパない、ヤバイ!!マジで時は金なりだわ』らしい。


その言葉の通りに、僅かな時間を惜しむかのようにプレイヤーはログインし、ゲーム内はサーバを分けているにも関わらず人で溢れ、賑わいを見せていた。


その理由には、ゲームにはつきものであるバグやエラーが不思議な事に無かったというのもあったのだろう。CWOは、〝過疎〟を知らない。




CWOは当然、最初から最後まで無課金プレイも可能だが、課金する事で更に自由度が上がり楽しさが倍増した。


───それが〝ガチャ〟


CWOには最初に決められる種族や職以外にも、ステータスが高かったり、特殊技術スキルが強かったりとする上位種や上位職などが存在する。


課金ガチャと呼ばれるのは、それらを含めたRレア以上の種族や職の中からランダムで1回につき1つ、選出するシステムである。その為に必要なアイテムは現金リアルマネーを支払う、又はゲーム内の無料配布プレゼントによって得ることができる。

もちろん、無課金でも課金ガチャを引くことはできる───ただし、引ける回数は限られるが。故に、レア度が高いモノが当たる可能性は低い。


ゲーム内の通貨で引けるガチャもある。だが、このガチャは全て・・が含まれている為、いいモノはなかなか出てこないだろう。


種族ガチャ、職ガチャ、武器ガチャ、装備ガチャ⋯⋯数ある課金ガチャの中で〝ユウ〟という少女が引いたガチャは───種族ガチャ。丁度、限定種族の排出率がアップするキャンペーンが行われている最中である。


エルフ(希少)や、悪魔、天使、魔族(普通)などがピックアップ種族としてバナー広告に載る中、一際大きな存在感を放つのはURウルトラレア種族である『魔族(希少)』。

この種族だけはβ版当時から、ただならぬ注目を浴びていた。


その主な理由は〝希少〟という二文字にある。この二文字が付くか付かないかによって、大きくステータス云々は変わってしまう。


本来ならば『人間』など、元々ステータスの低い種族に付くことによって差異を生み出し、種族が死なない・・・・ようにする筈であろうソレ。


⋯⋯しかし、運営は一体何を血迷ったのだろうか。


魔族はやや魔力特化型気味のステータスだ、しかしそれでも他の種族より能力値は、かなり・・・高い。

そこにステータス云々・・を大幅に上げまくる〝希少〟が付いたらどうなるのだろうか。


───いやもうこれ、チートじゃね?

⋯⋯皆一様に、そう思ったに違いない。


だが、当たる確率は僅か0.000005%。あまりに鬼畜的な数字にクレーマーが殺到したが『バランスブレイカーにならざる負えない程の能力だもの、しょうがないよね、テヘ♡』⋯⋯という事で、表面上・・・は収まった。


そして魔族(希少)は絶対に当たらないものとされ、もはや都市伝説化までされていた⋯⋯筈だったのだが。


「ゆ、夢じゃないよね⋯当たったんだ、0.000005%が」


その言葉に、固まっていた周りのプレイヤーが動き出す。


「お、おい。あの嬢ちゃん〝魔族(希少)〟が当たったらしいぞ」

「嘘だろ!?今まで当たった者はいないと呼ばれているシロモノだぜ!?もはや都市伝説化しているという⋯⋯」

「うっわぁ、超ラッキーじゃん!!0.000005%を当てるとかヤバくね!!」

「私も欲しいわぁ⋯」

「まさか、ズルしたとか?」

「いやいや、それはないっしょ。流石に運営気づくって」

「中の人運営なんじゃね?確率操作でもしたんだろ」


不正を働いているのではないかと疑う声、その力を利用しようとする媚びた声、当たったことを祝福する声⋯⋯様々な声が飛び交う中、ユウは迷わず種族を魔族(希少)へと変える。


種族を変えるのは簡単。メニュー画面を開き、種族変更という所でちょちょいと操作するだけだ。

⋯⋯ただし、職とは違い以前の種族には戻れない仕様となっている。その代わり、以前の種族の特殊技術スキルは全て受け継ぎ、レベルも初期化されない為デメリットは殆どない。


ピロリン、とポップな音とともに、ユウの頭と腰にそれぞれ艶めいた黒角と1対の立派な黒い羽根が表示された。

魔族である者の証だ───ただし、普通とは異なっているようで、角は捻れ羽根の周りには悪らしい黒々としたオーラが漂っている。


───やっと手に入れたんだ。


自身の風貌を見て、ユウ───茅ヶ崎ちがさき ゆうは思わず口角を上げた。

このゲームにいくら課金したのかはもう覚えていない。ただ毎月僅かな給料から僅かな金を、少しずつ注ぎ込んだのは確かだ。

コレを始めて何年だろうか。確か、成人する前⋯⋯高校生くらいからだから⋯7、8年はゆうに過ぎているだろう。


最初からこの魔族(希少)狙いだった。


厨二心を擽られるような見た目、規格外な能力値。まるで〝最強〟をそのまま表してみたというような種族だったが、あまりの排出率の低さに狙う者は少なかった。狙っていても所詮、『当たったらいいなー』程度である。


だが悠⋯⋯いや、ユウは本気だった。

ピックアップ時には、必ずお小遣い乃至ないしは自分の趣味専用の金で課金し、メインに使うジョブも魔職ばかりだ。一応、他の職はレベルをカンストさせたものの、使用する訳ではない。


当然の事のようだが、レベルをカンストさせるには長時間以上・・の時間がかかる。まあ、それがやり込み要素の一つなのだが⋯⋯───因みに職のレベル上限はNPCと同じくLv100、自身キャラのレベル上限はLv999である。


久々に子供のようにはしゃげる事が出来たこのゲーム、コレをプレイしている時だけは自由になれた。だから、思いの外のめり込んでしまった⋯⋯この世界ゲームに。


新しい種族を手に入れた事によって、ディスプレイに新たな特殊技術スキルやら何やらがズラリと表示される。

───真・下僕創造アンデッド・クリエイト、不老、真・自己回復セルフリカバリー、全能力超強化、限界突破アンリミット、種族補正、絶対強者、魔のオーラ、状態異常無効⋯⋯全てを挙げていたらキリがない程だ。


詳細でスキル内容を確認しながら、武器などの構成を考えてゆく。

あれもいい、この組み合わせもいい⋯⋯と見ているうちにふと、違和感に気づいた。


「あれ?NPC創作クリエイトの数が7に増えてる⋯?ガチャの特典⋯⋯な訳はないよね」


自分で創作できるNPCの数は1人につき最高で3体である。キャラレベルに応じてNPCレベルの上限が解放されていく仕組みで、始めたばかりでも3体作れることができる。


だが、キャラレベルがどんなに上がったとしても数の上限が変わることは無い、またこの数は課金でも変えることはできないようになってる⋯⋯───筈なのだが。


「おかしいな、既存の3体は消えていないんだけど⋯⋯新規作成に4枠追加されてる」


バグかもしれない。

首を捻りながらも、恐る恐るウィンドウに指を滑らす───もしバグだったとしても、新しく作ったところでデメリットはないだろう、という思いを抱いて。


程なくしてデータロードが完了し、ディスプレイに文字が表示された。


編集室エディットルームへ移動します』


───⋯フォン


耳元でエリアが変わる音を聞き、空気が震える。


目を開くとそこは創作クリエイト専用ルームである編集室エディットルームの中だった。主にここで装備やNPC、建物などの創作を行っている。


何も無い白い空間の中、手馴れた様子で作成画面を開き、NPCの種族や様々な設定を決めてゆく。


「男女比は4:3かな⋯⋯と、なると男が3人で女が1人という所か」


既存の3人の性別を思い出しながら、ユウは宙に浮くタッチパネルでそれぞれの設定を書き込む。この動作によってNPCの性格や仕草などが決まるのだ。

会話は出来ず、システム通りにしか動かないが、時折見せる仕草には上手く人間臭さが現れている。その点も高い評価の理由だろう。


自分の足りない部分を補う為のNPCなので、役割などは既に決まっていた事もあり、比較的スムーズに決めることが出来た。

初めてNPCを創作した時はかなりの時間がかかっていたことを思い出し、ユウはふっと頬を緩める。


あの時は仕様も何もわからないまま、ただ何となくプレイしていた。それでも創作に関しては、細々としたこだわりがある。

最初はじめは迷ったものだ、容姿や性格決めなどに。


「戦闘兼頭脳担当が1人、戦闘特化が1人⋯⋯いや2人、お世話係も1人欲しいな」


種族、容姿、性格、設定などNPC創作には沢山の決め事があるが、それらをサクサクと決める。だが、決して手を抜いている訳では無い。


暫くしてユウの指が止まる。


「⋯⋯よし」


何処か恍惚とした表情でディスプレイを見つめるユウ。その表情から満足のいくモノが作れた、と見て取れる。

早速既存の3体に加え、新たな4体を実体化させる。ユウは改めて満足気に頷いた。心の内にあるのは、ひと仕事終えたような達成感だ。


「ふぃー⋯⋯さぁて、帰るとしますか」


こってもいない肩を左手で揉みつつ、編集室エディットルームから出ようと『完了』の文字を探す。そこをタップすれば、町のエリアに戻れる筈なのだが⋯。


ユウが目を見開く。


本来『完了』の文字がある場所には、何故か別の文字らしき・・・ものが表示されている。

どうして、と無意識につぶやいた。ディスプレイ上で行き場をなくした手が震える。


「文字化け⋯?なんで、ここだけ⋯なんか不気味だなぁ」


そこには漢字のような、アラビア文字のような⋯⋯とにかく見たこともないような文字が青白く不気味な光を発していた。

しかし、そこ以外は至って普通、何の違和感もない。完成したばかりのNPCだって、目の前にしっかりと実体化されている。


「⋯GMゲームマスターに連絡?いや、文字化け程度で呼び出す必要はないか」


咄嗟に浮かんだ対策を首を振って取り消す。GMゲームマスターに連絡すると少々面倒な事になる。そこまでして報告する程の件ではない。

ただの文字化けだろう、ユウは躊躇いもなく指を⋯のせた。


第6感に語りかけている違和感を無視して。


───きっと、それがいけなかったんだ。


『ぇ⋯ェ、エるトらしア⋯にィい、ド⋯ゥ、しまマままママま⋯ス』


「⋯⋯っ!?」


────⋯⋯フォン


壊れた機械音声に驚きの声を上げる暇もなく、ユウと7人は跡形もなく消えた。



────────



かの噂の・・・・UR種族:魔族(希少)が当たったプレイヤーがいるらしい〟


───その大事件ニュースは瞬く間に広がり、数時間後には〝ユウ〟というプレイヤーは時の人となっていた。

しかし、同時に不可解な出来事が起きた。


〝当たった直後、ユウはゲームをやめた。いつまで経っても戻ってこない、何かあったのだろうか〟


「やっぱ、中の人は運営だったんだよ。出るって証明したかったんじゃね?」

「でも、ユウってかなり前からプレイしてたよな?なんでこんな時に宣伝なんか⋯」

「さぁな、金が欲しいんだろ」


「どうやら運営によるとログアウトの形跡もないらしい」

「はあ?じゃあ、なんで消えてるんだよ」

「原因不明だってさ、お手上げらしい」

「⋯⋯このゲーム大丈夫かよ⋯まさかバグか?」

「だったら解決メンテナンスするだろ、普通」

「確かに⋯」


「おい、ゲームしていた女性が消えたっていうニュース見たか?」

「ああ、見た見た。不思議だよなぁ⋯完全な密室で傍には友人もいたのに、消えちまうなんてなぁ⋯⋯⋯って、まさか」

「そのまさかだと思うな、俺は」

「じゃあ、ユウちゃんの中の人はあの女性か!!いやぁ美人だった、いいおっぱいをありがとう」

「⋯⋯ほんと、相変わらずだなお前」



『───⋯⋯先日、CWOと呼ばれるVRMMOをプレイしていた女性が、原因不明の失踪をしました。同室にいた友人Aさんによると、瞬きをしてる一瞬の間にいなくなったとのことです。尚、部屋は完全な密室であり───』



『謎の失踪をした女性は未だ、見つかっておりません』

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