犬小屋に入居
大学、それは誰もが期待し、希望を抱いて入るであろう場所だ。
そこにごく普通の夢もない平均的な男が入学式と書かれた大きな看板の前に佇んでいた。
「不安すぎる・・・。」
高校の友達もここにはいない、そう、彼は今”ぼっち”だ。
「ぼ、ぼっちは嫌だ・・・嫌だぞ!!」
俺にも望みがないわけではない、大学という新たな舞台の前に少しばかりの期待はあるのだ。
「なんで他の人は二人組なんだよなんでだよおかしいだろ!?」
その理不尽さに震えながらサークル紹介などを兼ねた入学式は終わり、チラシ配りをするサークルの人たちがいる中彼はウロウロしていた
そして、部屋が連なる場所の廊下、そこに目に入ったのは扉の前の委員会の文字が入った看板だった。
「い、委員会か、高校にもあったが大学にもあるものなのか・・・」
当然リーダーシップなどない、彼は様子をみてこぼれたボールを拾って渡す役目のような男だ。
「それにしても異様すぎるだろ・・・。」
俺の目の前にあった看板、そこには”そんな生活で委員会”と書かれていた。
今思えば俺は現状に刺さるようなその言葉に少しだけ惹かれていたのかもしれない。
少し考えて頬をポリポリ掻いて悩んでいたとき、自動ドアのごとくその扉は開かれた。
「うぉあ!?」
「うおお?」
思わずそんな情けない声をあげたあと、当然そこにいる人を見る。
「あれ?」
短い黒髪にジーパンを履いたその人は一瞬男性かとも思えたがそれだとその可愛い声に説明がつかなかった。
「もしかして見学ですか!!!!!!!?」
気迫に負けた、その期待を裏切るような勇気はない。
「ああああ、、そう、です」
コミュ障かよと自分にツッコミを入れながら部屋に入る。
「「ようこそ!そんな生活で委員会へ!」」
トランプをしていた、そう誰もが楽しむことが出来るカードゲーム、お菓子もある。
「トランプの新メンバー?」
ちげーよ。
「まじか、なんで来たの!」
知らない。
「ハッピータ○ンでも食べる?」
食べる。
俺は歓迎されてるのか・・・?
こんな男だから期待されるようなことは滅多になかった。
そこに広がる委員会とは思えない光景に彼の常識はカブトムシのように覆っていた。
「あー・・・」
その扉を開けた本人はどう説明するか言葉を探すように目をキョロキョロさせている。
「普段は真面目なんだ!」
すごい信憑性が全くない。
「説明するからそこをどけい!!」
トランプ組が吹き飛ばさせれ椅子を差し出されそこに座る。
「ここはそんな生活で委員会、僕らだけじゃない、簡単に言えばこの大学を良くしようと活動する団体だよ。」
「そして僕がその会長、木下椎菜だ。」
僕という一人称に戸惑うと同時に感動した。そうこの世に僕っ娘がいることに、涙が出るほど。
「今日はそう、たまたまトランプをしていたんだ、普段はUN○だもん。」
変わらない。
「でもいいっすね、こういう場所落ち着くというか安心するというか。」
声を出すのが久しぶりに感じるほど、意識が薄れていた。
そして必死なカバーだった。
「だよね!!うん君は向いているよこの場所!僕らは学校の犬でも機械でもないんだ!!」
それより必死な言い聞かせだった。
「新入生少ないのよね、ここ。」
ハッピータ○ンをボリボリ食べながら、一見大人に見える女性が言った。
黒城美琴、金髪ながら華麗な姿でこの委員会で一番大人の雰囲気を醸し出していた
「そうなんすか、まぁこんな名前ですし。」
「やっぱり?変えたほうがいいかな!何か案を!」
人差し指を差され言われる、新入生に尋ねるかそれを。
「す、スプラッシュバッシャーン」
「「 ^^; 」」
こうして俺の奇妙すぎる大学生活は幕を開け始めていたのだった。