此処は何処?
ちょっとがんばって書きました。
……頬が痛い
「実夕……? 」
「悠太君? 」
右頬の痛さで悠太は目が覚めた。視界一杯には実夕の心配そうな顔が広がっていた。
いつも強気な実夕を見ていたけれど、さっきからこんな顔ばかりだ。
何か調子が狂ってしまう。
そして、今自分たちが置かれている状況に気づいてしまった。
「実夕、此処は何処なの? 」
「……私にも分からない」
悠太達が今居る場所は薄暗い、灰色の壁で出来ている建物のようだった。
部屋の隅へは下へ行く階段と上へと続く階段があった。
とにかく、ジッとしていても始まらない。
「実夕、とりあえず外へ出てみない? 」
「ん、そうだね」
実夕に承諾された。外へ出るには、常識的に考えれば下へ行って1階へと辿り着けば出られるはず。
そう思い、足を下へと続く階段へと向かわせる。
階段は、暫く使われていなかったかのように埃を被っていた。
しかし、なんだったのだろうか。
あの、黒い丸の穴は。
いきなり出てきて自分たちの体を飲み込んで行くだなんて尋常じゃない。少なくとも、悠太は見たことが無い。これが、超常現象というやつだろうか?
実際、悠太も事実を受け入れ切れてはいない。
何を確かめるにもここを出て外の様子を見ないとここが何処だかすらわからない。
カツカツカツと階段を降りて行く。でも、下へはつかない。
「ねぇ、いつまで続くのかなこの階段」
「わからない」
降りても降りても下の部屋につかない。
こんなのありえない。おかしい。
神社の石段ではあるまいし。もう200段以上は降りている。
「ねぇ、ここ、何なの? 何で着かないの? 悠太君、私、怖いよ……」
実夕が弱気になる。目は、早く此処から帰りたい!と主張していた。
「実夕、弱気にならないでよ。 いつもの強い実夕でいて。僕を守ってくれるんでしょ? 」
実夕を励ます。というより、奮い立たせる。此処で実夕に弱気になられては敵わない。
「そうだよね……うん! 私、どうかしてた!! ようし、私が守ってあげるからね!! さぁ、気を取り直してドンドン行こう! 」
そういって実夕は歩調を速めた。
うん。実夕にはうるさいぐらいがちょうど良い!!
更に、スピードアップし降りていくうちに悠太はあることに気づいた。
階段には足跡がすでに残っている。
そして、ある仮定へと辿り着く。
ーーーーーー僕たちは同じところを歩いているんじゃないか……?
もし、本当にそうだとしたらこのままでは埒が明かなかった。実夕を呼び止める。
「実夕」
呼びかけて自分の考えを実夕に言ってみた。
「えぇ!? じゃぁ、私たちはずっと同じところを歩いていたの!? 」
それを聴いた瞬間、実夕の顔を疲労が覆った。
でも、絶対に出口はあるはずだ。
「実夕、これからはただ降りるだけじゃなくていろいろ注意しながら降りよう」
そう提案し、実夕もそれが良いと思ったのか頷いてまた歩き出した。今度は、慎重に。
5,6分経った頃だろうか。
早速、効果が現れた。
実夕が、突然、
「あっ! 」
といって立ち止まった。
「実夕、どうしたの? 」
「見てよ、これ」
実夕が指差す先には灰色の壁があった。
「何も無いよ? 」
不思議そうに尋ねると、実夕はニヤァッと笑ってこう言った。
「もっと、よく見てみてよ」
顔を近づけてみる。
何か、数字が並んでいた。
でも、よく見えない。ふうっと息を吹きかけてみる。途端にブワッと埃が舞った。
「ゲホッゲホッ! 」
埃を思い切り吸い込んでしまい咳き込んだ。
「もぉ~何やってんのよ」
実夕が呆れたという顔で見てきた。
「ほら、みてここ! 」
実夕が指差す先には数字の式が羅列していた。
「+1-23+5-4+2-5」
声に出して呼んでみたが意味はさっぱりわからない。
実夕も隣でう~んと唸っていたが、突然パっと閃いたとうように顔を輝かせた。
「ふっふ~ん。私って天才かも! 」
「天才はテストで20点を取りません」
「うっ!? 古傷を突かれた……」
ハァと溜息をつく。
「幸せが逃げるよ? 」
「余計なお世話だよ! 」
「フフッ、悠太君かーわいぃ~、まぁ、ここはお姉さんに任せなさい! 」
つんつんと頬を突付いてくる。
……本当に大丈夫かな?
実夕は1段上へと上る。
「実夕? 戻ってどうするの? 」
「いいからいいから! 悠太君も私と同じ動きをして」
言われたとおり1段上へと上る。
その後も実夕は同じような動作を繰り返す。
上がったかとおもいきや、今度はドンドン下がる。そしてまたちょっと上がってちょっと下がる。
「実夕、僕をからかってるの? 」
いい加減うんざりした僕は少し苛立ったように言葉を吐き出す。
「そんなことないわよ。これで最後」
そういって下に下がる。
何が最後なんだか、悠太にはわからなかった。
実夕の後へ続いて階段の下へと降りていく。そして実夕が止まった場所で僕も立ち止まる。
……え?
さっきまで見えなかったものが見えてきた。
「壁が……」
さっきまでこんな穴は無かった。
どうなっているんだ?
実夕の推理が正しかったということなのか? 何故か、悔しい気持ちになってくる。
灰色の壁には黒い丸がぽっかりと空いている。
何処かに続いているんだろうか?
「実夕……どうするの? 」
「行くしかないでしょ!! 」
実夕は、自分の推理が正しかったので気を良くしたのか上機嫌である。
そういうと、実夕は黒穴の中に足を入れる。
「悠太君も早く!! いくら私でも一人はヤダ。はぐれないように手、繋いでね?」
そういって実夕が手を差し出す。
僕は、その手を掴み勢い良く黒丸の中へと入っていく。
そしてまた、黒穴に落ちたときのように意識が薄れていった。
-------「おめでとうございます」
抑揚の無い声が僕の耳へと入ってくる。
目を開けるといつのまにか、そこはさっきまでいた場所では無くなっていた。
誤字脱字があれば指摘お願いします。