黒丸
今回短めです。
翌日。
果たして、昨日の実夕の笑顔はなんだったのか?という疑問は、朝ごはんの大好物の目玉焼きになより脆くも崩れ去っていった。
朝ご飯を食べ終えた悠太は自室へと戻り学校に行く準備をしているところだった。
突然、携帯がブルブルっと震えた。
---ーー誰からだろう?
携帯のディスプレイには、新着メールが1件表示されていた。
差出人は……実夕?
おかしいな。実夕は自分で言ったほうが伝わる!とか主張してメール機能はほとんど使わないはずなんだが……
気になりながらも、メッセージを開いてみる。
-------今日、悠太の家の前で待ってて。迎えにいくから。-------
そのメールは短かった。
いつもなら、何も断らずにいつの間にかついてきているのだが、今日に限ってはどうして?
なにはともあれ、学校へと向かう準備が出来た悠太は部屋から出て家の玄関で壁に背をもたれかけていた。
2分程待っていると、前方から実夕が姿を現した。
「ごめん! 待った!? 」
「いや、別に。それより、何で今日はわざわざメールを送ってきたの? 自分勝手な実夕がそんな気の利いたことをする8はずはないと思うんだけど」
「ぁ!? 悠太君ひっどぉー! ぅぇーん、悠太君がいぢめるよぉ~」
といって泣きまねをしている実夕に問いかける。
「で、何でわざわざメール送ったの? 後、その呼び名やめてよね! 」
「んー……悠太君に言いたいことがあるの」
そういうと、実夕は急にさっきまでのおちゃらけた雰囲気から真面目な顔へと変わった。
「あ……あの、ね? そのぉ……」
「何だよ、はっきり言ってよ! いつもの実夕らしくないじゃん!? 」
「あ、あの、ね? わ、私、そのぉ……悠太君の事が……す……!! 」
実夕が言い終えるか言い終えないかのうちに、実夕の身長が縮んだ。
いや、縮んだのではない。地面に引き込まれていく。
「実夕!?」
実夕が立っていた場所には大きな黒い丸があった。
「実夕!? 実夕!! 」
「ゆ……悠太君、これ、何? 」
実夕が恐怖に顔を歪めながら尋ねてきた。
そんな……
考えているうちにも実夕の体はどんどん黒い丸の中へと沈んでいく。
「実夕!! 」
実夕の腕を掴み引っ張りあげようとするが、びくともしない。
「悠太君……」
もう、涙目に変わってきている。
そんな気弱そうな実夕は今まで見たことが無かった。
どうする?何としてでも助け出さなければ。
焦りがどんどんと悠太の思考力を奪っていく。
どうする? ……どうする!!
実夕の体は見えなくなり助けを求めようと伸ばした手しか見えなくなっている。
くそっ!!こうなりゃやけっぱち!
実夕の手を掴み、自分も一緒に黒い穴に飛び込む。
黒い穴は実夕を沈めたように、悠太を静めていった。
悠太の体も飲み込んでしまったとき、実夕と悠太の思考は停止した。
◇
悠太……悠太……
まだ、私言ってないよ。
悠太の事を好きだって……
そして、実夕の思考はまた混沌とした。
ーーーーーーーーーーーーーどれぐらい経ったのだろうか?
実夕は気がつくと自分が知らない場所にいた。
横には悠太が倒れている。
「悠太! 悠太!! 」
実夕は悠太を抱き起こし、揺さぶる。
しばらくすると、悠太が不快そうに、呻きを上げた。
「ん、、むぅ……」
「悠太! 大丈夫!?」
「んみゅぅ……実夕……」
「悠太!? 気がついたの!? 」
「……お腹いっぱい……」
んなっ!?
……許さない
その後、悠太の頬が真っ赤に腫れたのは別の話だった。
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