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自暴自答

作者: ヒナの子
掲載日:2026/07/28

今日は、眠れない夜だった。


仕事も趣味も、熱中して、努力して、たまに無力感に苛まれる。

全てが嫌になった訳では無いのに、何故か涙が出る。


そんな夜が度々やってくる。


深夜零時を回る頃のコンビニには、くたびれたスーツを着た社会人と、部屋着のままのカップルがいた。


どちらも酒とつまみ、煙草を買って、店を出ていった。


私はというと、そんな彼らを見て、酒棚の前に立ち、明日がまだ水曜日だということを理由に手を伸ばすのを辞めた。


何を。


「715円です」


スマートフォンを操作して、支払いを済まし、さっと店を出る。


確かな異物を左手に感じながら、空を見上げる。

心地の良い曇天。月も星も見えず、雨が降る訳でもない、曇り空。



角を帰り道とは逆方向に曲がり、通りなれない道に入る。カーブミラーに映る自分の姿は、少し好きになれそうに見えた。



今朝、手洗いで嘔吐した。

何も分からなかったけれど、少しスッキリしたので、日常に帰った。

昨晩は、早めに布団に入り、十分な睡眠を取った。


電車に揺られ、人に揉まれ、日常の痛みはもう何も無い。


ただ、今日はこんな夜。



少し物思いにふけっている間に、公園に着いた。

公園と言えども、遊具はなく、ここで遊んでいる子供がいるのかどうかも分からない。

ちょうど休憩するには良いベンチがあった。


腰を下ろすと、意外にも冷んやりしており、この時間の特別さを演出してくれる。



左手の異物から、ようやく手を離す。

手汗を拭い、期待に胸を高鳴らせることはないけれど、少しの興奮を抑えながら、プラスチックの包装を破った。


「あつっ」


思わず声が出た。

初めて使う訳ではないけれど、見慣れないものだ。


その灯りに吸い込まれるように、咥えたソレの先端を近づけた。

そして、吸った。


すうっと自分の中に、白い何かが吸い込まれ、拒否反応を示すように咳が出る。


苦い不味いといいながら、そんな感想を口にする大人の気持ちが腑に落ちた。


少し、また自分を好きになれた。



空を見上げる。


髪を整え、元気な声で挨拶をし、デスクで仕事と向き合う。

そんな当たり前のこと、誰でもできることはできて当たり前なのだ。


そもそも、人ができることは、大抵自分もできることなのだ。

できない人がいることも理解できるし、感情が高ぶる人の気持ちも理解できる。


けれど、「人は人」。

小さな頃に教えられた考えで、自分には言い聞かせた。


そのうち、何ができて何ができないのか、何が好きで何が嫌いなのか、人は何ができて何が好きなのか、その当たり前に当てはまっているはずの自分は、何ができていなくて何が嫌いなのか。


「ああ」


意味もない音が漏れる。


何もできないなら、どんなに楽だっただろうか。

それを理由に、笑顔を辞めて、手を止めて、不満を口にして、高らかに吠えられれば、どれだけ楽だったのだろうか。



19本。


あと19回、この夜を過ごしたら、私も堕ちることが、自分を諦めることができるだろうか。



まだ左手には異物感が残っている。

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