自暴自答
今日は、眠れない夜だった。
仕事も趣味も、熱中して、努力して、たまに無力感に苛まれる。
全てが嫌になった訳では無いのに、何故か涙が出る。
そんな夜が度々やってくる。
深夜零時を回る頃のコンビニには、くたびれたスーツを着た社会人と、部屋着のままのカップルがいた。
どちらも酒とつまみ、煙草を買って、店を出ていった。
私はというと、そんな彼らを見て、酒棚の前に立ち、明日がまだ水曜日だということを理由に手を伸ばすのを辞めた。
何を。
「715円です」
スマートフォンを操作して、支払いを済まし、さっと店を出る。
確かな異物を左手に感じながら、空を見上げる。
心地の良い曇天。月も星も見えず、雨が降る訳でもない、曇り空。
角を帰り道とは逆方向に曲がり、通りなれない道に入る。カーブミラーに映る自分の姿は、少し好きになれそうに見えた。
今朝、手洗いで嘔吐した。
何も分からなかったけれど、少しスッキリしたので、日常に帰った。
昨晩は、早めに布団に入り、十分な睡眠を取った。
電車に揺られ、人に揉まれ、日常の痛みはもう何も無い。
ただ、今日はこんな夜。
少し物思いにふけっている間に、公園に着いた。
公園と言えども、遊具はなく、ここで遊んでいる子供がいるのかどうかも分からない。
ちょうど休憩するには良いベンチがあった。
腰を下ろすと、意外にも冷んやりしており、この時間の特別さを演出してくれる。
左手の異物から、ようやく手を離す。
手汗を拭い、期待に胸を高鳴らせることはないけれど、少しの興奮を抑えながら、プラスチックの包装を破った。
「あつっ」
思わず声が出た。
初めて使う訳ではないけれど、見慣れないものだ。
その灯りに吸い込まれるように、咥えたソレの先端を近づけた。
そして、吸った。
すうっと自分の中に、白い何かが吸い込まれ、拒否反応を示すように咳が出る。
苦い不味いといいながら、そんな感想を口にする大人の気持ちが腑に落ちた。
少し、また自分を好きになれた。
空を見上げる。
髪を整え、元気な声で挨拶をし、デスクで仕事と向き合う。
そんな当たり前のこと、誰でもできることはできて当たり前なのだ。
そもそも、人ができることは、大抵自分もできることなのだ。
できない人がいることも理解できるし、感情が高ぶる人の気持ちも理解できる。
けれど、「人は人」。
小さな頃に教えられた考えで、自分には言い聞かせた。
そのうち、何ができて何ができないのか、何が好きで何が嫌いなのか、人は何ができて何が好きなのか、その当たり前に当てはまっているはずの自分は、何ができていなくて何が嫌いなのか。
「ああ」
意味もない音が漏れる。
何もできないなら、どんなに楽だっただろうか。
それを理由に、笑顔を辞めて、手を止めて、不満を口にして、高らかに吠えられれば、どれだけ楽だったのだろうか。
19本。
あと19回、この夜を過ごしたら、私も堕ちることが、自分を諦めることができるだろうか。
まだ左手には異物感が残っている。




