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3 魔術師の夢
「ついたぞ」
めを開けると、絢爛豪華な王の間は消え、そこにはさっきと比べると見劣りはするものの、シンプルな内装の立派なお屋敷のなかだった。
「ここは俺の屋敷の一室だ。この部屋はよく転移につかう」
転移。・・・・・・ふむ。
さっき言っていた転移魔法ってやつか。
男の足下で光っていたほんのりした光がゆるやかに小さくなって消えた。
男はわたしの反応があまりにも無いのを不思議に思ったのか視線を向けてくるが、わたしはそこにいたものに驚いて思わず握っていた彼の手に力を込めていた。
男は驚いたように眉をあげ、遠慮がちに握り返してきたが今のわたしはそれどころではなかった。
「なに・・・あれ・・・」
そこには、首だけしかない猫がいた。
あ、あやかし・・・!
それは普通の猫の頭の数倍は大きく、ふよふよ宙に浮いていた。猫の目は黄色く、血のように赤い下がわたしをみてゆらりと揺れる。
このくらいのものはここにくる前にはわんさか見ていたが、今はお守りがない。
わたしは身を守る術を持っていない。
さっき、気休めに手のひらにカーラ神の印を描いてみたが、それもきっとあまり効かないであろうことは想像に難しくない。
くっ、どうしよう。
対抗手段といえばじいさまに習った護身術くらいしか・・・・・・。
しかし猫の生首は部屋の入り口らしき場所から動かない。
それどころか、ニタリと笑ってそこから霞になって消えた。
ん・・・・・・?
そのしぐさはわたしの心をざわめかせる。
沈黙していた男が口を開いた。
「・・・・・・今のはこの屋敷の執事のアルムだ」
えっ、生首が!?
わたしは驚いて男を見上げた。
わたしの言いたいことがわかったのか、男は苦笑した。
「何にみえたのかは知らないが、あいつは見る者の心のうちをその身に反映する」
・・・・・・へえ。
男が興味深げに見てきたが、わざわざわたしの目にうつった不思議執事の姿を教えることもない。
わたしはその視線から逃げるようにフイッと顔をそむけた。
彼も、それ以上きこうとはしない。
この世界にはああいう変な生き物がたくさんいるのかしら。
「アルムが部屋を用意してくれている。こちらへ」
男はわたしをうながして歩き出した。
導かれて入ったのは、長椅子とテーブルのある落ち着いた雰囲気の部屋だった。
来客用の部屋って感じ。
わたしは趣味のいい白いテーブルを前にして浅く座る。
うっわあ。もふもふクッション。
向かいにすわるのは、お詫びと説明をしたいといってわたしをここにつれてきた男。
信用できるかどうかはわからないが、王様らしき人の知り合いらしいしとりあえず話をきこうと思う。
まあ、すぐさま取って喰われるわけではないようだし、他に行くあてもない。
これからその、謝罪とやらをして状況説明でもしてくれるのかしらね。
そんなことを考えていると、ちょうどよく男が自己紹介をはじめた。
「俺の名前はルーシオ。この家の主。職業は作家。王宮魔術師を引退して今は本を書いている」