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男装令嬢は己の格好良さを極めたい  作者: 八星 こはく


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第7話 フランシーヌお兄様親衛隊

「隊長。今日の議題に関しては、こちらで問題ないでしょうか」


 放課後の聖ブリリア学園の第二講堂。

 日頃大人数での授業や説明会に使用されるこの場所は、放課後になると『フランシーヌお兄様親衛隊』の活動拠点となる。


 そして親衛隊においては、定期的に会議が開催されるのだ。

 テーマは様々である。『なぜフランシーヌお兄様はあれほど格好いいのか』や『フランシーヌお兄様に喜んでいただける差し入れとはなにか』あたりは鉄板のテーマだ。


 だが今日の議題は普段とは性質が異なる。

 講堂に集まった親衛隊のメンバー達も、心なしか気が立っているように見えた。


「ええ。問題ありませんわ。今日の議題テーマは、これしかありませんもの」


 隊長、と呼ばれた少女が応じると、講堂中の視線が彼女に集中した。

 腰まで伸びたふわふわの桃色の髪に、薄紫色の大きな瞳。人形のように愛らしい容姿を持つこの令嬢こそが『フランシーヌお兄様親衛隊』の隊長だ。


 彼女は生まれた時からの熱狂的なフランシーヌオタクだ。

 世界で最も美しく、格好良く、尊い存在はフランシーヌだと断言する過激派でもある。

 そんな彼女の名前は、リリアーヌ・フォン・シュヴラン。


 ―――フランシーヌの、実の妹である。





「やっぱり許せませんわ! お兄様が自ら食事に誘うだなんて!」

「で、でもあの御方は、お兄様の師匠でもあると聞いたわ! お兄様はさらなる高みを目指して頑張っていらっしゃるのよ!」

「……でも、あの男がお兄様を傷つけないとは限らないじゃない!」

「あとシンプルに羨ましい!!」


 白熱した議論は日が暮れ、夕食の時間になるまで続いた。

 今回の議題は『フランシーヌお兄様に近づく男・クロードについて』である。

 フランシーヌの一挙一動を見守る親衛隊達にとって、クロードの登場は大事件だったのだ。


 夕食を知らせる鐘が鳴り響き、隊員達が慌てて帰り支度を始める。

 そんな中、リリアーヌがよく通る愛らしい声で言った。


「明日、あの男を尋問しましょう。お兄様をどう思っているのか。どういうつもりで、お兄様と友人になったのか」


 愛らしい見た目と声に不釣り合いなほど鬼気迫る表情で、リリアーヌは机を叩きつけた。


「ただし! 皆様、親衛隊の掟を忘れてはなりませんわよ!」


 もちろんですわ! と全員が口々に叫ぶ。

 親衛隊の活動はほとんどが自由で、複雑なルールは存在しない。身分、年齢問わず、フランシーヌを愛する女性であれば加入できる組織だ。

 しかしそんな親衛隊にも、唯一にして絶対のルールがある。


 それは。


「絶対に、お兄様に迷惑をかけないこと! だってわたくし達、お兄様に嫌われたら死んじゃいますもの!!」





「……私に近づくクロードが気になるから、クロードに尋問したい、と?」


 リリアーヌからの提案に、フランシーヌは軽く息を吐いた。

 夕食後いきなりやってきた妹が何を言い出すかと思ったら、まさかクロードへの尋問を考えていたとは。


「お願いしますわ、お兄様。親衛隊の皆様も気になっていますの! わたくしだってそうですわ。お兄様が男と仲良くするのなんて、初めてですもの!」


 真っ白な頬を赤くし、興奮した様子でリリアーヌが迫ってくる。

 無言のまま見つめ返すと『麗しすぎますわ……』とさらに顔を真っ赤にして目を逸らされた。


 リリアーヌはフランシーヌとは真逆の、『可愛い』という言葉がなによりも似合う少女だ。

 とはいえ、父親を困らせているのはフランシーヌと同じである。

 フランシーヌ以上に美しい男でなければ婚約はしないと常々公言し、数多の令息からの告白を断り続けているのだ。


「それともお兄様。まさか、やましいことでもありますの!? わたくし達をあの男に近づかせたくない事情が……」


 そこまで言いかけて、リリアーヌは勢いよく頭を下げた。


「申し訳ありません、お兄様! わたくし、決してお兄様の友人を貶す意図があったわけでも、お兄様を悪く言いたいわけでもなくて、あのその、ですから……」


 リリアーヌは大きく息を吸い込むと、泣きそうな表情で叫んだ。


「わたくしのこと、嫌いにならないでくださいませ!」


 お兄様、と泣きながらリリアーヌに抱き着かれる。嫌わないよ、と言いながら背中を撫でてやると、リリアーヌは幸せそうに笑った。


 どうしたものか……。

 リリアーヌも親衛隊の子達も、みんな私が好きで言っているだけだからな……。


 しかも、いきなり尋問を開始してフランシーヌを困らせないために、リリアーヌを通じて事前に許可取りをしようとしてくれる。

 フランシーヌに嫌われたくない! という健気な思いを感じるだけに、フランシーヌとしてもなかなか拒みにくい。


「……分かった。クロードにも話をしておく。だが、あいつは人見知りなところがある。親衛隊が望む形での対話にはならないだろうが、それでもいいか?」

「お兄様……っ!」

「リリアーヌ。いつも、親衛隊をまとめてくれてありがとう」


 微笑んで、リリアーヌの頭を撫でる。

 お兄様! とはしゃぐ妹はやはり可愛らしい。


 明日、クロードに相談してみるか。

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