表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/19

第7話:新堂亜紀

――いや、ちょっと待ってよ。

「ばかみたい」って……本来はネタ楽曲でしょ?


昭和臭オヤジたちが爆笑してテーブルを叩いているのは分かる。

でも、直也くん……あなた本気でビブラート効かせて、声震わせて、切なく歌い上げるなんて……。


「あんたが〜好きで〜好きすぎて〜♪」


その瞬間、胸がぐっと掴まれた。

私と玲奈の方を指さして歌うのは卑怯だよ。

そんな事されたから、笑いのはずが、逆に歌詞の一つ一つが胸に刺さって、息が詰まりそうになる。


(……なにこれ。ズルすぎない?)


あの頃――まだ新卒として五井物産に来たばかりの直也くんに、私はチューターとして仕事の進め方を教えてあげていた。

直也くんはいつも真剣で、少し不器用なところもあったけど、だけど抜群に頭がいい……。

まさか今になって、こんな“別の顔”を見せつけられるなんて。


「ほんまに〜ロクな〜オトコやない〜♪」

最後に視線をこちらへ流しながら歌った瞬間――思わず顔が熱くなった。


ついつい

「ホントだよ!」

って言っちゃったよ。


なんか玲奈まで、

「もっと反省しろ!!」

ほら、玲奈も同じでしょ。

怒るよ、これは……。


オジサンたちが「そうだ!もっと言ってやれ!」と盛り上がってるのに、私は全然笑えなかった。


(直也くん……あなた、私のハートをがっちり掴んでどうするのよ……!)


問い詰めたかった。

「なんでそんなに歌えるの?」って。

「いつ練習してたの?」って。

でも、もう遅い。


直也くんは完全に“ナオヤ劇場”の主役。

オジサン達に囲まれて、グラスを掲げられて、笑顔で応じている。

すっかり“接待キング”になってしまった彼に、今はとても近づけそうになかった。


……悔しい。

元チューターとして、教えてきた立場だったはずの私なのに。

今夜の直也くんは、まるで誰にも触れられないほど遠い存在に見えて――。


タンバリンを握り締めながら、私はただ、ヤキモキするしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ