表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/19

エピローグ:カラオケスナック硅素谷 ママ

――長いこと、このサンノゼの片隅でスナックやってきたけど。

今夜ほど心を揺さぶられた夜は、正直一度もなかったわ。


あの男――一ノ瀬直也。

最初は“スーパー物産マン”とか呼ばれて、大げさな『通り名』を背負って来ただけの名前負けする若造かと思っていた。

どうせ、ちょっと歌って調子に乗って終わり……そう思っていた。


けど違った。


歌えば笑わせ、踊れば盛り上げ、そして最後には涙まで奪っていった。

それも作り物の演出なんかじゃない。

心の奥から本気で届けようとしている声。

その姿に、オジサンたちも、女の子たちも――そして私までも、すっかり持っていかれてしまった。


「ナオヤーーッ!!!」

最後の大歓声がまだ耳に残ってる。

武道館でもない、アリーナでもない、ただの場末のスナック。

けれどあの瞬間だけは――確かにここが“世界の中心”だった。


気付いたら、私の目からも涙がこぼれていた。

三十年、この商売をやってきて、一度もなかったことよ。

お客に泣かされるなんて――あり得ないと思っていたのに。


笑わせて、盛り上げて、泣かせて。

全部決め切ったあの男。

きっと彼は、ただのビジネスマンでも、ただのエリートでもない。

人を惹きつけて離さない――“本物のエンターテイナー”なのよ。


今夜は、私のスナック史上、最高の夜。

そして伝説の夜。


それからしばらくして、風の噂に聞いたの。

あの日あの夜に事実上決裁された契約というのは、五井アメリカの年度の業績を前年比で7%以上も上向かせた要因になったとね。


伝説のエンターテイナーに相応しい結果という事かしらね。

又サンノゼに来たら、是非来店して欲しいわ。


――ありがとう、ナオヤ。

あんたのお陰で、またこの場所が少しだけ輝いた気がするわ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ