ハルとの時間
残り少ないハルがいる時間今日はハルとの時間に使おう。
いつも通りハルの部屋の鐘を鳴らす。
ラウラが迎えてくれる。
「ラウラか」。
あえて残念そうにしてみた。
「なぜ残念そうなんですか」。
予想通りの反応をくれるから可愛いもんだ。
「勉強教えにもらいに来たのにラウラだと」
前回のことがあるので何も言えないラウラに言うべき事は言う。
「お前の長所はその若さでその強さだ、目先に惑わされるなよ」
はっとして頷いたあと更に何かに気づいたようだ。
「待ってください、惑わしたのは使徒様ですよね、それで惑わされるなてひどい誘導ですよ」。
笑顔でツッコミを入れて来るラウラ。
ラウラとも冗談を言える関係になったのにな。
奥から騒がしさに釣られてハルとラウルが出てきた、留守だと思ったらラウルも居たのか。
「何勉強を教えてもらおうと思ったんだが、ラウルも居たんだな、全員居るなら、少し散策しようかそれで帰ってから、勉強教えてくれ」。
ハルが帰るまでに手紙のやり取り出来る位になるといいな。
「先に入口で待ってる、急がなくていいから準備ができたら来てくれ」。
入口でハルとの出会いお思い出す、まだこちらも全然弱かったがあれだけの数に囲まれて怖かっただろう。
それなのに賢明に対応してた。
それに話に聞いた命を削る秘薬を使われたらそこで俺も死んでだろう。
お互いが命の危険だった今の信頼関係が気づけて良かった。
「使徒様お待たせしました」。
ハルはいつもの格好ではなく汚れてよく動きやすい服に着替えてきた。
「うんその格好も似合うね、ハルはなんでも似合う」。
子供は何着ても可愛い。
ハルも褒められて嬉しそうだ。
「出会った時の事を思い出してた、あの時はお互いに危なかったね、それに見てみな、最初はここまで森だったのにここは訓練場になってる、出会ってからそんなに経ってないのに変わっていく、大切な時間だ」。
ハルも悲しいような、懐かしいような表情をする。
「使徒様も何となくお気づきですからこのような時間を作って下さったんだと思いますがお父様から帰還の許可が出ました、準備が出来次第出発します、3日ほどで出ることになると思います、奴隷商人は7日に最前線の村に到着予定です合わせて奴隷にするものを最前線の村に運んでいただければ」。
俺はやはりかと思った、手紙が書けるまでは成らなそうだな、ハル達も準備が大変だろうし。
その後皆で森を歩いた、ハルに教えてもらった薬草の事、俺が教えた美味しい果実、色んな物を再度見ながら歩いた。
「さぁ帰ろうか、帰りは俺に抱っこさせておくれハル、ハルは恥ずかしがるが俺は好きなんだ」。
子どもが歩くには疲れる距離を歩かせてしまった、断れない理由を作って抱っこする。
抱っこして暫くは普通に話してが暫くはするとやはり疲れてたのか、うつら、うつらして何を言ってるか分からなくなるが俺は、うんうん、話を聞くそれでハルは寝てしまった。
それを確認してから歩きながら話す。
「ラウル、ラウラ、お前らは何のためにハルに仕えてる、ハルの父に言われたから、金か、出世か、答える必要は無い俺には何も準備できないだろう、だが俺に出来ることがあれば何でもしよう、だからハルを頼む」
俺は振り向いて頭を下げる、俺に出来るのはこれだけだ。
2人は何も言わなかった。
俺は暫くして頭を、上げてダンジョンまで皆黙って歩いた。




