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【書籍化&コミカライズ】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。  作者: ごろごろみかん。
第六章:表と裏/嘘と本音

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54/80

私の名にかけて、あの男の罪を暴くと誓いましょう

思わず息を呑む。

ジュリアンが偽者、という言葉が現実味を帯びてきた。

クリストファー殿下は淡々と言った。


「だけど、それを証明するものはないんだね?」


「…………はい」


その通りだ。

今あるのは、私が彼のこころの声を聞いたという、あまりにも信ぴょう性に欠ける情報だけ。

彼を問い質すには、誰が見てもそうだとわかる証拠を見つけださなければならない。


そのためには──。


そこで、彼が席を立つ。


「私の方でも調べてみよう。……あなたはどうする?」


「もちろん、私も調査します。このままでは終われません」


思い出すだけで腹が立つ。

ジュリアンは私を侮辱し、その矜恃を貶めたのだ。

私は、このままただ引き下がる女ではなかった。


(強くいえば言うことを聞く女だと思ってるんだわ)


こちらを見下し、舐め腐るのもいい加減にして欲しい、というものだわ。


(この屈辱、必ずお返ししてさしあげる)


「ですが、クリストファー殿下」


ひとつだけ、気になって私は彼に声をかけた。

クリストファー殿下が首を傾げる。

さらさらとした白金が彼の耳元で揺れる。


「信じて、くださるのですか?私の言葉を」


何の確証もない。あるのは、私の証言だけ。

あまりにも信ぴょう性の薄いものだ。それを、なぜ彼は信じてくれるのだろう?

不思議に思って尋ねると、彼は少し驚いたように目を見開いた後。


「……こう見えても、私はあなたのことをずっと見ていたんだよ。何せあなたはヘンリーの妹で、五大公爵家のひとつ、シェーンシュティット家の令嬢だ。そして、私の婚約者筆頭候補でもあった。これでも、私なりに気にかけていたんだよ」


にっこりと笑ってクリストファー殿下が思いを綴る。

初めて知った彼のこころの内に、私は瞬きを繰り返した。

秘密主義者で、なにを考えているか読めないひとだと思っていたけど……私のことを気遣ってくれていたらしい。

彼がわざわざ、私に会いに来てくれたのも彼の言うとおり【気にかけて】くれていたからなのだろう。

それを知ると、胸の奥がほんのりと温かくなった。


「……ありがとうございます」


「ジュリアンが偽物だったとして。もしそうなら、あなたは騙されていたことになるね」


「そうですね……」


その通りなので、硬い声が出る。

クリストファー殿下が、窺うように私を見る。

楽しげな色を、その薄青の瞳に宿して。


「面白い子だね、あなたは。諦めないんだ」


「……私は、由緒ある五大公爵家がひとつ、シェーンシュティットの娘、シャーロット・シェーンシュティットです」


誰もが知る事実を、口にした。

ただの事実。だけど、その言葉には、言葉以上の重みがある。

クリストファー殿下もそれに気付いたのだろう。

目を細めて私を見た。


「その私の矜恃を貶め……いいようにしてくださったお礼は、必ずいたしますわ。これは、私の意地とプライドの問題です。私の名にかけて、あの男の罪を暴くと誓いましょう」


もっとも、これは私への罰だとも思っていた。


容姿端麗な男に調子のいいことを言われて、舞い上がったのだ。あっさり恋に落ちて、溺れて、愚かにも真実を見誤った。

結果、こうして痛い目を見ている。

この失敗を挽回するためにも、この雪辱を果たすためにも。

私は、必ず彼の正体を暴いてやると決意していた。

私が宣言すると、クリストファー殿下はぽかんと私を見たあと──。


「ふ、ふふ、ふふふふ!あはは……!いいね、シャーロット。やっぱりあなたは、私の妃に向いているよ」


間違いなくお世辞だろうけど、私はお礼を言っておいた。


「ありがとうございます。ですが、私にあなたの妻は務まりませんわ」




なにせ、性格の相性が壊滅的に悪いもの、私たち。

☆シャーロット・シェーシュティット

18歳


☆リュカ・ツァーベル

18歳


☆ジュリアン・ザイガー

20歳


☆ルアンナ・ザイガー

16歳


☆クリストファー・ロントウェル

26歳


☆フェリクス・ロントウェル

22歳


☆ヘンリー・シェーンシュティット

22歳


☆ルーク

19歳


2025-02-06 本文を修正しました

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⭐️新連載始めてます⭐️
↓覗いていただけたら嬉しいです↓
毒を飲めと言われたので飲みました。
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