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【書籍化&コミカライズ】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。  作者: ごろごろみかん。
第六章:表と裏/嘘と本音

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腹立つわ〜

本作の書籍化・コミカライズが決定しました。ありがとうございます。

物語も終盤、次の章で完結予定となります。よろしくお願いします!

私の名前は、シャーロット・シェーンシュティット。

ロントウェル国の五大公爵家のひとつ、シェーンシュティット公爵家の娘だ。


ついこの間、私は十二歳になった。


その日、私は大規模なティーパーティーに参加していた。

私の瞳の色が映えるように、今日は淡いペールライラック色のドレスにアザリア、ラズベリー、シンドバッドパープル色のリボンを合わせていた。

シフォンたっぷりに、ドレープをふんだんに効かせたドレスは、私のお気に入りの一着だった。


「お化粧室に行ってきます」


お母様に声をかけて、私はその場を離れた。

付き添いの婦人(シャベロン)とともに、会場を出る。


パーティーは好き。

華やかで、豪華で、楽しくて、明るくて。

笑い声があちこちから聞こえてきて、気分が良くなる。


会場に戻る途中、話し声が聞こえてきた。

普段は気にせずその場を後にするのだけど、私はピタリと足を止めた。


なぜなら、話題の中心人物は私だったからだ。


「シェーンシュティット公爵家のご令嬢、僅か五歳で公標になったんですって!!」


興奮気味の女性の声。

足を止めた私を見て、付き添いの婦人が眉を寄せて私を見る。立ち聞きなどはしたない、と言いたいのだろう。


分かってる。

でも、少しくらいならいいじゃない?


そう思って、私はにっこり笑みを浮かべ、自身のくちびるに人差し指を押し当てた。


だって、彼女たちは私の話をしていて。

それも悪い話ではなく、私を賞賛する内容なのだもの。


私がいたずらっぽく付き添いの婦人を見ると、私の性格をよく知っている彼女はため息を吐いて、額に手を当てた。

その間も、彼女達の話は続いていく。


「ほんとう、すごいわよねぇ。シェーンシュティット公爵も鼻が高いのではなくて?」


「それに、とっても可愛らしいお顔をされているわ。才色兼備とは、まさにこのことを言うのね。才能もあって、お顔立ちも端正で……。それに、とても利発なご令嬢のようよ」


うんうん、と私は彼女達の言葉に内心頷きを返した。


賛辞はあたたかいお湯のようで、半身浴をしているような気持ちになる。

私を褒める言葉ならもっと、いくらでもお話してくれていいのよ。

もっと言ってちょうだい。


そんな気持ちで、私は壁に背を預ける。


立ち聞きなど公爵令嬢に有るまじき行いだが、少しくらい良いわよね。


だって、ここ最近のレッスンはほんっ……とうに大変だったんだもの。


ダンス、マナー、ピアノにバイオリン、フルートのレッスン。

刺繍のお時間。

歴史、外国語、算術(アバカス)のお勉強。

それに加えて、最近は異能の練習を自主的に増やしている。


成果がまさに今!現れているのだ。

頑張った甲斐が有るというものだわ。


私は、自身の手首を飾る異能制御装身具(ブレスレット)を見つめた。


神殿が定めた、公的異能指標認定者──通称、公標になると、神殿から与えられるもの。


私は僅か五歳で異能を発現させ、公標になった。


残念ながら最年少記録では無いが、それでもすごいことだ。

このシトリンとクリスタルで出来たブレスレットを見ると、私は自分の自尊心を保つことが出来た。


「それに、シェーンシュティット公爵令嬢は王太子殿下の婚約者筆頭候補でしょう?」


「クリストファー殿下ね」


「そうそう。ほんとう、すごいわよね。今でさえこんなにすごいのだから、大人になったらどうなるのかしら?」


私がクリストファー王太子殿下の婚約者筆頭候補であるのは事実。

だけど、クリストファー殿下とは歳が離れすぎていて、あまりその実感はなかった。

彼女と話していたもうひとりも、私と同じようなことを考えたのだろう。彼女は声を潜めて、周りを気にするようにしながらも答えた。


「だけど、王太子殿下はシェーンシュティット公爵令嬢と八つも年齢が離れているわ。難しいのではないかしら」


「そんなもの、大人になったら些細なことよ。シェーンシュティット公爵令嬢が二十歳の時、王太子殿下は二十八。何も問題は無いわ」


「そうねぇ……」


クリストファー殿下の婚約者候補で、いちばん若いのは私。ほかの候補者は皆、クリストファー殿下の二〜三個下の令嬢ばかり。


貴族の娘として、王族の妃になるのはこれ以上ない栄誉であることは私も理解している。

だけど、あのクリストファー殿下と……というのは、やはりいまいちしっくりこない。

それは、私だけでなく、彼もそんなふうに感じているように思えた。

私が、自分の婚約と未来に思いを馳せていると、もうひとりの女性が思い出したように言った。


「……ああ!そういえば、幼くして公標になった方はシェーンシュティット公爵令嬢だけではありませんでしたわね」


げ、と思った。

しまった、長居しすぎたのだ。

私の話になれば、とうぜんあいつの話にだってなるはずなのに──。

私が踵を返すより先に、そのご婦人は明るい声で言った、その名前を。


「ツァーベル公爵令息ですわね!僅か二歳(・・・・)で異能を使えるようになり、最年少(・・・)で公標になったとか!」

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⭐️新連載始めてます⭐️
↓覗いていただけたら嬉しいです↓
毒を飲めと言われたので飲みました。
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