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【書籍化&コミカライズ】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。  作者: ごろごろみかん。
第五章:想いのゆくえ

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私を突き落としたひと

ルークは異能保持者だった。

本人曰く、公的異能指標認定者ではなく、使える異能もそんなに強いものでは無いらしい。

ただ、逃亡に適した能力なので、今のセレグラでも問題なく買い出しができるとのことだった。

ルークが所有する異能が、どういったものなのかは気になる。気になるけど、本人があまり言いたくなさそうなので聞かなかった。


ルークに「こっちだよー」と案内されながら、部屋を出る。

すると、ばか長い階段に出るわけで、その高さと長さにうっと息が詰まった。


(ほん……っとうに長いわね、この階段は……)


こういう長い階段や傾斜の激しい坂道は、登りより、下りの方がこわいとおもうのは私だけなのかしら……。

私は慎重に階段を下りるが、ルークは慣れているのだろう。スキップしながら軽やかに下っている。


以前の私は何度もここに来ていたそうだから、とうぜん、この階段も登っていたのだろう。

この階段を毎日、計一ヶ月と十日、登ったのだ。


そこでふと、私は思い出した。

王城の応接間で、クリストファー殿下が言っていた言葉を。


『セレグラ地方は、ここから馬でひと月。船を使えば五日と一週間強。ここからずっと北方に位置する辺境だよ』


『あなたは、彼に鍵を作ってもらうためにわざわざ足を運んでいた。二ヶ月ほど、王都を不在にしていたよ』


王都からセレグラまで、

船で二週間程度。

馬で一ヶ月。


以前の私は二ヶ月ほど王都を不在にしていたというのだから、日数的に考えて馬(というか馬車)で行ったのだろう、と思っていた。

以前の私は船を苦手としていたのかもしれない、と考えていたのだ。


だけど……もしかして?


ふと、ある予感が頭を掠めた。

いや、予感、というよりそれが正解だろう。


以前の私もきっと、同じように船で行った。


だけど、セレグラに到着し、アントニオ・アーベルに会って鍵を作ってもらうのに一ヶ月と十日がかかった。


セレグラ滞在が一ヶ月十日。

往復で四週間。


二ヶ月ほど、という計算に合う。

それに今気がついて、私は深く息を吐いた。


なるほど……そういうことだったのね。


「シャーロット?」


考え事をしていて、つい足を止めてしまっていた。

ルークに呼ばれて、私はハッと我に返る。

見れば、ルークは既にこの長い階段を降りきっていた。は、はやい。


「ごめんなさい、今行くわ」


そう言って、足を踏み出そうとした瞬間。

足元を確認していなかったからか、考え事をしてそちらに意識が向いていたためか──。

私の足は、一段下の階段に触れることなく、空を切った。


「…………えっ?」


思わず、呟いた瞬間。

私は、足を滑らせ──そのまま、盛大に落ちた。


「っ…………!!」


驚きに、声も出ない。

思わず息を呑む。


「シャーロット!!」


ルークが私を呼ぶ声が聞こえた。


天井が目に入る。

日記が宙に舞い、ページが開かれた。


その、瞬間。

私は、見覚えのある景色に、息を呑んだ。


(私──)


『だから、さ、そんなにすごいものじゃないんだよ』


『あなたは、特別な令嬢だよ』


『面白い子だね、あなたは。諦めないんだ』


色んな声が聞こえる。

色んな光景が次々に現れては、消えた。


そう、だ。

そう……だった。


(思い、出した──)


私は、あの時。


(ザイガー子爵家に、ジュリアン()に会いに行こうとしていたんだわ……)


全て、整ったから。


ようやく、会いに行ける。

ようやく、彼に言うことが出来る。


そう、思って。


玄関ホールに向かうために、階段を降りていたら。



……突き落とされたのだった。



弾けたように思考が駆け巡る。

だけどそれも、わずかな時間だったようだ。


私は、頭から転がり落ちた……ようだ。

ガン!!と派手な音がする。


頭を打ったのか、頭に星が散る。

そのまま、激しい物音と身体中に伝わる衝撃。


「シャーロット!!!!」


私を呼ぶ声が遠くで聞こえる。その声を聞きながら、私は意識を失った。

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毒を飲めと言われたので飲みました。
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