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【書籍化&コミカライズ】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。  作者: ごろごろみかん。
第五章:想いのゆくえ

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リュカの秘密

そして、私はリュカに連れられボレル邸を出たのだけど。

馬車に乗り込んだ私は、今になってようやく、リュカに尋ねた。


「それで──尋ねるのが遅くなってしまったけど。結局、あなたの異能って何なのかしら?」


銃弾を落とし、透明な壁を作る。

重力操作……の類かと考えたが、それなら銃弾が変形しているのはおかしい。

圧力を与える能力……?

でもそれならあの透明な壁を生み出したあの状況に、説得がつかない。

私が考えながら言うと、リュカは「ああ」と思い出したように瞬いた。


「俺の異能は、【物質に関与する能力】。さっきのあれは、空気に含まれる気体を固体化させたものだ」


「物質に関与……」


リュカは、神殿の定めた公的異能指標認定者だ。

そして、トップクラスの実力を誇る異能騎士でもある。

そう聞いていたので、強力な異能であるのだろうとは予想していたが──まさか、そんな稀有な異能だとは……。


その異能なら、確かに神殿から異能騎士のお声がかかるわけだわ……。


私は深く頷いていた。


リュカが、そんな私を見て苦笑する。


「便利な異能だけど、制限もあるんだ。この異能は、自分の半径一ヤード以内にしか使えない」


リュカが、自分の手のひらを見つめるようにして言う。


一ヤード……。


そういえば、襲撃者に襲われた時、私はリュカのすぐ隣にいた。

だから、リュカは異能を使えたのだろう。

私の腕を掴んで、引き寄せられたのはそのため。


リュカは、あの時、銃弾を変化させたのだろう。

恐らく、液体化→固体化と物質変化させたのだ。

だから、銃弾が妙な形にひしゃげていたのだ。


「でも……良いの?そんな、たいせつなことを部外者の私に教えてしまって」


私は、神殿に仕える異能騎士でもなければ、ツァーベル公爵家の縁戚でもない。

ただの友人に過ぎない私に致命的な弱点とも言える秘密を暴露してしまっていいのだろうか。


窺うように、私はリュカを見た。

ちなみに、馬車に乗り込んだ時点で異能制御装身具は身につけている。

リュカは私を見ると、逆に不思議そうな顔をした。


「別にいいけど……前のきみも知っていたことだし」


「前の私にも……」


その時、ふと、思ってしまった。

やはり、リュカが好きなのは前の私なのだ。

今の私……ではなく、前の私に、惹かれたのだ。

結局、今の私も前の私も同じ人間であることには変わりないのだけど、記憶が無いからかどうしても別人格のように思えてしまう時がある。

つい、沈黙すると、リュカが過去に思いを馳せるようにぽつりと言った。


「きみが……ずいぶん、思い詰めていたみたいだから」


顔を上げると、リュカは窓の外に視線を向けていた。

窓の外は、一面銀世界だ。

白が、目に眩しい。


「……私が?」


リュカがまた私を見る。

その瞳は、続きを口にするか、しないか、悩んでいるようだった。

少しの沈黙の後、リュカは話を続けた。


「はっきりとは聞いてない。だけど、シャーロットが思い悩んでいるのは伝わってきたし、俺も、どうすればいいんだろうと悩んでた時期がある」


「思い悩んでいた……」


「きみと俺は同い年だったし、五大公爵家の子供として昔から、比較されることも多かった。俺は、異能はそのどれもが神から与えられたギフトだと思っている。それに、上も下もない。だけど」


その言葉の続きは、私が引き取った。

リュカは、すごく言いにくそうにしていたから。


「私は……リュカに、引け目を感じていた?」


「……はっきり聞いたわけじゃない。だけど、俺が異能騎士になったあたりからシャーロットの様子が少しずつおかしくなった。ヘンリーから聞いた話だけど。異能の特訓をするって急に言い出して雪山に行こうとしたり、セカンド異能を発現させるんだと意気込んで霊山に行こうとしたり」


「それは……」


確かに、その話を聞くとずいぶん追い詰められていたのがわかる。


私とリュカは、それぞれ五大公爵家の子供だ。

さらに、私と彼は同い年の十八歳。

それは……比べられることも多かったことだろう。


リュカの異能は、確かに稀有で、そして強力なものだ。異能保持者の中でもっとも強い能力といっても過言ではないだろう。

私のファースト異能も、決して劣っているものではない。……ないのだけど、比べる相手が悪い。

リュカの異能を前にしたら、私の異能なんて氷を生むか消すかのどちらかしかできない、ちんけな能力だ。

そう思ってしまうのも、しかたないような気がした。

幼い頃から常に幼馴染と比べられ、さらにかれが自分より優秀な異能を持っているとくれば……。こじれるのも納得がいく。


私は、ため息を吐いた。

ぴく、とリュカの肩が震えた。


彼が窺うように、不安そうに私を見た。

それに、私は笑みを浮かべてリュカに言った。


「だから、あなたは言ったのね?わざわざ、自分の弱みを明かして、私の気を軽くしようとした」

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↓覗いていただけたら嬉しいです↓
毒を飲めと言われたので飲みました。
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